- ふるさと納税が863億円赤字なのはなぜ?利用者の2,000円負担・控除はどうなる
- ふるさと納税が863億円「赤字」とはどういう意味?
- 1兆2727億円も寄附されたのになぜマイナス?
- 残った5038億円より募集経費の方が大きかった
- 5901億円の「募集経費」は何に使われた?
- 全国すべての自治体がふるさと納税で赤字なの?
- マイナスになったのは2024年度だけではない
- 863億円マイナスなら、ふるさと納税をした人も損する?
- 「自己負担2,000円」なら誰でも必ず得するわけではない
- 863億円マイナスで「2,000円の仕組み」はなくなる?
- 2026年10月から何が変わる?
- 高所得者のふるさと納税にも上限が設けられる
- ポイント付与禁止とも別の話
- ふるさと納税は廃止される?
- 「863億円マイナス」で分かったこと
- まとめ|「863億円赤字」と利用者の損得は分けて考える
ふるさと納税が863億円赤字なのはなぜ?利用者の2,000円負担・控除はどうなる

「ふるさと納税が863億円の赤字になった」というニュースを見て、「今年ふるさと納税をすると損するの?」「自己負担2,000円の仕組みが変わるの?」と気になった人もいるかもしれません。
ただ、この863億円はふるさと納税を利用した人の損失額ではありません。
会計検査院が2024年度について、全国の地方公共団体が受け入れたふるさと納税から、住民税控除による歳入減と、返礼品・送料・ポータルサイト利用料などの募集経費を差し引いて計算したところ、地方公共団体全体の「決算への影響額」がマイナス863億円になったという話です。
そして2026年9月現在も、控除上限の範囲内で必要な手続きを行えば、寄附額のうち2,000円を超える部分について所得税や住民税から控除を受けられる基本的な仕組みは続いています。
では、全国で1兆円を超える寄附が集まっているのに、なぜマイナスになるのでしょうか。
ふるさと納税が863億円「赤字」とはどういう意味?
まず、「赤字」という言葉の意味をはっきりさせておきましょう。
会計検査院が2026年6月に公表した「地方財政計画の事後検証等の状況について」では、2024年度のふるさと納税による全国の地方公共団体全体への「決算への影響額」がマイナス863億円だったとされています。
これは、
全国の自治体が合計863億円の赤字決算になった
という意味ではありません。
ふるさと納税によって自治体全体の歳入と歳出がどのように動いたかを、会計検査院が一定の方法で計算した結果です。
計算の考え方はかなりシンプルです。
ふるさと納税の受入額
- 住民税控除額
- ふるさと納税の募集に係る経費
= 決算への影響額
2024年度は、この最後の数字が約−863億円になりました。
ニュースで「ふるさと納税が863億円の赤字」と表現されているのは、この部分を指しています。
1兆2727億円も寄附されたのになぜマイナス?
会計検査院が示した2024年度の数字を見ると、マイナスになる仕組みが分かりやすくなります。
| 項目 | 2024年度 |
|---|---|
| ふるさと納税受入額 | 約1兆2727億円 |
| 住民税控除額 | 約7688億円 |
| 歳入総額の増減分 | 約5038億円 |
| 募集に係る経費 | 約5901億円 |
| 決算への影響額 | 約−863億円 |
一見すると、「1兆2727億円も自治体に入っているなら、かなりプラスなのでは?」と思います。
しかし、ふるさと納税にはもう一方の動きがあります。
たとえば札幌市に住む人が北海道外の自治体へふるさと納税をすると、寄附先の自治体にはお金が入りますが、その人が住む自治体では翌年度の住民税が控除され、その分の税収が減ります。
全国全体で見ると、
寄附を受け取る自治体の収入
だけを見ることはできません。
同時に、
寄附した人が住む自治体で減った住民税
も考える必要があります。
会計検査院の集計では、2024年度の受入額約1兆2727億円に対し、同年度の住民税控除額は約7688億円。
その結果、歳入総額の増減分は約5038億円となりました。
ここで一つ注意したいのは、表示された「1兆2727億円」と「7688億円」を単純に引くと5039億円になることです。
会計検査院の資料は億円未満を原則として切り捨てて表示しているため、表に出ている数字だけを足し引きすると合計が1億円程度ずれる場合があります。会計検査院が示している正式な集計値は5038億円です。
また、2024年度の受入額と2024年度の住民税控除額は、同じ年度の地方財政への影響を見るために並べた数字です。ふるさと納税の住民税控除は原則として寄附した翌年度に反映されるため、「2024年度に寄附された1兆2727億円のうち7688億円がそのまま控除された」という1対1の関係ではありません。
残った5038億円より募集経費の方が大きかった
住民税控除を差し引いても、全国全体では約5038億円のプラスがあります。
それでも最終的にマイナスになった理由が、ふるさと納税を集めるためにかかった経費です。
2024年度の募集に係る経費は約5901億円。
つまり会計検査院の集計では、
歳入総額の増減分 約5038億円
に対して、
募集経費 約5901億円
がかかりました。
その差が約863億円のマイナスです。
ふるさと納税は、寄附された金額がそのまま自治体の事業に使える制度ではありません。
返礼品を用意し、それを寄附者へ送り、ポータルサイトで寄附を受け付け、決済や事務処理を行うために費用がかかります。
5901億円の「募集経費」は何に使われた?
