つぶログ深掘り レトロゲーム

ゲーム史上「絶対に倒せない敵」を倒すとどうなる?開発者の想定外と衝撃の結末

目次
  1. ゲーム史上「倒せない敵」を倒すとどうなる?開発者の想定外と衝撃の結末
  2. 先に結論|「倒せない敵」を倒すとどうなる?実際に起きた7つの結末
  3. 『EverQuest』約200人が倒した伝説の怪物――しかし報酬はなかった
  4. 『Ultima III』不死身の王様を大砲で撃ったら、本当に死んだ
  5. 『Ultima Online』開発者本人のキャラクターが殺された事件
  6. 『ドラゴンクエストIV』第4章キングレオ――勝っても終わらない戦闘
  7. 『クロノ・トリガー』海底神殿のラヴォスを倒すと、開発スタッフに会える
  8. 『Demon's Souls』負けるはずのVanguardを倒しても、最後には死ぬ
  9. 『デビル メイ クライ 5』プロローグでUrizenを倒すと、ゲームが終わってしまう
  10. 『FINAL FANTASY XI』Absolute Virtue――想定外だったのは倒すことではなく戦い方
  11. 「倒せない敵」と「倒される予定のない敵」は違う
  12. まとめ|本当に驚くべきなのは、倒した瞬間にゲームがどう反応したか

ゲーム史上「倒せない敵」を倒すとどうなる?開発者の想定外と衝撃の結末

倒せないはずの巨大ボスに挑む3人の冒険者と、敵が崩壊する瞬間を描いたゲーム史のイラスト

何時間も戦い続け、誰も倒せないと思っていた怪物をついに撃破した。ところが戦利品は何もない。特別なメッセージさえ出てこない。

あるゲームでは、不死身のはずの王様を大砲で撃つと、本当に死んでしまった。別のゲームでは、どう考えても負けるように作られた敵を倒したところ、何事もなかったかのように同じ戦闘が始まったという。

ゲームには、プレイヤーが勝つことを前提としていない戦いがある。

圧倒的な強さで敗北を強いるボス。シナリオ上、負けなければ先へ進めない戦闘。そもそも倒されることを想定されていないキャラクター。

では、そんな相手を本当に倒してしまったら、ゲームはどうなるのだろうか。

実際の記録を調べると、何も起きない、再戦になる、専用エンディングが始まるなど、驚くほど違う結末が見つかった。さらに、開発者自身が想定外だったと認めた事件もある。

今回は1980年代から2010年代までの実例を取り上げ、倒した瞬間に何が起こったのか、開発者はどこまで想定していたのかを追っていく。

※本記事には、各作品のボス戦や隠しエンディングに関するネタバレが含まれます。

先に結論|「倒せない敵」を倒すとどうなる?実際に起きた7つの結末

最初に答えを整理しておこう。

「倒せない敵」と呼ばれる相手でも、ゲーム内部の仕組みはさまざまだ。HPが極端に高いだけの場合もあれば、毎ターン全回復する敵、通常攻撃では死亡しないキャラクター、勝ってもストーリーが敗北扱いで進む戦闘もある。

今回確認した代表例をまとめると、次のようになる。

作品対象倒した結果
EverQuestKerafyrm戦利品なし。運営側は討伐を祝福
Ultima IIILord British無敵のはずの王様が死亡
Ultima OnlineLord British開発者本人の操作キャラが死亡
ドラゴンクエストIV第4章キングレオFC版では再戦になるとの記録。リメイク版は敗北扱い
クロノ・トリガー海底神殿のラヴォス開発スタッフに会える隠しエンディング
Demon's SoulsVanguard追加エリアへ進むが、別のイベントで死亡
デビル メイ クライ 5Urizen序盤でシークレットエンディング

