
- 初代FF1 FC版レビュー|ジョブ・戦闘・Pixel Remasterとの違いを解説
- 初代『ファイナルファンタジー』はどんなゲーム?
- 冒険は4人の職業を選ぶところから始まる
- パーティー編成で旅の難しさまで変わる
- クラスチェンジすると装備や魔法の幅が広がる
- 魔法は「MPを10消費」ではなく、レベルごとに使用回数を持つ
- ダンジョンでは「強い魔法をあと何回残すか」が効いてくる
- 武器・防具・魔法――序盤のギルはかなり悩ましい
- 戦闘では4人分の行動と相手を先に決める
- 先に倒された敵へ攻撃すると、その一手は空振りする
- シーフは「完全に無意味」ではないが、説明書どおりの強みが出にくい
- モンクは「装備を買わない」という選択まで強さになる
- FC版には、実際のバランスへ影響する不具合も残っている
- 「説明書の属性」と「実際に効く属性」を分ける必要がある
- 船を手に入れると、世界地図の読み方が変わる
- カヌーがあれば、川が道になる
- 飛空艇では、障害物そのものを越えられる
- ダンジョンでは「まだ先へ行くか、戻るか」がつきまとう
- セーブできる場所にも制約がある
- 物語は4人の固定主人公を追うタイプではない
- 最初の事件を越えたところで、本当の旅が始まる
- 「FINAL FANTASY」は“最後のゲーム”だから付いた名前ではない
- 『ドラゴンクエスト』を見て、ファミコンRPGへ踏み出した
- 坂口博信・河津秋敏・石井浩一らが参加した
- ナーシ・ジベリのプログラムも、伝説より実際の役割を見る
- 天野喜孝の絵と、ゲーム内ドットは同じものではない
- 植松伸夫の音楽は「後に有名になった曲」だけではない
- 今遊んでも面白いのは、最初から「自分の一行」を作れること
- 一方、1987年版にはかなり厳しい部分もある
- それでもFC版を遊ぶ意味はある?
- WonderSwan Color版以降、初代は何度も作り直された
- Pixel RemasterはFC版を高解像度にしただけの作品ではない
- 現代版ならエンカウントOFFや経験値倍率まで変更できる
- 2026年現在はかなり多くの機種で遊べる
- まとめ|シリーズ史を知らなくても、最初の4人を選ぶところから面白い
初代FF1 FC版レビュー|ジョブ・戦闘・Pixel Remasterとの違いを解説
1987年12月18日にファミリーコンピュータで発売された『ファイナルファンタジー』。
ゲームを始めると、まず4人の冒険者を作ります。
戦士にするか。
白魔術士を入れるか。
黒魔術士を何人使うか。
シーフを選ぶか。
4人全員を戦士にしてもいい。
同じ職業を複数入れることもできます。
そして、この最初の選択を済ませたら、基本的にその4人で最後まで旅を続けます。
町では限られたギルから武器、防具、魔法を買い、フィールドへ出ればランダムエンカウントで敵と戦う。ダンジョンでは残りHPだけでなく、あと何回魔法を使えるかも気にしながら奥へ進みます。
船を手に入れれば海へ。
カヌーがあれば川へ。
飛空艇なら、今まで歩いていた世界を上空から越えていける。
シリーズ第1作であることを知らなくても、1987年の一本のRPGとして考えることはかなり多いゲームです。
初代『ファイナルファンタジー』はどんなゲーム?
