- 日本最古のWebサイトは今も見られる?1992年から現存サイトを追跡
- 日本初のWebサイトは1992年9月30日のKEK
- 「日本最初のページ」は今も開ける?
- そもそも「生きているWebサイト」をどう判定する?
- 1993年になると、日本のWebサイトが少しずつ増えてくる
- 1993年12月の「www.ncc.go.jp」が今も生きていた
- では、国立がん研究センターが「日本最古の現存Webサイト」なのか?
- KEK自体のWebサイトは途切れたのか
- 1994年組には、今も現役のGenomeNetがある
- 個人ホームページはどこまで古く遡れる?
- 日本の初期Webを並べるとこうなる
- なぜ最初期のWebサイトは研究所や大学ばかりなのか
- 「Web」と「インターネット」は同じではない
- 「ドメインが古い=Webサイトも古い」でもない
- 結局、「今も生きている日本最古のWebサイト」はどこ?
- 主な確認資料
日本最古のWebサイトは今も見られる?1992年から現存サイトを追跡

日本で最初に作られたWebサイトは、今もそのまま残っているのだろうか。
調べ始める前は、もっと簡単に答えが出ると思っていた。日本初のサイトを特定し、そのURLを開けば終わり――そんな話ではなかった。
日本初の公開Webサイトは、1992年9月30日に高エネルギー物理学研究所(現在の高エネルギー加速器研究機構・KEK)から発信されたものと確認できる。ところが、当時のURLはすでに動いていない。現在見ることができる初期ページは、KEK自身も「再現」と説明している。
では、URLやサイトの系譜をたどったとき、1990年代初頭から現在まで本当に「生きている」Webサイトはどこなのか。
先に結論
日本初の公開Webサイトは、1992年9月30日のKEKでほぼ確定している。ただし初代URLは現存しない。
一方、今回確認できた中では、国立がんセンターが1993年12月に使用を始めた「www.ncc.go.jp」が、2026年10月現在も国立がん研究センターの公式サイトとして稼働している。同じホスト名で現在まで確認できる日本最古級Webサイトの極めて有力な候補だ。
ただし1994年1月時点ですでに国内には複数のWWWサーバーが存在していたため、本記事では「日本最古の現存Webサイト」とまでは断定しない。
日本初のWebサイトは1992年9月30日のKEK
日本のWebの出発点として最もはっきりしているのが、現在の高エネルギー加速器研究機構、KEKだ。
KEKによると、日本初のWebサイトを作ったのは、当時KEKデータ処理センターの助手だった森田洋平氏。1992年、森田氏と当時のセンター長だった渡瀬芳行氏がスイス・ジュネーブのCERNを訪れ、Webを考案したティム・バーナーズ=リー氏と会ったことがきっかけだった。
森田氏はCERNの端末室でHTMLファイルを作成。それを日本のKEKにあるサーバーへ置き、KEKのアドレスをCERN側のリンク集へ登録してもらった。
日付は1992年9月30日。
KEK自身が「日本初のウェブサイト」として説明しており、JPNICのインターネット歴史年表でも、日本のWeb史における重要な起点として扱われている。
現在の感覚では「研究所がホームページを公開した」というだけに見えるかもしれない。しかし当時は、Webそのものが世界に登場して間もない時期だった。
ただし、最初はHTTPサーバーではなかった
ここは少しややこしい。
1999年に初期の関係者や資料を基にまとめられた「The first WWW server in Japan」によると、1992年9月30日に森田氏が置いたHTMLファイルの場所は、当初次のFTPサーバー上だった。
ftp://kekux.kek.jp/kek/html/kek.html
つまり「HTMLを使った日本初の公開Webページ」ではあるが、現在のWebサイトと同じようにHTTPサーバーから配信されていたわけではない。
KEKでHTTPサーバーが立ち上がるのは、その約4か月後となる1993年2月10日。一井信吾氏によってhttpd 0.9を使ったサーバーが構築され、
http://kekux.kek.jp/kek.html
で公開されたと記録されている。
そのため厳密には、
- 1992年9月30日:KEKから日本初の公開Webページを発信
- 1993年2月10日:KEKでHTTPによるWWWサーバーが稼働
と分けて考えた方が分かりやすい。
「日本最初のページ」は今も開ける?
