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『慶応遊撃隊』レビュー|メガCDのコミカル横スクロールSTGは今遊んでも面白い?

『慶応遊撃隊』レビュー|メガCDのコミカル横スクロールSTGは今遊んでも面白い?

1993年8月6日、ビクターエンタテインメントから発売されたメガCD用シューティング『慶応遊撃隊』。

価格は7,400円、型番はT-60114。バニーガール姿の少女・蘭未(らみ)が、相棒のドラゴン・ポチに乗って空を飛び、盗まれた「秘宝の鍵」を追いかける横スクロールシューティングです。

和風の町並みを飛んでいたかと思えば、タヌキや七福神が現れ、その横を近代兵器が通り過ぎる。

時代劇として見るには妙なものが多すぎるし、SFとして見るには日本昔話の匂いが強すぎる。

そのうえステージの合間にはアニメーションが入り、登場人物が声付きで喋ります。蘭未役を担当したのは、当時の菅野美穂氏でした。アニメーション制作にはスタジオぴえろ、音楽には多和田吏氏が参加しています。

これだけ並べると、いかにも「メガCDの映像と音を見せるゲーム」に思えます。

けれど、プレイ時間の中心にあるのはムービーではありません。

敵が来る方向を見る。撃つ。弾を避ける。地形との距離を取る。ポチを安全な位置へ動かす。

遊んでいるあいだは、かなり素直な横シューティングです。

つぶログのメガCD全114ソフトTier表では、『慶応遊撃隊』をB Tier・77点・総合35位タイと評価しています。現在のTierでも、アニメーションと音声を長所としながら、攻撃システムの簡潔さと難度の振れ幅を上位へ届かなかった理由に挙げています。

77点。

最高峰ではありません。

それでも、同じ点数帯のゲームを振り返ったとき、『慶応遊撃隊』は妙に思い出しやすい。

その理由は、豪華なアニメだけではありません。

ポチに乗って進む、全7ステージの横シューティング

蘭未が乗るポチは、火球を撃って敵を攻撃します。

アイテムによって通常攻撃を強化できるほか、サブウェポンとして地上爆弾、爆発する手裏剣、ポチJr.を利用できます。ポチJr.は自機の周囲で攻撃を補助し、前方へ飛ばして攻撃に使うこともできます。

さらに移動速度を切り替えられるため、画面を大きく移動したい場面と、敵弾の間で細かな位置調整をしたい場面で動かし方を変えられます。

全体は7ステージ構成。

ここまで聞けば、武器も特殊攻撃もあるので、かなり多彩に思えるかもしれません。

ただ、実際の攻略では「敵に合わせて複数の主力武器を次々と切り替える」ところまで戦術が広がるわけではありません。

基本にあるのは、最後まで撃つことと避けることです。

攻撃が分かりやすい。それが長所であり、上限でもある

『慶応遊撃隊』の操作は入りやすい部類です。

敵が来たら撃つ。

危なければ避ける。

必要なら速度を変える。

サブウェポンを取れば使う。

ポチJr.がいれば攻撃へ参加させる。

何をすれば攻撃できるのか分からなくなるような複雑さはありません。

これは明確な長所です。

シューティングに慣れていなくても、武器性能表を頭へ入れてから始める必要はない。画面に集中しやすく、敵の動きや弾の位置を追うことへ意識を向けられます。

一方で、遊び込んでも攻略方法そのものが大きく枝分かれしにくい。

強化が進んだから新しい射撃方向を使い分ける。

ボスによって装備を組み替える。

ステージに応じて主力兵器を選び直す。

そうした選択を中心にしたシューティングではありません。

何を撃つかより、どこにいるか。

『慶応遊撃隊』は、そちらへ重心を置いたゲームです。

だから分かりやすい。

そして、その分かりやすさが、A Tier以上の作品と比べたときには攻略の幅の差にもなります。

敵弾だけでなく、地形まで見ながら飛ぶ

攻撃がシンプルなら、シューティングとして簡単なのか。

そうとも限りません。

日本版では地形との接触も危険で、敵弾だけを見て自由に画面を飛び回れるわけではありません。海外向け『Keio Flying Squadron』では地形接触を含めた一部バランスに変更が加えられているため、海外版の難度感を日本版へそのまま当てはめることもできません。

