- 『THE RIBBON HERO』は『リボンの騎士』のリメイク?原作との違い・男装設定が変わった理由を整理
- 『THE RIBBON HERO』は『リボンの騎士』のリメイク?
- まず新旧の違いを一覧で比較
- そもそも『リボンの騎士』の「原作」は一つではない
- 旧『リボンの騎士』のサファイアはなぜ「王子」として育てられた?
- 最大の違い|2026年版は「男装の麗人」をそのまま使わなかった
- 新サファイアは「可愛い」と「カッコいい」を両方持つ
- 「二つの心」とチンクはどう変わった?
- シルバーランドも物語の始まり方がまったく違う
- ヘケートは残ったが、旧作と同じ人物関係ではない
- フランツ王子との恋愛が中心だった旧作とも印象が違う
- なぜここまで変えたのか?
- 1967年アニメを見ていた人ほど「別物」に感じる理由
- 原作を知らなくても『THE RIBBON HERO』から見られる?
- 新作から『リボンの騎士』に興味を持ったらどれを読めばいい?
- まとめ|『リボンの騎士』をそのまま再映像化した作品ではない
『THE RIBBON HERO』は『リボンの騎士』のリメイク?原作との違い・男装設定が変わった理由を整理

Netflix映画『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』を見て、
「これ、本当に昔の『リボンの騎士』?」
と感じた人もいるかもしれません。
主人公はサファイア。シルバーランドという国があり、剣を手に戦い、ヘケートという名前まで登場します。
その一方で、昔の『リボンの騎士』を特徴づけていた「王女でありながら王子として育てられる」「男装して戦う」「男の子と女の子、二つの心を持つ」という設定は、2026年版では物語の軸になっていません。
これは、1967年版アニメをそのまま作り直したからではありません。
『THE RIBBON HERO』の公式クレジットは、
「原案:手塚治虫『リボンの騎士』より」
です。2026年8月8日からNetflixで世界独占配信されている長編アニメーション映画で、『リボンの騎士』から人物名やモチーフ、作品の精神を受け継ぎながら、新しいサファイアの物語として組み直されています。
つまり、原作再現型のリメイクではない。
ここが、新旧の違いを理解する一番大きなポイントです。
『THE RIBBON HERO』は『リボンの騎士』のリメイク?
「リメイク」という言葉を広く「昔の作品を新しく作り直したもの」という意味で使うなら、完全に間違いとは言えません。
実際、五十嵐祐貴監督自身も『リボンの騎士』を「新しく作り直す」うえで、現代の主人公としてサファイアをどう描くか考えたと説明しています。
ただし、公式上の位置づけは「原作」ではなく「原案」です。
そして実際の内容も、
- サファイア
- シルバーランド
- 剣を持つヒロイン
- リボン
- ヘケート
- 手塚作品由来のさまざまなモチーフ
を引き継ぎながら、ストーリーの出発点、敵、人物関係、サファイア自身の設定まで大きく作り直されています。監督も、物語自体は新しいものになっている一方、随所へ手塚作品らしさを入れたと説明しています。
そのため、
「昔の漫画・アニメを今の映像でそのまま再現したリメイク」
と考えると、かなり印象が違って見えます。
むしろ、『リボンの騎士』を原案に、何を2026年へ受け継ぐかを考えて作られた新作映画と捉えると分かりやすいでしょう。
まず新旧の違いを一覧で比較
| 項目 | 手塚版『リボンの騎士』 | 『THE RIBBON HERO』 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 手塚治虫による漫画 | 『リボンの騎士』を原案とするNetflix映画 |
| 主人公 | サファイア | サファイア |
| シルバーランド | サファイアが暮らす王国 | サファイアが失った故郷 |
| 物語開始時 | 王位継承問題などから物語が動く | ネルガルに故郷を奪われ、ゴールドランドへ |
| 王子として育つ設定 | 重要 | 旧作と同じ軸ではない |
| 男装 | サファイアを象徴する重要設定 | そのまま踏襲しない |
| 「二つの心」 | 重要な基本設定 | 物語の出発点にはしない |
| チンク | サファイアの運命に深く関わる | 旧作と同じ主要人物の役割ではない |
| ヘケート | 旧作にも登場 | 名前を受け継ぎつつ新しい物語へ配置 |
| 主な脅威 | 王位を巡る陰謀など ※版によって異なる | 災厄ネルガル、ミトラなど |
