五大厄災は“暗黒大陸編”の核心を示すキーワードだ
『HUNTER×HUNTER』の五大厄災とは、人類が過去に実施した暗黒大陸遠征で遭遇し、帰還の代償として既知世界へ持ち帰った五つの脅威です。
植物兵器ブリオン、不死の病ゾバエ病、ガス生命体アイ、双尾の蛇ヘルベル、人飼いの獣パプ。それぞれ姿や性質は大きく異なりますが、いずれも遠征隊へ壊滅的な被害を与え、人類には有効な攻略法が確立されていません。
過去の遠征で人類が求めたのは、万病に効く香草や究極の長寿食ニトロ米、莫大なエネルギーを生み出す無尽石など、既知世界の常識を変え得るリターンでした。
しかし、人類が利用できる成果を持ち帰ることには失敗し、その代わりに厄災と犠牲者を既知世界へ持ち帰る結果となっています。
また、「五大厄災」という名称は、暗黒大陸に存在する脅威が五種類だけであることを意味しません。人類が過去の国家的遠征を通じて存在を確認したものが五つというだけで、未踏の地域には未知の生物や病、現象が数多く残されていると考えられます。
現在進行している王位継承戦に、五大厄災が直接関与していることを示す描写はありません。
黒鯨号1号の航海と、その先に予定されている本格的な暗黒大陸探索は分けて考える必要があります。五大厄災が物語の前面に現れるとすれば、人類が暗黒大陸へ到達し、未知の環境へ踏み込んだ後になる可能性が高いでしょう。
この記事では、五大厄災それぞれの正体、危険度、過去の遠征結果を作中で明かされた情報から整理します。そのうえで、アルカとナニカの謎、ネテロ親子の挑戦、今後の暗黒大陸探索にどのように関わるのかを、確定情報と考察を分けながら掘り下げていきます。
ブリオン

正体
ブリオンは、暗黒大陸で確認された「植物兵器」です。
作中資料では、巨大な球体が人型の胴体の頭部に載ったような異様な姿で描かれています。しかし、球体と胴体がどのような構造でつながっているのか、植物としてどのように活動するのか、単独の個体なのか複数存在するのかといった生態は明らかになっていません。
「兵器」と呼ばれているものの、何者かによって人工的に造られた存在なのかも不明です。戦闘のために設計された生物と断定することはできず、現時点で分かっているのは、古代の迷宮都市を守っているという役割までです。
ブリオンの詳しい情報が語られたのは、第344話です。
サヘルタ合衆国は「万病に効く香草」を求め、メビウス湖をほぼ真北へ進み、暗黒大陸へ上陸しました。その先に広がる樹海を約400km進んだ場所には、古代の迷宮都市が存在します。
香草を採取するために送り込まれたサヘルタ合衆国の特殊部隊は、無人都市を守るブリオンによって壊滅させられ、帰還できたのはわずか2名でした。
特殊部隊が何人で構成されていたのか、どのような攻撃を受けたのか、帰還した2名がどのような状態だったのかは描かれていません。また、目的だった香草を入手できたことや、既知世界へ持ち帰ったことも確認されていません。
ブリオンの危険性は、外見や名称以外の情報がほとんどない点にもあります。
物理的な攻撃を行うのか、植物を増殖させるのか、迷宮都市そのものと連動しているのかさえ不明です。特殊部隊を壊滅させたという結果だけが示され、どのような対策を取れば接近できるのかについては手掛かりがありません。
登場しうる局面
ブリオンが本格的に登場する可能性があるのは、遠征隊がメビウス湖北方の既知ルートを選び、古代の迷宮都市を目指した場合です。
万病に効く香草は、人類にとって極めて価値の高いリターンです。ネテロが十二支んへ残した課題を達成するため、過去に失敗したルートを改めて攻略する展開になれば、都市を守るブリオンへの対処は避けられません。
ただし、ビヨンド=ネテロが目指しているのは、過去の遠征をそのまま繰り返すことではなく、これまで人類が踏み込んでいない場所の開拓です。そのため、現在の遠征でブリオンが必ず登場するとは限りません。
また、ブリオンが迷宮都市から離れて活動するのか、都市へ近づかなければ被害を受けないのかも分かっていません。過去の記録では都市を守る存在として報告されていますが、その行動範囲まで特定されているわけではありません。
現時点では、ブリオンの一部や痕跡が黒鯨号へ持ち込まれていることを示す描写もありません。王位継承戦やカキン帝国の勢力と結びついているという根拠もなく、物語への直接的な登場を考えるなら、本格的な暗黒大陸探索が始まった後が自然です。
ブリオンとの対峙で焦点になるのは、単純な戦闘力の比較だけではないでしょう。
迷宮都市へどう侵入するのか、ブリオンの攻撃条件をどう特定するのか、香草を採取した後に安全な経路で帰還できるのか。未知の守護者を倒すことではなく、リターンの確保から撤退までを成立させる探索能力が問われます。
ブリオンは、古代の都市を誰が築いたのか、なぜ万病に効く香草が残されているのか、そして何のために「植物兵器」が都市を守り続けているのかという謎にも直結しています。