ここで大切なのは、「倒すのが難しい」「普通は負ける」「ゲーム内で倒せない」「開発者が撃破を想定していない」は、同じ意味ではないということだ。

最初から勝利後の演出が用意されているなら、それは開発側の想定内。一方、想定外の方法で無敵処理を突破された例もある。

その違いを踏まえながら、まずは約200人ものプレイヤーが挑んだ、オンラインRPG史に残る事件から見ていこう。

『EverQuest』約200人が倒した伝説の怪物――しかし報酬はなかった

2003年11月17日。オンラインRPG『EverQuest』のRallos Zekサーバーで、歴史的な出来事が起きた。

プレイヤーたちが、圧倒的な強さで知られたドラゴン「Kerafyrm」を撃破したのだ。

Kerafyrmは「The Sleeper(眠れる者)」とも呼ばれる存在。拡張パック『The Scars of Velious』で登場した、通常のボスとは一線を画す怪物だった。

なぜ誰も倒せないと思っていたのか

Kerafyrmは、単に攻撃力が高いだけの敵ではない。

即死級の能力を持ち、通常の攻撃を続けても容易には倒れない。そもそも眠っているKerafyrmを目覚めさせること自体が、サーバー内の環境を変えてしまう特別な出来事だった。

Kerafyrmが眠る「Sleeper's Tomb」には守護者が存在し、最後の守護者を倒してKerafyrmを目覚めさせると、従来の戦利品を得られる環境が変化する。プレイヤー間では、いつ目覚めさせるかも大きな問題だった。

そのうえ、目覚めたKerafyrmは、簡単に討伐できるような相手ではない。

ところが、Rallos Zekの有力ギルドであるAscending Dawn、Wudan、Magus Imperialis Magicusなどのプレイヤーたちは、実際に討伐へ動き始めた。

参加者は約200人規模と伝えられている。

倒された仲間を復活させ、再び戦線へ戻す。その間もほかの仲間は攻撃を続ける。高い戦闘能力を持つプレイヤーを大量に集め、長時間にわたって攻撃を積み重ねる作戦だった。

残りHP約26%で突然消えた――そして2日後に決着

2003年11月15日の挑戦では、約3時間15分の戦闘によってKerafyrmのHPを残り約26%まで削ったと記録されている。

しかし、その時点でKerafyrmが突然消失した。

ここから話は少々ややこしくなる。

運営側が討伐を妨害するために消したのではないかという疑念が広がったのだ。

後年の参加者回想などには、Kerafyrmが本来想定していない形で戦われていたため、運営側が戦闘を停止したという説明が残っている。一方で、プレイヤー側にはその説明を疑問視する声もあった。

本当に運営が「倒されては困る」と考えたのか、それとも想定外の挙動や不具合への対応だったのか。現在確認できる資料だけでは断定できない。

そして11月17日、再び行われた大規模戦闘でKerafyrmはついに倒された。

2003年の出来事を振り返った参加者の投稿は、Project 1999のフォーラムにも残っている。

倒したら何が起きた?――「何も落とさなかった」という衝撃

通常、強力なボスを倒せば、それに見合った戦利品を期待する。

数時間かけて大人数で戦ったなら、なおさらだ。

ところがKerafyrmからは、そうした戦利品が得られなかった。

2003年11月17~18日のUsenetの当時の投稿には、死体に戦利品がなかったという報告が残っている。さらに、専用の死亡メッセージも追加の設定説明もなかったとする投稿まである。

長時間戦い、何度も倒され、それでも復活して攻撃を続けた。

その果てに怪物は死んだ。しかし、期待された報酬は用意されていなかった。

これが、Kerafyrmはそもそも討伐を前提としていなかったのではないか、という推測につながっている。

ただし、戦利品がなかったという事実だけで、開発者が撃破をまったく想定していなかったとは証明できない。

また、「倒してもゲームや運営は完全に無反応だった」という話でもない。当時の記録には、ゲームマスターによる告知や、公式側が討伐を祝福したことも残っている。

ゲーム内で専用の戦利品が得られなかったことと、運営がプレイヤーの功績を認めたことは別の出来事なのだ。

なお、Rallos Zekでの討伐は「世界初」と紹介されることがあるが、別サーバーでの先行撃破を示す記録もあるため、本記事では世界初とは断定しない。

Kerafyrmの正確なHPについても、資料ごとの推定値には大きな差がある。ここでは、特定の数値を確定情報として扱わない。

確かなのは、到底倒せないと思われていた存在に多数のプレイヤーが挑戦し、実際に撃破したこと。そして、ゲーム内の報酬以上に、その出来事自体が語り継がれる伝説になったことだ。

