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漫画アニメ原作ゲーム大全|第27弾 魔神英雄伝ワタル 外伝(FC/1990/アクションRPG)

勇者は君だ! “ワタル世界”を歩むもう一人の冒険者

ファミコン後期に登場した『魔神英雄伝ワタル 外伝』は、アニメ本編の焼き直しではなく、プレイヤー自身が物語に入り込む設計を押し出した意欲作だ。主人公はワタル……ではなく“君”。名前入力で武器名が変わる細かな仕掛けを忍ばせつつ、道中でワタル、シバラク、ヒミコらと出会い、共闘しながらオリジナルの冒険を進めていく。ゲームはフィールド探索と軽快なアクション戦闘でテンポよく展開。派手なムービーや長大な語りはないが、「一歩進めば景色が変わる」80〜90年代RPGの醍醐味と、ワタル世界の“明るい冒険感”が自然に重なる。原作の象徴である魔神や技の手触りは、限られた容量の中で要点だけを抽出。追体験ではなく“参加型の外伝”として、どこまでファンの記憶と噛み合うのか——本稿では、再現度・ファン満足・原作ゲームとしての価値の三軸で読み解いていく。

ゲーム基本データ

作品の立ち位置(要点)

  • “原作追体験”ではなく、プレイヤーが名もなき勇者として参戦するオリジナル外伝。道中でワタル/シバラク/ヒミコらと合流して進む構成が特徴。 ゲーム*やおよろず Retro
  • フィールド探索+軽快なアクション戦闘でテンポ良く進む設計。80~90年代RPGの“歩けば景色が変わる”推進力と、ワタル世界の明るい冒険感が噛み合う。 GameFAQsゲーム*やおよろず Retro

補足:発売日・型番・クレジットは一次資料(箱・取説スキャン)とデータベースで相互確認済みです。価格・発売元・開発元・人数は国内レトロ資料の要約と一致しています。 インターネットアーカイブ

原作再現度

『魔神英雄伝ワタル 外伝』が面白いのは、「本編ストーリーの再現」ではなく「ワタル世界の空気の抽出」に力を注いでいる点だ。ファミコン後期の容量では、アニメの壮大な物語やギャグをフルに移植することは不可能だった。そこで開発のウエストンは、要素を“削ぎ落とし”と“再構築”で整理し、ファンに納得感を与える設計にした。

1. プレイヤーは“もう一人の勇者”

最大の特徴は、主人公がワタル本人ではないこと。プレイヤーは自分の名前を入力して冒険に出る。入力した名前によって武器名が変わる仕掛けがあり、「自分自身がワタル世界に参加している」という感覚を演出する。これは本編の追体験ではなく、“君自身の外伝”を提示する形で、ファンにとって新鮮な体験だった。

2. 仲間たちの存在感

道中ではワタル、シバラク、ヒミコらおなじみの仲間たちが登場。パーティーメンバーとして戦うわけではなく、要所で助けてくれる存在として配置されている。ドット絵や短い会話ながらも、ワタル特有の“にぎやかで前向きな空気”を醸し出しており、ファンなら思わずニヤリとする。

3. 龍神丸と魔神バトル

原作の象徴ともいえる龍神丸ももちろん登場する。ストーリーの節目で召喚され、強力な力を発揮するシーンは、容量の制約の中でもインパクト十分。戦闘中の通常アクションと差別化されており、「魔神と共に戦う勇者」という構図をプレイヤーに実感させていた。

4. アクションRPGとしてのテンポ

戦闘はシンプルなアクションRPG方式で、短いスパンで敵を倒しつつ経験値を積んでいく。原作の「勇気と明るさで突き進む」冒険感とマッチし、アニメを知らないプレイヤーにとっても違和感のないテンポに仕上がっている。

5. 演出の取捨選択

ギャグ要素や主題歌など、アニメ的な表現はほとんど盛り込まれていない。その代わり、冒険の推進力や魔神召喚の高揚感といった“核”の部分だけを凝縮。ファンにとっては「もっと賑やかでも…」という物足りなさも残るが、そのシンプルさがゲームのテンポを守り、RPGとして成立させている。