その正体が明かされるとき、暗黒大陸に未知の生物がいるという事実だけでなく、人類よりもはるか以前に存在した文明の痕跡へ物語が広がる可能性があります。
ゾバエ病

正体
ゾバエ病は、暗黒大陸から持ち帰られた五大厄災のひとつです。「不死の病」と呼ばれる一方、その本質は「希望を騙る底無しの絶望」と表現されています。
第341話では、異形の姿となった発症者が隔離施設内で生存している様子が描かれました。さらに第344話では、約50年前に行われたクカンユ王国とビヨンド=ネテロの暗黒大陸遠征によって、ゾバエ病が既知世界へ持ち帰られた経緯が明かされています。
遠征隊の目的は、あらゆる金属を生み出すとされる錬金植物メタリオンの確保でした。メタリオンを持ち帰ることには成功したものの、帰路で予定していたルートを外れたことでゾバエ病の被害に遭い、帰還できたのはビヨンドと発症したハンターを含む6名だけでした。持ち帰ったメタリオンもその後枯れてしまい、遠征は成果を残せないまま終わっています。
ゾバエ病を発症したハンターは、帰還後も50年以上にわたって自給自足の状態で生き続けています。しかし、その姿からは人間らしい生活や意思を保っているようには見えません。
永遠に生きられることは、老いや死を恐れる人間にとって究極の希望にも思えます。ところがゾバエ病による不死は、正常な肉体や精神を保ったまま寿命だけが延びるものではなく、死ぬことさえ許されない状態として提示されています。
なお、作中ではゾバエ病の感染経路や潜伏期間、具体的な発症条件、人から人への伝染性は明かされていません。治療や症状を止める方法が存在するのかも不明です。
そのため、ゾバエ病を「接触や飛沫によって次々と広がる感染症」と断定することはできません。確認されているのは、遠征隊が暗黒大陸で被害に遭い、発症したハンターが現在も死なずに生き続けているという事実までです。
登場しうる局面
ゾバエ病が再び物語の中心に現れるとすれば、本格的な暗黒大陸探索が始まり、過去の遠征隊が足を踏み入れた地域へ近づいたときでしょう。
ビヨンドはゾバエ病によって壊滅した遠征の生還者であり、その危険を直接知る数少ない人物です。新たな遠征でも未知のルートを選ぶのか、それとも過去の失敗を避けるのかという判断には、ゾバエ病との遭遇経験が大きく関わってくる可能性があります。
また、既知世界には50年以上生存している発症者が残されています。ゾバエ病の性質を調べるうえで極めて重要な存在ですが、研究によって不死の仕組みを解明しようとする者が現れれば、隔離されていた厄災が再び人間の欲望と結びつくことにもなります。
現時点でゾバエ病が黒鯨号に持ち込まれていることを示す描写はありません。感染経路も不明であるため、船内で急速に拡散するという展開はあくまで考察のひとつです。
ゾバエ病が突きつける最大の恐怖は、感染者の数ではなく、「死なないことは本当に幸福なのか」という問いにあります。不死を望む者にとっては希望に見えながら、その結末は人間として生きることを終えた、出口のない生存です。
その矛盾が物語の中で掘り下げられたとき、ゾバエ病は五大厄災の中でも特に重い意味を持つ存在になるでしょう。
アイ(Ai)

正体
アイは暗黒大陸の五大厄災のひとつで、「欲望の共依存」と呼ばれるガス生命体です。危険度はAに分類されています。
作中では黒い気体の塊から手足のようなものが伸びた姿で描かれていますが、その生態や知性、攻撃方法はほとんど明かされていません。人間の精神を直接支配するのか、特定の欲望に反応するのか、そもそもどのような条件で被害が発生するのかも不明です。
過去には、ミンボ共和国がハンター協会の協力を得て、あらゆる液体の原料になり得る「三原水」の入手を目指しました。
しかし、遠征はアイを巡るいさかいによって失敗し、帰還できたのはわずか3名でした。3名は目的の三原水を持ち帰れなかっただけでなく、いずれも正常な精神状態を失っていたとされています。
ただし、遠征隊の内部で何が起きたのかは具体的に描かれていません。
アイが人々を争わせたのか、三原水やアイを奪い合った結果として争いが起きたのか、それとも別の現象が関係していたのかは不明です。「欲望の共依存」という呼び名から、人間の願望や執着に作用する存在だと考えることはできますが、その仕組みを確定情報として扱うことはできません。
さらに、アイによる被害者は既知世界でも確認されています。
これはアイそのもの、またはアイの影響が暗黒大陸の外へ到達していることを意味します。ただし、被害者がどのような経緯で生まれたのか、遠征隊がアイを持ち帰ったのか、別の経路で既知世界へ入り込んだのかは明らかになっていません。
アイは人間に愛情や依存心を植え付ける怪物と断定できる存在ではなく、現時点では能力の大部分が伏せられた未知の生命体です。
分かっているのは、その周囲で人間同士のいさかいが起こり、生還者が正気を失い、既知世界でも被害が確認されているという結果だけです。