『Ultima III』不死身の王様を大砲で撃ったら、本当に死んだ

もっと古い時代にも、開発者の想定を破った有名な事件がある。

1983年の『Ultima III: Exodus』だ。

登場するのは、シリーズを象徴する人物「Lord British」。厳密には敵ボスではなく、プレイヤーが出会う王様のような存在である。

そして、このキャラクターは開発者Richard Garriott自身を投影した存在でもあった。

普通の攻撃が効かなくても、大砲は別だった

Garriottは2013年3月30日に公開されたStraticsのインタビューで、Lord Britishを殺せないようにした経緯を詳しく説明している。

『Ultima III』では、通常の攻撃でLord Britishが死亡しないようにしていた。

しかしプレイヤーは、別の方法を発見してしまう。

まずLord Britishを攻撃し、怒らせる。すると彼はこちらを追いかけてくる。

そこでプレイヤーは城の外へ逃げ、城の周囲にある堀へ向かった。そして船に乗り、船の大砲をLord Britishへ撃ち込んだのである。

驚くべきことに、これでLord Britishは死んでしまった。

なぜそんなことが起きたのか。

Garriott本人の説明によると、大砲は通常の戦闘のようにHPを少しずつ減らす仕組みではなかった。命中した相手を50%の確率で死亡させるという、別の処理が使われていたのだ。

つまり、Lord Britishを守っていた通常の戦闘処理を、大砲の死亡判定がすり抜けてしまった。

攻撃力が足りなかったわけでも、レベルが低かったわけでもない。

不死身を実現した仕組みと、大砲の仕組みが別々に作られていた。その隙間をプレイヤーに突かれたのである。

この話は、Richard Garriott本人のインタビューで確認できる。単なる都市伝説ではなく、開発者自身が認めた想定外の撃破方法だ。

その後、開発者は「殺される方法」を仕込むようになった

さらに面白いのは、この事件が一度きりではなかったことだ。

Garriottは後の作品でも、Lord Britishを殺せないようにする仕組みを考えていた。

ところがプレイヤーは、眠っているキャラクターの扱いや特殊な武器など、別の抜け道を見つけていった。

Garriottの説明によると、後の作品では、立っているキャラクターと寝ているキャラクターが内部的に別の扱いになっていたことを利用される例もあったという。

そして最後には開発側も発想を変え、Lord Britishを殺せる方法を、意図的なイースターエッグとして用意するようになった。

当初は予想外の不具合だったものが、いつしかシリーズの伝統的な遊びへ変わっていったのである。

昔のゲームで「裏技」と呼ばれていたものには、開発者が意図的に仕込んだ秘密もあれば、プレイヤーが偶然発見した仕様の穴もある。つぶログの「裏技」は誰が最初に広めた?メーカーが隠したものを雑誌が暴く文化は、どう始まったのかでも、この違いを含めた裏技文化の成り立ちを追っている。

『Ultima III』でLord Britishを倒した後の復活条件や進行への影響については、資料の確認が十分ではないため断定しない。

この事例で重要なのは、開発者本人が「殺せないようにしたつもりだった」と認め、それをプレイヤーが思いがけない方法で突破したことだ。

『Ultima Online』開発者本人のキャラクターが殺された事件

それから14年後の1997年。

今度はオンラインゲームで、さらに衝撃的な出来事が起きた。

『Ultima Online』のベータテスト中、Richard Garriott本人が操作していたLord Britishが、プレイヤーの行動によって死亡したのである。

