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『ウィンズ オブ サンダー』レビュー|なぜPCエンジンTier92点・総合1位タイなのか

ウィンズ オブ サンダー レビュー|PCエンジン92点・1位タイの理由

1993年4月23日に発売された、PCエンジン SUPER CD-ROM²用横スクロールシューティング『ウィンズ オブ サンダー』。

剣士ランディーが火・地・水・風の鎧をまとい、暗黒神の復活を企むガルド帝国軍と戦うファンタジーSTGです。4種類の鎧、ステージ選択、ショップ、精霊召喚、高速スクロール、そしてヘヴィメタル調のCDサウンド。PCエンジンのシューティングの中でも、ひと目で分かるほど濃い個性を持っています。

つぶログのPCエンジン全ソフトTier表では、本作をS Tier・92点・総合1位タイと評価しました。

同じ92点には『イースI・II』と『ゲート オブ サンダー』があります。

では、『ウィンズ オブ サンダー』は何を評価されて、そこまで上がったのか。

答えは、撃ち始めてからではなく、その前にあります。

どこへ行くか。どの鎧を着るか。何を買うか。

戦場へ出る前の選択を、そのまま高速シューティングの攻略へ結びつけた。

そこに、本作が92点へ届いた理由があります。

『ウィンズ オブ サンダー』は「選んでから戦う」シューティング

舞台となるのは、暗黒神ザガードの復活を阻止しなければならないファンタジー世界。

主人公ランディーは戦闘機ではなく、自ら鎧をまとって空を飛びます。

魔導士、巨大昆虫、水竜などが飛び交う世界を、剣とショット、精霊召喚を使って突破していく。SFメカが主役になりやすい横STGの中では、それだけでもかなり異色です。

しかし、本作らしさがはっきり現れるのはステージ開始前。

プレイヤーはまず攻略する場所を選び、その後に火・地・水・風の4種類から鎧を選択。必要ならショップでアイテムを買い、準備を整えてから戦場へ向かいます。KONAMIのWii U版商品ページでも、6つのステージから攻略先を選び、鎧とアイテムを整えて出撃する流れが紹介されています。

