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2062年未来人の「山に登れ」は本当に3.11前に解読されていた?2010年の元スレを検証

2062年未来人の「山に登れ」は本当に3.11前に解読されていた?2010年の元スレを検証

「2062年未来人」の話を知っている人なら、おそらく一度は目にしたことがある言葉があります。

「山に登れ」

2062年から来たと名乗る人物が、2010年に2ちゃんねるへ謎の暗号を残し、それが約4か月後に発生した東日本大震災の巨大津波を警告していた――。現在では、そんな「予言」として広く語られています。

ただ、この話には以前から素朴な疑問がありました。

2011年3月11日に巨大津波が発生したあと、誰かが意味不明な文字列を眺めて「これは山に登れと読める」と後付けしただけではないのか。

もしそうなら、予言としての印象はかなり変わります。

ところが、現在閲覧できる2010年11月14日の過去ログを時系列で追うと、少し予想外のものが残っています。

暗号が投稿されたのは14時23分52秒。その約3時間14分後の17時38分17秒、別の参加者がすでに、

「山に登れ?」

と書き込んでいます。

さらに17時44分には海面上昇を連想する投稿があり、その3分後には、大規模な津波ではないかと考える別の投稿まで続いていました。いずれも東日本大震災が起きる約4か月前です。

しかも、これだけではありません。

2010年11月17日、つまり3日後に立てられた「未来人」専用スレでは、すでに当時のやり取りがまとめられ、自然災害への回答として「山に登れ?」という形で掲載されていました。少なくとも現在残る複数の2010年ログを見る限り、「山に登れ」という読み方そのものを、3.11後に初めて作られたものと考えるのは難しいのです。

ここまでは、確かに少し不思議です。

しかし、ここから「2062年未来人は東日本大震災を予言していた」と結論するには、まだ大きな距離があります。

その違いを、2010年まで時間を巻き戻しながら見ていきます。

そもそも「2062年未来人」はどこに現れたのか

始まりは2010年11月14日です。

当時の2ちゃんねる・オカルト板にあった「( ´^A^)予言、預言、予知夢、直感など総合33」というスレッドで、12時30分08秒、ID L12r5lqQ0 の人物が突然「2062年から来た」と名乗りました。

この時点では「2062年未来人専用スレ」が用意されていたわけではありません。さまざまな予言や予知夢を扱う既存スレへ、一人の匿名ユーザーとして入ってきた形です。

その後、このIDは中国、第三次世界大戦、未来の技術、食文化など、参加者から寄せられたさまざまな質問へ回答していきます。

重要なのは、この2010年11月14日の最初期には、後年「本人確認」の材料として扱われることになる固定トリップがまだ使われていなかったことです。

つまり、ここで確実に追えるのは、同じ日の L12r5lqQ0 というIDが一連の投稿をしていたというところまでです。

14時08分、「大きな自然災害を教えて」という質問が出た

「山に登れ」の話だけが独立して突然書かれたわけではありません。

14時08分01秒、ID xP4JWjQS0 の別ユーザーが、2062年までに起きる「歴史に残るような大きな自然災害」について尋ねています。

これに対し、未来人を名乗る L12r5lqQ0 が答えたのが14時23分52秒でした。

自然災害については話せない、人口動態の変化につながることも言えない、という趣旨の回答をしたあと、「忠告」として次の文字列を残しています。

yあ 間 N意 埜 b於 ㋹

これが後に「山に登れ」として有名になる暗号です。

ここで一つ、現在の「2062年未来人伝説」と分けておきたいことがあります。

未来人を名乗った人物自身が「山に登れ」と書いたわけではありません。

本人が残したのはあくまで奇妙な文字列です。

「山に登れ?」と書いたのは、その約3時間後の別ユーザーでした。

この違いは小さく見えますが、今回の話を考えるうえでは非常に重要です。

「山に登れ?」は本当に3.11より前に書かれていた

2010年11月14日の流れを、時刻だけに絞るとかなり分かりやすくなります。

時刻現在の過去ログで確認できる出来事
12:30ID L12r5lqQ0 が2062年から来たと名乗る
14:08別ユーザーが2011~2062年の大きな自然災害を質問
14:23L12r5lqQ0 が自然災害について答え、暗号を投稿
17:10別ユーザーが暗号を訳してほしいと呼びかける
17:38別ユーザーが「山に登れ?」と投稿
17:44別ユーザーが海面上昇を連想
17:47さらに別ユーザーが大規模な津波を連想

