
赤毛の冒険者アドル、そしてCD-ROM²が切り拓いた“新時代のRPG体験”
1989年、PCエンジンCD-ROM²の真価を世に知らしめた伝説的RPG──それが『イースI・II』です。日本ファルコムが生み出したアクションRPGの金字塔を、ハドソンがCD-ROM²の力を余すところなく注ぎ込み、IとIIを一本に統合した決定版としてリリースしました。
当時、家庭用ゲームといえばファミコンが全盛期。けれど、ボイス付きのセリフ、アニメーション演出、そして古代祐三らが手がけた音楽をCD音源で鳴らすこの作品は、まさに次世代を予感させる衝撃でした。
赤毛の冒険者アドル=クリスティンが織りなす壮大な物語は、PCゲームファンのみならず、家庭用ゲーム機ユーザーにも鮮烈な印象を残しました。RPGが“読むもの”から“体験するもの”へと変わった瞬間──『イースI・II』はその象徴的存在だったのです。
📘 作品概要・基本情報

『イースI・II』は、1989年12月21日にハドソンからPCエンジンCD-ROM²用として発売されました。元々は日本ファルコムがPC-8801向けに生み出した『イースI』(1987年)と『イースII』(1988年)を一本にまとめた作品ですが、ただの移植ではなく、当時のゲーマーを驚かせる“別物級”の体験へと進化していました。
ジャンルはアクションRPG。赤毛の冒険者アドル=クリスティンを操作し、敵に体当たりして戦う「バンプシステム」は、今見ればシンプルすぎるかもしれません。しかし当時の子どもたちは「剣を振らずにぶつかるだけで戦えるRPG」という新鮮さにワクワクし、敵を斜めから突っ込むか正面から突っ込むか…ちょっとした角度で生死が決まる緊張感に熱中していました。
PCエンジン版の最大の魅力は、CD-ROM²の力をフルに使った豪華な演出です。イベントではキャラクターが声を発し、アニメシーンが挿入される──テレビの前で「ゲームが喋ったぞ!」と家族や友人に叫んだプレイヤーも少なくなかったでしょう。さらに古代祐三らが作曲した名曲群をCD音源で聴けるというのも衝撃的で、BGMをカセットテープに録音して繰り返し聴いた人も多かったといいます。
また、この『I・II』では物語の連続性も丁寧に整えられ、アドルが出会う女神フィーナとレアの存在がより際立ちました。プレイヤーはゲームを進める中で「ただの冒険者」から「伝説に立ち会う者」へと感覚を変えていき、自然とアドルの旅路に心を重ねていったのです。
こうして『イースI・II』は、単なるリメイクを超えて「RPGはここまで表現できるのか」とプレイヤーを震わせた一本となり、PCエンジンを代表する傑作として語り継がれることになりました。
🎧 音楽・演出

『イースI・II』を語るうえで外せないのが、やはりその音楽の衝撃です。オリジナル版から名曲ぞろいだったサウンドを、PCエンジンではCD音源で再アレンジ。古代祐三らによる楽曲が澄み渡るような音質で流れた瞬間、プレイヤーは「これはもうゲーム音楽じゃなくて生演奏だ」と感じたほどでした。
オープニングで流れる「Feena」の荘厳さに、当時のファンは鳥肌を立てたといいます。今でも人気の高いこの曲を、当時はカセットテープに録音して通学時に繰り返し聴いていた──そんなエピソードを語る人も少なくありません。
演出面では、CD-ROM²ならではのアニメーションとフルボイスが大きな話題となりました。イベントシーンでキャラクターが動き、声優の演技が重なる。それまで「テキストを読む」ことが当たり前だったRPGが、まるでアニメ作品の中を旅しているかのような感覚へと変わったのです。
「ゲームが喋ったぞ!」──この驚きの声は、『天外魔境ZIRIA』でも聞かれましたが、『イースI・II』はそこに美麗な音楽とアニメ演出が加わり、より強烈にプレイヤーの心をつかみました。小さなテレビの前で、家族や友人と一緒にそのシーンを見て、思わず歓声を上げた人も多かったはずです。
こうした音と映像の総合演出は、単なる移植ではなく「CD-ROM²の未来を示す体験」として、当時のゲームファンに深く刻まれました。
🎮 ゲームシステム解説

『イースI・II』の戦闘は、今見れば驚くほどシンプルです。ボタンを押して剣を振るのではなく、敵に体当たりするだけ──これが「バンプシステム」と呼ばれる独特の戦闘方式です。正面から突っ込むとダメージを受けやすく、ほんの少しずらして斜めから体を当てると優位に立てる。この“半歩の駆け引き”が、意外にも奥深い緊張感を生み出していました。
当時のプレイヤーは、最初は「え、ぶつかるだけでいいの?」と戸惑いつつも、すぐにその妙味に夢中になります。強敵の周りを回り込みながらスッと斜めに差し込む──その瞬間に敵を倒せたときの快感は、シンプルながらクセになるものでした。手汗をかきながらコントローラーを握りしめた記憶を持つ人も多いでしょう。
レベルアップや装備の強化も重要な要素で、数値の積み重ねが着実にアドルの成長を実感させてくれます。とはいえ単純な力押しでは進めないバランスで、攻略には位置取りや勇気ある一歩が欠かせませんでした。