普通の横STGなら、

「目の前の状況にどう対応するか」

が攻略の中心になります。

『ウィンズ オブ サンダー』では、そのひとつ前に、

「どんな状態でその状況へ入るか」

という判断が加わっています。

この一手が、ゲーム全体を大きく変えました。

火・地・水・風――4種類の鎧で戦い方が変わる

ランディーが装備できる鎧は4種類。

火、地、水、風。

名前だけを見ると、敵の属性に合わせて有利な鎧を選ぶゲームを想像しやすいところですが、本作で前面に出ているのは攻撃形態の違いです。

KONAMIも、鎧ごとにショットの性質と召喚できる精霊が異なり、ステージに応じた使い分けが攻略のポイントになると説明しています。

射線をどこへ広げたいか。

前方へ火力を集中したいか。

上下や斜めの敵を巻き込みたいか。

後方まで攻撃範囲に入れたいか。

鎧によって得意な状況が変わるため、選択は見た目の好みだけでは終わりません。

しかも鎧を選ぶのは、敵が画面へ現れてからではない。

まだ戦っていない段階で、そのステージをどう攻略するか決める。

ここが面白いところです。

選択がうまく噛み合えば、敵の出現へ対応しやすくなる。

合わなければ、同じステージでも攻撃しにくい位置が増える。

4種類の鎧は、4人のキャラクターから好きなものを選ぶような仕組みではなく、攻略方法そのものを選ぶ装備になっています。

どのステージから攻略するかもプレイヤーが決める

本作では、最初から一本道を進みません。

6つのステージから次の攻略先を選べます。

これが鎧選択とよく噛み合っています。

ステージだけ選べるなら、単に攻略順を変えられるだけ。

鎧だけ選べるなら、装備を変えられるだけ。

『ウィンズ オブ サンダー』では、その二つが同時にあります。

どこへ行くかを決めて、その場所へ何を持っていくかを決める。

さらにショップまであるため、現在のライフや攻撃力、所持金まで判断材料に入ってきます。

苦手な場所を後へ回す。

扱いやすい鎧で挑める場所を先に進める。

資金を増やしてから厳しいステージへ向かう。

攻略順に絶対的な一本の正解を置くのではなく、プレイヤーが自分なりの進め方を作れる余地があります。

横スクロールSTGでありながら、ステージセレクト画面に戻った瞬間からもう次の攻略が始まっている。

『ウィンズ オブ サンダー』を特徴づける感覚です。

敵を倒す意味が「その場を安全にする」だけではない

戦闘中に敵を倒すと、クリスタルを入手できます。

そして集めたクリスタルは、次の戦いへ向けたショップで使います。

ここで、シューティング中の行動とステージ間の準備が一本につながります。

ショップでは、ライフや攻撃力の回復、シールド、精霊召喚、復活用のアイテム、コンティニューを増やす手段などを用意できます。

当然、全部を好きなだけ買えるわけではありません。

ライフを立て直したい。

火力も戻したい。

事故に備えてシールドも欲しい。

強力な精霊召喚も残しておきたい。

先を考えれば復活手段も心強い。

ここで必要になるのが、何に金を使うかという優先順位です。

そして、その金を生み出すのは戦闘中に倒した敵。

だから、敵を避けて生き残ることだけが正解にはならない。

危険を承知で倒した敵が、次のステージを楽にする資金へ変わることがあります。

撃つ → 稼ぐ → 買う → 次を選ぶ → また撃つ。

この循環によって、ステージごとに分断されがちなシューティングへ一本の流れが生まれています。

被弾すると「次の敵まで強くなる」

『ウィンズ オブ サンダー』はライフ制です。

敵や障害物に触れても一撃で終わらず、ライフが残っている限り戦えます。

さらにショットはボタンを押し続ければ連射され、敵が至近距離まで接近するとランディーが自動的に剣を振ります。精霊召喚も強力な切り返し手段になります。

一見すると、かなり間口を広げた作りです。

ところが被弾には、ライフ減少とは別の痛さがあります。

攻撃力まで下がるのです。

敵が落とすパワーアップアイテムやショップで戻せますが、火力が下がった状態では敵を倒すまでに時間がかかります。

すると何が起きるか。

敵が長く画面へ残る。

次の敵が重なる。

避けなければならないものが増える。

さらに敵を倒しにくければ、クリスタルも集めにくくなる。

一度の被弾がその瞬間だけで終わらず、その後の戦いや買い物までじわじわ響くわけです。

逆に、装備を維持したまま進めれば火力で敵を押し切り、資金も集めやすくなる。

うまくいくほど勢いが増す。

崩れると立て直しが必要になる。

この振れ幅が、本作の高速戦闘に独特の緊張感を加えています。

ショップがあるのに、最後は腕で突破しなければならない

本作は準備の自由度が高いゲームですが、RPGのように装備だけ整えれば勝てるわけではありません。

戦闘が始まれば、かなり速い。

KONAMIも中盤の高速スクロールから中ボス・大ボスへ突入するスピーディな展開を本作の特徴として挙げています。GAME Watchも難易度を「やや高め」と評しています。

画面が流れる。

敵が来る。

地形が迫る。

弾を避ける。

クリスタルも拾いたい。

攻撃力も維持したい。

事前に考えることが多いのに、ステージへ入った途端、今度は考える時間そのものが短くなります。

この切り替わりがいい。

ショップと鎧によって攻略の準備はできる。

それでも、実際に突破するのはプレイヤーの操作です。

準備で勝率を上げ、戦闘で結果を出す。

どちらか一方に寄らないからこそ、装備選択がシューティングの面白さを奪いません。

むしろ「自分で選んだ装備でこのステージをどう抜けるか」という目的が生まれます。

ヘヴィメタルが鳴り始めると、ファンタジーの見え方まで変わる

『ウィンズ オブ サンダー』の音楽は、作品を語るうえで外せません。

KONAMI自身が「ヘヴィメタル調のBGM」を特徴として挙げ、T's Musicの公式制作実績にも、本作へのサウンド制作協力が記録されています。ゲームのスタッフロールでは「MUSIC PRODUCED BY T's music」「MUSIC COMPOSED BY GROOVE KING」とクレジットされています。