この一連の投稿は、現在の5ch過去ログ上ではすべて2010年11月14日として並んでいます。暗号投稿から「山に登れ?」までは3時間14分25秒しかありません。

そして、この時間関係をさらに興味深くするのが、3日後の記録です。

11月17日午前9時20分には「未来人さんへの質問・議論」を目的とする専用スレがすでに立てられ、同日午後には「2062年から来た未来人との質疑応答」として、それまでの投稿がまとめ直されています。

その「自然環境」の項目では、大規模自然災害への質問に対する回答として、すでに「山に登れ?」が掲載されていました。

つまり、「現在の古いスレッドに2010年の日付が表示されている」という一点だけではありません。

2062年未来人という話そのものが2010年11月17日の時点ですでに別スレへ波及し、「山に登れ?」という解釈までまとめられていたことが確認できます。

2010年11月14日の現存過去ログに残る時系列。「山に登れ?」や津波の連想を書き込んだのは、2062年未来人を名乗った投稿者とは別のユーザー。

もちろん、これはインターネット上の過去ログです。デジタル署名された公文書のように「後から1ビットたりとも変更されていないこと」を証明する資料ではありません。

それでも、「3.11が起きたあとに暗号を初めて『山に登れ』へ読み替えた」という説明とは、現在確認できる記録が合いません。

ここは、2062年未来人の話を最初から作り話として片付ける場合でも、切り分けておくべき事実です。

さらに不思議なのは「津波」を連想した人までいたこと

「山に登れ?」だけなら、山に関する災害や海面上昇、噴火など、いくつもの意味を考えられます。

ところが17時44分には「海面上昇」を考える投稿があり、17時47分には別の参加者が、大規模な津波が来るのではないかという趣旨を書き込んでいます。

2011年3月11日14時46分、三陸沖を震源とするモーメントマグニチュード9.0の「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」が発生し、最大震度7を観測しました。気象庁は地震発生直後から津波警報を発表し、実際に甚大な津波災害が発生しています。

そのため後から2010年の書き込みを読むと、

暗号
→「山に登れ?」
→海面上昇
→大津波

という並びが、どうしても3.11と強く重なって見えます。

ここが、この話が15年以上たっても消えない最大の理由でしょう。

ただし、もう一度主体を分ける必要があります。

「山に登れ?」と解読した人物も、「海面上昇」を考えた人物も、「大津波」を連想した人物も、2062年未来人を名乗った L12r5lqQ0 とは別IDです。

未来人本人が「津波が来る」と書いたわけではありません。

興味深いのは、「未来人が津波を明言したこと」ではなく、震災前の読み手の中に、暗号から津波まで連想した人が実際にいたことなのです。

それでも「3.11を予言した」とはまだ言えない

ここからは、予言として何が書かれていなかったのかを見る必要があります。

暗号には、

2011年3月11日という日付がありません。

東北地方とも書かれていません。

三陸沖、太平洋、宮城、福島といった場所の指定もありません。

「地震」という言葉すら暗号自体には含まれていません。

そもそも暗号が投稿された直前には、「2011~2062年に起きる大きな自然災害を教えてほしい」という質問があります。つまり、読み手は最初から何らかの自然災害を想像する文脈に置かれていました。

