
「音楽をやろう、星」——落伍した元スター星一に手を差し出すのは、かつての仲間烏間光。
彼は歌うと必ず嘔吐してしまう。カリスマとトラウマが同居する体で、もう一度“歌”へ戻るにはどうすればいいのか。
『転がる星屑ども(1)』は、才能の再起を派手な奇跡で片付けない。段取り・習慣・他者のまなざしを組み直していく地道な物語だ。
発売情報(まず事実)
- 発売日:2024年2月20日/レーベル:青騎士コミックス(KADOKAWA)
- 判型・頁:B6判・216ページ/定価:792円(税込)
- ISBN(紙):4047377988
- 著者:有海とよこ
出典:KADOKAWA公式の書誌ページ/Amazonの書誌。
どんな物語?(1巻の範囲・ネタバレ最小)
一度は頂点に立った星一は、沈黙の期間を経て“歌えない身体”になっている。
光は、彼の癖や逃避や言い訳を、観察と伴走でほどいていく。1巻では、バンドの再編、練習の設計、ステージに戻るまでの小さな実践が積み上がる。
目標は「勝つ」よりももう一度立つこと。だからこそ、読後に現実の自分のルーティンを見直したくなる。
読みたくなる具体:この1巻が刺さる5つの瞬間
1) 失敗の“直後”をどう設計するか
嘔吐の後、沈黙の間、視線の泳ぎ——星の弱さは生々しい。光は慰めではなく手順で支える。
何を先に片付け、何を後回しにするか。翌日の練習計画を1分で固める習慣化が、再起の最短路だと見せる。
2) 「努力」と「逃避」の境界線を引き直す
練習は、時に逃避にもなる。星の“やってる感”を、光は数字と録音で可視化し、現実に返す。
自分を誤魔化す余白が潰れるほど、ステージへの道が鮮明になる。
3) 他人の期待を“借景”にしない
SNSの声、元バンド仲間の視線、業界の噂。
それらはモチベになるが、行動の代替にはならない。1巻は、他人の熱狂にぶら下がらず、自分の運動神経を取り戻す過程を描く。
4) “うまくいく日”より“うまくいかない日の扱い”が物語
調子のいい日は誰でも歌える。
大事なのは、喉が開かない朝や、機材のトラブルに出くわしたときの段取り。
星の再起は、成功を増やす話ではなく、失敗の捌き方を洗練させる話だ。
5) ステージは“日常”の延長線上にある
大事なのは、本番ではなく日常の声の置き方。
生活の呼吸と発声のリズムが合った瞬間、舞台が遠くなくなる。この感覚を丁寧に描くので、派手ではないのに胸に残る。
作画とコマ運び:音を描く線
有海とよこの線は、音の手触りを描く。弦の震え、息の詰まり、ステージの空気密度。
台詞は削ぎ落とし、表情と身体で進める。だから「歌えた/歌えない」が一コマで刺さる。
1巻で分かること/分からないこと
- 分かる:星のトラウマの輪郭/光が“相棒”である理由/再起の段取り。
- 分からない:最終的な舞台の形/因縁の回収。ここが2巻の駆動力になる。
いま読む意味(最新動向)
シリーズは全2巻完結。最終2巻は2025年7月18日発売で、1巻→2巻の読み切り導線がはっきりしている。
1巻レビューから入って、最終巻レビューへ内部リンクで繋げる運用がしやすいタイミングだ。
まとめ:勝利より“立ち直り”を描く音楽譚
派手なサクセスストーリーではない。
それでも、ページを閉じると胸のどこかが静かに整っている。
うまくいかない日を、どう畳むか。この本は、その答えを音楽で示す。