| 作品形態 | 漫画/1967年TVアニメなど | Netflix長編アニメ映画 |
新作公式ではサファイアを明確に「失われた王国の王女」と紹介し、ネルガルにシルバーランドを奪われた彼女がゴールドランドへ流れ着くところから物語が始まります。
旧作とは、スタート地点そのものが違います。
そもそも『リボンの騎士』の「原作」は一つではない
新旧比較でもう一つ気をつけたいのが、『リボンの騎士』には複数の漫画版があることです。
最初の少女クラブ版は1953年1月から1956年1月まで講談社『少女クラブ』で連載されました。手塚治虫公式はこの作品を「日本のストーリー少女漫画の第1号」と紹介しています。
その後、1963年1月から1966年10月にはなかよし版が連載されました。
こちらは少女クラブ版をもとにしたリメイクですが、単なる再掲載ではありません。たとえば少女クラブ版のメフィストに相当する部分が魔女ヘル夫人へ変わり、海賊ブラッドが加わるなど、途中から異なる展開になります。
さらに1967年にはTVアニメ化されましたが、手塚治虫公式によれば、こちらも1話完結型になり、フランツの役をロックが演じるなど漫画版からさらに変更されています。
したがって、
「昔の『リボンの騎士』では絶対こうだった」
と一つの設定だけで語るのは少し危険です。
この記事では、少女クラブ版となかよし版、そして広く知られた1967年TVアニメに共通するサファイアの基本設定を軸に見ていきます。
旧『リボンの騎士』のサファイアはなぜ「王子」として育てられた?
昔のサファイアを語るうえで外せないのが、本当は王女なのに、王子として育てられるという設定です。
なかよし版では、サファイアは男の子と女の子、二つの心を持って生まれます。
そしてシルバーランドには女性が王位につけない掟があるため、王女でありながら男子として育てられることになります。天使チンクも、この「二つの心」とサファイアの運命に直接関係する人物です。
1967年TVアニメも、この構造をはっきり引き継いでいます。
手塚治虫公式のアニメ紹介では、サファイアは王子として育てられているが本当は女の子で、天使のミスによって女の子の体に男の子の心が入ってしまった人物として説明されています。全52話が1967年4月2日から1968年4月7日まで放送されました。
この設定があるからこそ、旧作のサファイアにとって「男装」は単なる衣装ではありません。
王位継承、秘密の身分、二つの心、恋愛、剣を取って戦う姿が一つにつながっていました。
最大の違い|2026年版は「男装の麗人」をそのまま使わなかった
『THE RIBBON HERO』で最も大きく変わった部分がここです。
五十嵐監督は、旧サファイアが「男装の麗人」として当時の固定的な価値観を壊す存在だったと捉えています。
しかし、その仕組みを2026年にそのまま置いても、同じ新しさにはならないと判断しました。
そこで男装の麗人という要素を外し、大きな社会の中で現実と向き合いながら戦うヒーローとしてサファイアを再構築したと説明しています。
これは、
「Netflixだから変えた」
「海外向けだから変えた」
「炎上対策で変えた」
といった話ではありません。
少なくとも制作側が説明している理由は、1950~60年代には新しかったサファイアを、2026年の主人公としてどう成立させるかという創作上の問題です。
監督は、当時は女の子が男装して剣を持って戦うこと自体が非常に新しかった一方、現在では「戦う女性」という表現が広く定着したため、同じ設定を置くだけでは当時の革新性を再現できないと考えています。
だから、設定だけを保存するのではなく、当時のサファイアが持っていた「今までの価値観を揺さぶる主人公」という役割そのものを別の形で作り直したわけです。
新サファイアは「可愛い」と「カッコいい」を両方持つ
キャラクターデザインにも、その考え方が表れています。
五十嵐監督が望月けい氏へ求めたのは、旧サファイアの姿をそのまま現代風に描き直すことではありませんでした。
監督は、2026年のサファイアを「可愛い」と「カッコいい」を併せ持つキャラクターにしたかったと話しています。
望月氏も、旧サファイアの象徴だった大きな帽子をそのまま残さず、変身後の姿には「解放」をイメージ。
強さや優しさ、芯の通った正義感こそサファイアの魅力だと考え、帽子ではなく大きなリボンを新しい象徴として前面に出しました。
だから新作を見ると、名前もリボンも剣もサファイアなのに、見た目の印象は昔とかなり違います。
それは原作デザインを再現できなかった結果ではなく、最初から「どこまで残し、どこまで変えるか」を考えたデザインです。
「二つの心」とチンクはどう変わった?