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | ファイナルファンタジー |
| ハード | ファミリーコンピュータ |
| 発売日 | 1987年12月18日 |
| 発売元 | スクウェア |
| ジャンル | RPG |
| プレイ人数 | 1人 |
| 型番 | SQF-FF |
| 当時価格 | 5,900円 |
| ROM | 2Mbit PRG ROM |
| セーブ | バッテリーバックアップ |
| パーティー | 4人 |
| 初期職業 | 6種類 |
スクウェア・エニックスは現在も1987年12月18日発売のシリーズ第1作として掲載しており、当時価格は5,900円。日本版カートリッジは型番SQF-FFで、PRG ROMは256KB=2Mbit、バッテリーバックアップ用RAMを搭載しています。
物語では、土・火・水・風の4つのクリスタルが輝きを失った世界に、クリスタルを持つ4人の「光の戦士」が現れます。
ただし、4人には後年の作品のような固定された主人公像があるわけではありません。
名前も職業もプレイヤーが決めます。
冒険は4人の職業を選ぶところから始まる
FC版で最初に選べる職業は6種類です。
| 職業 | 主な特徴 |
|---|---|
| 戦士 | 武器・防具に恵まれ、前衛向き |
| シーフ | 素早さを特徴とする職業 |
| モンク | 素手での攻撃力が成長する |
| 白魔術士 | 回復・補助系の白魔法を使う |
| 黒魔術士 | 攻撃系を中心とした黒魔法を使う |
| 赤魔術士 | 白・黒魔法と武器の両方を扱う |
原作説明書でも、4人それぞれに6職から自由に選べると説明されています。
同じ職業を何人選んでも構いません。
説明書では戦士4人の例まで掲載されており、組み合わせは6の4乗で1296通りあります。
現在のRPGでいうキャラクターメイクほど細かな数値設定はありません。
しかし、ここで決めた職業は気軽に町で変更できません。
つまり、
回復役を何人入れるか。
魔法へどこまで頼るか。
通常攻撃の強い前衛を何人置くか。
という判断を、冒険が始まる前に行うことになります。
パーティー編成で旅の難しさまで変わる
4人の職業は、戦闘画面の見た目を変えるためだけの選択ではありません。
装備できる武器、防具。
使える魔法。
HP。
通常攻撃。
序盤の資金の使い道。
それぞれが変わります。
たとえば戦士を多く入れれば直接攻撃には強くなりますが、人数分の装備を整えるにはかなりギルが必要です。
魔術士を増やせば使える魔法は広がりますが、魔法を覚えるにも購入費がかかり、使用回数にも限りがあります。
赤魔術士なら戦闘・魔法の両方へ参加しやすい一方、専門職とまったく同じ性能ではありません。
最初の4人を決める画面が、そのまま最初の戦略になっています。
クラスチェンジすると装備や魔法の幅が広がる
冒険を進めると、それぞれの職業を上位職へ変化させられます。
| 初期職 | クラスチェンジ後 |
|---|---|
| 戦士 | ナイト |
| シーフ | 忍者 |
| モンク | スーパーモンク |
| 白魔術士 | 白魔導士 |
| 黒魔術士 | 黒魔導士 |
| 赤魔術士 | 赤魔導士 |
ナイトや忍者になると、それまで扱えなかった装備や一部魔法を使えるようになるなど、戦力が広がります。
どこで何をすればクラスチェンジできるのかは、初めて遊ぶ場合の発見として残しておきたいところです。
「途中で好きな職へ転職して編成を組み直す」というシステムではなく、最初に選んだ職業を発展させる仕組みです。
魔法は「MPを10消費」ではなく、レベルごとに使用回数を持つ
FC版の魔法は、後年のFFで一般的になるひとつのMPゲージから必要量を消費する方式ではありません。
魔法にはLEVEL 1からLEVEL 8まであり、それぞれの魔法レベルごとに使用可能回数を持っています。
たとえばLEVEL 1を何回使えるか、LEVEL 2を何回使えるかが別々に管理されます。
さらに、各魔法レベルには白・黒それぞれ複数の魔法がありますが、1キャラクターが1レベルにつき覚えられるのは最大3種類です。
すべて覚えてから好きなものを使い分けるゲームではありません。
どの魔法を買うか。
どれを諦めるか。