総じて本作の再現度は、キャラクターの存在感と魔神バトルに的を絞った“軽量版ワタル体験”といえる。完全な原作追体験ではないが、勇者ワタルの世界観を「自分がもう一人の勇者として歩く」形で味わえる――これこそ『外伝』の名にふさわしいアプローチだった。

原作ファン満足度 vs 初見プレイヤー評価(双眼評価・詳細版)

『魔神英雄伝ワタル 外伝』(1990/FC)は、当時のアニメ原作ゲームとしては珍しく、「自分が物語に参加する外伝」という切り口を打ち出した。プレイヤーはワタル本人ではなく、オリジナル勇者を操り、仲間たちと共に冒険する。こうした構造は原作ファンと初見プレイヤーとで受け止め方に大きな差を生んだ。以下、両視点を掘り下げてみよう。


原作ファンにとっての魅力

まずファンにとって最大のポイントは、**「自分の名前が冒険世界に刻まれる」**という演出だ。冒頭で名前を入力すると、その名前がそのまま武器に反映され、「けんたのつるぎ」「ゆみこのけん」など、ユニークな装備名となって登場する。 この仕様は、子どもたちにとって「テレビの中に自分が飛び込む」ような感覚を与え、ワタル世界に没入する強力な仕掛けになった。

また、物語の節目ではおなじみの仲間キャラが助けてくれる。ワタル本人はもちろん、シバラク先生やヒミコがドット絵で登場し、短い会話ながらキャラクター性を表現している。声優ボイスこそないが、台詞回しや仕草に「らしさ」が凝縮され、ファンなら思わずニヤリとする瞬間だ。

さらに、龍神丸をはじめとする魔神たちの存在感も外せない。ゲームでは龍神丸だけでなく、戦神丸・幻神丸・龍王丸、そしてオリジナルの雷神丸まで登場。 戦闘の要所で召喚され、敵を一掃する彼らの姿は、まさにアニメの“魔神バトル”を体験させる役割を果たしている。特に容量制約の厳しいファミコンで、魔神のデザインや必殺をしっかり描いた点は高く評価された。

音楽面も忘れてはならない。作曲を担当したのはWestoneの坂本慎一。彼は『モンスターワールド』シリーズでも知られる作曲家で、軽快なメロディと歯切れの良いリズムが「明るく前向きな冒険」を後押しした。 アニメの主題歌は収録されていないが、坂本のオリジナルBGMはファンから「ワタルらしい雰囲気」として支持を受けている。

結果として、原作ファンの評価は高めだ。「追体験ではなく“もう一人の勇者”として関われる新鮮さ」「仲間キャラや魔神の存在感」「BGMの冒険感」。これら三点が揃い、ファンは満足度の高い外伝体験を得られたといえる。


初見プレイヤーの評価

一方、アニメを知らずに遊んだプレイヤーはどう感じたか。まず挙げられるのは、テンポの良さだ。本作は、フィールド探索中に敵と接触すると、その場で1画面のアクション戦闘に突入する仕組み。戦闘はシンプルだが切り替えが速く、短時間でも「進んでいる感覚」を得やすい。この軽快さは、当時のFCアクションRPGとしては強みだった。

しかし、演出面では「地味」との評価も少なくなかった。派手なカットインや長いストーリーデモはなく、イベントは淡々と進む。ファンであれば“らしさ”を感じ取れるが、初見にとってはキャラ描写が薄味に映ることもあった。

さらに特徴的なのがセーブ/リセット周りのクセである。本作はパスワードではなくオートセーブ式だが、宿泊以外でリセットすると「アイテムや所持金が失われる」という厳しいペナルティが課される。 これは「ちゃんと宿に泊まれ」という設計思想だが、子どもプレイヤーには理不尽に感じられることも多かった。こうした不親切さは現代的視点ではマイナス評価につながる部分だ。

それでも、アクションRPGとしての遊びやすさは一定の評価を得ていた。操作がシンプルで、レベルアップによる成長もわかりやすい。アニメを知らない層にとっても「小さな冒険譚」として短時間で区切り良く遊べる点は魅力だった。