この条件なら、「山へ行く必要がある災害とは何だろう」と考え、洪水や津波を連想すること自体に不自然さはありません。

したがって、2010年ログから言えることは二つです。

「山に登れ」という解釈が3.11後にゼロから作られたとは言いにくい。

一方で、

その暗号が2011年3月11日の東日本大震災を一意に指定していたとも言えない。

この二つは矛盾しません。

そして、この微妙な位置にあるからこそ、「全部後付け」でも「完全的中」でもない、妙な引っ掛かりが残ります。

もう一つの奇妙な日付「2016年4月15日」

2062年未来人には、もう一つ非常によく知られた日付があります。

2016年4月15日。

2010年11月16日の投稿とされるものに、2010年11月での任務が終わったあと、2016年4月15日へ行くという趣旨の発言があります。

今回ここで重要なのは、「2016年になってから突然その文章が出てきたのか」という点です。

実際には違います。

2010年11月17日に作られた前述の専用スレには、「総合33・34」で行われたやり取りをまとめたものとして、すでに2016年4月15日へ行くという内容が掲載されています。つまり、この日付自体が少なくとも現在残る2010年11月17日の記録に含まれています。

そして約5年半後、熊本県で大きな地震活動が始まりました。

気象庁によると、2016年4月14日21時26分に熊本県熊本地方でM6.5、最大震度7の地震が発生。その後、4月16日01時25分にはM7.3、再び最大震度7を観測しました。

指定されていた4月15日は、この二つの最大震度7の地震の間にあります。

さらに15日00時03分にもM6.4、最大震度6強の地震が発生しています。

これは日付だけを見れば、確かに目を引きます。

しかし、2010年の文章には、

「熊本」

とも、

「地震」

とも、

「4月15日に災害が起きる」

とも書かれていません。

書かれているのは、その日へ自分が行くという設定上の予定です。

したがって、「6年前に熊本地震の日を完全的中させた」と表現するのは事実を超えます。

正確には、

2010年の時点で2016年4月15日という具体的な日付がネット上に記録されており、結果として最大震度7の地震が相次いだ熊本地震の期間の真ん中にその日が入った。

ここまでです。

「山に登れ」と同じく、妙な近さは残ります。しかし、近いことと、出来事を具体的に予告していたことは別です。

実は「2062年未来人」を全部同じ人物として扱えない

ここまで2010年11月14日と16日の投稿を中心に見てきましたが、2062年未来人の話を追うと、やがて大きな問題にぶつかります。

後年の「2062年未来人」も、本当に最初の人物なのか。

ネット上の予言一覧では、2010年、2011年、2012年、2016年、それ以降の投稿まで、一人の長大な発言録として整理されることがあります。

しかし掲示板上では、そんな単純な本人確認はできません。

11月14日の人物は L12r5lqQ0、16日に2062年未来人として扱われた人物は別の日付IDです。2ちゃんねるのIDは永続的な身分証ではないため、日をまたいだ投稿者が同じ人物だったことを、それだけで証明することはできません。

実際、後年の2062年関連スレでも、「11月16日まで」「11月21日まで」「2010年中」など、どこまでを同じ人物と見るのか複数の考え方が存在していました。

ここを無視して、後世に有名になった発言をすべて2010年11月14日の人物へ戻してしまうと、伝説と元ログの境界が分からなくなります。

「トリップ」があっても、すべて解決するわけではない

2ちゃんねるには「トリップ」と呼ばれる仕組みがあります。

名前欄へ # に続けて秘密の文字列を入力すると、そのキーに対応した識別文字列が表示されるもので、当時から「なりすまし防止」に使われていました。

2062年未来人の話では、後に

◆wbBrH1aGfM

というトリップが有名になります。

現在「公式」を名乗る2062年サイトも、2010年11月21日にトリップを導入したという時系列を掲載しています。ただし、このサイト自体が最初の投稿者本人であることを証明する一次資料ではないため、現在伝えられている系譜を確認する参考資料として見る必要があります。

さらに話を複雑にしたのが2011年です。

2011年7月24日の投稿として広く保存されている記録では、◆wbBrH1aGfM を出すためのキーが #325069 だと自ら公開し、その直後に別のトリップへ変更しています。後年の5chログにも、この投稿が引用されています。

