サブカル文化史アーカイブ

日本の島はなぜ6,852から14,125に増えた?新しい島が7,000個できたわけではない

日本の島はなぜ6,852から14,125に増えた?7,273島増えた理由

長いあいだ、日本の島の数として広く使われてきたのは「6,852島」でした。

ところが現在、国土地理院が示している数字は14,125島です。

差は7,273島。2倍以上になっています。

数字だけを見ると、この数十年のあいだに日本の周りで7,000を超える新しい島が見つかったようにも思えます。火山活動で島が増えたのか、日本の領土まで広がったのか、と考える人もいるでしょう。

しかし、そうではありません。

国土地理院は、14,125島という結果について、新たな島が大量に発見されたわけではないと説明しています。大きく影響したと考えられているのは、測量技術の進歩によって地図が詳しくなり、以前より細かな海岸線や小さな陸地まで表現できるようになったことです。

つまり、急に日本列島の周りに島が増えたのではなく、同じ国土を以前より細かく把握して数えられるようになったことで、公表される「島の数」が変わったのです。

ただ、この話は「昔の地図が粗かったから」で終わりません。

そもそも何を「島」と呼ぶのでしょうか。周囲100m未満なら島ではないのでしょうか。人工島や湖に浮かぶ島はどう扱うのでしょう。そして14,125島という数字は、本当に日本にあるすべての島を数え切った数字なのでしょうか。

調べていくと、「日本には島がいくつある?」という単純そうな疑問が、意外に一筋縄ではいかないことが分かります。

現在、日本の島は「14,125島」が公表値

国土地理院は2023年2月28日、日本の島を一定の条件で数えた結果、14,125島になったと発表しました。

使用したのは、国土地理院が維持管理している2022年1月時点の電子国土基本図です。2023年の地形をその年に一から測ったという意味ではなく、2022年1月時点の電子地図を使った計数結果が、2023年2月28日に公表されたという順番です。

2026年9月現在も、国土地理院の「日本の島の数」では14,125島が公表値として示されています。

それ以前に広く使われていたのが、海上保安庁が1987年に公表した6,852島でした。

したがって、

14,125-6,852=7,273島

公表値だけを比べれば、7,273島増えたことになります。

日本の島の公表数が1987年の6,852島から2023年の14,125島へ変わり、測量技術の進歩と地図表現の詳細化が大きく影響したことを示す図解

ただし国土地理院が説明している通り、これは7,273島の新島が誕生・発見されたという意味ではありません。

では、なぜ同じ日本でこれほど数字が変わったのでしょうか。

7,000島以上も増えた大きな理由は、地図が詳しくなったから

国土地理院が大きな要因として挙げているのが、測量技術の進歩による地図表現の詳細化です。

昔より細かな地形情報を取得できるようになれば、地図に描ける海岸線も詳しくなります。

以前の地図では一続きのように表現されていた場所でも、現在なら間に海が入り込んでいることや、周囲に別の小さな陸地があることまで表せる場合があります。

この違いを具体的に示しているのが、国土地理院が紹介している江の島周辺です。

現在の地図で、今回の計数対象に当たる「自然に形成されたと判断した周囲長0.1km以上の島」を見ると、江の島周辺には7島が該当します。国土地理院は同じページで、1983年の地図から現在にかけて、より詳細な海岸線を表現できるようになった例も示しています。

国土地理院の江の島周辺の例をもとに、1983年の地図表現では2か所、現在の詳細な地図では7か所の陸地を計数できることを示した模式図

これは「江の島が後から7つに分裂した」という話ではありません。

地形をより細かく表現できる地図になった結果、同じ地域でも、計数条件を満たす個々の陸地を以前より明確に捉えられるようになったという例です。

6,852島から14,125島への変化も、こうした地図の詳細化が大きく影響したと国土地理院は説明しています。

地図と「島」の関係という点では、つぶログで以前取り上げた中ノ鳥島は、今回とは反対方向の面白さを持っています。かつて地図や行政制度にまで入りながら、後の精密な調査で存在しないとされた島です。今回の14,125島の話と合わせると、地図に描かれる情報も、その時代に人間がどこまで地形を確認できたかと無関係ではないことがよく分かります。

日本領になったのに、後から「存在しない」と分かった島?幻の中ノ鳥島

昔は「小さな島を数えなかった」から6,852島だった?