有名な「Lord British暗殺事件」だ。

不死身だと思って火の中へ戻ったら、死んだ

Garriottは2017年6月30日に公開されたインタビューで、当時の状況を振り返っている。

ベータテストの終盤、Garriottたちはプレイヤーへの感謝を伝えるため、各地を訪問するイベントを行っていた。

最後の訪問先はTrinsic。

Lord Britishとして現れたGarriottと、Starr Longがプレイヤーたちの前に立っていた。

すると、プレイヤーのRainzがFire Fieldという魔法を使用した。

炎に包まれたGarriottは一度その場を離れたものの、自分がLord Britishであることを思い出したという。

Lord Britishは不死身のはず。だから炎の中へ戻っても問題ない。

そう考えて火の中へ戻ったところ、キャラクターは死亡してしまった。

当時は、Lord Britishを不死身にする設定が有効になっていなかった。

Garriottは2017年の回想で、以前のデータ初期化後に無敵設定を戻し忘れていたと説明している。ただし、当時にはサーバーの問題に関連付ける説明もあり、原因の細部については資料によって差がある。

少なくとも、無敵だと思っていた本人が、無敵ではなかったことは確かだ。

死亡した開発者が、ゲーム内で会話できなくなった

ここから先が『Ultima Online』らしい。

Lord Britishとして死亡したGarriottは、ゲーム内の死亡システムに従って幽霊になった。

幽霊は、通常の生存キャラクターと同じようには会話できない。

Garriottによると、ゲーム内で話しかけても意味の通じない声しか出せなくなり、ほかのスタッフと正常に連絡できなくなってしまった。

開発スタッフは、ゲーム内でLord Britishを蘇生させようとする。

一方、現場では犯人を特定できず、スタッフがモンスターを召喚したり、プレイヤーを攻撃したりする混乱まで起きたという。

これらは、2017年公開のGarriott本人の回想に残る話だ。

開発者が操作する特別なキャラクターであっても、ゲーム内では死亡のルールが適用される。そして、いざ死んでしまうと開発者自身がそのルールに振り回される。

まるで作り話のようだが、オンラインゲームならではの出来事だった。

「王様を殺したからBANされた」は本当なのか

この事件には、もう一つ有名な話がある。

Fire Fieldを使用したRainzが、Lord Britishを殺したことで運営からBANされたというものだ。

しかし、これは正確ではない。

1997年8月には、Originが公開した説明文が当時のUsenetへ転載されている。

その声明では、RainzがベータテストからBANされた理由について、Lord Britishを殺したことではないと明確に説明していた。

Origin側の説明によると、Rainzはそれ以前から別の不具合利用などを理由に調査対象となっており、暗殺事件によってアカウントを特定する機会が生まれたという。

さらに、Lord British殺害そのものについては、成功したことを称賛する趣旨の記述もある。

この件は、当時の声明を転載した1997年のUsenet記録で確認できる。

RainzがBANされたことと、Lord Britishを殺したことがBANの理由だったかどうかは別問題だった。

この事件の面白さは、開発者本人のキャラクターが殺されたことだけではない。予想外の出来事に運営が混乱し、その後の公式説明まで含めてゲーム史に残る事件となったところにある。

『ドラゴンクエストIV』第4章キングレオ――勝っても終わらない戦闘

海外のオンラインゲームだけの話ではない。

日本のRPGにも、「倒せないはずの敵」を無理やり倒すと不可解な結果になる例がある。

1990年に発売されたファミコン版『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』。第4章「モンバーバラの姉妹」に登場するキングレオだ。