登場しうる局面
アイが本格的に登場する可能性が高いのは、遠征隊が三原水の存在する地域へ踏み込んだときです。
三原水は人類に計り知れない利益をもたらす資源ですが、過去の遠征は何も持ち帰れないまま終わりました。新たな遠征隊が同じ成果を求めれば、アイとの接触だけでなく、希少な資源を巡る人間同士の対立が再び起こる可能性があります。
アイの能力が判明していない以上、強力な念能力者であれば対処できるとも限りません。
ガス生命体という性質がどこまで実体を持つのか、物理的な攻撃が通用するのか、接触を避ければ安全なのかさえ不明です。遭遇した時点で戦うのではなく、まず発動条件や影響範囲を見極めなければならない厄災だと考えられます。
一方、現在の黒鯨号にアイが潜んでいることを示す描写はありません。
王位継承戦では多くの欲望や利害が衝突していますが、その状況がアイの性質と似ているというだけで、船内にアイが存在すると判断することはできません。今後の直接的な登場を考えるなら、黒鯨号の航海中よりも、暗黒大陸への上陸後が自然でしょう。
ただし、アイにはほかの五大厄災にはない、すでに本編とつながっている可能性があります。
その接点となるのが、アルカとともに存在する「ナニカ」です。
アルカ=ナニカと「アイ」の関連性
ナニカは、ゾルディック家のアルカの中に現れる、もうひとつの存在です。
アルカとは異なる人格と外見を持ち、人間の願いを現実にする力を備えています。その代わり、別の人物に「おねだり」を要求し、前に叶えた願いが大きいほど、次に求める代償も重くなるという仕組みがあります。
この能力は、願いを叶えてもらう者と、その代償を負わされる者が分かれる構造です。人間の欲望が他者の犠牲によって成立する点は、アイの呼称である「欲望の共依存」を連想させます。
さらに、ナニカは願いを受け入れた際などに「あい」と返事をします。
単行本第33巻の幕間ページでは、ナニカの姿に「あい 暗黒大陸出身です」という言葉が添えられており、ナニカが暗黒大陸に由来する存在であることが強く示されています。
アイの名称、ナニカの返事、暗黒大陸出身という情報、そして欲望と代償を結びつける性質。これらの共通点から、ナニカとガス生命体アイの間に深い関係があることは間違いないでしょう。
ただし、ナニカが五大厄災として報告されたアイそのものなのか、アイと呼ばれる種族の一個体なのか、アイの力を宿した別の存在なのかは明言されていません。
したがって、「ナニカの正体はアイで確定している」と断定するよりも、同一または同種の存在である可能性が強く示唆されている、と捉えるのが正確です。
もし両者の関係が今後明かされれば、キルアとアルカの物語は暗黒大陸編へ直接つながることになります。
ナニカがなぜゾルディック家にいるのか、誰が暗黒大陸から連れてきたのか、なぜキルアにだけ特別な反応を示すのか。これらの謎が解かれるとき、アイは未知の厄災としてだけでなく、すでに人間との共存を始めている存在として描かれるのかもしれません。
ヘルベル(Hellbell)

正体
ヘルベルは暗黒大陸の五大厄災のひとつで、「双尾の蛇」と呼ばれる正体不明の生物です。
作中では二本の尾を持つ蛇のような姿で描かれ、「殺意を伝染させる魔物」と説明されています。総合危険度は最高ランクのAに分類されており、危険度Bと評価されたキメラ=アントを上回ります。
ただし、殺意を伝染させる具体的な仕組みは明らかになっていません。
噛まれることで影響を受けるのか、毒や音、においなどを媒介するのか、一定の範囲にいるだけで発症するのかも不明です。感染した者が周囲の人間を襲うのか、自分自身を傷つけるのか、どれほど長く影響が続くのかについても、作中では説明されていません。
過去には、オチマ連邦が「究極の長寿食」とされるニトロ米を求め、メビウス湖の南東にある暗黒大陸へ遠征しました。
しかし、一行はニトロ米が自生する沼地へ到達する前にヘルベルの被害を受け、遠征隊の99%を失っています。帰還できたのは11名だけで、目的だったニトロ米も持ち帰れませんでした。
この結果から分かるのは、ヘルベルが強力な念能力者を直接倒せるほどの戦闘力を持つということではありません。
殺意の伝染によって遠征隊が同士討ちに陥ったのか、ヘルベル自身に襲われたのか、別の要因が重なったのかは不明です。確認されているのは、ヘルベルが生息する地域を通過しようとした遠征隊が、壊滅的な被害を受けたという事実までです。
登場しうる局面
ヘルベルが本格的に登場するとすれば、暗黒大陸への上陸後、人類が未知の生物と接触する危険性が現実のものとなった段階でしょう。
今回の遠征が過去と同じ地域を目指すとは限りません。ビヨンド=ネテロは、これまで人類が足を踏み入れていないルートを進もうとしているため、ヘルベルと遭遇せず、まだ知られていない第六の厄災を持ち帰る可能性も示されています。