また、シリーズの魅力として外せないのが探索と謎解き要素。神殿の仕掛けや洞窟の隠し通路、NPCとの会話で進行が開けるなど、単なるアクションではないRPGらしい知的遊びも盛り込まれています。当時のプレイヤーにとっては「テキストを読むこと」すらワクワクする冒険の一部でした。
PCエンジン版『I・II』では、このゲームシステムにCD-ROM²の表現力が加わり、緊張感と臨場感が格段に増しました。敵に当たる音、剣撃の効果音、イベントシーンの合間に流れるボイス──それらが戦闘や探索をよりリアルに感じさせ、単なる“移植”ではなく“新しい体験”へと昇華していたのです。
シンプルだからこそ奥深い。『イースI・II』のゲームシステムは、複雑化しがちなRPGの中で異彩を放ち、今なお語り継がれる独自性を持っていました。
🧑 キャラクター・物語

『イースI・II』の物語は、赤毛の冒険者アドル=クリスティンが海辺に流れ着くところから始まります。小さな村に助けられた彼が、古代王国イースの謎に迫り、やがて伝説の女神に出会う──その流れは、まさに“RPGのお手本”とも言える王道ストーリーでした。
特筆すべきは、アドルの旅路を彩るキャラクターたちです。『I』で出会う女神フィーナは、儚げでありながら物語の核心に関わる存在。多くのプレイヤーが彼女の声を聞いた瞬間、「ああ、もうこれは普通のRPGじゃない」と感じたといいます。そして『II』では双子の女神としてレアが登場し、二人の運命とイースの歴史が重なり合う展開へ。これまで断片的だった物語が、一つの大きな叙事詩としてつながっていきました。
村人や仲間となるキャラクターたちも、PCエンジン版ではボイスによって生き生きと描かれました。プレイヤーはテキストを読むだけでなく、声優の演技からキャラクターの感情を感じ取ることができたのです。小さな台詞でも妙に印象に残り、「あのキャラの声をもう一度聴きたい」と思わせる力がありました。
アドル自身はシリーズを通して“寡黙な主人公”として描かれますが、だからこそプレイヤーが自分を投影しやすく、女神との出会いや人々との交流を自分の物語のように感じられました。当時、エンディングで流れる歌を聴きながら「アドルと一緒に旅を終えた」と胸が熱くなったプレイヤーも少なくなかったでしょう。
物語のスケールは大きく、しかしキャラクターの心情は繊細。『イースI・II』は、当時のRPGにおいて珍しい“キャラクターと物語で泣ける体験”を提示した作品でした。
📅 発売当時の時代背景

1989年末に登場した『イースI・II』は、まさにPCエンジンCD-ROM²の可能性を証明する一本でした。
当時の家庭用ゲーム市場は依然としてファミコンが圧倒的シェアを誇り、スーパーファミコンの登場を控えていた時期。グラフィックも音楽もまだ制約の多いROMカートリッジが主流で、RPGといえばテキスト主体の物語進行が当たり前でした。そんな中で、フルボイスとアニメーション、そしてCD音源による壮大なBGMを携えた『イースI・II』は、まるで“未来からやって来たRPG”のように見えたのです。
とくにPCエンジン本体と同時期に発売された「CD-ROM²」規格は、一般家庭にとってはまだ珍しいものでした。友達の家で初めて『イースI・II』を体験し、「テレビの中でゲームキャラが喋ってる!」と感嘆した思い出を語る人も少なくありません。当時のプレイヤーは、それが単なる進化ではなく「ゲームというメディアの形そのものが変わる」瞬間に立ち会っていると感じていたのです。
また、オリジナルのPC版『イース』や『イースII』を経験していたパソコンユーザーにとっても、PCエンジン版は驚きの連続でした。モノクロに近いグラフィックや簡素な効果音で遊んでいた作品が、まるでアニメ映画のような演出と共に蘇ったのですから、当時の感動は計り知れません。
ゲーム雑誌でも特集が組まれ、「これからはCD-ROMがゲームの主役になる」といった論調が目立ちました。『天外魔境ZIRIA』と並び、PCエンジンの未来を象徴するタイトルとして取り上げられたのは、この時代背景あってこそでした。
つまり『イースI・II』は、単なる人気RPGの移植ではなく、「新しいハードがもたらす夢」を具現化した存在だったのです。
📈 当時の評価・雑誌レビュー