キーが公開されれば、それ以降は誰でも同じ旧トリップを表示できます。

実際、2016年の関連スレでは、公開されたキーを使って2062年未来人を装ったと自ら認める投稿者まで現れています。

ここから分かるのは、「同じトリップが出ているから、すべて同一人物」という整理が成り立たなくなったことです。

しかも、もっと根本的には、2010年11月14日と16日の最初期投稿にはそのトリップがありません。

後からトリップを持った人物が現れても、それによって最初期の名無し投稿者との同一性が過去へさかのぼって証明されるわけではないのです。

「志村けんを予言した」は2010年の話ではない

2062年未来人について調べると、「志村けんさんの死を予言していた」という話にも行き当たります。

元になっているのは、志村けんさんや岡村隆史さんが2062年では歴史的に著名な人物として知られている、という趣旨の投稿です。

しかし、ここでも時系列が重要です。

この芸能人に関する文章は、2010年11月14日の初期投稿ではなく、2011年7月23日の投稿として転載されているものです。つまり東日本大震災より後であり、そもそも今回重視している最初期の2010年ログとは分けなければなりません。

さらに、その文章は、

2020年、

新型コロナウイルス、

死去、

死因、

といった情報を示していません。

単に志村けんさんが未来でも非常に有名だという設定です。

ここで面白い記録があります。

志村さんが2020年3月に療養していた時期、この2062年未来人の文章を紹介したブログでは、「回復したことによって世界的に有名になるのかもしれない」という方向で解釈され、早い回復を願う言葉で締められていました。

その後、志村けんさんが亡くなると、同じ文章が「死を予言していたのでは」と読まれるようになります。

文章は変わっていません。

後から起きた出来事によって、文章の意味の見え方が変わったのです。

この現象を理解すると、2062年未来人の話を「的中一覧」だけで見る危うさが分かります。

当たったように見えるものだけを見ると、別の発言が消えてしまう

予言を評価するとき、印象に残る一致だけを集めれば、どんな人物でも驚異的に見えやすくなります。

2062年未来人の初期ログには、現在から見るとかなり明確に現実と合わなかった回答も残っています。

代表的なのが、安倍晋三氏についてです。

2010年11月14日21時52分、別ユーザーが「麻生さんや安倍さんが再び首相になることはあるか」と質問しました。質問者は最初「安部」と書きましたが、直後に「安倍」の誤りだったと訂正しています。

22時16分、同じ L12r5lqQ0 はこの質問への回答を、

「ない。」

から始めています。

続けて、2010年時点の自民党で最も有力な人物が、高い支持率を保って長く首相を務めるという趣旨を書きました。

後半だけを見れば「安倍氏を示していたのでは」と解釈する余地を作ることはできます。

しかし質問そのものが「安倍さんがまた首相になるか」で、その直接回答が「ない」だった事実も消せません。

実際には安倍晋三氏は2012年12月26日に第96代内閣総理大臣へ就任し、第2次安倍内閣を発足させています。

これは、少なくとも質問への直接的な答えとしては現実と一致しません。

不思議な一致だけを残し、こうした不一致を予言一覧から外してしまえば、全体の見え方は大きく変わってしまいます。

「2024年に大事件」と「移民は増えない」はどう見る?

同じ2010年11月14日のログには、移民について尋ねられた際、

移民は増えない。2024年に大事件が発生するため

という趣旨の回答も残っています。さらに、3日後の2010年11月17日に作られた専用スレのまとめにも、この内容がすでに記載されています。

2024年には日本でも世界でも多くの重大な出来事がありました。

だからこそ、「大事件」という言葉だけなら、後から何かを割り当てることが簡単です。

地震なのか、戦争なのか、政治事件なのか、経済危機なのか。場所さえ指定されていません。

この状態では、何が起きれば的中し、何が起きれば外れなのかを事前に決められません。

「移民は増えない」の方は、2026年から見るとさらに考える材料があります。

出入国在留管理庁によれば、2025年末の在留外国人数は412万5,395人で、前年末より35万6,418人、9.5%増加。過去最高となり、初めて400万人を超えました。

ただし、ここでも用語には注意が必要です。

政府統計の「在留外国人」と、掲示板で使われた「移民」は同じ概念ではありません。

したがって、「移民は増えないという予言が412万人という数字で完全に外れた」とまでは言えません。

一方で、少なくとも日本に在留する外国人の人数が増加を続けているという現実は、2010年の言葉を2026年から読み返す際に無視できない材料です。

2026年から「答え合わせ」すると何が見える?