という選択があります。
ダンジョンでは「強い魔法をあと何回残すか」が効いてくる
魔法レベルごとの回数制は、長いダンジョンで特に効いてきます。
目の前の敵へ強い魔法を使えば、その戦闘は早く終わる。
しかし奥に何がいるか分からない。
回復魔法も残しておきたい。
だから通常戦闘でどこまで魔法を使うか考えることになります。
宿屋へ泊まればHPと魔法使用回数を回復し、その時点の冒険をセーブできます。フィールドではテントやコテージなどを使って回復・記録する方法もありますが、ダンジョン内部で好きな場所からセーブすることはできません。
奥まで行くか。
一度戻るか。
手持ちの回復手段と相談しながら進みます。
武器・防具・魔法――序盤のギルはかなり悩ましい
最初の町から、武器屋、防具屋、白魔法屋、黒魔法屋があります。
当然、全部買うだけのギルはありません。
戦士へ強い剣を買う。
防具を優先する。
白魔術士へ回復魔法を覚えさせる。
黒魔術士へ攻撃魔法を買う。
回復アイテムも用意する。
職業構成によって欲しいものまで変わります。
装備にも職業制限があり、武器は各キャラクター4個まで所持可能。防具は頭・体・腕・盾へ分かれています。
このため、レベルを上げれば自動的に全部強くなるRPGではありません。
稼いだギルを誰へ使うかも、パーティーを作ったプレイヤー側の仕事です。
戦闘では4人分の行動と相手を先に決める
敵と遭遇するとターン制の戦闘へ入ります。
味方は上から順番に行動を入力し、全員分を決めた後、敵味方を含めて行動順に処理されます。
物理攻撃なら、誰を攻撃するかも自分で指定します。
魔法なら、単体対象の場合は対象も選びます。
危険なら「にげる」を選べますが、必ず成功するわけではありません。
そしてFC版には、現在ではかなり珍しい仕様があります。
先に倒された敵へ攻撃すると、その一手は空振りする
たとえば1人目と2人目の両方に同じゴブリンを狙わせたとします。
1人目の攻撃でゴブリンを倒しても、2人目が自動的に隣のゴブリンへ狙いを変えてくれるわけではありません。
対象が消えていれば、その行動は「こうかがなかった」となります。
FC版『FFI』『II』にはオートターゲットがなく、後年のリメイクで自動補正が導入されました。
これには二つの面があります。
敵の残りHPを想像しながら攻撃を分散する余地がある。
一方で、少し読み違えただけで一人分のターンを丸ごと失う。
1987年版の戦闘を遊ぶと、この仕様はかなり頻繁に意識することになります。
「高度な戦略のために意図的に不便にした」と美化する必要もありません。
判断になると同時に、現在では明確に面倒な部分でもあります。
シーフは「完全に無意味」ではないが、説明書どおりの強みが出にくい
FC版のシーフは、説明書では素早く、敵から逃げやすい職業として紹介されています。
ところが実際のFC版には逃走計算を含む処理上の癖があり、後年版ほどシーフの能力が素直に逃走性能へ反映されません。
装備面でも戦士より弱いため、序盤から分かりやすく強い職業ではありません。
だからといって「シーフは存在価値ゼロ」と言い切るのも正確ではありません。
後に忍者へクラスチェンジすると装備できる武器・防具が大きく増え、一部の黒魔法も扱えるようになります。
序盤で期待される長所と、実際のFC版で感じる性能にズレがある職業と考えるのが近いでしょう。
モンクは「装備を買わない」という選択まで強さになる
モンクもかなり特徴的です。
レベルが上がるにつれて、武器を装備しない素手攻撃が強くなります。
防具についても、装備を外した方が有利になる場面があります。
つまり、
「新しい町へ着いたら全員へ一番高い装備を買う」
という感覚だけでは扱えません。
序盤では装備を使った方がよい場面もありますが、成長すると「何も持たせない」こと自体が強さになります。
戦士とは別の方向から、パーティーの資金事情にも影響する職業です。
FC版には、実際のバランスへ影響する不具合も残っている
1987年FC版について避けて通れないのが、いくつかの処理が想定どおり動いていないことです。
代表的なのは知性。
魔法職にとって意味がありそうな能力値ですが、FC版では魔法の威力へ反映されません。
また、武器へ設定された属性や特定種族への特効も正常に機能しておらず、説明書が案内する「炎の敵へ氷属性の武器」といった相性の一部は、実ゲームでは期待どおりの効果を出しません。