ここは誤解しやすいところです。

「昔は大きな島だけを数えていた。今回は小さな島まで追加した。だから倍になった」

という単純な話ではありません。

現在、国土地理院が電子国土基本図から島を数えるときに使っている条件の一つが、

周囲長0.1km以上

です。

0.1kmは100mです。

実はこの100mという基準は、今回初めて導入されたものではありません。

国土地理院のFAQでは、1987年に海上保安庁が公表した島数調査で使われた基準を踏襲したものと明記されています。

1987年の6,852島も、その時代の地図を使い、一定の条件に基づいて数えられた数字でした。

だから、

「昔の6,852島は単なる数え間違いだった」

とするのも適切ではありません。

当時利用できた地図と調査条件で数えた結果が6,852島。現在の詳細な電子地図を使い、改めて一定条件で数えた結果が14,125島です。

しかも100mという条件自体は引き継がれています。

数字が大きく変わった背景を見るうえで重要なのは、基準が単純に緩くなったことではなく、基準を当てはめる地図そのものが精密になったことなのです。

14,125島は、どうやって数えた?

では、現在の14,125島は具体的にどう数えたのでしょうか。

国土地理院の方法は、「電子地図にある陸地を全部数える」というものではありません。

最初に、離島振興法や有人国境離島法など、法令等に基づく島を重複しないように計数します。

それ以外については、2022年1月時点の電子国土基本図に描かれていた陸地を調べます。

その数は、なんと120,729

ただし、これは「日本には12万729島ある」という意味ではありません。

その120,729の陸地のうち、周囲長0.1km以上の海岸線で囲まれ、国土地理院が保有する資料の範囲で自然に形成されたと判断できる陸地を計数します。

さらに、湖や沼など内水面にある陸地は対象外です。

こうした条件で数えた結果が14,125島です。

120,729と14,125に大きな差があるのは、「地図に陸地として描かれているもの」と「今回のルールで島数として計上するもの」が同じではないからです。

「周囲100m以上」が島の定義ではない

ここでもう一つ、かなり大事な点があります。

現在の計数に「周囲長0.1km以上」という条件があるなら、

周囲100m未満のものは島ではないのか?

と思うかもしれません。

答えは、違います。

国土地理院のFAQでも、この点は最初の質問として明確に否定されています。

日本が批准している「海洋法に関する国際連合条約」では、島は、

自然に形成された陸地で、水に囲まれ、高潮時にも水面上にあるもの

とされています。

ここに「100m以上」という条件はありません。

したがって、周囲長0.1km未満でも、この条件に該当する陸地なら島になります。

つまり、

「何を島と呼ぶか」という定義

「全国の島数をどう数えるか」という計数ルール

は別物です。

100mという数字は、14,125島を算出するために使われた計数条件の一つであって、「これより小さいものは島ではない」という境界線ではありません。

実は、日本には14,125島より多くの島がある

ここまで来ると、少し妙なことに気づきます。

現在の公式な島数は14,125島。

ところが国土地理院自身が、周囲長0.1km未満の小さな島を含めれば、日本の島は公表値より多いと明記しています。

つまり14,125島は、

「日本に存在する島を、一つ残らず数え切った絶対的な総数」

ではありません。

あくまで、全国を一定条件で統一して数えた現在の公表値です。

では「本当は何島なのか」と聞きたくなりますが、条件を外せば非常に小さな陸地まで対象になり、どこまでを数えるかという問題が再び出てきます。

しかも、島そのものの定義は国際条約にある一方、島を何個と数えるかについて国際的な統一ルールはありません。 国土地理院もその点を明記しています。

そのため、国ごとの「島の数ランキング」なども、数字だけを並べれば単純に比較できるとは限りません。

人工島は14,125島に入る?

人工島についても、「全部入る」「全部入らない」と単純には言えません。

今回の計数では、まず法令等に基づく島を別に数えています。

そのほか、電子国土基本図から対象を選ぶ際には、過去の地図などを使って自然に形成された陸地かどうかを判断します。

国土地理院が例として挙げているのが、長崎空港と八景島です。

現在の長崎空港は大規模に造成された空港ですが、過去の地図を調べると、もともと自然島が存在していたことが確認できます。そのため国土地理院は「自然に形成された陸地と判断した例」としています。

一方、横浜市の八景島は「自然に形成された陸地ではないと判断した例」です。

ここで注意したいのは、

今回の島数に入らない人工陸地=日本の領土ではない

という意味ではないことです。

国土地理院も、今回の計数条件を満たさない人工の陸地や自然形成島を含め、すべての陸地が日本の領土であると説明しています。

「14,125島の一つとして数えるか」と「日本の領土であるか」は別の話です。

湖の中に浮かぶ島は数える?