敵が正面から来る。

別の敵が上下から入る。

弾を避けたい。

しかし逃げた先には地形がある。

そこへ自機の大きさも重なる。

すると必要になるのは、弾が飛んできてから大きく避ける操作だけではありません。

次に逃げられる空間を残しながら、自機を置くこと。

ポチの速度を変えられることも、ここで意味を持ちます。

広い場所なら一気に移動できる。

狭い場所や細かな回避が必要な場面では、動きを抑えて位置を調整できる。

攻撃方法には大きな分岐がなくても、画面内での位置取りにはきちんと仕事があります。

かわいい見た目のまま、難度はきれいな右肩上がりではない

本作には難易度設定がありますが、ゲーム全体の歯応えは一定ではありません。海外版マニュアルでも複数の難度と自機速度の設定が確認できます。

序盤では、敵の動きと通常ショットを覚えながら比較的素直に進める。

そこから地形との距離が厳しくなり、敵の出現や弾を同時に処理する場面が増えていく。

ボスでは通常ステージとは違う攻撃を覚える必要も出てきます。

ここで少し引っかかるのが、難しさの上がり方です。

「前のステージで身につけた技術を一段ずつ試される」という滑らかな階段ばかりではありません。

場面によって、急に位置取りの厳しさが増す。

初見では危険を読みづらい攻撃が来る。

その一方で、そこを抜ければまた比較的素直な区間へ戻ることもある。

ずっと難しいのではなく、ときどき難しさが跳ねる。

現在のメガCD Tierで「難度の振れ幅」を挙げているのは、この感触とよく噛み合っています。

舞台が変わるたび、同じシューティングの景色が変わる

『慶応遊撃隊』が最後まで一本調子にならない理由は、武器の多さよりも世界の変化にあります。

物語の出発点は、現実の幕末日本を忠実に再現した世界ではありません。

タヌキ。

ドラゴン。

七福神。

バニーガール。

地下鉄や近代兵器。

日本昔話とSFとギャグが、最初から同じ場所に置かれています。

開発時の発想には『かちかち山』のウサギとタヌキがあり、そこから主人公をそのまま動物にするのではなく、バニーガールの少女へ発展させたことを、ゲームデザインを担当した本田暁氏が後年振り返っています。

設定だけなら悪ふざけにも見えます。

ゲームでは、この雑多な世界がステージの景色や敵へ次々と出てきます。

操作の土台はポチで飛んで撃つ横シューティングのまま。

だからプレイヤーは、新しい操作方法を毎回覚え直さずに、次は何が出てくるのかを楽しめる。

シューティングは素直で、世界の方が暴走する。

この組み合わせが、『慶応遊撃隊』らしさをかなり強くしています。

アニメーションが入ると「次のステージ」ではなく「次の話」になる

アニメーション制作にはスタジオぴえろが参加しています。スタッフクレジットでは、監督、ゲームデザイン、グラフィック、音楽などゲーム制作側のスタッフとは別に、アニメーション制作が記録されています。

ここは本作を評価するときに分けて考えたいところです。

アニメーションがあるから、シューティング部分の攻撃システムが深くなるわけではありません。

敵弾が見やすくなるわけでもない。

操作感が良くなるわけでもない。

それでも作品全体にはかなり効いています。

ステージを突破する。

キャラクターが喋る。

話が動く。

次の場所が見える。

そしてまたシューティングへ戻る。

この切り替えによって、7つのステージがただ連続するのではなく、一話ずつ進んでいるような区切りが生まれます。

メガCDの映像をシューティングの代わりにした作品ではありません。

横シューティングを走らせながら、その節目にキャラクター劇を置いています。

この距離感がちょうどいい。

蘭未役・菅野美穂――声が「自機」をキャラクターへ変える

日本版の蘭未を演じたのは菅野美穂氏。

音声収録には平松晶子氏、八奈見乗児氏、山本圭子氏、屋良有作氏らも参加しました。

後年の知名度を考えると、どうしても「菅野美穂が声優を担当したゲーム」という部分だけが話題になりやすい作品です。

でも、ゲームの中で音声が担う役割はもっと素朴です。

蘭未が喋る。

ポチや周囲の人物との関係が見える。

アニメーションで表情が動く。

そのあとシューティングへ戻ると、いま操作している自機が「画面上の攻撃判定を持つキャラクター」だけではなく、さっきまで喋っていた蘭未とポチに見える。

声がゲームシステムを変えるわけではありません。

誰を操作しているのかを強くする。

『慶応遊撃隊』では、その働きが大きいのです。

多和田吏の音楽が、和風なのに時代劇ではない世界をつなぐ

音楽を担当したのは多和田吏氏です。

本作の世界は、日本的だからといって落ち着いた和風作品ではありません。

蘭未とポチが飛び回り、敵が次々と現れ、ギャグが入り、そのままシューティングが続く。

音楽にも、その勢いに負けない明るさが必要になります。

多和田氏は後年、『慶応遊撃隊』シリーズで使った和太鼓風の音や和楽器系の音色について、シンセサイザーを使って作っていたことを明かしています。

だから「和風BGM」という一言では収まりません。

昔話を思わせる世界。

軽快なシューティング。

妙に現代的なギャグ。

それらを同じゲームとして聞かせる音になっています。

アニメーションや声と同様、音楽もシューティングのルール自体を複雑にはしません。

けれど、このゲームでなければ聞こえてこない世界を作ることには大きく貢献しています。

海外版『Keio Flying Squadron』は、日本版とまったく同じではない

本作は海外でも『Keio Flying Squadron』として発売されました。

欧州版は1994年、北米版は1995年に登場し、英語吹き替えも用意されています。

ただし、言語を英語へ変えただけの版ではありません。

一部の台詞や演出に変更があり、ゲーム面でも日本版とは調整が異なります。地形との接触に関する扱いも違うため、海外版のレビューを読むときには、日本版とは難度条件が同一ではない点に注意が必要です。

