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漫画/アニメ原作ゲーム大全|第6回:シティーハンター(PCエンジン)

『シティーハンター(PCエンジン/1990)』原作再現とオリジナル要素が交錯するハードボイルド・アクション

1990年、NECアベニューからPCエンジン向けにリリースされた『シティーハンター』は、北条司の大ヒット漫画・アニメをゲーム化した横スクロールアクション。
新宿を舞台に、銃を手にした冴羽リョウが悪党たちをなぎ倒していく——そのビジュアルと雰囲気は、当時のファンの心を鷲掴みにしました。

しかし、このゲームは単なるキャラゲーに留まらず、原作の名場面を再現しつつも大胆なアレンジやゲームオリジナル要素を盛り込み、独自のプレイ体験を生み出しています。
発売当時はアニメ第3期が放送中で、まさに作品の人気が最高潮。ファンの期待を背負って登場した本作は、今振り返っても一味違うキャラクターゲームとして語り継がれています。

📘 作品概要・基本情報

PCエンジン版『シティーハンター』は、1990年3月16日にサンソフト(サン電子)から発売されたアクションゲーム。原作は北条司の大人気漫画『シティーハンター』で、当時すでにアニメも放送され、冴羽獠と槇村香のコンビはお茶の間でも広く知られていました。

ゲームは横スクロール型のアクションステージを基本とし、プレイヤーは冴羽獠を操作して依頼を解決しながら進行します。舞台は新宿を中心に、原作でもおなじみの裏社会や夜の街を感じさせる背景が描かれ、銃撃戦や接近戦を駆使して敵を倒していくシステムが採用されました。

特筆すべきは、当時のPCエンジンならではのグラフィック表現とBGMのクオリティです。原作の雰囲気を意識した都会的なBGMは、ファンの間で「サントラ化してほしい」と語られるほど。背景も高層ビルのネオンや繁華街の看板など細かく描き込まれ、1990年当時のハード性能を最大限に引き出していました。

また、ゲーム内のミッションは「依頼人からの依頼を受ける」という原作らしい流れを踏襲し、時にはターゲットを追跡し、時には護衛任務に挑むなど、単なるアクションだけでなく物語性も加わっています。プレイヤーは依頼をこなしながら、冴羽獠の魅力でもある“ハードボイルドとコメディの絶妙なバランス”をゲーム内で体感できました。

🧩 原作との違い・アレンジ要素

PCエンジン版『シティーハンター』は、原作やアニメの雰囲気を下敷きにしつつも、ゲームとして成立させるために大幅なアレンジが施されています。

まず大きな違いは、ストーリーの構成です。原作やアニメの有名な依頼エピソードが直接再現されているわけではなく、「ゲーム用のオリジナル依頼」が中心。依頼人のキャラクターや事件の背景もゲーム独自に作られており、原作ファンには新鮮に映りました。

アクション面でも、獠の戦闘スタイルは原作よりもゲーム寄りにチューニングされています。原作では拳銃の名手としての一撃必殺が魅力ですが、本作では連射やジャンプ撃ちが可能で、接近戦も多用するゲーム的バランスに変更。また、ゲーム内では敵キャラが大量に登場するため、原作にはない「雑魚敵」や「ボス戦専用キャラ」が多数追加されています。

ゲーム進行の合間には、冴羽リョウと槇村香の軽妙なやり取りが短い会話シーンとして挿入され、原作らしい空気感を演出しています。香がリョウの軽口をたしなめる場面はありますが、コミカルな「巨大ハンマー制裁」といった派手な演出はなく、あくまで台詞と表情差分による控えめなコミカル要素にとどまっています。そのため、アニメのギャグシーンを期待すると物足りなさを感じるかもしれませんが、落ち着いたテンポで原作の雰囲気を再現しているとも言えます。

総じて、本作は「原作のキャラクター性と雰囲気を生かしつつ、ゲームとして遊びやすく再構成した作品」と言えます。オリジナル依頼や新規キャラクターは当時のプレイヤーにとって貴重な追加要素であり、原作とゲーム双方の魅力を味わえる一作となっています。


🧠 原作ファン満足度・初見プレイヤー評価

PCエンジン版『シティーハンター』は、発売当時から原作ファンの間で賛否が分かれたタイトルでした。
ファンにとって嬉しかったのは、冴羽リョウや槇村香をはじめとした主要キャラクターのビジュアル再現度の高さと、アニメ版の雰囲気を残した立ち絵・会話シーン。原作のストーリーラインを意識した展開もあり、「あの世界をゲームで追体験できる」という点は好意的に受け止められました。

しかし一方で、ゲームとしての操作感や難易度バランスに不満の声も多く、特にアクションパートの判定のシビアさや敵配置の理不尽さが指摘されました。『PC Engine FAN』誌(1990年当時)でも「雰囲気は良いが、ゲームとしての快適さに欠ける」といったレビューが見られます。

初見プレイヤー、特に原作を知らない層からは「キャラゲーらしい雰囲気ゲー」という評価に留まることが多く、アクションゲームとしての完成度でファン層を超えて広がることはやや難しかったようです。それでも、当時のアニメ人気と相まって「原作愛があれば楽しめる一本」として一定の支持を集めました。

🎯 原作らしさを残したサービスカット演出

PCエンジン版『シティーハンター』では、ゲーム進行中に突如挿入される「サービスカット」が大きな特徴のひとつです。たとえば、バニーガール風の女性が驚きの表情で「キャー!チカン!!」と叫ぶ場面など、原作ファンにはおなじみの冴羽リョウの“もっこり”体質を、ギャグタッチで表現しています。

こうした演出は、ただの色物要素ではなく、作品の空気感をゲームの中でもしっかり味わってもらうための仕掛けでした。過激さを直接的に描くのではなく、表現をマイルドにして笑える方向へシフトしているため、当時の家庭用ゲームの規制基準にも合致。結果として、原作を知らないプレイヤーにもコミカルなイベントとして受け入れられました。

このように、ストーリー進行やアクションの合間に差し込まれる小ネタ的カットシーンは、単なるファンサービスを超えて「シティーハンターらしさ」を伝える重要な要素となっています。

🎯 まとめ 〜“もっこり”がなくてもシティーハンター〜

PCエンジン版『シティーハンター』は、原作の象徴的ギャグ要素である“もっこり”を封印し、冴羽リョウのクールでプロフェッショナルな一面を前面に出した異色のゲーム化作品です。
アクションアドベンチャーとしてはテンポの良い操作性と、原作の雰囲気を大切にしたビジュアル表現が光り、当時のPCエンジンユーザーの記憶に強く残る一本となりました。

確かに、原作ファンから見れば「あのノリ」がないことは物足りなさにつながったかもしれません。
しかし、それでも街を舞台に事件を解決していくシナリオや、要所で見せるリョウの冷静さと鋭い推理力は、間違いなく“シティーハンターらしさ”を宿しています。

今振り返れば、本作は“ギャグ抜きの冴羽リョウ”という新しい解釈に挑戦した、珍しい存在です。
もっこりはなくても、リョウはやっぱりリョウ。銃を構え、事件に立ち向かうその姿は、プレイヤーの心に今なお響き続けます。

それでも冴羽リョウはカッコいい

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