ここまでの発言を、単純な○×ではなく「いつ存在したか」「当時どう読まれたか」まで含めて並べると、かなり見え方が変わります。

発言・出来事事件前の存在当時から現在と同じ解釈?具体性2026年から見た評価
「山に登れ」解読2010年ログで確認日時・場所・地震指定なし3.11後の完全な後付けとは言いにくい
津波の連想2010年ログで確認別ユーザーの推測興味深いが未来人本人の予告ではない
2016年4月15日へ行く2010年11月17日のまとめで確認日付は明確災害・場所指定なし熊本地震の大きな地震の間の日付
安倍氏の再登板はない2010年ログで確認明確比較的高い実際には2012年に再び首相へ
2024年に大事件2010年ログで確認かなり低い何を指すか一意に判定不能
移民は増えない2010年ログで確認比較的明確「移民」の定義不明在留外国人数は増加を続ける
SHIMURA/OKAMURA2011年投稿として流通死の予言ではなかった将来の名声について2010年初期投稿とは分離が必要

この表を見ると、「全部当たっている」とも「全部後付け」とも言いにくいことが分かります。

特に「山に登れ」だけは少し性質が違います。

日時も場所もなく、予言としての具体性は低い。

しかし、出来事が起こる前の読み手が、すでに現在と同じ言葉へ解読し、さらに津波まで連想していた。

ここが特殊なのです。

予言を見るときは「事件前の読者がどう読んだか」まで見る

予言らしき文章を検証するとき、少なくとも五つの視点を分けると見やすくなります。

  1. その文章が、本当に出来事より前に確認できるか
  2. 日付が具体的か
  3. 場所が具体的か
  4. 何が起きるのか具体的か
  5. 出来事が起きる前の人が、すでに現在と同じ意味に読んでいたか

最後の5番目は、とても重要です。

例えば「近いうちに大きなことが起こる」という文章があり、10年後に何か重大事件が起きたとします。

事件後に初めて「あの大事件のことだった」と解釈されたのであれば、意味はかなり後から作られています。

一方、「山に登れ」のケースでは事情が少し違います。

2010年11月14日の時点で「山に登れ?」という解読があり、その数分後には津波を連想した参加者までいました。そして3日後には別スレのまとめにも「山に登れ?」が入っています。

だから、「山に登れという意味は3.11後の人間が初めて発明した」とする説明は弱い。

しかし同時に、日時・場所・災害種別が欠けているため、

「東日本大震災を事前に特定していた」という評価も強すぎる。

ちょうどその中間にあります。

では「2062年未来人」は何だったのか

ここまで元ログを追っても、投稿者の正体そのものは分かりません。

本当に2062年から来た人物だったことを示す客観的な証拠はありません。

タイムトラベルを実証する物証もなく、掲示板上の本人確認にも限界があります。

2010年11月14日の投稿と16日の投稿が同じ現実の人物だったかさえ、匿名掲示板の記録だけでは確定できません。21日以降にはトリップが導入されますが、それも初期投稿をさかのぼって認証するものではなく、さらに後にはキーの公開によって旧トリップそのものが本人確認に使えなくなりました。