それでも、暗黒大陸で行動する以上、ヘルベルと同じ性質を持つ個体や、過去の生息域から移動した個体に遭遇する可能性は否定できません。
ヘルベルの最大の脅威は、敵の存在を確認してから戦闘態勢を整えるという、これまでの常識が通用しない可能性にあります。
殺意がどのように伝染するのか分からなければ、異変を起こした仲間がヘルベルの影響を受けているのか、本人の意思で敵対しているのかさえ判断できません。疑いを抱いた時点で拘束すべきなのか、仲間として信じ続けるべきなのかという選択が、遠征隊の生死を左右します。
特に暗黒大陸では、複数のハンターが役割を分担しながら集団で行動することが前提になります。
その集団に殺意が広がれば、優秀な念能力者が多いほど同士討ちによる被害も大きくなりかねません。戦力の高さが安全につながるどころか、組織全体を破壊する危険へ反転するのです。
ヘルベルとの遭遇が描かれた場合、焦点となるのは単純な討伐ではなく、伝染の条件を突き止め、影響を受けた人物を判別し、遠征隊の信頼関係を維持できるかどうかでしょう。
仲間を信じなければ探索は続けられない。しかし、無条件に信じれば全滅するかもしれない。
ヘルベルは、人間の殺意そのものを武器にすることで、暗黒大陸を集団で攻略しようとする者たちの前提を根底から崩す厄災なのです。
パプ(Pap)

正体
パプは暗黒大陸の五大厄災のひとつで、「人飼いの獣」と呼ばれる正体不明の生物です。
作中では「快楽と命の等価交換」という言葉とともに紹介されており、総合危険度は最高ランクのAに分類されています。ただし、どのような方法で人間を襲い、何をもって「飼う」のかは明らかになっていません。
生息域とされているのは、メビウス湖の北東部沿岸に広がる険しい山脈です。
この地域では、水に沈めることで莫大な電力を生み出す鉱石「無尽石」が採れるとされています。ベゲロセ連合国は無尽石へ続くルートを確保するため、1000人規模の調査団を派遣しました。
しかし、山脈一帯はパプの縄張りであり、遠征から帰還できたのはわずか7名でした。調査団がどのような被害を受けたのか、パプと直接戦ったのかについては描かれていません。
パプの犠牲者は、暗黒大陸だけでなく既知世界でも確認されています。
作中では異様な姿となった被害者が描かれていますが、身体が小さくなった、角が生えたといった具体的な変化は説明されていません。外見だけから症状や能力を断定することはできず、被害者がどのような状態で生存しているのかも不明です。
確認されている犠牲者は、国際環境許可庁の地下に非公式で保管されています。
ただし、既知世界で発見されているのはパプによる被害者です。パプそのものが暗黒大陸から持ち込まれたとは明かされていません。
「快楽と命の等価交換」という表現からは、人間が何らかの快楽を与えられる代わりに、生命や自由を奪われる厄災だと考えられます。
しかし、快楽が身体に与えられるものなのか、精神へ作用するものなのか、被害者が自らパプを求めるようになるのかは分かっていません。
人間を力ずくで支配するのではなく、抵抗する意思そのものを失わせて「飼う」のだとすれば、単純な戦闘力では対処できない危険を持つことになります。
登場しうる局面
パプとの遭遇が現実味を帯びるのは、暗黒大陸への上陸後、遠征隊がメビウス湖北東部の山脈を目指したときです。
無尽石は、人類のエネルギー問題を根本から変える可能性を持つ資源です。その価値を考えれば、過去の調査団が壊滅した事実を知りながらも、再び入手を目指す国家や組織が現れても不思議ではありません。
ただし、今回の遠征隊が北東部の山脈へ向かうとは限りません。
ビヨンド=ネテロは、過去の遠征で開拓されたルートをたどるのではなく、まだ人類が足を踏み入れていない場所へ進もうとしています。そのため、暗黒大陸編でパプが必ず登場すると断定することはできません。
もしパプとの接触が描かれた場合、最大の問題は被害を受けた人物を救出できるかどうかでしょう。
パプの能力や解除方法が分からない以上、被害者をパプから引き離せば元に戻るのか、その状態がすでに不可逆なのかも判断できません。保護した人間を連れて帰ることで、新たな被害を持ち帰ってしまう可能性も考える必要があります。
さらに、パプの与える「快楽」が被害者自身の意思に作用するのであれば、救助されることを本人が拒む展開もあり得ます。
ただし、これは「快楽と命の等価交換」という呼称から導かれる考察であり、作中で能力として明言されたものではありません。
パプは、圧倒的な力で人間を殺すだけの怪物ではありません。
命を奪われているにもかかわらず、被害者がその状態を幸福だと感じているとすれば、外部の人間が一方的に救済を決められるのかという難題が生まれます。
戦うべき敵は目の前の獣なのか、それとも快楽を手放せなくなった人間の心なのか。
パプが本格的に登場したとき、暗黒大陸の探索は単なる生存競争ではなく、人間の自由や幸福の意味を問う物語へ変わる可能性があります。