海ではなく、湖に浮かぶ島はどうでしょう。

今回の国土地理院の計数では、湖沼など内水面にある陸地は対象外です。

国土地理院は具体例として、洞爺湖の「中島」を計数対象外の例に挙げています。

だからといって、「湖に浮かぶ陸地は島ではない」という意味ではありません。

ここでも、島という地形の考え方と、14,125島を算出するための計数条件を分ける必要があります。

「水に囲まれている陸地を全部数えた数字」が14,125なのではないのです。

島が倍以上になっても、日本の領土や面積は増えていない

6,852島が14,125島になったなら、日本の領土も広くなったのでしょうか。

これについては国土地理院がはっきり否定しています。

今回の再計数によって、日本の領土・領海には影響していません。国土面積にも影響しません。

島を「何個」と区切って数えることと、実際にどれだけの陸地が存在するかは別だからです。

国土面積については、電子国土基本図をもとにすべての陸地を計測しています。

例えば、昔の地図では一つのまとまりのように表現されていた場所を、現在は複数の陸地として明確に描けるようになったとしても、それだけで実際の土地の面積が増えるわけではありません。

今回変わったのは日本の領土そのものではなく、一定条件で数えた島の個数です。

なお、地震や火山活動、海岸の隆起などによって国土の実際の面積が変化すること自体はあります。実際、国土地理院は能登半島地震による海岸隆起を反映した国土面積の変化も別途公表しています。これは今回の6,852島から14,125島への再計数とは別の話です。

では、なぜ島の数に「絶対の正解」がないのか

島そのものには国際条約上の定義があります。

しかし、「一つの国に島がいくつあるか」を数える方法には国際的な統一ルールがありません。

小さな島をどこまで数えるのか。

人工的な陸地をどう扱うのか。

湖にある島を含めるのか。

どの時点の地形と地図を使うのか。

数える条件が変われば、結果も変わります。

しかも自然の海岸線そのものが、定規で引いた線のように単純ではありません。

小さな岩や入り江、細い水路が複雑に連続する場所もあります。

「島はいくつ?」という質問には自然界に一つの数字が最初から書き込まれているわけではなく、地形をどう把握し、どんな条件で区切って数えるかという人間側のルールも関わっています。

だから6,852も、14,125も、それぞれの条件と時点を離れて存在する数字ではないのです。

14,125島という数字も、将来また変わるかもしれない

現在の14,125島も、永久に固定されるとは限りません。

国土地理院は、測量技術の進歩によって、今後も計上対象となる島の数が変わる場合があると説明しています。

それだけではありません。

自然の島そのものも、

浸食、海面上昇、火山活動などによって地形が変化する可能性があります。

そのため国土地理院は、今後も国土の現状を把握し、島の数を適時見直していくとしています。

現時点で次にいつ数え直すのか、あるいは次の公表値が何島になるのかは示されていません。

14,125は現在の公表値ですが、「これで未来永劫確定」という数字ではありません。

今「日本には島がいくつある?」と聞かれたら

2026年9月現在なら、

「国土地理院が一定条件で数えた現在の公表値は14,125島」

と答えるのが最も正確です。

少し補足するなら、

「ただし、周囲100m未満の小さな島などはこの公表値には含まれないため、日本に存在する島を一つ残らず数えた絶対数ではない」

となります。

以前の6,852島が完全な間違いだったわけでもありません。

昔は昔の地図と条件で数えた。

現在は、より詳しくなった電子地図を使って改めて数えた。

その違いが、6,852と14,125という大きな数字の差として現れています。

まとめ|増えたのは島そのものより、「見分けられる島」だった

日本の島の公表値は、6,852島から14,125島へ変わりました。

差は7,273島です。

しかし、日本の周りに7,273もの島が突然生まれたわけでも、それだけの未知の島が新発見されたわけでもありません。

大きく影響したのは、測量技術が進歩し、昔の地図では十分に表現できなかった細かな海岸線や小さな陸地まで、現在は詳しく描けるようになったことでした。

しかも、昔も現在も「周囲長0.1km以上」という基準は計数に使われています。

変わったのは、単純に「小さい島まで数えるようになった」ことではありません。

同じ条件を当てはめても、地図が詳しくなれば、そこから見つけ出せる陸地の数が変わる。

そして14,125島という数字さえ、日本に存在するあらゆる島を数え切った絶対数ではありません。

100m未満でも島はあります。人工島や湖の島には今回の計数上の別の扱いがあります。数え方にも世界共通のルールはありません。

「日本には島がいくつある?」

数字だけなら、今の答えは14,125です。

けれど、その数字が6,852から変わった理由までたどると、見えてくるのは島の増減だけではありません。

同じ日本列島でも、測る技術が変わり、地図が変わり、見分けられる地形が増えれば、私たちが当然のように使ってきた「島の数」まで変わる。

7,273島も増えたように見える不思議の正体は、日本列島が突然別の姿になったことではなく、私たちがその姿を以前より細かく見られるようになったことにあります。

-サブカル文化史アーカイブ
-, , , ,