募集経費には、返礼品だけでなくさまざまな費用が含まれています。
代表的なのは、
- 返礼品の調達費
- 返礼品の送料
- ふるさと納税ポータルサイトなどへの支払い
- 決済費
- 広報費
- 寄附を受け付けるための事務費
などです。
2024年度の募集経費5901億円は、受入額約1兆2727億円の46.3%に当たります。
つまり、ふるさと納税として入ってきた金額の半分近くが、制度を運営し寄附を集めるための費用になっていた計算です。
ここで誤解したくないのは、5901億円すべてがポータルサイト会社へ支払われたわけではないことです。
ポータルサイト運営事業者への支払いは、その中の一部です。
返礼品そのものの調達や配送にも大きな費用がかかっています。
「ふるさと納税で5901億円が消えた」と考えるのも違います。
返礼品の生産者や配送事業者など地域の事業者へ支払われるお金も含まれているため、単純に「無駄になった5901億円」と見ることはできません。
今回の863億円は、あくまで地方公共団体の決算という視点で見た数字です。
全国すべての自治体がふるさと納税で赤字なの?
違います。
863億円は、全国の地方公共団体をまとめて計算した結果です。
自治体ごとに事情は大きく異なります。
全国から大量の寄附を集める自治体では、住民が他地域へ寄附することで減る税収よりも、受け入れる寄附の方がはるかに大きくなるケースがあります。
逆に、人口や所得の多い都市部では、多くの住民が他の自治体へ寄附することで住民税の流出額が大きくなりやすくなります。
そのため、
「ふるさと納税を行っている自治体は全部赤字」
ということではありません。
今回のマイナス863億円は、プラスになった自治体もマイナスになった自治体も含めて、全国全体を合計した数字です。
マイナスになったのは2024年度だけではない
会計検査院は2017年度以降についても同じ考え方で影響を調べています。
決算への影響額は、
- 2017年度:約−157億円
- 2018年度:約−150億円
- 2019年度:約−681億円
- 2020年度:約+211億円
- 2021年度:約+18億円
- 2022年度:約−580億円
- 2023年度:約−1060億円
- 2024年度:約−863億円
となっています。
つまり、2020年度と2021年度を除けばマイナスです。
2024年度に突然赤字になったわけではありません。
寄附額そのものは大きく伸びていますが、それと同時に住民税控除額や募集経費も膨らんでいるため、全国の自治体全体という視点では単純に「寄附が増えるほど収入も増える」とはならないわけです。
863億円マイナスなら、ふるさと納税をした人も損する?
ここはまったく別の話です。
今回の−863億円は利用者個人の損得を示した数字ではありません。
2026年9月現在も、ふるさと納税の基本的な寄附金控除制度は続いています。
控除上限の範囲内で寄附し、確定申告やワンストップ特例など必要な手続きを行った場合、寄附額のうち2,000円を超える部分について、所得税や個人住民税から原則として控除を受けられます。
たとえば控除上限内で5万円を寄附したからといって、今回の863億円マイナスを理由に突然控除額が減るわけではありません。
今回のニュースだけを見て、
「今年からふるさと納税をすると損する」
と考える必要はありません。
「自己負担2,000円」なら誰でも必ず得するわけではない
一方で、「ふるさと納税なら何万円寄附しても自己負担は必ず2,000円」という意味でもありません。
控除できる金額には上限があります。
上限は、
- 所得
- 家族構成
- 各種所得控除
- 住宅ローン控除など他の税額控除
によって変わります。
控除上限を超えて寄附すれば、その分は自己負担になります。
また、確定申告が必要な人が申告をしなかったり、ワンストップ特例の条件を満たしていなかったりすれば、想定どおりの控除を受けられない場合があります。
「2,000円で何でももらえる制度」ではなく、上限内で正しく手続きをした場合に、2,000円を除く部分が原則として控除される制度と考えるのが正確です。
863億円マイナスで「2,000円の仕組み」はなくなる?
今回の会計検査院の報告によって、自己負担2,000円を基本とする控除の仕組みがなくなったわけではありません。
ただし、ふるさと納税そのものの制度見直しは進んでいます。
特に2026年10月からは、自治体が寄附金のうち実際に事業へ使える部分を増やすための新しい基準が段階的に始まります。
これまで大きくなってきた募集経費を抑え、寄附金がより多く自治体に残るようにする方向です。
2026年10月から何が変わる?