五大厄災一覧|危険度・リターン・遠征結果
五大厄災は、V5各国が暗黒大陸のリターンを求めて実施した五つの遠征で遭遇した脅威です。遠征隊はいずれも壊滅的な被害を受け、目的の資源を人類が利用できる形で持ち帰ることには失敗しました。
| 五大厄災 | 呼称・分類 | 危険度 | 遠征した国 | 目的のリターン | 遠征先・遭遇状況 | 帰還者 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ブリオン | 植物兵器 | B+ | サヘルタ合衆国 | 万病に効く香草 | メビウス湖北岸から樹海を約400km進んだ古代の迷宮都市。都市を守るブリオンによって特殊部隊が壊滅 | 2名 |
| ゾバエ病 | 不死の病 | B+ | クカンユ王国 | 錬金植物メタリオン | メタリオンの確保後、帰路で予定のルートを外れたことで遭遇。持ち帰ったメタリオンは枯死 | 6名 |
| アイ | 欲望の共依存/ガス生命体 | A | ミンボ共和国 | 三原水 | メビウス湖の南東方面。遠征隊はアイに囲まれ、いさかいの末に壊滅。帰還者は正気を失い、三原水も持ち帰れず | 3名 |
| ヘルベル | 双尾の蛇 | A | オチマ連邦 | ニトロ米 | メビウス湖の南東にある沼地へ向かう途中、遠征隊の99%がヘルベルの犠牲に | 11名 |
| パプ | 人飼いの獣 | A | ベゲロセ連合国 | 無尽石 | メビウス湖北東部沿岸の険しい山脈。1000人規模の調査団が壊滅 | 7名 |
ブリオンとゾバエ病は危険度B+、アイ、ヘルベル、パプは最高ランクのAに分類されています。ただし、これは一対一の戦闘力だけを表す順位ではありません。人間への攻撃性、個体数、繁殖力、被害の深刻さ、対処の難しさなどを含めて判定された総合的な危険度です。
また、過去の遠征で存在が確認された脅威が五つだっただけで、暗黒大陸に生息する厄災が五種類しかないわけではありません。人類が探索した範囲は沿岸部のごく一部に限られており、未踏の地域には、まだ名前も付けられていない脅威が存在する可能性があります。
メモ(作中資料より)
- ヘルベル:オチマ連邦のニトロ米遠征は帰還11名(約99%損耗)。後に危険度がAへ引き上げ。
- パプ:ベゲロセ連合の1000名規模遠征で生還7名。被害者の一部は国際許可機関の地下で秘匿保管。
- 共通:五大厄災は「倒す対象」というより、接近しない・持ち帰らないといった“条件管理”を強いる存在として描写。
厄災とキメラ=アントは、どこが決定的に違うのか

五大厄災の危険性を考えるうえで、比較対象となるのがキメラ=アントです。
キメラ=アントは、人間を捕食して特徴を受け継ぎながら繁殖し、女王を中心とした集団を形成する生物です。作中では王や直属護衛軍が人類の戦力を大きく上回りましたが、敵の居場所や組織構造、目的を把握できたことで、ハンター協会は討伐作戦を立てることができました。
一方、五大厄災は共通した生態を持つひとつの種族ではありません。
植物兵器のブリオン、不死の病ゾバエ病、ガス生命体アイ、双尾の蛇ヘルベル、人飼いの獣パプと、その正体は大きく異なります。発生条件や影響範囲、対処方法がほとんど分かっておらず、そもそも通常の生物として討伐できる存在なのかさえ不明です。
総合危険度では、キメラ=アントがBに分類されているのに対し、ブリオンとゾバエ病はB+、アイ、ヘルベル、パプはAと評価されています。
ただし、この評価は個体同士の戦闘力を比較したものではありません。五大厄災の一体がメルエムより強いと示されているわけではなく、人類全体へ与える被害や繁殖性、対処の難しさなどを含めた総合的な危険度です。
キメラ=アントには圧倒的な力がありましたが、最終的には討伐という形で事態を収束させることができました。
五大厄災には、その前提が通用するとは限りません。病や精神への影響が脅威となる場合、原因となる存在を倒しただけで被害が止まるのかも分からないからです。正面から戦うよりも、接触を避け、発生条件を見極め、被害を封じ込める判断が重要になります。
もうひとつの違いは、人類が危険へ近づく理由です。
キメラ=アントは既知世界へ流れ着き、人間を捕食しながら勢力を拡大したため、放置できない敵として討伐されました。対して五大厄災は、人類が暗黒大陸のリターンを求めて進んだ先で遭遇した存在です。
万病を治す香草、長寿をもたらすニトロ米、無限に近いエネルギーを生み出す無尽石。人類にとって魅力的な資源を求めた結果、その近くに存在する厄災の被害を受けました。
キメラ=アントが外部から人類の生活圏へ侵入してきた脅威だとすれば、五大厄災は人類が自ら境界を越えたことで招いた脅威です。
だからこそ、暗黒大陸で試されるのは戦闘力だけではありません。
