- 『俺の料理』レビュー|2本のスティックで料理するPS1異色作を89点評価
- 『俺の料理』とは|1999年発売の本格料理アクション
- 2本のアナログスティックは、どう「料理する手」になったのか
- 本当の主役は料理ではなく「厨房を回すこと」
- 「忙しいほど面白い」が、難しさにもなる
- 2人対戦では、厨房管理そのものが攻撃になる
- 1999年、2本のスティックを何に使うかはまだ広がっていた
- 『俺の料理』はどう生まれたのか
- 全9ステージ・39種類の料理|一品覚えて終わりではない
- 「世界初の料理ゲーム」ではない
- 現在遊ぶ方法|PS5やSwitchでは遊べる?
- 携帯電話版『俺の料理DX』も存在した
- 89点・A Tier|操作の珍しさではなく、操作と忙しさがつながっている
- まとめ|『俺の料理』がゲームにしたのは「料理」より「手際」だった
『俺の料理』レビュー|2本のスティックで料理するPS1異色作を89点評価

1999年9月9日にPlayStationで発売された『俺の料理』は、2本のアナログスティックを動かして、切る、混ぜる、焼く、注ぐといった料理をこなしていくアクションゲームだ。
この説明だけなら、「アナログスティックを使った変わった料理ゲーム」で終わってしまう。しかし、実際に遊んでみると本作の面白さはもう一段奥にある。プレイヤーは料理の操作を覚えるだけでは足りない。注文が重なり、別の料理を火にかけたまま次の作業へ移り、客を待たせすぎないよう優先順位を変え、その途中で食い逃げやゴキブリといったトラブルにも対応しなければならない。
つまり『俺の料理』がゲームにしたのは、一品の料理ではなく「手を動かし続けながら厨房全体を回す忙しさ」だった。
つぶログでは本作を89点・A Tierと評価している。なぜそこまで高く評価できるのか。そして、なぜ90点台のS Tierにはあと一歩届かなかったのか。2本のアナログスティックの使い方から、厨房を回すゲーム構造、1999年という時代背景まで順番に見ていく。
『俺の料理』とは|1999年発売の本格料理アクション
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | 俺の料理 |
| 発売日 | 1999年9月9日 |
| 対応機種 | PlayStation |
| 発売元 | ソニー・コンピュータエンタテインメント |
| ゲーム製作 | argent/株式会社アジェンダ(スタッフロール表記) |
| 通常版価格 | 5,800円(税別) |
| 型番 | SCPS-10099 |
| JAN | 4948872100991 |
| プレイ人数 | 1~2人 |
| コントローラー | アナログコントローラ専用 |
| メモリーカード | 1ブロック |
| 収録規模 | 全9ステージ・39種類の料理と案内されている |
発売日については、後年の旧PlayStation Store系データなどに「1999年10月7日」とする記録も残っている。しかし、1999年9月の発売表では9月9日に掲載され、同年発売の公式サウンドトラック商品説明でも「99年9月9日に発売された」とされている。本記事では、当時資料との整合性を優先して1999年9月9日を採用した。
廉価版も2度発売されている。PlayStation the Best版は2000年8月24日・2,800円(税別)、PS one Books版は2002年3月28日・1,800円(税別)。The Best版を2000年8月3日とするデータも見られるが、SCEの当時の発売案内では8月24日となっている。
2本のアナログスティックは、どう「料理する手」になったのか
普通のゲームなら、包丁で食材を切る場面を「○ボタン連打」にしても成立する。フライパンを振るなら、指定されたタイミングでボタンを押すだけでもいい。
『俺の料理』はそこをボタンへ置き換えなかった。
食材を切るなら包丁を動かすようにスティックを往復させ、飲み物を作る場面ではジョッキと注ぐ側を別々に操作する。ハンバーグでは左右のスティックを使った動作が入り、エビの皮をむくような工程では回転操作も使う。
| 料理・作業 | 操作の考え方 |
|---|---|
| 切る | 包丁を動かすようにスティックを往復させる |
| ビールを注ぐ | ジョッキを傾ける側と、注ぐ側を左右のスティックで扱う |