この記事で77点として評価しているのは、1993年の日本国内メガCD版です。

『慶応遊撃隊 活劇編』では、ゲームそのものを作り替えた

1996年にはセガサターンで『慶応遊撃隊 活劇編』が発売されました。

日本国内での正式名称は『慶応遊撃隊 活劇編』で、海外では『Keio Flying Squadron 2』として展開されています。初代が横スクロールシューティングだったのに対し、『活劇編』は地上を進むアクションを中心に、シューティングなど異なる場面を組み込んだ作品です。

これは「初代の武器を増やした続編」ではありません。

蘭未たちのキャラクターと世界を残しながら、遊ばせ方を変えています。

つぶログのセガサターンTierでは『活劇編』を86点としていますが、77点の初代を単純に9点ぶん改良したという関係ではありません。

初代では、キャラクターの魅力を見せる時間とシューティングの時間が分かれていました。

『活劇編』では、蘭未自身をもっと大きく画面上で動かす方向へ変わる。

シリーズを続けるにあたって、同じ横シューティングを繰り返すより、キャラクターを別の遊びへ連れていった作品です。

なぜ77点・B Tierなのか

ここまで見ると、『慶応遊撃隊』の評価はかなりはっきりします。

横シューティングとして、きちんと遊べる。

通常攻撃、サブウェポン、ポチJr.、速度変更がある。

敵と地形を見ながら位置を調整する面白さもある。

しかし、遊び込むほど武器選択や攻略方法が大きく広がるゲームではありません。

さらに、ステージによって難しさの出方にも揺れがあります。

この二点は、A Tier以上へ押し上げるには無視しづらい。

だから77点です。

では、なぜC Tier以下ではないのか。

シューティングとしての芯が崩れていないからです。

操作は理解しやすい。

敵を撃ち、避ける基本も成立している。

そこへ幕末風の奇妙な世界、蘭未とポチ、アニメーション、声、音楽が重なります。

遊びの深さだけで最上位へ行く作品ではない。

でも、遊んだ作品を思い出すときには非常に強い。

77点という位置は、このゲームにかなり似合っています。

2026年に遊んでも面白い?

シューティング部分だけを見ても、現在遊べないほど古びてはいません。

方向を動かす。

撃つ。

速度を切り替える。

アイテムを取る。

基本はすぐ分かります。

複雑な武器管理がないので、長い説明を読まずにシューティングへ入れるのも利点です。

逆に、現在の目で見ると弱点も分かりやすい。

戦闘中の選択肢はそれほど多くない。

日本版では地形も気にしながら飛ぶ必要がある。

難度の上がり方が滑らかとは限らない。

そして、現在は何より遊ぶまでのハードルが高い

メガドライブミニの42タイトルにも、『メガドライブミニ2』の60タイトルにも収録されていません。

2026年8月現在、日本版をそのまま遊ぶなら、メガCD対応の実機環境とオリジナルディスクが中心になります。

名作と呼ばれるレトロゲームの多くが現行機で復刻されている現在、本作は興味を持ってすぐ購入できる作品ではありません。

それだけに、再び触れやすい形で出てきてほしい一本でもあります。

まとめ|足りないところがあるからこそ、77点が面白い

『慶応遊撃隊』は、トップクラスの横シューティングではありません。

攻撃方法を使い分ける奥深さ。

攻略ルートの広さ。

緻密に積み上がる難度設計。

そこまで突き詰めた作品ではない。

だから、つぶログでは77点です。

でも、このゲームを数字だけで終わらせると、かなり大事なものを取りこぼします。

ポチに乗って飛ぶ蘭未。

タヌキと七福神と近代兵器が同居する世界。

ステージを抜けるたびに始まるアニメーション。

声を持った登場人物。

多和田吏氏の音楽。

そして、その全部の中心にある、素直な横シューティング。

どれか一つだけなら、ここまで変な作品にはなりません。

シューティングとしては堅実。作品としては妙に濃い。

このずれが、『慶応遊撃隊』の面白さです。

S TierやA Tierの作品だけを追っていれば、もっと完成度の高いゲームには出会えます。

けれど、レトロゲームを振り返る楽しさは、完成度の順番だけではありません。

何が足りなかったのかまで分かる。それでも、ほかでは代わりが利かないものが残っている。

メガCD全114作品中、B Tier・77点・総合35位タイ

『慶応遊撃隊』は、その点数のままで十分に語りたくなるゲームです。

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