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米旅客機で乗客を粘着テープ拘束はなぜ?アメリカン航空618便が目的地変更・逮捕までを整理

アメリカン航空618便で乗客を粘着テープ拘束はなぜ?逮捕までを整理

米旅客機内で乗客が粘着テープで拘束された異例の事件について、機内の座席に固定されたシルエット人物と航路イメージを使って「なぜここまで?」と伝えるアイキャッチ。

2026年9月3日夜、米アメリカン航空618便で、乗客の男性が結束バンド状の拘束具と粘着テープでファーストクラスの座席に固定される異例の出来事がありました。

写真だけを見ると「暴言を吐いただけで、ほかの乗客が人をテープで縛ったのか」とも見えますが、実際の経緯はそれほど単純ではありません。

同乗者の証言では、男性の言動は次第に身体的な争いへ発展。元法執行機関関係者を含む乗客らが介入し、客室乗務員から渡された拘束具や粘着テープを使って男性を制止したとされています。その後、ダラスからニューアークへ向かっていた618便はボルティモアへ目的地を変更し、着陸後に男性は警察に逮捕されました。

では、なぜ粘着テープまで必要だったのか。ほかの乗客が人を拘束してよかったのか。いわゆる「緊急着陸」は何のためだったのか。逮捕された男性のその後も含めて整理します。

アメリカン航空618便で何が起きた?

事件が起きたのは、2026年9月3日のアメリカン航空618便です。

同便はダラス・フォートワース国際空港を出発し、ニュージャージー州のニューアーク・リバティー国際空港へ向かっていました。

FAA(米連邦航空局)によると、乗務員から「passenger disturbance(乗客の騒動)」が報告され、618便は現地時間午後10時15分ごろ、ボルティモア・ワシントン国際サーグッド・マーシャル空港へ安全に着陸しました。FAAはこの事案を調査するとしています。

日本では「緊急着陸」と報じられることもありますが、機体故障やエンジントラブルが起きたわけではありません。

アメリカン航空も、乗客トラブルを理由にボルティモアへ「diverted」、つまり目的地を変更したと説明しています。問題の乗客を降ろした後、618便は本来の目的地だったニューアークへ向かいました。

なぜ粘着テープで座席に固定された?

拘束された男性は、アリゾナ州のアーサー・ランディーン氏(Arthur Lundeen、67歳)とされています。

ただし、機内で具体的に何が起きたのかについては、FAAが細部まで事実認定したわけではありません。ここからは主に同乗者の証言です。

618便に乗っていたフアン・メヒア氏とリチャード・オレニク氏は、飛行中、それまで静かだった機内が突然大声と騒ぎに変わったと証言しています。

メヒア氏によると、男性は客室乗務員や周囲の乗客に侮辱的な言葉を発し、隣席の乗客に身体的な危害を加えているように見えたといいます。オレニク氏も、ランディーン氏が隣の乗客のノートパソコンをたたき、その乗客の首付近をつかんだと証言しています。

介入した乗客らの説明をたどると、

攻撃的な言動が始まる

身体的な争いに発展

周囲の乗客が介入

拘束具で手を固定

抵抗が続く

粘着テープでも座席に固定

という流れだったことが分かります。

つまり、単なる暴言だけを理由に粘着テープで縛られたわけではありません。

メヒア氏は、拘束中に手をかまれたとも証言しています。

拘束したのは客室乗務員?それともほかの乗客?

男性を直接取り押さえた中心人物として報じられているのが、フアン・メヒア氏とリチャード・オレニク氏らです。

メヒア氏は元法執行機関関係者として紹介されていますが、この便に警察官として乗っていたわけではありません。

ここで重要なのは、乗客らだけが独断で男性を縛ったわけではないという点です。

CBS Newsの取材に対し、メヒア氏らは、拘束に使った結束バンド状の器具や粘着テープを客室乗務員から渡されたと説明しています。客室乗務員も混乱の中で対応を続けていたといいます。

New York Timesの取材でも、当初は拘束具を使ったものの男性が抵抗を続け、その後に粘着テープが使われたという証言が伝えられています。

したがって、

「乗客が自前のガムテープを取り出して、勝手に制裁として縛った」

という理解は実際の証言とは異なります。

なお、英語報道では「duct tape」とされています。日本でいう一般的なガムテープとまったく同じ製品だったかは確認できないため、この記事では「粘着テープ」としています。

ほかの乗客が人を粘着テープで縛っていいの?