| ハンバーグ | 左右のスティックを使って手作業に近い動きを入力する |
| 皮をむく・混ぜる・洗う | 回転や連続入力を使い、作業そのものを操作へ置き換える |
| 焼く・ゆでる | 操作だけでなく時間経過も管理し、待っている間に別作業へ移れる |
ここで重要なのは、左スティックを常に左手、右スティックを常に右手として固定しているわけではないことだ。料理によってスティックの意味が変わり、その場では「手」になったり「包丁」になったり「ジョッキ」になったりする。
だから本作を「現実の料理をリアルに再現したゲーム」と表現するのも少し違う。包丁の物理挙動や食材の状態を精密に計算しているわけではない。現実の料理から、切る、回す、傾ける、往復させるといった特徴的な手の動きだけを抜き出し、アナログスティックへ翻訳している。
この抽象化がうまい。画面に表示された説明をただ読むのではなく、何度か料理しているうちに「あの料理ならこの動き」と手が先に動くようになる。操作を覚えること自体がプレイヤーの上達になるからだ。
本当の主役は料理ではなく「厨房を回すこと」
もし『俺の料理』が、料理を一品ずつ完成させて次のミニゲームへ進む構成だったなら、ここまで高くは評価していない。
このゲームでは客が次々と来店し、複数の注文が重なる。料理にはすぐ終わる工程もあれば、ゆでる、焼くといった待ち時間のある工程もある。ひとつを火にかけている間に別の注文を処理し、同じ料理が重なればまとめて作る。客を待たせすぎれば店の評判へ影響するため、どの料理から手を付けるかも考えなければならない。
うまいプレイとは、包丁操作だけが上手なことではない。
「今すぐ終わる料理を先に出すか」「先に時間のかかる工程へ入れておくか」「同じ注文をまとめるか」「この客をあと少し待たせても大丈夫か」まで判断して、初めて厨房が回り始める。
待ち時間があるから、同時進行が生まれる
料理ゲームで待ち時間を入れると、何もできずに眺めるだけになりそうだが、『俺の料理』では逆だ。鍋やフライパンを待っている間に別の仕事へ移れるため、待ち時間そのものがマルチタスクを生む。
最初のうちは「ラーメンはどう作るのか」「ビールはどう注ぐのか」と一つずつ覚えていく。それが分かってくると、次に問われるのは「どの順番なら一番止まらずに回せるか」になる。
この変化が本作の肝だ。序盤では料理操作の習得がゲームになり、後半では覚えた操作をどのタイミングで呼び出すかがゲームになる。
食い逃げやゴキブリは、予定を崩すためにいる
厨房をさらに忙しくするのが、おじゃま要素だ。両替を求められたり、酔客へ対応したり、食い逃げを追ったり、ゴキブリが現れたり、皿洗いが必要になったりする。
見た目だけならギャグだが、ゲーム上の役割ははっきりしている。プレイヤーが「次はこれ、その次はこれ」と組んでいた処理順へ割り込み、別の行動を強制することだ。
予定通りに料理できれば効率よく回せる。ところが突然別作業が入れば、火にかけている料理、待っている客、新しく入った注文をもう一度見直さなければならない。
厨房らしい焦りを生んでいるのは、料理の難しさだけではない。計画が崩れたあと、どれだけ早く立て直せるかまでゲームにしている。
「忙しいほど面白い」が、難しさにもなる
後半の難度上昇も単純ではない。包丁の操作だけをどんどん複雑にするのではなく、料理の種類、工程、同時に処理する注文、おじゃまが増えることで負荷を上げていく。
これは良い難度の上げ方だ。序盤に覚えた操作が無駄にならず、「同じ操作を、より忙しい状況で正確に使う」方向へ進むからである。
一方で、この設計は弱点にもつながる。負荷が増えすぎると、料理を手際よく回す爽快感よりも、割り込みに追われるストレスが強くなる場面がある。アナログスティックを短時間に何度も往復・回転させるゲームなので、長時間続ければ指や手にもそれなりの負担がかかる。
それでも失敗の多くは「操作を覚えていなかった」「注文を見るのが遅れた」「工程の順番を誤った」と振り返りやすい。忙しさの中でも、自分の手際が良くなっていく感覚を失わない点は強い。
2人対戦では、厨房管理そのものが攻撃になる
『俺の料理』は1~2人用で、料理対決も用意されている。
対戦で面白いのは、本編で効率化のために使っていた「まとめ調理」が、相手への攻撃にもつながることだ。うまく注文をまとめて処理すれば、相手側へ酔客、ゴキブリ、食い逃げなどのおじゃまを送り込める。