なぜ第4章では倒せないようになっているのか

マーニャとミネアたちは、キングレオ城でバルザックを倒した後、キングレオとの戦闘に突入する。

しかし、キングレオは圧倒的に強い。

普通に進めていれば、ここで敗北する。そして姉妹たちが捕らえられることで物語が次へ進む。

いわゆる「負けイベント」だ。

FC版のキングレオは、攻略・解析資料によるとHP999という設定に加え、毎ターンHP999回復する特殊な仕様になっている。

通常の第4章で用意できる攻撃手段では、この回復を突破することができない。

単にレベルが足りないという問題ではなく、負けることを前提とした戦闘になっている。

それでも無理やり倒すと、もう一度キングレオ戦が始まる

では、ゲーム内部の条件を変えるなどして、キングレオを倒したらどうなるのか。

FC版については、倒しても再びキングレオとの戦闘が始まり、こちらが敗北するまで先へ進まないという記録が残っている。

これは近年の攻略Wikiだけにある話ではない。

2002年11月4日の『ドラクエIV』攻略掲示板の過去ログにも、改造などで倒すと再び戦闘になり、こちらが負けるまで物語が進まないという説明がある。

後年のDragon Quest Wikiにも同じ趣旨の記載があり、複数の攻略資料で挙動が一致している。

ただし、これらは開発元による公式説明ではない。直接の実機検証によって、あらゆる条件で同じ結果になると証明されたわけでもない。

そのため厳密には、「特殊な勝利処理へ到達すると再戦になると、長年の攻略資料で報告されている」という扱いになる。

それでも、この結果は興味深い。

勝利しても、姉妹がキングレオを倒して先へ進む物語は始まらない。

通常のシナリオは、キングレオに負けることを前提としているからだ。

2022年には特殊なリセット技術を使った撃破例も公開された

さらに2022年11月19日には、YouTubeチャンネル「ライラのレトロゲームCH」が、FC版の第4章キングレオを撃破する検証動画を公開している。

ここで使われているのは「サブフレームリセット」という特殊な裏技だ。

タイミングを厳密に合わせたリセット操作によって、通常とは異なるゲーム内部の状態を作り出し、特殊な条件で撃破を目指している。

重要なのは、通常プレイでマーニャとミネアを鍛えれば勝てるようになった、という話ではないことだ。

また、動画の説明欄では2019年の先行研究にも触れている。「発売32年後に世界で初めて倒し方が発見された」という紹介も正確ではない。

実際にどのような操作で特殊な撃破が成立したのか、投稿者の検証映像を見てみよう。

映像:ライラのレトロゲームCH/2022年公開。サブフレームリセットを利用した特殊な撃破検証。YouTubeで直接見る

なお、この動画による特殊撃破と、2002年から語られている改造による再戦報告は、同一条件の検証ではない。両者を混同して「動画で再戦ループまで完全に証明された」とは扱わない。

リメイク版では倒せる――しかし物語では負けたことになる

さらに面白いのは、リメイク版との違いだ。

PlayStation版やニンテンドーDS版では、FC版とは能力や回復処理が異なるため、非常に厳しい条件ながら第4章キングレオを倒すことが可能になっている。

必要な戦力を整え、会心の一撃などを利用して大ダメージを与えれば、勝利できる余地がある。

しかし、実際にキングレオを倒しても、その後の物語は通常の敗北イベントと同じように進む。

勝ったはずの姉妹たちは、結局捕らえられる。

ゲームの戦闘結果と、シナリオ上の結果が一致しないのだ。

この違いを整理すると、次のようになる。

バージョン第4章キングレオの撃破勝利後の扱い
FC版通常プレイでは撃破できない。特殊な操作・状態変更による撃破例あり再戦になると攻略資料で報告
PS版極端な条件で撃破可能敗北イベントと同じように進行
DS版高レベルなどの条件で撃破可能敗北イベントと同じように進行