目の前に莫大な利益があっても引き返せるのか。未知の存在を理解できないまま、捕獲や利用を試みずにいられるのか。五大厄災との対峙では、人類自身の欲望を制御する力が、生き残るための最大の条件になるのです。
ネテロ会長と暗黒大陸――受け継がれる挑戦
ネテロ会長は若い頃、二度だけ暗黒大陸に足を踏み入れたと語っています。
少なくともそのうち一度は、ジグ=ゾルディック、リンネ=オードブルとともに行った、公式記録に残されていないお忍びの渡航でした。ネテロがハンター協会の正式な遠征隊員として参加したことや、帰還率1%未満の遠征から生還したことは明らかになっていません。
ネテロが暗黒大陸で求めていたのは、自分の全力をぶつけられる強敵との勝負でした。
しかし、そこで待っていたのは、明確な敵を倒して勝敗を決める戦いではありません。過酷な自然の中で、ただ生き延びることを求められる終わりのない闘争でした。
個人の強さを極めてきたネテロにとって、暗黒大陸は自らが望んでいた戦場とは異なる場所だったのです。
一方、息子のビヨンド=ネテロは、未知の土地を攻略し、人類がまだ手にしていない成果を持ち帰ることそのものに執着しています。
約50年前には暗黒大陸への遠征を主導しましたが、目的としていた成果を残せないまま、多数の犠牲者とゾバエ病を既知世界へ持ち帰る結果となりました。この遠征を受け、ネテロはビヨンドに対し、自分が生きている間は再び暗黒大陸へ挑戦しないよう禁じています。
そのため、ネテロとビヨンドの関係は、父の夢を息子が素直に受け継いだものではありません。
ネテロは暗黒大陸の危険を知ったうえで再挑戦を止めようとし、ビヨンドは父の死を待ってまで渡航の機会をうかがっていました。同じ場所を目指していても、暗黒大陸に求めるものは大きく異なります。
ところがネテロは死後、十二支んに対し、ビヨンドより先に暗黒大陸の探索を成功させてほしいというメッセージも残していました。
その達成条件は、五大厄災のいずれかを攻略し、対応するリターンを無事に持ち帰ることです。暗黒大陸への渡航を禁じながら、息子が動き出したならばハンター協会に先を越してほしくないという、ネテロらしい競争心が表れています。
五大厄災は、ネテロ自身が倒した敵でも、生涯をかけて追い続けた存在でもありません。
むしろ、暗黒大陸を目指す次の世代に対して残された、探索成功の基準です。厄災を力ずくで排除するだけではなく、その性質を見極め、人類に必要なリターンを持ち帰って初めて挑戦は成功したと認められます。
危険を知っているからこそ止める。それでも誰かが挑むのなら、自分の後継者たちに勝ってほしいと願う。
ネテロの遺した指令には、暗黒大陸への警戒と、未知へ挑まずにはいられないハンターの本質が同時に込められているのです。
人類が持ち帰ってしまったもの、その重さ

暗黒大陸への遠征で人類が求めてきたのは、寿命や病、エネルギーといった既知世界の限界を覆す「希望」でした。
万病に効く香草、究極の長寿食ニトロ米、あらゆる液体の原料となり得る三原水、莫大なエネルギーを生み出す無尽石、そして錬金植物メタリオン。どれも手に入れれば、人類の歴史そのものを変えかねない価値を持っています。
しかし、過去の遠征は目的としていたリターンを持ち帰るどころか、壊滅的な被害を受ける結果となりました。
オチマ連邦はニトロ米を求めてメビウス湖の南東へ向かいましたが、自生する沼地へ到達する前に遠征隊の99%がヘルベルの犠牲となり、帰還できたのは11名だけです。ニトロ米を入手した、既知世界へ持ち帰った、あるいは流通させたという事実は作中で明かされていません。
人類が実際に持ち帰らされたのは、求めていた恩恵ではなく、暗黒大陸の危険を示す「戒め」でした。
五大厄災のうち、アイとパプについては既知世界でも犠牲者が発見されています。その被害者は国際環境許可庁の地下に非公式で保管されており、暗黒大陸の脅威がすでに人類の生活圏へ入り込んでいることが示されています。
厳重に隔離されているからといって、危険が消えたわけではありません。正体も対処法も十分に分からない存在が、既知世界の内部に封じられているにすぎないのです。
暗黒大陸では、大きな希望のすぐそばに、それを上回る厄災が存在しています。
人類に問われているのは、未知の資源を持ち帰れるだけの力があるかではありません。目の前に莫大な利益があっても、踏み込まない、触れない、持ち帰らないという判断ができるかどうかです。
欲しかったものには届かず、代わりに災厄だけを持ち帰る。
そのあまりにも不釣り合いな結末こそが、暗黒大陸に挑む人類の危うさを象徴しています。
五大厄災は物語にどう関わるのか
五大厄災が今後の物語に登場するとしても、現在進行している王位継承戦へ直ちに介入するとは限りません。
黒鯨号1号がまず目指しているのは、一般には暗黒大陸への足がかりとして発表された「新大陸」です。真の暗黒大陸探索は、一般乗客を乗せた航海とは別の段階で行われる計画となっています。