つまり一人用では、効率よく作ることが自分の店を回すための技術だった。対戦では、それが自分を速くする技術であると同時に、相手の予定を壊す技術になる。
本編とは別のルールを後付けしたのではなく、同じ料理システムの意味を対戦用へ変えている。このつながりは、本作のゲーム設計を評価するうえで見逃せない。
1999年、2本のスティックを何に使うかはまだ広がっていた
『俺の料理』が発売された1999年には、左右2本のアナログスティックそのものは新品の技術ではなかった。SCEのアナログコントローラは1997年4月に登場し、DUALSHOCKも同年11月に発売されている。
重要なのは、1999年になって初めて2本のスティックが現れたことではなく、その2本へ何の役割を与えるかにまだ大きな幅があったことだ。
同じ1999年には『サルゲッチュ』が発売されている。PlayStation公式が「世界初のDUALSHOCK専用ゲーム」とする作品で、左スティックでキャラクターを動かし、右スティックでガチャメカを操作する。
詳しくは『サルゲッチュ』レビュー|なぜ右スティックで「網を振る」ゲームを作ったのかでも扱っているが、両作を並べると違いが分かりやすい。
| サルゲッチュ | 俺の料理 | |
|---|---|---|
| 左スティック | 主に移動 | 料理によって手・器具・対象物などへ役割が変わる |
| 右スティック | 主にガチャメカ操作 | |
| ゲームの中心 | 3D空間を移動しながら道具を操る | スティックの動きを調理作業へ読み替える |
『サルゲッチュ』が2本のスティックへ比較的固定された役割を与えたのに対し、『俺の料理』では料理が変わるたびにスティックの意味まで変わる。この「同じ入力装置を別の道具へ次々読み替える」設計こそ、本作らしさだ。
同じ1999年のPlayStationでは、8種類の基本パーツから乗り物を自作する『パネキット』のように、決められた遊び方だけを渡すのではなく、コントローラーやゲーム内の道具をどう使わせるかに独特の発想を持つ作品も登場している。ただし、これらが同じ社内方針から作られたと断定できる資料は確認できないため、あくまで同時期の作品としての比較に留めたい。
『俺の料理』はどう生まれたのか
制作の経緯については、2016年にPlayStation公式が公開したJAPAN Studioの番組記事に興味深い証言が残っている。
小池暁氏は当初ゲーム制作部門ではなかったが、ゲーム開発ディレクターを務めた小林貴樹氏と出会い、「この人とゲームを作りたい」と制作部門への異動を申し出たという。そこから『俺の料理』の企画へつながり、社内プレゼンでは周囲がPowerPointを使う中、鉛筆で手書きした企画書を用意したことも紹介されている。
スタッフロールでは小林貴樹氏が制作ディレクションとキャラクターデザイン、小池暁氏がSCE側のディレクターとしてクレジットされている。後年のPlayStation公式記事では小池氏を「『俺の料理』プロデューサー」と紹介しており、発売当時のクレジット上の肩書きと後年の紹介は分けて見る必要がある。
一方、今回の調査で最後まで確認できなかったこともある。
「料理という題材が先にあり、そのために2本のアナログスティックを選んだのか。それとも2本のスティックを使うゲームを考えた結果、料理へ行き着いたのか」について、開発者本人が明確に順序を説明した公開資料は確認できなかった。
1999年刊行の『俺の料理 公式ガイドブック―下積み3年、柿8年』には開発者インタビューが収録されていることまで確認できるが、その本文までは公開Web上で確認できていない。したがって、完成したゲームを見て「スティックを使いたかったから料理にした」と因果関係を作ることは避けたい。
分かるのは完成品の側だ。製品版では2本のアナログスティックが単なるおまけではなく、料理を成立させる中心入力として徹底して使われている。
全9ステージ・39種類の料理|一品覚えて終わりではない
流通商品説明では、本作には大衆食堂から多国籍料理まで全9ステージ、39種類の料理が収録されている。
店が変われば扱う料理が変わり、新しい操作も加わっていく。序盤で覚えた動作を捨てて別ゲームに切り替わるのではなく、知っている作業へ新しい工程を積み重ねていくため、プレイヤー側の作業量も少しずつ増える。