なお、スマートフォン版についてはリメイク系の仕様を受け継いでいるものの、今回独立した撃破後検証を十分に確認できなかったため、表では扱っていない。

キングレオの例は、ゲームの中で勝利することと、シナリオで勝ったことになることが必ずしも同じではないと教えてくれる。

『クロノ・トリガー』海底神殿のラヴォスを倒すと、開発スタッフに会える

ここまでの事例とは違い、開発側が「万が一、勝ってしまったら」という展開まで用意していた作品もある。

その代表が、1995年発売の『クロノ・トリガー』だ。

海底神殿で遭遇するラヴォスは、通常のストーリーでは敗北することを前提とした強敵である。

しかも、終盤で通常戦うラヴォスの外殻よりも強力に設定されている。

強烈な全体攻撃でパーティーを壊滅させるため、初回プレイで普通に進めている場合は、まず勝てない。

海底神殿でラヴォスに勝つと、特別なエンディングへ

ところが、ここでラヴォスを倒すこと自体は可能だ。

極端なレベル上げや装備・戦術の準備、あるいは「強くてニューゲーム」を活用すれば、海底神殿のラヴォスにも勝利できる。

そして勝った場合は、通常のストーリーではなく、特殊なエンディング「ドリームプロジェクト」へ到達する。

そこでプレイヤーを待っているのは、開発スタッフたちだ。

時の最果てを模した空間で、ゲームを制作した人々に会えるという、非常にユニークな内容になっている。

このエンディングには別の到達方法もある。「強くてニューゲーム」の序盤からラヴォスに挑む方法だ。

つまり、海底神殿での勝利は「想定外のバグ」ではない。

普通は負ける場面で勝利するプレイヤーのために、最初から特別な結末が用意されていた。

ラヴォス撃破とエンディングの関係は、Chrono Triggerの攻略資料などでも確認できる。

『クロノ・トリガー』が「ドリームプロジェクト」と呼ばれた背景や、坂口博信・堀井雄二・鳥山明らが関わった開発体制については、つぶログの『クロノ・トリガー』開発秘話とドリームプロジェクトの全貌でも詳しく紹介している。