さらに「ストライ」「セーバー」「デスペル」など、一部魔法にも正常に働かないものがあります。
これは小さな裏技の話ではありません。
黒魔術士の能力評価。
武器選び。
魔法選択。
実際の戦闘バランスへ関わります。
一方、こうした不具合があるからゲームそのものが成立していないわけでもありません。
物理攻撃、回復、攻撃魔法、装備更新、レベルアップという基本部分は機能しており、最後までRPGとして進められます。
「説明書の属性」と「実際に効く属性」を分ける必要がある
少しややこしいのは、属性そのものが全部壊れているわけではないことです。
たとえば攻撃魔法には敵の耐性・弱点との関係があります。
一方で、武器に設定された属性や特効が機能しない。
「FF1は属性が全部無意味」とまとめると、それも間違いになります。
このあたりはPixel Remasterでは修正されているため、現代版の感覚でFC版の装備を語ると食い違いが起こります。
船を手に入れると、世界地図の読み方が変わる
序盤は徒歩です。
山や海を越えることはできません。
そこから船を手に入れると、海を移動できるようになります。
船は歩行の2倍の速度で移動できますが、どこでも上陸できるわけではなく、港から乗り降りします。
これで、それまで地図上では離れていた土地が目的地に変わります。
新しい乗り物は移動演出ではなく、行ける場所そのものを増やす鍵です。
カヌーがあれば、川が道になる
さらにカヌーを手に入れると、川や湖へ入れるようになります。
それまで歩行を妨げていた水路が、新しい移動経路へ変わります。
船が海。
カヌーが川。
それぞれ移動できる地形が違うため、世界を一度に全部開放するわけではありません。
物語の進行とともに、少しずつ地図上の制限が外れていきます。
飛空艇では、障害物そのものを越えられる
さらに進むと飛空艇を利用できるようになります。
飛空艇は徒歩の4倍の速度で移動でき、山や海といった地形を飛び越えられます。
ただし着陸には平地や草原など一定の場所が必要で、目的地のすぐ横へ必ず降りられるとは限りません。
徒歩。
海。
川。
空。
移動手段が増えるたび、同じ世界地図で行ける場所が変わります。
「後のFFにも飛空艇が出たから重要」なのではなく、初代の中だけでも探索範囲を大きく変えるシステムです。
ダンジョンでは「まだ先へ行くか、戻るか」がつきまとう
ダンジョンは複数階層にわたり、宝箱や階段を探しながら進みます。
フィールドと同じくランダムエンカウントがあり、戦えばHPと魔法使用回数を消耗します。
魔法を使い切っても、後年版のように気軽にエーテルで満タンにできるゲームではありません。
回復役の魔法が減ってきた。
ポーションも少ない。
しかし、もう少し進めば次の階へ行けそう。
ここで戻るか。
進むか。
この判断が長いダンジョンでは繰り返されます。
白魔法にはダンジョンからの帰還を助ける「ダテレポ」「テレポ」などもありますが、使える職業・魔法レベル・残り回数という条件があります。
セーブできる場所にも制約がある
宿屋へ泊まれば全回復と同時にセーブされます。
フィールドではテント系アイテムを利用して記録できます。
しかしダンジョンの途中で好きな場所から記録して、次の日にそこから再開することはできません。
ゲームオーバーになれば、最後に記録したデータからやり直しです。
現在のPixel Remasterにあるオートセーブとは、かなり感覚が違います。
ダンジョンへ入る前の準備が重いのは、この保存方式ともつながっています。
物語は4人の固定主人公を追うタイプではない
現在の『ファイナルファンタジー』から初代へ戻ると、物語の見せ方にも大きな違いがあります。
序盤では4人の光の戦士がコーネリアへ到着し、ガーランドにさらわれたセーラ姫を救う事件へ関わります。
しかし4人それぞれに固有の台詞や個別ドラマが大量に用意されているわけではありません。
プレイヤー自身が名前と職業を決めた4人で、各地の異変を解決しながら4つのクリスタルへ光を取り戻していきます。
後年のFFにある「固定された主人公たちの濃密な人間ドラマ」を、そのまま1987年版へ当てはめると違和感があります。
初代はもっと、自分で作った一行を世界へ送り出して進めるRPGです。