2026年度税制改正では、ふるさと納税の指定基準に「寄附金活用可能額」という考え方が加わります。
簡単にいえば、
寄附額から募集にかかった費用を引いた後、自治体が実際の事業に使えるお金を一定割合以上残す
というルールです。
最終的には、寄附額の60%以上を自治体が活用できる状態にすることが求められます。
ただし、いきなり60%になるのではなく、段階的に引き上げられます。
| 指定対象期間 | 寄附金活用可能額の割合 |
|---|---|
| 2026年10月~2027年9月 | 52.5%以上 |
| 2027年10月~2028年9月 | 55%以上 |
| 2028年10月~2029年9月 | 57.5%以上 |
| 経過措置終了後 | 60%以上 |
つまり、2024年度に募集経費が受入額の46.3%に達していたような状況に対し、自治体に残る割合をもっと増やしていこうという方向です。
ただし、この見直しを、
「863億円の赤字が9月に発覚したので、急きょ決まった」
と考えるのは間違いです。
2026年度税制改正としてすでに進められている制度変更であり、今回話題になった会計検査院の数字とは分けて考える必要があります。
高所得者のふるさと納税にも上限が設けられる
もう一つ、将来変更されるのが高額なふるさと納税に関する控除上限です。
現在は個人住民税の特例控除について、所得割額の2割が基本的な上限になっています。
2026年度税制改正では、これに固定額の上限も加え、所得割額の2割と固定額のいずれか低い方を限度とする仕組みに改められます。
この変更が適用されるのは2028年度分以後の個人住民税です。
そのため、これも「今すぐ自己負担2,000円の仕組みが変わった」という話ではありません。
ポイント付与禁止とも別の話
ふるさと納税では、2025年10月からポータルサイトによる寄附額に応じたポイント付与が禁止されています。
これも今回の863億円マイナスが明らかになったことで突然始まった変更ではありません。
返礼品競争や募集経費が大きくなりすぎないよう、制度のルールは以前から段階的に見直されてきました。
今回の会計検査院の報告は、その制度を地方財政全体から見たときに、どれほどのお金が入り、どれほどの控除や経費が発生しているのかを数字で示したものです。
ふるさと納税は廃止される?
2026年9月3日時点で、今回の−863億円を理由にふるさと納税制度を廃止すると決まったわけではありません。
実際に進んでいるのは、制度そのものをなくすことではなく、
寄附を集めるためにかかる経費を抑え、自治体が実際に使える金額を増やす
方向の見直しです。
一方で、会計検査院は、ふるさと納税の受入額などが今後さらに増加した場合、地方財政へのマイナス方向の影響が大きくなる可能性にも触れています。
制度が大きくなったからこそ、返礼品や仲介サイトを含めたコストをどこまで許容するのかは、今後も見直しが続く部分でしょう。
「863億円マイナス」で分かったこと
最後に、今回のニュースで混同しやすい部分をまとめます。
| 疑問 | 答え |
|---|---|
| 863億円とは? | 2024年度の地方公共団体全体の「決算への影響額」 |
| 全国自治体が863億円の赤字決算? | 違う |
| ふるさと納税受入額 | 約1兆2727億円 |
| 住民税控除額 | 約7688億円 |
| 歳入総額の増減分 | 約5038億円 |
| 募集経費 | 約5901億円 |
| 最終的な決算への影響額 | 約−863億円 |
| 全国すべての自治体がマイナス? | 違う |
| 利用者が863億円損した? | 違う |
| 自己負担2,000円の仕組みは終了? | 終了していない |
| ふるさと納税廃止が決定? | 決まっていない |
| 制度見直しはある? | 2026年10月から新しい指定基準が段階的に始まる |
まとめ|「863億円赤字」と利用者の損得は分けて考える
「ふるさと納税が863億円の赤字」という言葉だけを見ると、制度そのものが破綻したようにも見えます。
実際にはそうではありません。
会計検査院が2024年度について、
ふるさと納税受入額
- 住民税控除額
- 募集経費
を計算したところ、地方公共団体全体の「決算への影響額」が約−863億円になったというのが正確な意味です。
1兆2727億円もの寄附が集まっていても、寄附者が住む自治体では住民税収が減り、さらに返礼品や送料、ポータルサイト、決済、事務などに費用がかかります。
その結果、全国全体では募集経費の方が歳入増を上回りました。
ただし、これはふるさと納税を利用した人が863億円損したという話ではありません。
控除上限の範囲内で必要な手続きをした場合に、寄附額のうち2,000円を超える部分について控除を受けられる基本的な仕組みは現在も続いています。
今回の数字から見えてくるのは、「ふるさと納税を使うと損」という話ではなく、1兆円を超える規模になった制度を維持するために、返礼品や仲介、配送などへどれだけコストをかけるべきなのかという別の問題です。