普通なら見られない展開を、特別なご褒美として用意する。

キングレオとは対照的な、負けイベントのもう一つの形である。

『Demon's Souls』負けるはずのVanguardを倒しても、最後には死ぬ

2009年の『Demon's Souls』にも、プレイヤーの勝利を見越した仕掛けがある。

ゲーム序盤のチュートリアルで待ち構えるVanguardだ。

初期状態のプレイヤーにとっては非常に強く、多くの人がここで死亡する。

しかし、Vanguardは無敵ではない。

動きを覚え、攻撃を避けながら戦えば、チュートリアルの段階で撃破できる。

では、勝つとどうなるのか。

通常ならそのまま楔の神殿へ送られるところ、Vanguardを倒したプレイヤーは追加エリアへ進める。

そこにはアイテムが用意されており、Vanguardを倒したことへの報酬も得られる。

ところが、さらに奥へ進むとDragon Godが登場する。

ここでプレイヤーはイベントによって死亡し、結局は楔の神殿へ送られることになる。

Vanguardに勝っても、チュートリアルの最後には死亡する。

しかし、何も得られないわけではない。苦労してVanguardを倒したプレイヤーには、追加の報酬と特別な場面が用意されている。

この仕様は、PS3版のDemon's Soulsチュートリアル攻略資料でも確認できる。

開発者が勝利を想定していなかったのではなく、勝つプレイヤーが現れることを見越したうえで、最終的には予定された物語へ戻す設計だったわけだ。

『デビル メイ クライ 5』プロローグでUrizenを倒すと、ゲームが終わってしまう

2019年発売の『デビル メイ クライ 5』では、さらに大胆な仕掛けが用意された。

プロローグで登場するUrizenとの戦闘だ。

主人公のネロは、圧倒的な力を持つUrizenに挑む。

普通に進めれば敗北し、その結果を受けて物語が本格的に始まる。

しかし、Urizenはこの段階でも撃破可能になっている。

倒すとシークレットエンディングが始まる

プロローグでUrizenを倒した場合、そのまま物語が終わり、シークレットエンディングへ進む。

本来はここから長い戦いが始まるはずなのに、最初の段階で大きな脅威を退けてしまった。

その結果、通常のストーリーを経由せずに結末へ到達するという、少々冗談めいた演出になっている。

しかも、この勝利には「Well I'll Be Damned」という専用のトロフィー・実績が用意されている。

プロローグだけでなく、Mission 08での特定の撃破もこの実績の対象となる。

発売直後の2019年3月には、GameSpotがこのシークレットエンディングを紹介していた。

ゲーム内に専用の結末があり、実績まで設定されている。

これは、開発側がその勝利を明確に想定していた証拠だ。

実際にプロローグのUrizenを倒すと何が起きるのか。以下のプレイ映像では、通常なら敗北する戦闘に勝利し、特殊な結末へ進む様子を確認できる。

映像:2019年公開のゲームプレイ映像。プロローグでのUrizen撃破とシークレットエンディングを収録。YouTubeで直接見る

プレイヤーから見れば「本来倒せないはずの敵を倒した」ように感じる。しかし実際には、開発者が用意した秘密へ到達していたのである。

現在ならNintendo Switch 2版でも挑戦できる

ちなみに『デビル メイ クライ 5』は、2026年にNintendo Switch 2向け『デビル メイ クライ 5 デビルハンターエディション』も発売された。

カプコンの公式サポートによると、基本的なシナリオやゲームシステムは従来版と同じで、プレイアブルキャラクターのバージルなどの追加コンテンツを収録している。

今回の「本来は負ける相手に勝ったらどうなるのか」という実験を、自分でも試したい人には手に取りやすい選択肢だ。

デビル メイ クライ 5 デビルハンターエディション(Nintendo Switch 2)

プロローグのUrizen戦で、通常の敗北とは異なる結末に挑戦できる『デビル メイ クライ 5』のSwitch 2版。バージルなどの追加コンテンツも収録しています。パッケージ版はキーカード方式で、初回ダウンロードにはインターネット接続と32GB以上の空き容量が必要です。

価格・在庫・仕様や版の違いなどは変動します。購入の際は各ショップの商品ページで最新情報をご確認ください。

『FINAL FANTASY XI』Absolute Virtue――想定外だったのは倒すことではなく戦い方

最後に、少し性質の異なる事例を紹介したい。

『FINAL FANTASY XI』のAbsolute Virtueだ。

このモンスターは長年、あまりの強さから「本当に倒せるのか」と議論されてきた。

しかし、実は開発側は最初から倒せる存在だと説明している。

2007年に公式が撃破可能と明言していた

2007年11月、スクウェア・エニックスの公式クリエイターズボイスは、Absolute Virtueについて説明を公開した。

そこで開発側は、倒せないように設計しているわけではなく、理論上は撃破可能であることを明言している。

同時に、開発チームが実際に討伐した様子を収録し、攻略のヒントとなる映像を公開する計画についても説明していた。

これはスクウェア・エニックス公式クリエイターズボイスで発表された内容だ。

したがって「開発者自身も絶対に倒せないと思っていた敵」という紹介は誤りとなる。

プレイヤーの戦い方が想定を超え、公式が仕様を変更

一方、問題になったのは、実際のプレイヤーが選んだ戦術と戦闘時間だった。

2008年8月22日、スクウェア・エニックスは一部の強力なノートリアスモンスターについて、戦闘が長時間化している問題を公式に説明した。

その中では、Absolute Virtueなどに導入していた弱体化の攻略方法が難しすぎた結果、プレイヤーが本来想定していなかったような戦闘方法を採用し、戦闘時間が長くなっていたと認めている。

