警視庁の偽封書はどう見分ける?QRコード詐欺と本物の通知の違い

「警視庁遺失物センター」から、落とし物を保管しているという封書が届いた。通知書にはマイナンバーカードの受理番号が書かれ、返還手続き用のQRコードも載っている――。
一見すると本物の警察からの連絡に思えますが、こうした通知を装って個人情報を盗み取ろうとする手口が確認されています。
警視庁匿名・流動型犯罪グループ対策本部は2026年10月8日、警視庁遺失物センターをかたる偽の封書について、公式Xで注意を呼びかけました。
公開された偽封書には切手がなく、通知書の問い合わせ先には070から始まる携帯電話番号が記載されていました。QRコードから偽サイトへ誘導し、マイナンバーなどの個人情報を盗み取る手口だと説明しています。
ただし、ここで一つ重要なことがあります。本物の警視庁も、落とし物が見つかった際に手紙で通知することがあり、オンラインでの返還手続きも実施しています。
つまり、警察から封書が届いたことや、Web手続きを案内されたことだけでは、偽物と判断できません。
今回の偽封書はどこが不審なのか。実際の通知との違い、QRコードを読み取ってしまった場合の対処法、正しい問い合わせ先まで整理します。
警視庁遺失物センターをかたる偽封書とは?2026年10月8日に注意喚起
今回確認されたのは、「警視庁遺失物センター」を差出人として装った茶色の封筒と、その中に入っていた「遺失物通知書」という書類です。
10月8日の警視庁の注意喚起では、実物の偽封筒と偽通知書の写真が公開されました。
通知書には、本人のものと思われる身分証明書が落とし物として届けられ、遺失物センターで保管されているという趣旨の文章が記載されていました。
さらに、受理番号や受理年月日が書かれ、保管物件の欄には「マイナンバーカード」と記されています。
返還を希望する人に向けて、QRコードからWebサイトへアクセスする方法と、電話で問い合わせる方法が案内されていました。
警察の名称だけでなく、実際の落とし物手続きに似せた文面や番号まで用意されていたことが、今回の特徴です。
偽封書の写真は、警視庁匿名・流動型犯罪グループ対策本部の2026年10月8日付公式X投稿で公開されています。
ただし、写真に写っているQRコードや電話番号を試したり、連絡したりしないでください。
偽封書の見分け方は?切手・070の電話番号・QRコードに注意
警視庁が今回の注意喚起で挙げたのは、封筒の切手と、通知書に書かれた問い合わせ電話番号です。
| 確認する部分 | 今回の偽封書 | 警視庁の案内・注意点 |
|---|---|---|
| 封筒の切手 | 切手が貼られていない | 遺失物センターが封書を送る場合は切手を貼ると説明 |
| 問い合わせ番号 | 通知書に070から始まる携帯番号を記載 | 問い合わせ先に携帯番号は記載しないと説明 |
| 返還手続き | QRコードから偽サイトへ誘導 | 本物のオンライン送付手続きも存在するため、QRコードの有無だけでは判断できない |
| 受理番号など | 受理番号・受理年月日を記載 | 本物の通知でも受理番号が使われるため、番号があるだけでは本物と判断できない |
この比較は、今回公開された偽封書の特徴と警視庁の案内を整理したものです。切手が貼られている、あるいは携帯番号が書かれていないからといって、必ず本物であるとは限りません。
切手が貼られていなければ偽物?
警視庁は今回の投稿で、遺失物センターが封書を送付する場合には切手を貼っていると説明しました。
公開された偽封筒には、その切手がありませんでした。
これは今回の事例を見分けるうえで分かりやすい特徴です。ただし、犯人側が切手を貼った偽封書を作ることも考えられるため、切手の有無だけで最終的に判断するのは避けたいところです。
封筒には本物の警視庁の電話番号が印刷されていた
さらに厄介なのが、電話番号の使い分けです。
J-CASTニュースの10月9日付報道によると、偽封筒には実際の警視庁会計課遺失物センターの電話番号が印刷されていました。
ところが、中に入っていた通知書の問い合わせ先には、070から始まる別の携帯電話番号が記載されていたのです。
封筒の番号を検索して警視庁の正式な連絡先だと分かれば、通知書まで信用してしまうかもしれません。
しかし、正しい住所や電話番号が印刷されていることは、その封書が本物である証明にはなりません。 実在する公的機関の情報は、第三者でも調べて印刷できるためです。
封筒と通知書に異なる問い合わせ先が書かれている場合はもちろん、番号が一致している場合でも、郵便物に記載された連絡先だけを使って真偽を確認するのは避けましょう。
本物の警視庁からも落とし物の通知書は届く?