旧作では、天使チンクの行動によってサファイアが男の子と女の子の心を持つことが物語の出発点になります。
特に1967年版では、チンクがサファイアの「男の子の心」を巡る物語へ深く関わっています。
2026年版は、この「二つの心」から物語を始める構造を引き継いでいません。
サファイアは公式紹介の段階から「シルバーランドの王女」とされ、男児として育てられた秘密を抱える人物ではなく、故郷を失った一人の王女として登場します。
チンクも、旧作と同じ立場の主要キャラクターとして公式キャラクター一覧には並んでいません。
ただし、完全に存在を忘れられたわけでもありません。
五十嵐監督は、シルバーランド城内の石像をチンクの雰囲気を取り入れて作ったと説明しています。
旧設定をそのまま人物として再演するのではなく、原典を知る人が気づけるモチーフとして残す。
『THE RIBBON HERO』には、こうした継承方法が随所に使われています。
シルバーランドも物語の始まり方がまったく違う
旧作では、シルバーランドでサファイアが王子として育てられ、王位をめぐる陰謀が物語を動かす重要な要素になります。
2026年版の開始時点では、状況がすでに大きく変わっています。
サファイアは災厄「ネルガル」によってシルバーランドを失った王女です。
絶望の中でゴールドランドへ流れ着き、そこで人々と触れ合いながら再び立ち上がっていく。そしてネルガルが再度現れたことで、サファイアは剣を取ります。
つまり旧作の、
「王位を継ぐため男子として育てられている王女」
から、
「すべてを失ったところから、自分の意思でヒーローになる王女」
へ、物語の軸そのものが変わっています。
監督は、コロナ禍以降の「自分では制御できない大きな状況」の中で、若い主人公がどう現実と向き合うかを物語へ取り入れたと説明しています。ネルガルも、その世界観を形にする存在として設定されました。
ヘケートは残ったが、旧作と同じ人物関係ではない
旧作から名前を受け継いだ人物として分かりやすいのがヘケートです。
1967年TVアニメにもヘケートは登場し、魔王メフィストやサファイアの心をめぐる物語に深く関係します。
2026年版にもヘケートは登場し、月ノ美兎さんが声を担当しています。
ただし、新作ではサファイアがゴールドランドで出会う仲間たちの側へ配置されており、旧作の人物関係をそのまま再現したキャラクターではありません。月ノ美兎さん自身は、新ヘケートを感情豊かで素直、たくましい女性と表現しています。
これは『THE RIBBON HERO』の作り方を象徴しています。
名前や記憶は受け継ぐ。
でも、同じ筋書きを繰り返すわけではない。
ヘケート以外にも、新作にはパイン、ベルベット、ジルコ、チョロギ、チック、タック、教皇などが登場し、新しい人物関係の中でサファイアの物語が進みます。
フランツ王子との恋愛が中心だった旧作とも印象が違う
少女クラブ版では、手塚治虫公式もサファイアとフランツ王子の恋愛をストーリーの大きな軸として紹介しています。
一方、『THE RIBBON HERO』の公式紹介で中心に置かれているのは、
故郷を失ったサファイアが、ゴールドランドで新しい人々と出会い、再びネルガルへ立ち向かう物語
です。
旧作のフランツ王子との関係を、そのまま2026年版の中心へ移した構成ではありません。
だから昔のTVアニメを強く覚えている人ほど、
「人物が違う」
「恋愛の構造が違う」
「王子として暮らす話ではない」
という部分で、かなり別作品のように感じやすいでしょう。
なぜここまで変えたのか?