だから、「2062年未来人は実在したのか」という問いに、現在の証拠だけからYESともNOとも断定する必要はありません。

それより興味深いのは、15年以上の時間の中で、一つの匿名掲示板の書き込みがどのように「予言伝説」へ変わっていったのかです。

最初のログには存在しない意味が後から加わったものもある。

別の時期の投稿が同じ人物の言葉として統合されたものもある。

後から起きた出来事によって、以前とは違う意味に読まれるようになった文章もある。

そしてその一方で、「山に登れ?」だけは、こちらが想像するよりずっと早い2010年11月14日の時点から本当に存在していた。

全部が後付けだったわけではありません。

全部が予言だったわけでもありません。

そこを分けて見ると、この話は「未来人が地震を当てた」という一行の都市伝説より、むしろずっと面白くなります。

FAQ

2062年未来人の「山に登れ」は3.11より前に解読されていた?

現在閲覧できる5ch過去ログでは、2010年11月14日14時23分に暗号が投稿され、17時38分に別ユーザーが「山に登れ?」と書き込んでいます。さらに2010年11月17日の別スレのまとめにも「山に登れ?」が掲載されており、震災後に初めて作られた解読とは言いにくい記録が残っています。

3.11の津波も震災前に予想されていた?

同じ2010年11月14日の17時47分に、大規模な津波を連想する投稿があります。ただし、これは2062年未来人を名乗った人物ではなく別ユーザーによる推測です。

2062年未来人は3月11日という日付を当てていた?

いいえ。2011年3月11日という日付、東北地方という場所、地震という災害種別はいずれも「山に登れ」の暗号には示されていません。

2016年4月15日は熊本地震の予言だった?

2010年11月の時点で2016年4月15日という日付が記録されていたことは確認できます。しかし内容は「その日へ行く」という趣旨で、熊本や地震を指定していません。熊本地震では最大震度7の地震が4月14日と16日に発生しており、15日はその間の日付でした。

2011年以降の2062年未来人も同じ人物?

確定できません。最初期は日ごとのID、後にはトリップが使われましたが、トリップ導入前との同一性は証明できず、さらに旧トリップのキーが公開された後は同じトリップを第三者も再現可能になりました。

まとめ|不思議なのは「未来人」だけではなく、言葉が意味を変えていった過程だった

2062年未来人の「山に登れ」は、本当に東日本大震災より前からそう読まれていたのか。

現在残る記録から見る限り、答えはYESです。

2010年11月14日14時23分に暗号が投稿され、その日の17時38分には別ユーザーが「山に登れ?」と解読していました。さらに海面上昇、大規模な津波という連想が数分のうちに続き、11月17日の別スレにも「山に登れ?」という形でまとめられています。

この部分について、「3.11が起きてから誰かが初めて山に登れとこじつけた」と説明するのは、現在確認できるログとは合いません。

だからといって、そこから「未来人が東日本大震災を完全に予言していた」と結論することもできません。

暗号には2011年3月11日という日付も、東北という場所も、地震という言葉もありませんでした。

2016年4月15日という妙に印象的な一致もある一方で、安倍晋三氏の首相再登板については現実と合わない回答があります。後年の志村けんさんに関する話は2011年の投稿であり、しかも死そのものを予言した文章ではありません。

さらに、現在「2062年未来人の発言」として一括りにされているものには、投稿時期も本人確認の強さも異なる文章が混ざっています。

未来人だったのか。

非常によくできた遊びだったのか。

あるいは何人もの投稿者によって、時間をかけて育っていったネット上の物語だったのか。

そこまでは分かりません。

ただ、一つだけ、元ログまで戻ることでかなりはっきりしたことがあります。

「山に登れ?」という言葉は、3.11後にしか存在しなかったわけではない。

そして不思議なのは、その文字列だけではありません。

2010年に書かれたもの、当時すでに読み取られていたもの、後から出来事によって意味を増したもの、別の時期の投稿から伝説へ加わったもの。それらが長い年月の中で混ざり合い、「2062年未来人の予言」という一つの巨大な物語になっていったことです。

元の2010年まで時間を巻き戻してみると、伝説の一部は薄くなる一方で、逆に本当に残っていた小さな違和感だけが、以前よりくっきり見えてきます。

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