今回のニュースで最も気になるのはここかもしれません。

ただ、これを一言で、

「アメリカでは乗客が他人を縛っても合法」

と結論付けるのは適切ではありません。

今回確認できる状況は、

  • 身体的な暴力が起きていたと複数の乗客が証言している
  • 複数の乗客が危険を止めるために介入した
  • 客室乗務員もその場で対応していた
  • 拘束具や粘着テープは乗務員から提供されたと乗客が証言している
  • 着陸まで男性を制止し、その後は警察へ引き渡した

というものです。

少なくとも、一般の乗客が腹を立てて独断で男性を縛り、私的な制裁を加えたというケースとは事情が違います。

一方で、この出来事を根拠に、

「暴れていると思った相手なら、一般人が自由に拘束していい」

と広げることもできません。

CBS Newsでは航空専門家が今回のような危険な乗客を拘束する対応について航空機内の安全確保の範囲として説明していますが、それは今回の具体的状況についての専門家見解です。一般人によるすべての拘束行為が法的に認められるという意味ではありません。

日本の「私人逮捕」や「正当防衛」という言葉を、そのまま米国の航空機内の出来事に当てはめるのも避けた方がよいでしょう。

今回については、暴力的な状況を止めるため、乗務員が関与する中で乗客らが男性を制止した特殊なケースと捉えるのが妥当です。

なぜその場で警察を呼ばず、乗客が対応した?

理由は飛行中だったからです。

地上でトラブルが起きた場合のように、通報して数分後に警察官が現場へ来ることはできません。

そのため、まず機内にいる乗務員らが安全を確保し、必要であれば周囲の協力も得ながら危険な状態を抑える必要があります。

今回も、ランディーン氏は着陸するまで拘束された状態となり、ボルティモア到着後にMaryland Transportation Authority Policeが機内へ入りました。

警察が男性を降機させて逮捕し、その後618便はニューアークへ向かっています。

「乗客が警察の代わりに逮捕した」というより、地上の警察へ安全に引き渡せる状態にするまで機内で制止していたと考える方が実態に近いでしょう。

なぜボルティモアへ目的地を変更した?

FAAが確認しているのは、乗客の騒動を受けて618便がボルティモアへ向かい、午後10時15分ごろ安全に着陸したことです。

機体そのものに異常があったわけではありません。

一方で、なぜ数ある空港の中からBWIが選ばれたのかという具体的な運航判断までは公表されていません。

そのため、

「最も近かったから」
「FBIの対応ができる空港だったから」

などと理由を推測することはできません。

分かっているのは、男性を機内に乗せたままニューアークまで飛び続けるのではなく、ボルティモアへ目的地を変更して地上の警察へ引き渡す対応が取られたということです。

酒に酔って暴れた?原因はまだ分かっていない

男性がなぜ突然攻撃的な状態になったのかは、現時点では明らかになっていません。

一部の乗客はアルコールが関係しているように感じたとしていますが、メヒア氏は客室乗務員から「機内では1杯しか提供していないと聞いた」と証言しています。

そのため、

「泥酔して暴れた」
「酒が原因だった」

と断定する材料はありません。

精神状態や薬物、健康上の問題についても公式な説明は出ていないため、原因を推測するべきではないでしょう。

現時点で確実なのは、男性がなぜそのような行動に出たのかは不明ということです。

拘束された男性は逮捕|何の罪に問われている?

ボルティモアへの着陸後、Maryland Transportation Authority Policeはランディーン氏を逮捕しました。

警察によると、

second-degree assault

と、

disorderly conduct

の州レベルの罪に問われています。

日本語では「第二級暴行」「治安や秩序を乱す行為」などと訳せますが、米国メリーランド州法上の罪名なので、日本の刑法上の「暴行罪」とまったく同じと考える必要はありません。