双眼で見た総評

原作ファンと初見プレイヤーの評価をまとめると、次のように整理できる。

  • 原作ファン
     ・“名前が武器に反映される”仕掛けで没入感アップ
     ・龍神丸ほか魔神たちの活躍で「ワタルらしさ」を体感
     ・坂本慎一のBGMが冒険の明るさを強調
     → 高い満足度。原作の“空気”を掬い上げた外伝として肯定的評価
  • 初見プレイヤー
     ・テンポの良い戦闘とシンプル操作で遊びやすい
     ・一方で演出は淡白でキャラ描写は薄味に見える
     ・オートセーブの仕様やリセットペナルティはやや理不尽
     → ライトなアクションRPGとしては合格点だが、演出の地味さで好みが分かれる

結論

『魔神英雄伝ワタル 外伝』は、「追体験ではなく、外伝として自分が勇者になる」というアプローチがファンに強く支持された。一方で、初見には「遊びやすさ」と「素っ気なさ」が同居する作品に映った。
結果的に、原作ファンには熱烈に推せる佳作、初見には“可もなく不可もなく”な小粒ARPGという評価の二極化が生まれた。だが、その割り切りこそが“ワタル外伝”の個性であり、今なお記憶に残る理由なのだ。

当時の販売・反響/メディア露出(詳細版)

『魔神英雄伝ワタル 外伝』が市場に登場したのは1990年3月23日。発売元はハドソン、開発はウエストン・ビット・エンタテインメント(Westone)。型番はHFC-V2で、箱や取説スキャンでも同じ表記が確認される。まだスーパーファミコンが未発売(同年11月)だった時期であり、ファミコン市場は成熟期に入りつつも、タイアップIPを軸にしたタイトルが各社から続々登場していた。そうした“ファミコン後期のキャラゲーラッシュ”の中に投入されたのが本作である。

アニメ人気の余熱と発売時期の妙

『魔神英雄伝ワタル』は1988年からTV放送され、明るい冒険譚とギャグで子ども層を掴み、OVAやグッズ展開へ広がっていった。その熱がまだ冷めやらぬ1990年春、ゲーム版は「外伝」という形で登場。アニメ放送が終了してから1年余り経過していたが、バンダイのプラモやOVAなどの周辺商品が店頭を賑わせていた時期でもあり、ゲーム版は余熱を吸い上げる絶妙なタイミングで世に出たといえる。

雑誌・店頭での扱い

当時の『ファミコン通信』(現ファミ通)や『ファミマガ』では、新作紹介欄で「ワタルの世界を自分の名前で冒険できるアクションRPG」として紹介された。画面写真と共に、「フィールド探索+サイドビュー戦闘」というシステム構造が強調され、アニメファンだけでなくRPG層にも訴求しようとする誌面構成が目立った。また、広告展開も派手さは控えめながら、**「君自身が勇者になる」**というキャッチがしばしば使われ、従来型の“原作追体験ゲー”との差別化が意識されていた。

販促物と攻略本

販売促進の面では、パッケージイラストや取説に描き下ろしイラストが掲載され、ファンアイテムとしての価値も高かった。さらに、徳間書店や勁文社などの「必勝攻略法」シリーズに攻略本が刊行され、ゲーム誌と並ぶ情報チャネルを形成。店頭→雑誌記事→攻略本→友人間口コミという、当時のキャラゲー拡散ルートをしっかり踏んでおり、一定の浸透度を獲得していたことがうかがえる。

実際のプレイヤー体験と反響

プレイヤーから注目されたのは、名前入力がそのまま武器名に反映される遊び心。たとえば「けんた」と入力すれば「けんたのつるぎ」といった具合に、画面内に自分の存在が刻まれる。この仕掛けは子ども層に強烈な没入感を与え、「ワタルの仲間になった気分」をリアルに演出した。

一方で、賛否を呼んだのがセーブ/リセット周りの仕様だ。本作はオートセーブ方式だが、宿以外でリセットすると所持アイテムや所持金が失われるペナルティが設けられていた。これは「きちんと宿で区切りをつける」ことを前提に設計された仕掛けだったが、子どもプレイヤーには理不尽に感じられる場合も多く、当時から意見が分かれた。

また、演出の控えめさも特徴的だった。派手なアニメ再現ムービーはなく、会話は必要最低限。ファンにとっては「ドットの表情や短い台詞からキャラらしさを感じ取る」楽しみがあったが、初見プレイヤーには地味に映ることもあった。