制作側の考えをたどると、理由はかなり一貫しています。
目的は、1950年代の設定を保存することではなく、
「何をもって現代の『リボンの騎士』とするのか」
を考えることでした。
五十嵐監督は、手塚治虫と新しい世代をつなぐことを、この企画を引き受けた理由の一つに挙げています。
一方で、ストーリーは新しくする。
そして手塚作品の精神やモチーフは作品の中へ残す。
実際、
- シルバーランドの城や兵士の造形・色彩
- チンクを思わせる石像
- 原作にもある白鳥への変身
- 『双子の騎士』などを踏まえた生物デザイン
- 宝塚を意識した演劇的な構造
- リボンという象徴
など、旧作を知っている人向けの接点が複数仕込まれています。
つまり『THE RIBBON HERO』は、設定を忠実にコピーすることで『リボンの騎士』を残した作品ではありません。
何を残せば「サファイアらしさ」「手塚作品らしさ」が残るのかを分解し、別の物語へ組み直しています。
1967年アニメを見ていた人ほど「別物」に感じる理由
昔の『リボンの騎士』をTVアニメで覚えている場合、新作との距離はさらに大きく感じるはずです。
1967年版は全52話。
サファイアが王子として暮らしながら正体を隠し、チンク、ジュラルミン大公、ナイロン卿、メフィスト、ヘケートらと関わりながら、恋と冒険を展開していくTVシリーズでした。
対する『THE RIBBON HERO』は一本のNetflix映画です。
主人公の名前や作品を象徴するリボン、剣、シルバーランドなどは残っていますが、
王子として生きる秘密
二つの心
チンクとの関係
王位継承を巡る宮廷劇
をそのまま中心には据えていません。
1967年アニメ全52話のストーリーを映画一本へ圧縮した作品でもありません。
公式クレジットが示している通り、基になっているのは手塚治虫『リボンの騎士』という原案です。
原作を知らなくても『THE RIBBON HERO』から見られる?
原作の知識を前提とする続編ではありません。
新サファイアの境遇、ネルガル、ゴールドランド、新しい仲間たちは映画の物語として改めて設定されているため、昔の漫画や1967年アニメを履修してからでなければ話が分からない構造ではありません。
むしろ原作を知らない人は、まず一つの新作ファンタジーとして見ることができます。
そのあとで原作を読むと、
「これは旧作から来ていたのか」
と気づける部分が増える作りです。
五十嵐監督も、新作を見た人があとから元ネタを調べ、手塚作品へ触れるきっかけを作ることを意識したと話しています。
新作から『リボンの騎士』に興味を持ったらどれを読めばいい?
まず「一番最初のサファイア」を知りたいなら、少女クラブ版です。
1953年から始まった最初の『リボンの騎士』で、後の作品の原点になります。手塚治虫公式も、後世によく知られたキャラクターや物語はなかよし版だとしながら、原点はこちらだと説明しています。
より広く知られた『リボンの騎士』を読みたいなら、なかよし版。
1963~1966年に描き直された作品で、手塚治虫公式も一般に『リボンの騎士』と言う場合はこちらを指すことが多いと説明しています。
昔テレビで見た記憶を確かめたいなら、1967年TVアニメです。
漫画版ともさらに違う全52話のシリーズなので、「原作漫画」「なかよし版」「昔のTVアニメ」をすべて同じものとして比較しない方が、新作との違いは理解しやすくなります。
まとめ|『リボンの騎士』をそのまま再映像化した作品ではない
『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』は、2026年8月8日からNetflixで世界独占配信されている長編アニメーション映画です。
公式クレジットは、
「原案:手塚治虫『リボンの騎士』より」
となっています。
サファイア、シルバーランド、リボン、剣、ヘケートなど、旧作から受け継いだものは確かにあります。
一方、
王子として育てられる王女
男装の麗人
男の子と女の子、二つの心
チンクを中心とした設定
王位継承を巡る物語
をそのまま再現してはいません。
最大の変更である男装についても、制作側が昔の設定を知らずに削ったわけではなく、当時は新しかったサファイアを、2026年の主人公としてどう新しく成立させるか考えた結果です。
だから昔の『リボンの騎士』を知っているほど、大きく変わった作品に見えます。
そして、それで合っています。
『THE RIBBON HERO』は1967年版をもう一度作った映画ではなく、『リボンの騎士』から何を次の世代へ渡すのかを考えて作られた、2026年のサファイアの物語です。