また、逮捕・起訴されたことと、有罪が確定したことも別です。

ランディーン氏については、現時点で裁判による有罪判決が確定したわけではありません。

現在も拘置されている?翌日に釈放

ランディーン氏は現在も拘置されているわけではありません。

Marylandの裁判記録を確認したNew York Timesによると、9月4日の初回出廷後、自己誓約(own recognizance)で釈放されています。

自己誓約による釈放は、一定の条件のもと、保釈金を支払って拘置を解かれる形とは異なります。

したがって、

「粘着テープで拘束された男性は現在も刑務所にいる」

という状態ではありません。

現地報道では次回の裁判期日として2026年10月19日も伝えられていますが、事件の司法手続き自体は今後も続きます。

FBIも調査|連邦起訴されたわけではない

機内で起きた出来事については、州警察だけでなくFBIも調査しています。

ABC Newsが伝えたFBIの説明では、機内で起きた事案について調査が続いています。

ただし、2026年9月8日時点で、この事件について新たに連邦犯罪で起訴されたという発表は確認できません。

つまり現在の整理は、

州レベルでは第二級暴行などの容疑で手続き中

機内での行為についてFBIの調査も継続中

です。

FBIが調査しているからといって、連邦犯罪での有罪が決まったわけではありません。

FAAも調査中|最大4万3658ドルは今回の罰金額ではない

FAAも618便の乗客トラブルを調査すると発表しています。

FAAは航空機内で問題行動を起こす「unruly passenger」について厳しい行政対応を取っており、違反内容によっては高額の民事制裁金を科すことがあります。

FAAの2026年時点の案内では、1件の違反につき最大43,658ドルの民事制裁金を提案でき、ひとつの事件に複数の違反が含まれる場合もあります。

ただし、この43,658ドルは今回のランディーン氏に科された罰金額ではありません。

9月8日時点で、FAAがこの事件について具体的な民事制裁金を決定したとの発表は確認できていません。

FAAには刑事事件を起訴する権限もないため、FAAの行政調査とFBI・検察による刑事手続きは分けて考える必要があります。

「最大20年の刑になる」はまだ言えない

米国連邦法49 U.S.C. §46504には、航空機内で乗務員や客室乗務員を暴行・威嚇し、その職務遂行を妨害した場合などについて、罰金や最大20年の拘禁刑の対象となり得る規定があります。

ただ、これも一般的な連邦法上の規定です。

ランディーン氏に最大20年の刑が科されると決まったわけではなく、9月8日時点で同条による連邦起訴も確認されていません。

数字だけを見るとインパクトがありますが、

「粘着テープで縛られた男性は最大20年」

と現時点で結論付けるのは早すぎます。

今後、FBIの調査を経て連邦レベルの手続きが進むのか、それとも現在確認されている州レベルの事件として進むのかを見守る必要があります。

アメリカン航空618便はその後どうなった?

男性をボルティモアで降ろした後、618便はそのまま運航を打ち切ったわけではありません。

アメリカン航空は、警察が当該乗客の降機を支援した後、便は本来の目的地へ運航を続けたと説明しています。

つまり、

機体故障でボルティモアへ緊急着陸し、そのまま欠航

という出来事ではありません。

乗客トラブルを収束させるために途中で目的地を変更し、当該乗客を降ろした後、ニューアークへ向かったという流れです。

まとめ|乗客が勝手に制裁として縛った事件ではない

2026年9月3日のアメリカン航空618便では、乗客の騒動を受け、男性が結束バンド状の拘束具と粘着テープでファーストクラスの座席へ固定されました。

同乗者の証言では、男性の攻撃的な言動が身体的な争いへ発展し、元法執行機関関係者を含む乗客らが介入。客室乗務員から提供された拘束具や粘着テープを使い、ボルティモアへ着陸するまで制止していたとされています。

そのため、一般の乗客が腹を立て、勝手に相手を粘着テープで縛って制裁した事件ではありません。

一方で、この事例を「アメリカでは一般人が自由に他人を縛っていい」と一般化することもできません。

618便は機体故障ではなく乗客トラブルを理由にボルティモアへ目的地を変更。ランディーン氏は着陸後に州レベルの第二級暴行などの容疑で逮捕されましたが、翌日に自己誓約で釈放されています。

FAAとFBIの調査は続いており、9月8日時点で具体的なFAAの制裁金や新たな連邦起訴は確認されていません。

写真だけを見ると異様な「粘着テープ拘束」ですが、経緯を追うと、飛行中に起きた危険な状況を地上の警察へ引き継ぐまで抑えるための対応だったというのが、現時点で確認できる事件の姿です。

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