『イースI・II』が発売された当時、ゲーム雑誌や専門誌はこぞって高い評価を与えました。ファミコン世代の読者にとっては未知だった「CD-ROM²」という響きとともに、ボイス付きの演出やアニメーション、そして重厚な音楽は強烈なインパクトを放っていたのです。
「月刊PCエンジン」や「ファミコン通信」では、「これまでのRPGの常識を覆した作品」として大きく取り上げられました。レビュー記事には「ゲームキャラクターが声を持つことで、物語がこんなに生き生きと感じられるとは思わなかった」「音楽だけでもソフトを買う価値がある」といった絶賛の声が並び、グラフィックやシナリオへの評価も高水準でした。
一方で、ユーザーの感想は純粋な感動だけではなく、「演出が豪華すぎてゲーム部分が単純に思える」という指摘もありました。しかしその意見も、裏を返せばそれだけ演出の存在感が際立っていた証拠。むしろ議論を巻き起こすほどに、この作品がプレイヤーに強烈な印象を残したといえます。
当時のプレイヤーの多くは、エンディングの歌や女神フィーナの声を聞きながら「ゲームで泣けるなんて思わなかった」と語っています。雑誌レビューだけでなく、口コミや友人同士の会話でも“伝説級の体験”として共有されたことは間違いありません。
総じて『イースI・II』は、PCエンジンを象徴する傑作であると同時に、「RPGにおける表現力の革命」としてメディアとユーザーの双方から高く評価された作品でした。
🧩 裏話・豆知識・トリビア
『イースI・II』には、プレイヤーをニヤリとさせる小ネタや裏話がいくつも存在します。
例えば、PCエンジン版ではセーブデータの名前に特定の文字を入れると効果音が鳴る仕掛けがあり、「開発者の遊び心だ」と当時のファンの間で話題になりました。また、ゲーム中の一部NPCに話しかけ続けるとユーモラスな反応が返ってくるなど、小さな発見が“友達同士の情報交換”のネタになっていたのも印象的です。
音楽面の裏話としては、サウンドトラックが単独で販売され、ゲームを遊ばない人でも「CD音楽作品」として楽しめたことが挙げられます。当時のゲーム音楽はまだ録音環境が限られていましたが、『イースI・II』の楽曲は“聴くために買う価値がある”と評判になり、ゲーム音楽の市民権拡大にも一役買いました。
また、アニメーション演出やボイス収録にあたっては、容量との戦いが続いていたといいます。限られたディスク容量にどこまで詰め込めるか──その工夫の結果が、あの凝縮された名場面につながったわけです。
こうした小さなトリビアや裏話は、『イースI・II』が単なるゲームではなく“文化的体験”として語られる理由のひとつでしょう。
🌐 メディア展開・その後

『イースI・II』はPCエンジンの代表作として終わらず、その後のゲーム業界やメディアにも大きな影響を残しました。
まずゲームとしては、PCエンジン版の成功を受けて、他ハードでのリメイクや移植が続きます。PC版を皮切りに、スーパーファミコン、Windows、さらにPlayStationやスマートフォンでも再構築され、時代ごとに新しい世代へと受け継がれていきました。そのたびにグラフィックや演出が刷新されながらも、「アドルが女神と出会う物語」という根幹は守られ続けています。近年ではPCエンジンminiに収録されたことでも話題となりました。
メディア展開では、OVA(オリジナルアニメ)として『イース 天空の神殿〜アドル・クリスティンの冒険』が制作され、ゲームの枠を超えてアニメファンにも広まりました。また、サウンドトラックはゲーム音楽としては異例の人気を誇り、クラシック調のアレンジやライブ演奏も行われるなど、音楽作品としての評価も確立。まさに「聴くゲーム」としての側面を持つ稀有な存在となりました。
そしてシリーズ全体としても、『イースI・II』は“起点”として語り継がれています。後の『イースIII』や『イースVI』『イースVIII』といった作品まで、アドルの旅は長く続きましたが、その出発点である女神フィーナとレアとの物語は、今なおシリーズファンの心に特別な位置を占めています。
つまり『イースI・II』は単なる一作品ではなく、「シリーズの原点にして、RPG文化を広げた名刺代わりの一作」として、今も輝き続けているのです。
🎯 総まとめ

『イースI・II』は、1989年のPCエンジンCD-ROM²黎明期に登場し、ゲームの在り方を変えた歴史的な一本でした。
シンプルながら奥深い「バンプシステム」、アドルの成長を描く王道の冒険譚、そして女神フィーナとレアとの出会い。物語性の強化とキャラクター描写の厚みは、RPGが“人を感動させる体験”へと進化した瞬間を刻みました。
さらに、CD音源による音楽の圧倒的な臨場感、アニメーションとフルボイスによる演出は、プレイヤーに「ゲームがここまで来たか」という驚きを与えました。友人と一緒に小さなテレビを囲んで、キャラクターが喋る場面に歓声を上げた光景は、今も多くのファンの記憶に焼き付いているでしょう。
単なる移植を超え、ひとつの“総合芸術”としてRPGを押し上げた『イースI・II』。それはCD-ROM²の未来を切り開いただけでなく、シリーズ30年以上の歴史を紡ぐ原点でもありました。
イースの音楽をカセットに録音して通学で聴いてた、って人が多いんだよ!ゲーム音楽が“文化”になった証拠だね♪