面白いのは、剣と魔法のファンタジーに、重いギターとベースが鳴ることです。

普通なら荘厳な音楽を合わせても不思議ではない世界を、あえて攻撃的なロック/メタルで走らせる。

その選択が、本作のゲーム速度と驚くほど合っています。

敵が次々と飛び込んでくる。

ショットが画面を走る。

精霊召喚が炸裂する。

背景が高速で流れる。

そこへ硬質なサウンドが重なり、ランディーが鎧をまとった戦士というより、ステージそのものを突き破っていく存在に見えてくる。

CD音源を豪華なBGMとして添えたのではなく、ゲームの攻撃性を音からも増幅している。

つぶログTierで「映像・音楽・演出」を14点とした理由は、ここにあります。

レッド雷門が『ゲート オブ サンダー』から受け継いだもの

『ウィンズ オブ サンダー』のスタッフロールには、

CREATED BY RED KAMINARIMON

と記されています。企画、ゲームシステム、プログラム、グラフィックなどを担当したチームです。

後年、ゲームクリエイターの金崎泰輔氏は、自身がレッドカンパニーへ移った当時を振り返り、そこに『ゲート オブ サンダー』『ウィンズ オブ サンダー』を作っていた「レッド雷門」というチームがあったと語っています。

そのメンバーは後にCAProduction設立へつながりました。

だから『ゲート オブ サンダー』と『ウィンズ オブ サンダー』には、確かに同じ開発系譜があります。

ただ、ゲームの中身は驚くほど違います。

『ゲート オブ サンダー』では、3種類の武器と前後攻撃を戦闘中に切り替えながら、敵配置を読み続けることが中心でした。

『ウィンズ オブ サンダー』では、敵と出会う前にステージ、鎧、ショップを選びます。

『ゲート オブ サンダー』は戦闘中の選択を磨いた。

『ウィンズ オブ サンダー』は選択の範囲を戦闘前まで広げた。

同じ開発系譜にあり、同じつぶログTier92点。

それでも、面白さの核はきれいに分かれています。

『LORDS OF THUNDER』というもうひとつの名前

海外では、本作は『LORDS OF THUNDER』の名で発売されました。

そしてPCエンジン miniに収録されているのも、この『LORDS OF THUNDER』です。

KONAMIの公式ラインナップには、日本で『WINDS OF THUNDER』として知られる作品の海外版と明記されています。

つまりPCエンジン miniでは、4種類の鎧、ステージ選択、ショップ、高速戦闘といった本作の核を楽しめますが、収録タイトルは日本版ではなく海外版です。

また、1995年にはSega CD版『LORDS OF THUNDER』も登場しました。こちらは後発移植で、日本のメガCDでは発売されていません。

今回92点の評価対象としているのは、あくまで1993年発売の日本国内PCエンジン SUPER CD-ROM²版『ウィンズ オブ サンダー』です。

なぜ『ウィンズ オブ サンダー』は92点なのか

ここまで見てくると、本作の92点はかなり説明しやすくなります。

本作には、

4種類の鎧

攻略するステージの選択

クリスタルを使うショップ

ライフと攻撃力の管理

精霊召喚

高速横スクロールSTG

があります。

ただし、評価したいのは機能の数ではありません。

それぞれが循環していることです。

敵を倒す。

クリスタルを得る。

ショップで使う。

鎧を選ぶ。

ステージを選ぶ。

戦う。

被弾すればライフと火力を失う。

次の買い物が変わる。

そして、また次の戦場を選ぶ。

前のステージで起きたことが、次のステージへ残っていく。

横STGでありながら、一本のプレイ全体に攻略計画が生まれています。

しかも、その戦略部分を追加したせいでシューティングが遅くなったわけではありません。

むしろ戦場へ出れば、高速。

最後に必要なのは、避けて撃つ腕です。

つぶログTierで本作の独自性・企画性を14点、PCエンジンらしさを10点、映像・音楽・演出を14点とした理由も、ここへ集約できます。

考えてから撃つ。撃った結果を、次の戦いでも考える。

その往復が『ウィンズ オブ サンダー』です。

それでも満点ではなく92点

一方で、本作の仕組みは長所ばかりには働きません。

とくに厳しいのが、崩れたときです。

被弾して攻撃力が落ちれば、敵を処理しにくくなる。

敵が残れば画面が苦しくなる。