音楽と開発ブランドの話題性

一方、音楽と開発スタッフの存在は後年にかけて語り継がれる魅力となった。作曲を手掛けたのはWestoneの坂本慎一。『モンスターワールド』シリーズで培った軽快なメロディが、明るい冒険感を支えた。BGM自体はアニメ主題歌を使っていないが、その代わりにオリジナル曲が「ワタルの世界観に合っている」と好意的に受け止められた。
また、開発がアクションRPGに定評のあるWestoneであった点も、後年レトロゲームファンや資料系ライターの注目を集めた。ハドソン発売ながら「ウエストン開発」という肩書きは、カタログ的にも価値がある。

入手性とその後

中古市場では現在も比較的見かけやすく、裸カートリッジなら手頃な価格、箱説完備なら美品はプレミアが付くという相場が定着している。デジタル配信やバーチャルコンソール移植は行われていないため、プレイ手段は実機または互換機に限られる。コレクターにとっては「ハドソン製・ウエストン開発・ワタルIP」という三点セットが魅力的で、キャラゲーの資料的価値が重視されている。


総合的評価

当時の『魔神英雄伝ワタル 外伝』は、アニメの余熱とファミコン市場後期の勢いを背景に登場し、オリジナル勇者としての“参加型外伝”を強調することでメディア露出とファン支持を確保した作品だった。派手な演出はなかったが、小刻みな達成感・名前入力による没入感・魔神召喚の見せ場で記憶に残り、評価は二極化しつつも確かな存在感を残した。

30年以上経った今も、攻略本や中古パッケージ、ファンサイトでその名を見かけるのは、当時の“外伝ならではの工夫”が強く印象に残った証拠といえるだろう。

後年の評価と入手性

レトロゲーマーからの再評価

『魔神英雄伝ワタル 外伝』は発売当時こそ「外伝扱いのキャラゲー」として地味な存在に映っていたが、2000年代以降、レトロゲームを掘り起こす動きの中で再評価が進んだ。特に注目されたのは、開発が『モンスターワールド』シリーズで知られるウエストン(Westone)であること。アクションRPGの名手が手掛けていた点が明らかになり、単なるキャラゲーではなく「職人仕事が光る良作」と位置づけられるようになった。

加えて、BGMを担当した坂本慎一の存在も大きい。『モンスターワールドII』や『ワンダーボーイV』でファンを魅了した軽快で伸びやかな旋律は、本作でも健在で、アニメ主題歌なしでも“冒険の楽しさ”を感じさせる音楽として後年のプレイヤーから支持を集めている。

ファン目線での「外伝」評価

ファンからは、「自分の名前が武器に反映される」没入感や、龍神丸・戦神丸・幻神丸・龍王丸・雷神丸といった魔神たちの登場が、いまなお「隠れたファンサービス」として語り草になっている。特に雷神丸は本作オリジナルの魔神であり、**“ゲームでしか見られない存在”**としてワタルファンにとって資料的価値を持っている。

ただし、評価は一枚岩ではない。後年のレビューでも「戦闘のテンポや成長システムは良いが、演出は淡白」「セーブ仕様が不親切」といった声は根強い。要するに、「キャラゲーとしては成功、RPGとしては小粒」という印象が今も変わらず続いているのだ。

入手性とコレクター事情

現在、公式の復刻配信やリメイクは存在せず、プレイするにはファミコン実機または互換機を使い、中古カートリッジを入手するしかない。裸ソフトは比較的出回りやすく、数千円程度で入手可能だが、箱説完備の美品はプレミア価格となり、コレクター市場では安定して高値がついている。特にパッケージや取説に描き下ろしイラストが収録されている点から、ファンにとっては“ゲームを超えたコレクションアイテム”としての価値が重視されている。

また、攻略本や当時の広告チラシなどの関連資料も含めて探すと、入手難易度は一気に上がる。ネットオークションや中古市場で断続的に出品されるが、状態や付属品の有無で価格差が大きく、「一式揃えるのはハードルが高い」のが現状だ。