ここで最初の疑問に戻る。
1992年のページを今、そのURLで開けるのか。
答えは「開けない」。
初期Web史料にも、1992年のFTP上のページ、1993年のHTTPページともに、すでに動いていないことが記録されている。
一方、当時の非常にシンプルな「KEK Information」のページ自体は現在も見ることができる。
ただし、これは注意が必要だ。
KEK自身も現在公開されているものを「日本初のウェブサイト(再現)」と表現している。1992年から同じ場所に同じページが34年間置かれ続けているわけではない。
つまり、
「日本最古のWebページは現在でも見ることができる」
はおおむね正しいが、
「日本最古のWebサイトが1992年のURLのまま生き続けている」
は正しくない。
この違いが、今回「今も生きている最古のWebサイト」を探すうえで最大のポイントになった。
そもそも「生きているWebサイト」をどう判定する?
30年以上前のWebを調べると、「残っている」の意味がいくつもある。
Internet Archiveで昔のページを閲覧できるだけでも「残っている」と言えてしまうし、昔と同じ組織が現在もWebサイトを持っているだけでも、見方によっては「続いている」ことになる。
そこで今回は、次のように分けた。
| 区分 | 状態 | 今回の扱い |
|---|---|---|
| A:同一ホスト現役 | 初期資料に記録されたホスト名が現在も公式サイトとして稼働 | 最も強い「現存」候補 |
| B:サイト・サービス継続 | ドメインやURLは変わったが、同じサービスが続いている | 系譜が続くサイトとして扱う |
| C:組織のみ継続 | 現在も同じ組織のサイトはあるが、初期サイトとの連続性が弱い | 参考扱い |
| D:復元 | 後年に初期ページを再現したもの | 現存とは数えない |
| E:アーカイブ | Internet Archiveなどに保存されているだけ | 現存とは数えない |
この基準で探し直すと、日本最初のKEKだけを見ていても答えは出ない。
1993年以降に作られた初期Webサイトを、一つずつ追う必要が出てくる。
1993年になると、日本のWebサイトが少しずつ増えてくる
初期史料では、KEKに続く重要なサイトとしてNTTや千葉大学が登場する。
NTT基礎研究所の高田敏弘氏らが1993年10月7日に「www.ntt.jp」を立ち上げ、千葉大学・池田研究室では1993年10月19日に「www.hike.te.chiba-u.ac.jp」が公開されたと記録されている。
千葉大学のサイトは、ac.jpドメインにおける最初期のWebサイトとして知られる。
ただし今回確認した範囲では、これらを「当時のホストがそのまま現在も現役」と判定できる状態ではなかった。
そして1993年の記録をさらに追っていると、かなり意外な名前が出てきた。
1993年12月の「www.ncc.go.jp」が今も生きていた
国立がんセンターだ。
現在の国立研究開発法人 国立がん研究センターである。
国立がんセンターの研究者らが2001年に発表した論文「Japanese experience of telemedicine in oncology」には、インターネットによる情報提供を始めた時期が具体的に記録されている。
それによると、まず1993年2月にGopherサービスを開始。
そして1993年12月からWebサービスを開始した。
論文に記載されているURLは、
http://www.ncc.go.jp/
である。
ここで試しに現在のサイトを確認してみる。
2026年10月現在も、www.ncc.go.jp が国立がん研究センターの公式サイトとして普通に稼働している。
HTTPでアクセスした場合も現在のHTTPSサイトへ接続される。
ページのデザインやシステムが1993年から同じという意味ではもちろんない。それでも、1993年12月の資料に明記されたホスト名が、33年近く経った現在も同じ組織の公式Webサイトとして使われている。
これは今回確認した中でも、かなり強い「生きているWebサイト」の候補だった。
1994年当時、本当に動いていたことも確認できる
後年の論文だけではない。
1994年12月号の『INTERNET magazine』にも、国立がんセンターのサーバーへ実際に接続した画面が掲載されている。
そこには、
「Connected to NCC.GO.JP」
「WELCOME TO NCC WWW SERVER」
という表示が残っている。
さらに画面上の最終更新日は「941022」、つまり1994年10月22日となっている。
1990年代初頭のWebサイトは後世の回想だけで語られることも多いが、NCCについては、当時の雑誌資料でも実際に稼働していた様子を確認できる。
では、国立がん研究センターが「日本最古の現存Webサイト」なのか?