十分に倒せなければ、クリスタルも集めにくい。

そこへ高速スクロールが重なります。

調子よく進んでいるときの勢いは強烈ですが、立て直しへ回った途端に負荷が増す。

ライフ制、ショップ、シールド、復活アイテムと救済策は豊富でも、誰にでも簡単な作品とは言いにくいでしょう。GAME Watchも難度を「やや高め」としています。

そして、事前選択の自由度があるからこそ、鎧やショップの性質を把握するまでは情報量も多い。

『ゲート オブ サンダー』のように、シンプルな操作体系を短時間でつかみ、その精度を高めていくタイプとは感触が違います。

つぶログTierで操作性・ゲームバランスを16点とし、同じ92点の『ゲート オブ サンダー』より1点低くしたのは、この部分です。

選択肢の多さが魅力であり、そのまま負荷にもなる。

だから92点。

ただ、その1点分の尖りがあるからこそ、本作にしかない味も生まれています。

2026年に遊んでも面白い?

今遊んでも、本作の核はほとんど古びていません。

画面の解像度や演出技術ではなく、

何を選んで、どう戦うか

に面白さが置かれているからです。

前のステージで資金を集めた。

次はどこへ行くか。

この鎧なら戦いやすそうだ。

シールドを買うか。

それとも火力を戻すか。

そこまで考えてから出撃し、始まった瞬間には高速STGへ切り替わる。

このリズムは現在でも独特です。

逆に、攻略情報を最初から見て「このステージではこの鎧」「ショップではこれを買う」と答えだけ拾ってしまうと、本作のおいしい部分をかなり飛ばすことになります。

少し失敗する。

次の装備を変える。

攻略順を変える。

買い物を変える。

その試行錯誤まで含めて、『ウィンズ オブ サンダー』です。

2026年現在、『ウィンズ オブ サンダー』を遊ぶ方法

日本版『ウィンズ オブ サンダー』そのものを遊ぶなら、PCエンジン実機とSUPER CD-ROM²環境、オリジナルソフトを用意する方法があります。

過去にはWiiとWii Uのバーチャルコンソールでも配信されました。Wii版のKONAMI商品ページは現在も残っていますが、Wiiショッピングチャンネルでの新規購入はすでに終了。Wii Uもニンテンドーeショップでのソフト販売を2023年3月28日に終了しています。

PCエンジンアーカイブス版も2010年8月18日に配信され、KONAMIの公式商品ページは現在も公開されています。PS3/PS Vita向けPlayStation Storeは日本ではまだ終了前ですが、SIEは2027年に世界全体でサービスを終了する予定です。

そして現在、公式復刻として分かりやすい選択肢になるのがPCエンジン mini収録の海外版『LORDS OF THUNDER』です。

日本版とタイトルは異なりますが、本作の4属性の鎧、精霊召喚、ステージ選択といったゲーム性へ触れる手段としては大きな存在です。

2026年8月時点で、Nintendo Switch/Nintendo Switch 2、PS4、PS5、Xbox、Steam向けに本作単体を購入できる現行公式版は確認できません。

名作として語られ続ける一方、日本版へ気軽に触れる方法が少ないことは、今から遊ぶうえで惜しいところです。

まとめ|撃つ前の選択まで、シューティングにした

『ウィンズ オブ サンダー』には、分かりやすい派手さがあります。

鎧をまとって空を飛ぶ剣士。

4種類の属性。

高速スクロール。

巨大な敵。

精霊召喚。

画面を押し流すようなヘヴィメタル。

それだけでも印象に残る作品です。

けれど、92点の理由はもう少し深いところにあります。

どこへ行くかを選ぶ。

何を着るかを選ぶ。

何を買うかを選ぶ。

そして戦場へ出たら、迷っている時間はない。

敵を倒し、資金を集め、装備を維持しながら高速で突破する。

その結果を持って、また次の戦いを考える。

『ゲート オブ サンダー』が、戦闘中の判断を徹底的に磨いたことで92点へ届いた作品なら、『ウィンズ オブ サンダー』はシューティングの攻略を戦闘前まで広げることで、同じ92点へ届いた作品です。

撃つ前から面白い。

そして、考えたあとには猛烈に撃たせる。

この二つを同じゲームの中で成立させたことこそ、『ウィンズ オブ サンダー』をPCエンジン屈指の一本へ押し上げた理由です。

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