難易度によって物語にも違いがあり、単純に敵が強くなるだけではない。キャラクターは全体に大きくデフォルメされ、声の演技もかなり濃いが、この派手さは高速で展開するゲームとの相性がいい。料理をしながら長い会話を読む作品ではないため、短い台詞や大げさな反応だけでも状況が伝わる。
音楽面では1999年10月21日にオリジナル・サウンドトラックも発売された。商品紹介では藤木和人氏が前面に出ているが、ゲームのスタッフロールでは大久保孝之氏、藤木和人氏、鈴木晶氏、苫米地義久氏、石塚まみ氏が音楽担当として並ぶため、「全曲を藤木氏が作曲した」と単純化するのは正確ではない。
「世界初の料理ゲーム」ではない
『俺の料理』には「世界初の本格料理アクション」といった宣伝文句が残っているが、これは歴史上の「世界初」と同じ意味ではない。
少なくとも本作以前の1998年5月21日には、日本一ソフトウェアから『炎の料理人 クッキングファイター好』が発売されており、メーカー自身がジャンルを「料理アクションゲーム」としている。
そのため、『俺の料理』を「料理ゲームの元祖」「世界初の料理アクション」とするのは避けるべきだろう。
本作の価値は、料理という題材を最初にゲームにしたことではない。調理動作を2本のアナログスティックへ割り当て、それをリアルタイムで複数注文を回すゲームへ組み込んだことにある。
現在遊ぶ方法|PS5やSwitchでは遊べる?
2026年10月現在、『俺の料理』を遊ぶうえで少し厄介なのが環境だ。
| 方法 | 2026年10月時点の状況 |
|---|---|
| PlayStation版中古ディスク | 中古流通あり。アナログスティックを2本使える環境が必要 |
| PS3 | PS規格CD-ROMの再生に対応。ただしSIEはすべてのPSソフトの互換動作を保証しているわけではない |
| ゲームアーカイブス | 2007年8月30日にPS3向けとして配信開始し、後にPS Vitaにも対応 |
| PSP | 『俺の料理』は非対応 |
| PS4/PS5 | 現行機向け公式版・クラシックスカタログ版は確認できない |
| Nintendo Switch | 公式移植・リメイクは確認できない |
ゲームアーカイブスは最初からVita対応だったわけではない
『俺の料理』のゲームアーカイブス版は2007年8月30日に配信された。ただし、この時点ではPS3でプレイするタイトルとして案内されており、PSP対応タイトルとは別枠だった。その後、PS Vitaでも遊べるようになっている。
「2007年からPS3/PS Vita向けだった」と書くと時系列がおかしくなるので注意したい。PS Vita自体がまだ発売されていない時期だからだ。
またPSPには対応していない。2本のアナログスティックを使うゲームなので理由を想像することはできるものの、SCEが「スティックが1本しかないから」と公式に説明した資料は確認できないため、理由までは断定しない。
ゲームアーカイブス版を現在も新規購入できるかは実機確認が必要
旧PlayStation Storeの商品情報にはPS3/PS Vita版が残っているが、現在のWeb版PlayStation Storeから旧ゲームアーカイブス商品の販売状態を直接確認することはできない。
そのため、2026年10月時点で『俺の料理』を今も新規購入できるかどうかは、PS3またはPS Vita本体のPlayStation Storeで最終確認する必要がある。本記事では「現在も必ず購入できる」とは断定しない。
なおSIEは、PS3およびPS Vita向けPlayStation Storeを日本では2027年7月に終了すると発表している。終了後は新規購入できなくなる一方、購入済みコンテンツは当面の間、再ダウンロード可能と案内されている。
仮に『俺の料理』の販売が実機Storeで現在も続いている場合、新規購入できる期間には終わりが見えている。ただし中古のPlayStation版ディスクという別の手段もあるため、「今買わなければ二度と遊べない」という話ではない。
携帯電話版『俺の料理DX』も存在した
本作はPlayStationだけで終わらず、携帯電話にも展開された。
2003年には携帯電話向け『俺の料理』が存在し、2005年には強化版『俺の料理DX』がiモード向けに配信。BOSSバトルやVSバトルを含み、21種類の料理、5ステージを収録したバージョンとして展開された。その後BREW版も登場している。