ここは慎重にしたい。
今回の調査だけで「日本一古い」と断定することはできない。
初期WWW史料によると、1994年1月20日の時点ですでに日本国内には14機関のWWWサーバーが存在したとされている。
つまり1993年末までには、KEK、NTT、千葉大学、国立がんセンター以外にも初期サーバーが存在していた。
その14機関すべてについて、
- 正確な公開開始日
- 当時のホスト名
- 運営組織の継続性
- 現在も同じホストが稼働しているか
を完全に確定できたわけではない。
そのため本記事では、国立がん研究センターについて、
「1993年12月から同じホスト名が確認でき、現在も稼働している日本最古級Webサイトの極めて有力な候補」
とする。
「日本最古」と言い切るより、その方が現時点の資料に忠実だ。
KEK自体のWebサイトは途切れたのか
初代URLが死んでいるからといって、KEKのWebそのものが消えたわけではない。
初期史料では、1993年に「kekux.kek.jp」で運用されていたWWWサーバーは、1994年2月15日に専用サーバー「is.kek.jp」へ発展し、その後現在の「www.kek.jp」に至ったとされている。
つまりKEKは、
1992年から続く日本最古のWebサイトの系譜
として見ることができる。
ただし、1992年のURLが現在までそのまま残っているわけではない。
「最初に始めたサイト」と「最も古いURLのまま残るサイト」は、別の競技なのだ。
1994年組には、今も現役のGenomeNetがある
1994年まで進むと、現在も稼働している有力な古参サービスがさらに見つかる。
京都大学系の生命科学情報サービスGenomeNetだ。
GenomeNetの公式リリース履歴によると、1994年5月31日に国内のヒトゲノム研究者向けにWWWサーバーを実験公開し、同年7月1日には世界の利用者へ公開を告知した。
そしてGenomeNetは2026年現在も稼働している。
ただし、初期には「www.genome.ad.jp」が使われ、現在は「www.genome.jp」へ変わっている。
そのため今回の分類では、NCCのような「同一ホスト現役」ではなく、URLを変えながら同じサービスが続いている非常に古いWebサービスとして扱うのが適切だろう。
個人ホームページはどこまで古く遡れる?
初期Webというと、灰色の背景、青いリンク、「工事中」のGIF、アクセスカウンター……そんな1990年代後半の個人ホームページを思い浮かべる人も多いかもしれない。
しかし日本の個人Webは、それよりさらに早い。
1993年「富ヶ谷」
デジタルガレージは自社の沿革で、1993年に伊藤穰一氏の自宅へ専用線を引き、日本初の個人ホームページ「富ヶ谷/TOMIGAYA」を開設したとしている。
一方、伊藤氏本人が2002年に当時を振り返った文章では、少し慎重な表現になっている。
1993年にNCSAのWebサーバーが登場してすぐ「富ヶ谷」を立ち上げ、「多分最初のウェブページの内の一つ」だったと記している。
つまり、デジタルガレージは「日本初の個人ホームページ」と位置付けているが、本人は「最初期の一つ」という認識だった。
また今回の調査では、1993年の「富ヶ谷」が当時の状態・当時のURLのまま現在も稼働していることまでは確認できなかった。
そのため、個人サイトの「現存最古」としては扱わない。
1995年から続く「The Web KANZAKI」
もう一つ興味深いのが、神崎正英氏のThe Web KANZAKI。
現在も普通に閲覧でき、サイト自身の更新履歴には「since 1995」と記されている。
2005年にはサーバー移行も行われているため、1995年当時と物理的に同じサーバーというわけではない。それでも個人によるWebサイトが30年以上続いている例として非常に興味深い。
「日本最古の現存個人ホームページ」については、1993~1995年の候補をさらに網羅的に確認しない限り断定できないが、The Web KANZAKIは間違いなく最古級の現役サイトの一つだ。
日本の初期Webを並べるとこうなる
| 時期 | サイト・出来事 | 2026年時点の状態 | 今回の判定 |
|---|---|---|---|
| 1992年2月 | NTT基礎研究所で日本国憲法などをHTML化 | 当時は外部非公開 | 日本最初期のHTML利用 |
| 1992年9月30日 | KEK | 初代URLは停止。ページは再現版あり | 日本初の公開Webサイト |
