
夜更けの孤児院。配膳台に残ったスープ皿の匂いが、乾いた木の床に染み込んでいる。
里子に出されては戻ってくる少年・オルニアは、またひとつ息をのみ込み、天井の節目を数える。
そのとき——耳元に、誰にも見えない気配がさわぐ。導くのは、ひとりぼっちの子どもにしか見えない妖精。
彼を待っていたのは、世の秩序を鼻で笑う異端の魔術師・スヴェルセンだった。
発売情報(まず事実)
- 発売日:2024年4月19日/レーベル:青騎士コミックス(KADOKAWA)
- 判型・頁:B6判・240p/定価:814円(税込)
- ISBN-13:978-4047378032
出典:KADOKAWA公式商品ページ(試し読みあり)。
どんな物語?(1巻範囲・ネタバレ最小)
舞台は王族が弱体化し、宮廷魔術師が台頭する王国。
孤児院で鬱屈を抱えるオルニアは、妖精に導かれて自らの魔力を知り、異端の魔術師スヴェルセンに拾われる。
スヴェルセンは王権と宮廷魔術師の腐敗を憂い、「現体制を倒す」野心を隠さない。そしてオルニアの血筋に目を付け、彼の力を「誰のために使うのか」を問う——。
1巻は、居場所のない少年が、自分の力に“名前”を与えるまでを描く導入だ。
読みたくなる具体:この巻が刺さる5つの要素
1) “見つけられる側”から“選ぶ側”へ
里親に「選ばれる」だけの人生から、自分で選ぶ人生へ。
スヴェルセンは力を与えるだけの師ではない。彼はまず、オルニアに「何に怒り、何を守るか」を決めさせる。
魔法の訓練より先に、誇りの置き場を定める儀式がある。この順番が、1巻の読後を骨太にする。
2) 権力の“におい”がするファンタジー
王族は弱り、宮廷魔術師が幅を利かせる。
魔術の強さは、そのまま政治的な力に直結している。
1巻は、派手な戦闘でごまかさず、世界の重心を丁寧に見せる。権力と倫理、個人の復讐と公共の利益。のちの対立軸が、静かに配置されていく。
3) スヴェルセンの“異端”が大人の読者を掴む
彼は甘い師匠ではない。
「親がいないことが君の力だ」と断じる残酷さと、孤児の尊厳を守る優しさを併せ持つ。
オルニアに向ける言葉は、都合のよい慰めではなく、生きる現実に効く助言だ。
力=生存戦略としての魔術観が、説得力を持って立ち上がる。
4) “妖精”の使い方が巧い
物語の導き手に過ぎない存在かと思いきや、倫理のハリとして機能する。
子どもだけに見える存在は、孤児の目線を象徴している。大人からは見えない痛み・希望・ずるさ。
その声をどう翻訳するかで、オルニアの選び方が変わる。ファンタジーのギミックを、心理の言語に置き換えているのが上手い。
5) “強さ”より“使い道”を問う
1巻は、オルニアのチート性能を誇示するより、「その力で誰を守り、何を壊すのか」を追う。
使い道の倫理を最初から据えるので、先の巻で派手な戦いが来ても、物語が空回りしない土台が整う。
コマと台詞の設計:静かな“重み”で読ませる
画面は過度に豪奢ではないが、視線の誘導が的確。
対話の間、手元のアップ、道具の質感——トーンの置き方で緊張の温度を変える。
セリフも過不足が少ない。説明台詞に頼らず、選択の結果で価値観を語るから、読者が自分の言葉で咀嚼できる。
1巻で分かること/分からないこと
- 分かること:オルニアの魔力の資質/スヴェルセンの企図/王国の力関係(王族の弱体化と宮廷魔術師の台頭)。
- 分からないこと:血筋の全貌/“倒すべき相手”の核心/妖精の出自。ここは次巻以降の駆動力として温存されている。
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いま読む意味(最新動向の一言)
連載はコミックウォーカーで「最終話-1」公開(2025/8/21)まで到達。物語は決着の前夜だ。
だからこそ、1巻の誇りの置き場を押さえてから追いつくと、終盤の選択が何倍も響く。
まとめ:自分の生まれを“力”に変える話
「親がいないことが君の力」。
その言葉は冷たく聞こえるが、本書は孤児であることを免罪符にも悲劇の免許証にもしていない。
力の使い道を早い段階から問う導入は、ファンタジーを倫理の物語へと引き上げる。
1巻は、ただの覚醒譚ではない。“誇りの設計図”だ。 出典・参考情報(クリックで開く)
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- カドコミ(コミックウォーカー):作品ページ(連載情報・あらすじ)
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