2本のアナログスティックを大きな特徴としていたゲームが、アナログスティックのない携帯電話へ移植されたのは興味深い。ただし初代PlayStation版とは入力環境が根本的に異なるため、本記事では派生作品として触れるに留める。
89点・A Tier|操作の珍しさではなく、操作と忙しさがつながっている
つぶログのPlayStation Tier表 1999~2000年編では、『俺の料理』を89点・A Tier・総合63位タイとしている。
89点まで評価した理由は「スティック操作が珍しいから」ではない。
| 評価項目 | 点数 | 評価 |
|---|---|---|
| 入力設計 | 9.8 | 左右スティックを固定用途にせず、料理ごとに手や器具へ読み替える発想と実装が非常に強い。 |
| 料理の操作感 | 9.3 | 往復、回転、傾ける動きが作業内容と結び付き、反復するほど操作速度が上がる。 |
| 厨房・マルチタスク設計 | 9.4 | 料理操作を単発で終わらせず、複数注文、待ち工程、まとめ調理、割り込みへ接続した点を高く評価。 |
| 難度・ステージ構成 | 8.7 | 操作を難しくするだけでなく、処理量を増やして忙しさを作る。ただし後半は割り込み負荷も大きい。 |
| 対戦・リプレイ性 | 8.8 | 本編のまとめ調理を相手へのおじゃまへ変換し、同じシステムを別の面白さへ広げている。 |
| 演出・キャラクター・サウンド | 8.5 | 濃いキャラクターと声、店舗ごとの雰囲気が高速なゲーム進行に合う。写実性ではなく分かりやすさを優先。 |
| ボリューム・長期性 | 7.8 | 遊びの密度は高いが、一通り料理操作を覚えた後は同じ基本ループを速く正確に処理する方向へ収束しやすい。 |
| 総合 | 8.9/10 | 89点・A Tier |
なぜ89点まで高いのか
もっとも評価したいのは、「料理をスティックで操作する」というアイデアを思いついただけで終わらなかったことだ。
切る。混ぜる。注ぐ。それぞれの操作を一度覚えさせ、次の段階ではその動作を複数の注文の中から素早く選ばせる。待ち時間には別の料理を進め、同じ注文ならまとめて作り、突然入ったおじゃまにも対応する。
アナログスティックで料理する面白さと、厨房を回す判断が別々ではない。操作が上手になるほど多くの注文を処理でき、多くの注文を処理しようとするほど操作の速さが必要になる。
この二つが循環しているから、珍しい操作を一度体験しただけで飽きるゲームにならなかった。
それでもS Tierへ届かない理由
一方で、90点以上のS Tierへ置くにはあと一段足りない。
本作の中心ループは非常によくできているが、料理を一通り覚えた後に待っているのは、まったく新しい遊びへの変化というより、既存の工程をさらに速く、より多く、より正確に処理する方向だ。
忙しさを高めることで難度を伸ばしているため、後半になるほど割り込みや入力量の多さも増える。短時間では心地よい慌ただしさが、長く続ければ疲労へ変わることもある。ステージ数も、長期間遊び続けるタイプの作品と比べれば大規模ではない。
操作の発想と、それを厨房処理へつなげた部分だけならS Tier級に近い。そこから先の遊びの広がりとボリュームまで含めて見ると、89点という境界がちょうどいい。
まとめ|『俺の料理』がゲームにしたのは「料理」より「手際」だった
『俺の料理』は、アナログスティックで食材を切れるから面白いのではない。
まずスティックを動かして、切る、混ぜる、焼く、注ぐといった作業を覚える。その操作を覚えたところへ複数の注文が入り、待ち時間が生まれ、別の料理を同時に進め、おじゃまによって予定まで崩される。
最初は「どう料理するか」を覚えていたはずが、いつの間にか「今どの料理を処理すれば厨房が止まらないか」を考えている。
2本のアナログスティックを左右の手へ完全に固定したゲームではない。むしろ料理ごとに、スティックを手や包丁、ジョッキ、調理器具へ次々と読み替えていく。その操作を覚えたプレイヤー自身の手の忙しさが、そのまま画面内の厨房の忙しさになる。
1999年に料理という題材を使ったことそのものより、「料理する動き」と「注文をさばく手際」を一つのアクションゲームへまとめたこと。そこに『俺の料理』を今遊び直す価値がある。
操作の発明だけなら一発ネタにもできた。それを厨房全体を回すゲームへ育てたからこそ、つぶログでは89点・A Tierとした。