最初の事件を越えたところで、本当の旅が始まる
初代には特徴的なオープニングの見せ方があります。
ゲーム開始直後から長大なオープニングムービーが流れるわけではありません。
4人を作って冒険を始め、コーネリア周辺の最初の事件を解決する。
そして橋を渡ったところで、タイトルを伴うオープニングメッセージがあらためて現れます。
その時に流れるのが、後にシリーズでも繰り返し使われる「オープニング・テーマ」へつながる曲です。
最初にプレイヤー自身で一つの冒険を終わらせてから、世界全体へ話を広げる構成になっています。
終盤の仕組みを明かさなくても、初代の物語演出を見るならここだけで十分に興味深い部分です。
「FINAL FANTASY」は“最後のゲーム”だから付いた名前ではない
初代について非常に有名なのが、
「これが失敗したらスクウェアが倒産するのでFINAL FANTASYになった」
「坂口博信氏がゲーム業界を辞める最後の一本だった」
という話です。
タイトルの実際の経緯について、坂口氏本人は後年かなり明確に説明しています。
まず欲しかったのは、アルファベットでFFと書け、日本語でも「エフエフ」と4音で呼べる名前でした。
当初は『Fighting Fantasy』を考えていましたが、同名作品が存在したため使えず、『Final Fantasy』になった。
坂口氏は当時について「背水の陣だった」こと自体は認めていますが、“Final”を選んだ直接の理由ではなく、Fから始まる言葉ならよかったという趣旨で説明しています。
会社が「FF失敗=即倒産」という状態だった、とまで記事に足す必要もありません。
『ドラゴンクエスト』を見て、ファミコンRPGへ踏み出した
坂口氏はApple IIで『ウィザードリィ』や『ウルティマ』などを遊び、RPGへ関心を持っていました。
一方、当初はファミコンでは容量やセーブの問題から長時間遊ぶRPGを作るのは難しいと考えていたと振り返っています。
その見方を変えたのが『ドラゴンクエスト』でした。
「ファミコンでもRPGを作れる」と判断し、スクウェア内で企画が動き始めます。立ち上げ時は社内でも人気が高い企画ではなく、当初集まったメンバーは4人ほどだったと坂口氏自身が語っています。
「スクウェア最後の賭け」というドラマを足さなくても、成立までの経緯は十分おもしろいものです。
坂口博信・河津秋敏・石井浩一らが参加した
原作スタッフには、後のスクウェア作品でも名前を見るメンバーがいます。
坂口博信氏は原案・企画の中心。
河津秋敏氏はゲームデザイン、とくに戦闘システム側へ関与。
石井浩一氏は企画とグラフィックに参加しています。
シナリオは寺田憲史氏。
プログラムはナーシ・ジベリ氏。
キャラクターデザインは天野喜孝氏。
音楽は植松伸夫氏です。
少人数から始まった企画へ、それぞれ異なる分野のスタッフが加わって完成した作品です。
「奇跡のトリオ」などの呼び名を作る必要はありません。
ナーシ・ジベリのプログラムも、伝説より実際の役割を見る
ナーシ・ジベリ氏は初代から『III』までの主要プログラマーとして知られています。
高速で移動する飛空艇など、後年まで多くの技術逸話が語られてきました。
ただ、そうした話を「ファミコンの性能限界を超えた天才」という一文へまとめると、作品の記事から離れていきます。
FC版で直接分かるのは、広い世界を徒歩・船・カヌー・飛空艇で切り替えながら移動し、複数の敵を一度に表示する戦闘や、4人分の成長・装備・魔法を一つのカートリッジで動かしていることです。
技術者の逸話より、まず実ゲームとして何を実現したかを見る方がいいでしょう。
天野喜孝の絵と、ゲーム内ドットは同じものではない
原作では天野喜孝氏がキャラクターデザインを担当し、ロゴやイメージイラストにもその絵が使われています。スクウェア・エニックスの現行商品ページでもロゴ/イメージイラストの権利表記が天野氏になっています。
一方、ゲーム画面の小さなキャラクターはドット絵です。
現在Pixel Remasterで全面的に描き直されたドットキャラクターとも違います。
パッケージやイメージアートと、実際に操作するFC画面を分けて見る必要があります。
植松伸夫の音楽は「後に有名になった曲」だけではない
音楽は植松伸夫氏。
戦闘、町、フィールド、ダンジョンと場面ごとにBGMが切り替わります。