警視庁が、落とし物について手紙で通知することは実際にあります。
警視庁公式サイトの「見つかった方」の送付手続きには、落とし物が見つかった人に対し、警察署や遺失物センターから「拾得物受理通知書」という手紙で連絡する場合があると記載されています。
これは、警察に届けられた落とし物を本人へ返還するための正規の案内です。
また、警視庁では、落とし物の送付をオンラインで申し込むこともできます。
遠方に住んでいる人や、窓口へ行くことが難しい人は、所定の手続きを行ったうえで、落とし物を着払いで送ってもらえる仕組みです。
つまり、警察から届いた封書に「落とし物が見つかった」「返還手続きをしてください」と書かれていること自体は不自然ではありません。
だからこそ、今回の偽通知書は本物らしく見えるのです。
「遺失物通知書」と「拾得物受理通知書」は違う?
今回の偽書類には「遺失物通知書」という表題が使われていました。
一方、警視庁の公式サイトで案内されている通知書の名称は「拾得物受理通知書」です。
名称には違いがありますが、これだけで真偽を判定する方法はおすすめできません。偽の書類でも本物と同じ名称を使用することは可能だからです。
受理番号や日付が書かれているかどうかも同様です。
書類の見た目や名称だけで判断するより、実在する警察の公式窓口へ、自分で確認することが重要になります。
本当にマイナンバーカードを落としていた場合は?
実際にマイナンバーカードを紛失した覚えがある人は、今回の偽封書に注意すると同時に、カード自体の紛失手続きも確認する必要があります。
マイナンバーカード総合サイトでは、カードを紛失・盗難された場合、専用窓口で一時利用停止の手続きを行い、警察へ遺失届や盗難届を提出するよう案内しています。
一方、カードを紛失していないのに、偽通知書に「マイナンバーカードを保管している」と書かれていただけなら、それを理由に直ちにカードの再発行が必要になるわけではありません。
実際の紛失と、偽の通知による個人情報の入力被害は分けて考えましょう。
QRコードを読み取ってしまったら?どこまで操作したかで対応が変わる
もし偽封書だと気付かずに、QRコードをスマートフォンで読み取ってしまったらどうなるのでしょうか。
ここで大切なのは、QRコードをカメラで読み取っただけなのか、偽サイトを開いたのか、さらに個人情報を入力したのかを区別することです。
| 行った操作 | 対応の目安 |
|---|---|
| 封書を開封しただけ | 開封しただけで個人情報が盗まれたとはいえない。QRコードや記載の電話番号は利用せず、警察に相談する |
| QRコードをカメラで読み取った | 表示されたリンクを開かず、操作を中止する |
| 偽サイトを開いたが何も入力していない | サイトを閉じる。情報入力やアプリのインストールをしていなければ、一般的には被害につながらない |
| 氏名・住所・マイナンバーなどを入力した | 入力した情報を確認・記録し、警察やマイナンバーの公式窓口へ相談する |
| パスワード・暗証番号を入力した | 関連する正規サービスの窓口で、変更・停止など必要な手続きを確認する |
| 金銭を支払った | 警察と利用した金融機関・決済事業者へ速やかに連絡する |
なお、この表はQRコードを悪用したフィッシング詐欺への一般的な対処も含めて整理したものです。今回の偽封書で、実際に暗証番号の入力や金銭の支払いまで求められたと確認されたわけではありません。
読み取っただけでマイナンバーが盗まれる?
QRコードを読み取っただけで、スマートフォンに保存されているマイナンバーなどが自動的に盗まれるとは限りません。
情報処理推進機構(IPA)は、一般的なフィッシングサイトについて、アクセスしても情報の入力やアプリのインストールなどをしていなければ、基本的に被害は発生しないと説明しています。
今回、警視庁が注意を呼びかけているのも、QRコードで偽サイトへ誘導し、利用者自身にマイナンバーなどを入力させて盗み取る手口です。
ただし、偽サイトの具体的な仕組みがすべて公開されているわけではありません。ファイルをダウンロードしたり、不審なアプリをインストールしたりした場合は、情報入力をしていなくても別途確認が必要です。
不審なサイトを開いた場合は、それ以上操作せず、表示された指示にも従わないようにしてください。
マイナンバーを入力してしまった場合は?