| 1993年2月10日 | KEK HTTPサーバー | 当時のURLは停止 | KEKのHTTP公開開始 |
| 1993年10月7日 | NTT「www.ntt.jp」 | 当時ホストの継続を現役とは確認できず | 初期重要サイト |
| 1993年10月19日 | 千葉大学・池田研究室 | 初期サイトの現役状態は確認できず | ac.jp最初期 |
| 1993年12月 | 国立がんセンター「www.ncc.go.jp」 | 同じホスト名で現在も公式サイトが稼働 | 現存最古級の有力候補 |
| 1994年5月31日 | GenomeNet実験公開 | ドメインを変えながらサービス継続 | 最古級現役Webサービス |
| 1995年 | The Web KANZAKI | 現在も稼働 | 最古級個人サイト候補 |
なぜ最初期のWebサイトは研究所や大学ばかりなのか
1992~1994年の名前を並べると、現在のWebとはかなり景色が違う。
KEK、NTTの研究所、千葉大学、国立がんセンター、GenomeNet。
ショッピングサイトも、ニュースサイトも、SNSもない。
これは偶然ではない。
そもそもWorld Wide Webは、CERNで研究者同士が異なるコンピューター環境を越えて情報を共有するために生まれた仕組みだった。KEKも巨大な国際共同研究を行う高エネルギー物理学の研究機関であり、情報共有というWebの用途との相性が非常に良かった。
現在ではWebといえば広告、通販、動画、SNSなどを想像するが、日本で最初に使われたWebは、まず研究者が情報をやり取りするための道具だった。
国立がんセンターも同様で、初期にはがんに関する情報を医療従事者や患者へ届ける手段としてGopherやWebを利用していた。
日本の最初期Webを探していると、Webが「メディア」になる前の姿が見えてくる。
「Web」と「インターネット」は同じではない
この記事で扱っているのは、あくまで日本のWebサイトの歴史だ。
「1992年に日本のインターネットが始まった」という意味ではない。
日本ではWeb登場以前から大学・研究機関を中心にコンピューターネットワークが発展しており、1984年には東京大学、東京工業大学、慶應義塾大学を結ぶJUNETが始まっている。
インターネットという通信網の上に、後からWebという仕組みが登場した。
Webサイトの「最古」を調べるときは、ここを混同しないことが重要になる。
「ドメインが古い=Webサイトも古い」でもない
もう一つ注意したいのがドメイン名だ。
古いドメインの登録日だけを並べても、最古のWebサイトランキングにはならない。
ドメイン自体はWebサイトを公開する前からメールなど別の用途で利用されている場合があり、途中でWebサービスが追加された例もある。
今回の調査でも、サイト開始日はWHOISなどのドメイン登録日ではなく、当時資料、公式沿革、研究論文、実際の接続記録などを優先した。
結局、「今も生きている日本最古のWebサイト」はどこ?
2026年10月時点での答えを整理すると、こうなる。
日本で最初に公開されたWebサイトはKEK。1992年9月30日。
これはかなり強く確認できる。
しかし当時のURLはすでに動いておらず、現在閲覧できる初期ページは再現されたものだ。
一方、今回追跡した中で特に驚いたのが国立がん研究センターだった。
国立がんセンターは1993年12月に「www.ncc.go.jp」でWebサービスを開始しており、2026年現在も同じ「www.ncc.go.jp」が公式サイトとして使われている。
33年近く前のWeb黎明期に使われていたホスト名を、今ブラウザーへ入力しても同じ組織へたどり着く。
現段階では、これを「日本最古の現存Webサイト」と断定するだけの材料はまだ揃っていない。しかし、現在まで確認できる日本最古級Webサイトの有力候補であることは間違いない。
最初のサイトを探せばすぐ終わると思って始めた調査だったが、実際には「何をもって生き残ったとするか」で答えが変わった。
URLが消えてもページが再現されるサイト。ドメインを変えながら続くサービス。組織名が変わっても30年以上同じホストを使い続けるサイト。
Webはコピーが簡単な世界なのに、その歴史を正確に残すのは意外なほど難しい。
そして1990年代初頭のURLを今もブラウザーで開けること自体が、すでに小さなインターネット遺跡なのかもしれない。