戦闘が終われば短い勝利のファンファーレが入り、結果画面へ移る。
町へ戻ればBGMも変わる。
長いランダムエンカウント型RPGなので、音楽は「イベントで一度聴くもの」ではなく、戦闘や移動の区切りとして何度も耳に入ります。
Pixel Remasterでは植松氏監修のアレンジ版BGMが新たに制作され、現在のコンソール・PC版ではアレンジ版と原作風の「オリジナル」設定を切り替えられます。これはFC実機から吸い出した生音源そのもの、と説明するより「原作風音源」とするのが適切です。
今遊んでも面白いのは、最初から「自分の一行」を作れること
2026年にFC版へ戻っても、最初のパーティー編成はかなりおもしろい部分です。
戦士を何人使うか。
白魔術士を入れるか。
黒魔術士へ火力を任せるか。
赤魔術士で柔軟性を取るか。
モンクを育てるか。
シーフを最後まで使って忍者を目指すか。
その答えをゲーム側が固定していません。
しかも一度始めれば、簡単に職業を交換できない。
だから最初の編成に意味があります。
魔法も1レベルにつき最大3つなので、「とりあえず全部覚えて後で選ぶ」とはいきません。
世界探索でも、乗り物が増えるたびに新しい場所が候補へ入る。
選択した結果を長く引き受けながら旅をするところは、現在でもしっかりゲームになっています。
一方、1987年版にはかなり厳しい部分もある
現在遊ぶと分かりやすく古いのは、まず戦闘です。
倒れた敵への攻撃が自動で別ターゲットへ移らない。
4人分のコマンド入力が必要。
エンカウントも多い。
ダンジョン途中に現代的なセーブポイントはない。
魔法の使用回数も限られる。
装備や持ち物のUIも現在ほど整理されていません。
そこへ知性、武器属性、一部魔法などFC版固有の不具合まで加わります。
特に魔法職は、ステータス画面から想像する成長と実際の魔法性能が一致しない部分があります。
「昔のRPGだから不便なのも味」と片付ける必要はありません。
不便なところは、今遊べば普通に不便です。
それでもFC版を遊ぶ意味はある?
あります。
ただし目的次第です。
物語を快適に追い、現代的なUIで初代FFを体験したいなら、Pixel Remasterの方が入りやすいでしょう。
一方、
初期4職を選ぶ緊張感。
ターゲット補正のない戦闘。
魔法レベルごとの回数管理。
当時の成長バランス。
FC版固有の不具合まで含めた職業差。
1987年のドットと音。
そこまで知りたいなら、Pixel Remasterだけでは同じ体験にはなりません。
古い方が「本物」で、新しい方が「簡易版」という関係でもありません。
遊びやすく組み直した現代版と、1987年に発売された原作。
それぞれ別の価値があります。
WonderSwan Color版以降、初代は何度も作り直された
初代『ファイナルファンタジー』は、その後何度も移植・リメイクされています。
1989年にはマイクロキャビンによるMSX2版。
2000年12月9日にはWonderSwan Color版。
2002年10月31日にはPlayStation版。
2004年7月29日には『ファイナルファンタジーI・II アドバンス』。
2007年4月19日にはPSP版が発売されました。
WSC版ではグラフィックやシステムが大きく整えられ、PS版ではグラフィック・音楽のアレンジ、オープニングムービー、イージーモードなどが追加。
GBA版では追加ダンジョン「Soul of Chaos」が加わり、魔法もFC版のレベル別回数方式から一般的な数値MP方式へ変更されています。
PSP版ではさらにグラフィックを一新し、GBA追加要素に加えて独自ダンジョンも収録しました。
「初代FF」と呼ばれる商品の中でも、遊びの感触はかなり変わっています。
Pixel RemasterはFC版を高解像度にしただけの作品ではない
現在最も入手しやすいのが『FINAL FANTASY Pixel Remaster』です。
初代をベースにした2Dリマスターですが、FC版の画面だけを高解像度にした商品ではありません。
ドットグラフィックを全面的に再制作。
植松伸夫氏監修によるアレンジBGM。
現代向けUI。
オートバトル。
オートセーブ。
モンスター図鑑。
イラストギャラリー。
サウンドプレイヤー。
といった変更があります。