少なくとも現時点では、ブリオン、ゾバエ病、アイ、ヘルベル、パプのいずれかが黒鯨号内に存在することを示す描写はありません。
ゾバエ病が船内で感染を広げている、アイが王子たちの欲望へ干渉しているといった展開も確認されていません。王位継承戦や船内の抗争は、カキン帝国の制度、念能力、王子やマフィアの思惑によって発生している問題であり、五大厄災と直接結びつける根拠はないのです。
ただし、王位継承戦が暗黒大陸編と無関係というわけではありません。
黒鯨号で起きているのは、未知の世界へ到達する前に、人間同士の権力争いによって遠征そのものが崩壊しかねない事態です。暗黒大陸の脅威と対面する以前から、国家、組織、家族、個人の利害が衝突し、多くの犠牲者が生まれています。
これは、五大厄災に挑む資格が人類にあるのかを問う前段階とも捉えられます。
本格的な暗黒大陸探索が始まれば、物語のルールは大きく変わるでしょう。現在の王位継承戦では、相手の能力や目的を読み、限られた情報から生存の道を探すことが重要です。しかし暗黒大陸では、相手が生物なのか、現象なのか、病なのかさえ分からない状況から調査を始めなければなりません。
五大厄災は、倒すべき敵として順番に登場する存在とは限りません。
過去に人類が五つのルートを探索し、それぞれ異なる厄災と遭遇した結果として「五大厄災」が認定されました。暗黒大陸に存在する脅威がこの五つだけだと明かされたわけではなく、人類がまだ発見していない生物や現象が無数に存在する可能性があります。
そのため、今後の遠征で五大厄災のすべてが登場するとは断定できません。
既知のルートへ進めば、対応する厄災と再び遭遇する可能性があります。一方、これまで探索されていない地域へ踏み込めば、五大厄災とは異なる新たな脅威が見つかり、人類が「六つ目の厄災」を持ち帰る事態も考えられます。
物語における五大厄災の役割は、暗黒大陸の敵を五種類に限定することではありません。
人類が把握している情報が、ごく一部にすぎないことを示す基準です。五つの厄災だけでもキメラ=アントを上回る総合危険度を持ちながら、その外側には名前すら付けられていない脅威が広がっています。
さらに、暗黒大陸探索の成功は、厄災から生き延びるだけでは成立しません。
目的となるリターンを確保し、遠征隊を帰還させ、危険を既知世界へ持ち込まないところまで達成する必要があります。戦闘に勝っても、多数の犠牲者を出し、新たな厄災を持ち帰れば、それは過去の失敗を繰り返したにすぎません。
王位継承戦が人間同士の思惑を読み解く物語だとすれば、その先にある暗黒大陸探索は、人類の常識そのものが通用しない世界を理解する物語になるでしょう。
五大厄災は、その境界に置かれた最初の警告です。
人間同士の争いを乗り越えた者たちが、理解も支配もできない存在を前にして、どのような判断を下すのか。そこから初めて、暗黒大陸編の本当の挑戦が始まるのです。
五大厄災に関するFAQ
Q1. 五大厄災は念能力で倒せるの?
現時点では不明です。
五大厄災は、ブリオンやヘルベルのような生物だけでなく、ゾバエ病のような病、アイのようなガス生命体も含むため、すべてを同じ方法で倒せるとは考えられません。
また、危険度は個体の戦闘力だけを示す数値ではなく、攻撃性、繁殖力、生存力、被害の規模、人類が対処できる可能性などを総合した評価です。五大厄災の危険度がキメラ=アントを上回るからといって、それぞれがメルエム以上の戦闘力を持つという意味ではありません。
念能力が有効な可能性はありますが、作中では討伐方法も封じ込める方法も明らかになっていないため、「念能力では倒せない」「強力な念能力者なら倒せる」のどちらも断定できません。
Q2. 王位継承戦に五大厄災は関わっている?
現在までに、五大厄災が黒鯨号1号へ持ち込まれたことを示す描写はありません。
船内で起きている死者や異変についても、王子たちの守護霊獣、念能力者、カキンマフィアの抗争などによって説明されており、五大厄災との直接的な関係は確認されていません。
ナニカとアイの間には強い関連性が示唆されていますが、ナニカが黒鯨号にいるわけではありません。ゾバエ病が船内で広がっているという事実もなく、現段階で王位継承戦と五大厄災を結びつけるのは考察の範囲にとどまります。
Q3. なぜ「五大厄災」と呼ばれているの?
五大厄災とは、過去に国家の支援を受けた五つの暗黒大陸遠征が、それぞれ遭遇して既知世界へ持ち帰った脅威の総称です。
人類が確認した暗黒大陸の危険が、全部で五種類しかないという意味ではありません。
暗黒大陸への渡航記録は限られており、調査された範囲も全体のごく一部です。ビヨンド=ネテロは過去に使われたルートではなく、未踏の経路を進もうとしているため、ジンは未知の「六つ目」を持ち帰る可能性にも言及しています。
五大厄災は暗黒大陸に存在する脅威の全容ではなく、人類が生還者を通して存在を認識できた五つにすぎません。
Q4. 暗黒大陸のリターンを持ち帰った例はある?