偽サイトに個人番号や氏名、住所などを入力してしまった場合は、まず何を入力したのかを確認してください。
不審なページのURL、入力した情報の種類、操作した日時などを分かる範囲で控え、最寄りの警察署に相談することが重要です。
マイナンバーに関する相談は、マイナンバーカード総合サイトで案内されている公式窓口でも受け付けています。
マイナンバー総合フリーダイヤル:0120-95-0178
詳細はマイナンバーカード総合サイトの問い合わせ案内で確認できます。
なお、マイナンバーを入力したことと、実物のマイナンバーカードを紛失したことは異なります。カードを手元に持っている場合、入力したという理由だけで一律に紛失扱いとして利用停止する必要があるとは限りません。
ただし、カードの暗証番号も入力した場合や、カードの画像なども送信した場合には状況が変わります。公式窓口へ入力した内容を具体的に伝え、必要な対応を確認してください。
偽封書が届いたらどこへ相談する?警視庁の正しい問い合わせ先
警視庁は今回の注意喚起で、不審な封書が届いた場合は最寄りの警察署に相談するよう呼びかけています。
落とし物の通知が本物なのか確認したい場合は、封書に書かれた電話番号やQRコードではなく、自分で警視庁の公式サイトを開き、掲載されている連絡先を確認してください。
警視庁会計課遺失物センターの公式案内では、以下の電話番号が掲載されています。
0570から始まる番号は、通話料がかかる場合があります。受付時間も確認してから連絡してください。
なお、封筒にこの正しい番号が印刷されていたとしても、それだけで封書を信用しないことが大切です。番号を確認する際は、郵便物から独立した公式情報を使用しましょう。
また、緊急ではない警察への相談には、警察相談専用電話「#9110」も利用できます。事件や事故で直ちに警察の対応が必要な場合は110番です。
警察へ相談する際は、届いた封筒と通知書を捨てずに保管しておくと、文面や記載内容を確認してもらいやすくなります。住所や氏名が写った写真をSNSへ公開することは避けてください。
なぜ本物に見える?実際の返還手続きをまねた手口
今回の偽封書で注意したいのは、単に「警視庁」と書かれた怪しい郵便物ではないという点です。
警察の正式な名称や住所、実在する電話番号が使われ、通知書にも受理番号や受理年月日が書かれていました。さらに、落とし物の返還をWeb上で申し込むという、実際に存在する手続きに似せています。
特にマイナンバーカードは、紛失すると本人確認や各種手続きに影響する重要なものです。「警察が保管している」と知らされれば、早く取り戻したいと考える人もいるでしょう。
その心理につけ込み、偽サイトへ誘導して個人情報を入力させることが、警視庁の注意喚起から確認できる今回の手口です。
ただし、犯人がどのように送付先を選んだのか、実際にマイナンバーカードを紛失した人を狙っていたのかまでは明らかになっていません。
「自分はカードを落としていないから絶対に関係ない」と考えるのではなく、届いた書類を信用して個人情報を入力しないことが大切です。
警察を装う手口は封書に限りません。電話やLINE、ビデオ通話で警察官を名乗り、偽の逮捕状や本物の警察署の電話番号を使って信用させるケースもあります。
こうした手口については、警察からLINEやビデオ通話が来ることはあるのか、ニセ警察詐欺の見分け方を整理した記事でも詳しく取り上げています。
偽封書は全国に届いている?被害件数や犯人は判明している?
2026年10月12日時点で確認できる警視庁の注意喚起と報道では、今回の偽封書について、送付された総数や被害者数は明らかにされていません。
どの地域に何通届いたのか、個人情報を実際に入力してしまった人が何人いるのか、金銭被害が発生したのかといった詳しい数字も確認できていません。
また、この偽封書を作成・送付した人物が特定された、あるいは逮捕されたという本件に関する公表情報も確認できません。
したがって、「全国で大量に配られている」「すでに多数の金銭被害が出ている」といった話を、確認済みの事実として扱うことはできません。
一方、警視庁が実物の偽封書と通知書を公開し、偽サイトへの誘導について注意を呼びかけていることは確かです。
今後、別の名称や問い合わせ先、異なるデザインの封書が使われる可能性も否定できません。今回の写真と一致しないから安全というわけでもありません。
まとめ|警察から封書が届いても、書類のQRコードから確認しない
今回、警視庁が注意を呼びかけた偽封書は、実際の落とし物通知や返還手続きに似せて作られていました。
公開された偽封筒には切手がなく、通知書には070から始まる携帯番号が記載されていました。しかし、こうした特徴だけを覚えていても、別の形の偽封書を見抜けるとは限りません。
覚えておきたいのは、警視庁からの本物の落とし物通知も存在する一方、封筒に正しい警察の住所や電話番号が書かれていても、本物の証拠にはならないということです。
不審な封書が届いたら、記載されたQRコードを読み取ったり、電話番号へ連絡したりする前に、公式サイトから確認した警察の窓口へ相談してください。
すでにQRコードを読み取った場合も、情報を入力したかどうかによって必要な対応は変わります。マイナンバーや暗証番号などを入力した場合は放置せず、警察や関係する公式窓口へ相談しましょう。
本物らしい書類を見分けようとするよりも、書類に書かれた情報から離れ、自分で調べた正式な連絡先で確かめることが、今回のような手口への有効な対策になります。
※本記事は2026年10月12日時点で確認できる警視庁の注意喚起、遺失物の正規の送付手続き、警察庁のフィッシング対策、関連報道などに基づいています。個別の被害状況や犯人の特定状況については、追加発表により情報が変わる可能性があります。