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推しの子(1)|芸能界の光と闇を描く衝撃作

アイドルは、嘘をつく――その一言から幕を開ける“後日譚ファンタジー”。

『推しの子』は、原作・赤坂アカ、作画・横槍メンゴによる漫画で、2020年より週刊ヤングジャンプで連載開始。
「芸能界」を舞台にしながら、転生要素やサスペンスを織り交ぜた異色の作品です。

物語の出発点となるのは、田舎町の産婦人科医・ゴローが、推しているアイドル「星野アイ」と出会う瞬間。
アイは16歳の国民的アイドルでありながら、極秘の妊娠を抱えており、ゴローはその出産に立ち会うことになります。
ところが事件によって命を落としたゴローは、アイの子ども「星野愛久愛海(アクア)」として転生。
やがて双子の妹ルビーと共に成長しながら、芸能界の光と影の世界に飛び込んでいくのです。

一見すると「アイドル転生もの」と思われがちですが、この作品の真のテーマは人間の欲望と嘘が交錯する芸能界のリアル
アイドル活動の裏に潜む計算、ファンとの距離感、そして「推し」と「推される側」の関係性を、衝撃的なストーリー展開で描き出しています。

第1巻の見どころ

第1巻は、とにかく読者の心を掴んで離さない衝撃の連続。

まず強調すべきは、冒頭に掲げられた「アイドルは、嘘をつく」というセリフ。
アイの笑顔の裏にある秘密や矛盾は、ファンなら誰しもドキリとさせられるでしょう。

さらに物語は、ゴローの転生という大胆な展開を経て、一気に異色の物語へ突入します。
彼は「推しの子」として生まれ変わり、双子のルビーとともにアイの新しい家族の一員に。
読者はその時点で「推しを守れる立場」に立ったような不思議な没入感を覚えるのです。

しかし、この幸福な時間は長く続きません。
第1巻後半、アイがある人物に襲撃され命を落とすという、衝撃の事件が描かれます。
推しのアイドルが突然奪われるという展開は、読者に大きな喪失感を与えると同時に、アクアの復讐心を強烈に刻み込みます。

この「光」と「闇」の落差こそが、本作最大の魅力。
キラキラと輝くステージの裏に広がる、ドロドロとした人間模様。
アイの死をきっかけに、物語は芸能界の“リアル”を描き出す方向へシフトしていきます。

芸能界のリアルと作品テーマ

『推しの子』が他の転生ものやアイドル漫画と一線を画す理由は、芸能界のリアルな裏側を正面から描いている点にあります。
ステージ上では完璧に輝いて見えるアイドルも、裏では事務所の意向に縛られ、ファンの期待に応えるために「嘘」を重ねる。
星野アイは「アイドルは嘘をつく」と宣言しながらも、ファンを愛そうと必死に努力していました。
その姿は、虚構と真実の境界線で生きるアイドル像を象徴しています。

また、第1巻で描かれるアイの死は、アクアに「復讐」という新たな動機を与え、物語をよりシリアスに進展させます。
単なる成長譚でも恋愛劇でもなく、芸能界を舞台にした人間ドラマ+サスペンスという構造が、本作の強烈な独自性を生み出しています。

読者と批評の反響

第1巻発売直後から、『推しの子』はSNSを中心に大きな話題を呼びました。
「転生して推しの子になる」という発想自体が斬新であり、さらに“推しを失う”という想定外の展開が衝撃を与えたのです。

特に「アイの死」は、多くの読者にトラウマ級のインパクトを残しました。
しかし同時に、その喪失感が作品全体のテーマ性を引き立て、「ただのアイドル漫画ではない」と高評価につながっています。
批評家からも「芸能界の表と裏を描いたリアリティ」「復讐を軸にした異色の展開」など、ストーリー性と社会性の両立が評価されました。

アニメ化に際しても、原作の第1巻冒頭部分を1時間スペシャルで放送するという異例の構成が取られ、世界的な注目を浴びました。
その選択からも、この第1巻がいかに物語全体の核を成すかが伝わります。

今後の展開と期待

第1巻は「アイの死」で幕を閉じますが、それは悲劇であると同時に、新たな物語の始まりでもあります。
アクアは母を奪った人物への復讐を誓い、芸能界に足を踏み入れる。
ルビーはアイの夢を継ぎ、自らもアイドルを志す。

二人の双子が異なる方向から芸能界と向き合っていく構図は、読者に「希望」と「不穏」の両面を予感させます。
推しの存在とは何か?
芸能界で生き残るために必要なものは何か?
本作は、ファンの誰もが一度は考えたことのある問いを、極限までリアルに描き出していきます。

総まとめ

『推しの子』第1巻は、ただのアイドル漫画にとどまらず、人間ドラマ・社会性・サスペンスを併せ持った衝撃作です。
「推しを守りたい」という普遍的な想いと、「嘘を重ねるアイドルの現実」という矛盾を融合させ、読者を一気に引き込む力を持っています。

第1巻を読み終えたとき、多くの人は胸に重い余韻を抱えるでしょう。
その余韻こそが、本作が描く“芸能界の光と闇”の真実であり、続刊を読み進めずにはいられなくなる理由なのです。

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