また、魔法はPixel RemasterではFC版に近い魔法レベルごとの回数制へ戻っています。
ただし知性などの能力値や魔法、装備属性といったFC版の不具合まで再現しているわけではありません。成長・バランスも作り直されています。
システムの骨格には原作へ戻った部分がありながら、実際のバランスは現代版。
この捉え方が近いでしょう。
現代版ならエンカウントOFFや経験値倍率まで変更できる
現在のコンソール/PC版Pixel Remasterでは、さらにブースト機能があります。
ランダムエンカウントをON/OFF。
経験値獲得倍率を0~4倍へ変更。
フォントを通常表示と原作をイメージしたドットフォントから選択。
BGMをアレンジ版と原作風から選択。
といった設定が可能です。
そのため、「1987年当時と同じ苦労をしなければ初代FFを楽しめない」というゲームではなくなりました。
レベル上げを短縮し、エンカウントを止めて探索だけ進める遊び方もできます。
逆に原作に近いペースで進めたいなら、それらを使わなければいい。
2026年現在はかなり多くの機種で遊べる
2026年8月現在、Pixel Remaster版『FINAL FANTASY』は現行販売されています。
| 環境 | 2026年8月時点 |
|---|---|
| Nintendo Switch | 販売中 |
| Nintendo Switch 2 | Switch版の互換動作対応 |
| PlayStation 4 | 販売中 |
| PlayStation 5 | PS4版を後方互換でプレイ可能 |
| Xbox Series X|S | 販売中 |
| Windows / Xbox PC | 販売中 |
| Steam | 販売中 |
| iPhone / iPad | App Storeで販売中 |
| Android | Google Playで販売中 |
| FC原作 | 中古カートリッジ+対応実機 |
Nintendoの現行商品情報ではSwitch版『FINAL FANTASY』についてNintendo Switch 2での動作をSupported – Game behavior is consistent with Nintendo Switchとして確認できます。
PlayStation StoreではPS4版が現在1,480円で販売されており、PS5は大多数のPS4タイトルを後方互換で利用できます。Xbox版もSeries X|S/Windows向けに現行販売されています。
iOS版もApp Storeで、Android版もGoogle Playで現行販売されています。
現在、初めて遊ぶ人ならPixel Remasterが圧倒的に手軽です。
ただし、1987年FC版そのものが現在のNintendo Classicsへ収録されているわけではありません。
FC原作の仕様をそのまま確認したい場合は、実機環境が基本になります。
まとめ|シリーズ史を知らなくても、最初の4人を選ぶところから面白い
初代『ファイナルファンタジー』を評価するために、
「スクウェア最後の賭け」
という伝説は必要ありません。
最初に4人を作る。
職業を選ぶ。
少ないギルを武器、防具、魔法へ振り分ける。
フィールドへ出る。
敵と戦う。
攻撃対象を4人分考える。
魔法の残り回数を見る。
ダンジョンの奥へ行くか、引き返すか決める。
船を手に入れる。
川へ入れるようになる。
空を飛べるようになる。
同じ世界地図で、行ける場所が少しずつ増えていく。
そこに、1987年のRPGとしての『ファイナルファンタジー』があります。
もちろん現在では厳しいところも多い。
オートターゲットはない。
ダンジョン内で自由に保存できない。
エンカウントは頻繁。
UIも古い。
そして一部の能力値や装備、魔法には実際の不具合が残っています。
快適に物語を追いたいならPixel Remasterの方が向いています。
それでも、4人の職業を決めた瞬間から最後までその選択を引き受け、限られた魔法と資金を使って世界を広げていく感覚は、FC版で強く味わえる部分です。
シリーズ第1作だから遊ぶのではなく、自分で作った4人をどんな一行にするか考えるRPGとして遊んでみる。
そこから入ると、初代『ファイナルファンタジー』は2026年でも十分おもしろいゲームです。