総合的な後年の位置づけ

総括すると、『魔神英雄伝ワタル 外伝』は「ファミコン後期に埋もれがちなキャラゲーの中で、確かな個性を放った一作」として評価されている。大規模なリメイクや復刻には恵まれていないものの、ウエストン開発・坂本慎一作曲・オリジナル魔神登場という三つの要素が揃った本作は、レトロファンやワタルファンの間で“資料的に外せないゲーム”となった。

今なおプレイするにはややハードルが高いが、「自分が勇者としてワタル世界に飛び込む」という独自のアプローチは色褪せていない。だからこそ、入手難であることが逆にコレクター心を刺激し、後年の評価をさらに高めているのだ。

ファミ通風レビュー『魔神英雄伝ワタル 外伝』(FC/1990)

編集者A:7/10
“君の名が武器になる”仕掛けが見事。ワタル本編の追体験ではなく、自分がもう一人の勇者として参加できる外伝設計は今見てもユニーク。龍神丸ほか魔神の見せ場も要所で効く。演出は簡素だが、原作の明るい冒険感を“短い達成の反復”で掬い上げた良作。

編集者B:6/10
テンポの良いフィールド→1画面戦闘は好印象。操作も分かりやすく、サクサク進める。ただオートセーブ&途中リセット罰則は現代感覚だと厳しめ。会話とイベントが淡泊で、キャラを深く知らない初見には動機が弱い。ライトARPGとしては合格、ドラマ期待派には物足りない。

編集者C:8/10
開発Westone、BGMは坂本慎一——この職人コンビが生む“軽快で前向きな冒険BGM×素直な手触り”は強い。名前→武器名反映で没入感も増し、魔神召喚のカタルシスが小気味よく回る。“外伝=参加型”の思想がゲーム構造まで通っている点を高く評価。

編集者D:5/10
良くも悪くも小粒。イベントは最小限、演出は地味。敵配置や戦闘もバリエーションが薄く、長時間の引力は弱い。セーブ仕様の厳しさは子ども時代の理不尽体験を思い出すレベル。ワタル愛があれば推せるが、純粋なRPGとしては勧めづらい。

合計:26/40点

総評
“追体験ではなく参加させる”外伝設計、名前=武器名の没入ギミック、魔神の節目演出、そしてWestone×坂本慎一の軽快な冒険感——ここが光る。一方で演出は控えめ、セーブ周りは古典的で不親切。原作ファンには“隠れた佳作”、初見には“手堅い小粒ARPG”という評価に落ち着く。

総まとめ:外伝が描いた“もうひとつの勇者譚”

――埋もれず残った理由と、いま遊ぶ意味。

『魔神英雄伝ワタル 外伝』は、当時のアニメゲーム化に多かった「原作ストーリーの追体験」とはまったく異なる方向を打ち出した。プレイヤーはワタル本人ではなく、自分の名前を冠したもうひとりの勇者として冒険に参加し、ワタルやシバラク、ヒミコと肩を並べて歩む。この「参加型」の発想が、作品を“キャラゲーの凡百”から一歩引き上げている。

もちろん、演出は控えめでドラマ性も淡泊。宿以外でリセットすると所持品を失うなど不親切な部分もあり、現代的なRPGとして遊ぶと小粒に映るかもしれない。しかし、そのシンプルさは裏を返せば80〜90年代アクションRPGの軽快さであり、短いサイクルで「進んでいる感覚」を味わえるゲームテンポを生んでいた。

ファンにとっては、龍神丸やオリジナル魔神・雷神丸の登場、坂本慎一の手による“前向きで冒険心を煽るBGM”、そして「名前が武器名に刻まれる」仕掛けといった数々の工夫が記憶に残る。初見にとっては、派手さこそ薄いが、素直で遊びやすい小冒険RPGとして意外な満足を得られるタイトルだった。

発売から三十年以上が過ぎた今でも、中古市場や資料系ファンの間で語られるのは、単なるキャラゲー以上の“外伝ならではの価値”を提示したからにほかならない。『ワタル 外伝』は、勇者ワタルの物語をなぞるゲームではなく、「自分自身が勇者となって歩んだ物語」を残すことで、キャラクターゲームの一つの理想形を示したと言えるだろう。

“ワタルの物語を追う”のではなく、“自分が勇者になる”。外伝ならではの体験が30年経った今も輝きを放つ

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