そして2008年9月には、Absolute VirtueやPandemonium Wardenなどの仕様が調整された。

Absolute Virtueについては、Jailer of Loveの出現から2時間が経過すると消滅する条件が設定されている。

これは「Absolute Virtue自身が出現してから2時間」ではない。公式が同年9月9日に公開した訂正でも、この違いが明記されている。

関連する一次資料は、2008年8月22日の公式発表と9月9日の公式訂正で確認できる。

Absolute Virtueは、倒されたこと自体が開発者の想定外だったわけではない。

むしろ、倒そうとするプレイヤーの執念と戦い方が、運営側の想定したプレイ時間や攻略方法を超えてしまった事例として興味深い。

ゲーム内の勝利だけでなく、開発側が設計した遊び方そのものが問い直されたケースだった。

「倒せない敵」と「倒される予定のない敵」は違う

ここまで見てきた事例には、大きな違いがある。

『クロノ・トリガー』や『デビル メイ クライ 5』では、通常は負けるように見える戦闘にも、勝利した場合の結末が用意されていた。

『Demon's Souls』でも、Vanguardを倒したプレイヤー向けの追加エリアが存在した。

これらは、難しいが開発側の想定内にある勝利だ。

一方、『Ultima III』では、開発者本人が不死身のはずだったキャラクターを殺されたと認めている。

『Ultima Online』では、無敵設定が機能していなかったことに気付かず、開発者自身が死亡システムの影響を受けてしまった。

この2つは、開発者の想定を突破したとする根拠が非常に強い。

『EverQuest』は少し異なる。圧倒的に強い怪物の討伐に成功したことは記録されているが、開発者がどこまで撃破を想定していたかは明確ではない。

そして『ドラゴンクエストIV』のキングレオは、通常のゲーム進行で勝つことを前提としない戦闘に、特殊な方法で勝利したらどうなるのかを考えさせる存在だ。

これらをすべてまとめて「開発者の想定外」と呼んでしまうと、重要な違いが見えなくなる。

その違いは、撃破後のゲームの反応を見ると分かりやすい。

勝利後の現象そこから分かること
専用エンディングが発生する開発側がその勝利を想定していた強い証拠
勝利後に追加エリアへ進む勝利専用の分岐が実装されている
勝っても敗北した物語へ進む戦闘結果とシナリオ進行が分離されている
勝利後に再戦となる通常の勝利ルートが用意されていない可能性
戦利品・専用演出がない通常の討伐報酬がない。ただし開発意図は別途確認が必要
開発者が想定外と証言している開発者の想定を超えたことを直接確認できる

ここで、もう一つ忘れてはいけない点がある。

ある時代のゲームで「無理」と考えられていたことが、後の攻略研究や解析技術によって可能になることもある。

ゲームそのもののデータは変わっていなくても、プレイヤーが理解しているルールの範囲は変わっていく。

そうした後年の発見については、つぶログの発売から数十年後に発見されたゲームの秘密|最も長く眠っていたのは?でも取り上げている。

ゲームが発売された時点で、開発者がすべての攻略方法を把握しているとは限らない。

そしてプレイヤーも、当時は不可能だと思っていたことが、永遠に不可能とは限らないのである。

まとめ|本当に驚くべきなのは、倒した瞬間にゲームがどう反応したか

今回の事例で、最もはっきりと開発者の想定外だったと確認できるのは、『Ultima III』と『Ultima Online』のLord Britishだ。

一方、通常は負ける場面でも専用の勝利演出を用意していた『クロノ・トリガー』や『デビル メイ クライ 5』は、まったく別の面白さを持っている。

『EverQuest』のKerafyrmは、倒せないと思われた敵が大人数の協力によって撃破された歴史的な例。『ドラゴンクエストIV』のキングレオは、シナリオ上の敗北がいかに強く固定されているかを感じさせる例だった。

ゲームには、勝ったプレイヤーのために用意された秘密がある。

そして、その反対に、開発者自身が予想していなかった出来事も起こる。

興味深いのは、後者の出来事が単なる不具合として終わらないことだ。

Lord British暗殺事件のように、何十年も語り継がれる伝説になることがある。『Ultima』では、プレイヤーが見つけた不死身の抜け道が、後に開発者自身が用意する隠し要素へと変化していった。

倒せないはずの敵を倒したら、ゲームはどうなるのか。

その答えは、必ずしも特別な宝箱や隠しエンディングではない。

何も起こらないこともある。もう一度同じ戦闘が始まることもある。そして、ときにはゲームを作った本人が、誰よりも驚くことになる。

開発者が用意したルールの中で、プレイヤーがどこまでできるのか。その境界線を越えた瞬間にこそ、ゲーム史に残る奇妙な出来事が生まれてきたのだ。

-つぶログ深掘り, レトロゲーム
-, , , , , ,