ビヨンド=ネテロが参加したクカンユ王国の遠征では、錬金植物メタリオンを既知世界へ持ち帰ることに成功しています。
しかし、持ち帰ったメタリオンはその後枯れてしまい、栽培や利用には至りませんでした。遠征隊は帰路で本来のルートを外れたためゾバエ病の被害にも遭い、帰還できたのはビヨンドと発症者を含む6名だけです。
ほかの遠征でも、ニトロ米、三原水、無尽石、万病に効く香草の獲得が目指されましたが、既知世界で利用できる状態で持ち帰ったとは明かされていません。
人類は求めていた資源をほとんど得られないまま、五大厄災とその犠牲者を持ち帰る結果となっています。
Q5. 暗黒大陸探索は何を達成すれば成功なの?
暗黒大陸へ到達し、生きて帰るだけでは成功とはいえません。
ネテロ会長が十二支んに残した課題は、五大厄災のいずれかを攻略し、その厄災と対になるリターンを持ち帰ることでした。
そのためには、目的の資源を発見するだけでなく、遠征隊を帰還させ、持ち帰った資源を既知世界で維持し、新たな厄災を侵入させないところまで達成する必要があります。
メタリオンを持ち帰りながら枯らし、ゾバエ病による犠牲を出した過去の遠征は、その条件を満たしていません。
未知の資源を手に入れることと、その代償を制御すること。両方を成し遂げて初めて、人類は暗黒大陸探索に成功したといえるのです。
五大厄災が映す、人間の弱さと限界
五大厄災は、暗黒大陸で待ち受ける強敵を並べた一覧ではありません。
それぞれの厄災の背後には、未知の資源を求めて遠征し、目的を果たせないまま壊滅的な被害を受けた人類の記録があります。人間が暗黒大陸へ踏み込んだ結果として遭遇し、生還者とともに既知世界へ持ち帰られた脅威だからこそ、「厄災」として認定されました。
五大厄災の恐ろしさは、圧倒的な力を持つことだけではありません。
正体も発生条件も分からない存在を前にしてなお、人間がその先にある利益を諦められないことです。病を治す、寿命を延ばす、エネルギーを得る。暗黒大陸に存在するリターンは、危険を理解していても手を伸ばしたくなるほど魅力的です。
過去の失敗を知りながら、ビヨンド=ネテロをはじめとする新たな挑戦者たちは再び暗黒大陸を目指しています。
そこにあるのは、単純な愚かさだけではありません。未知を知りたいという好奇心も、不可能とされた場所へ到達したいという情熱も、ハンターという存在を形作る根本的な欲求です。危険だから近づかないという判断だけでは、『HUNTER×HUNTER』における挑戦の物語は始まりません。
だからこそ問われるのは、暗黒大陸へ行くべきか、行かないべきかという二者択一ではないのでしょう。
未知を前にしても冷静に観察できるのか。手に負えないと判断したときに引き返せるのか。価値ある資源を発見しても、安全に持ち帰れないなら諦められるのか。必要なのは力だけでなく、知識、判断力、協力、そして欲望を制御する節度です。
ネテロが十二支んに残した課題も、ただ暗黒大陸へ到達することではありませんでした。五大厄災のひとつを攻略し、それと対になるリターンを無事に持ち帰ることまで求めています。
厄災を倒しただけでも、資源を発見しただけでも足りません。犠牲を抑え、危険を既知世界へ広げず、人類にとって利用可能な成果を持ち帰って初めて、過去の遠征を超えたことになります。
現在の王位継承戦では、暗黒大陸へ到達する前から人間同士の欲望と対立が噴き出しています。
五大厄災と直接関係しているわけではありませんが、未知の世界へ挑むはずの人類が、その入口にたどり着く前から内部で争っている構図は象徴的です。暗黒大陸の環境に耐えられるかを試される以前に、人間は自分たちの利害を制御できるのかという問題に直面しています。
五大厄災が映し出すのは、人間の弱さだけではありません。
未知を恐れながらも前へ進もうとする意志と、その挑戦を成功へ変えるために越えなければならない限界です。
過去と同じように、リターンへ届かず厄災だけを持ち帰るのか。それとも未知を理解し、欲望を制御したうえで成果とともに帰還できるのか。
五大厄災は、その答えを人類に突きつける、暗黒大陸最初の関門なのです。
船内で激化する幻影旅団とマフィアの抗争、クラピカの念講習、ロンギが明かすビヨンド=ネテロの秘密を収録。五大厄災の先に続く暗黒大陸遠征と、王位継承戦の現在地を追いたい人におすすめの第39巻です。
価格・在庫・仕様や版の違いなどは変動します。購入の際は各ショップの商品ページで最新情報をご確認ください。
出典:『HUNTER×HUNTER』 冨樫義博/集英社
引用範囲:暗黒大陸編(週刊少年ジャンプ掲載エピソード、および単行本第37巻以降収録分より)
© 冨樫義博/集英社
※本記事の引用画像は、作品内容の考察・批評を目的とした引用であり、著作権はすべて著作者に帰属します。
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