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残業45時間ルールはなくなった?9月1日から労基署の「一律指導」見直し、何が変わる

残業45時間ルールは廃止?労基署「一律指導」見直しで何が変わった

残業月45時間の法律上の原則は変更されず2026年9月1日から労基署の一律指導が見直されたことを示すアイキャッチ

2026年9月1日から、労働基準監督署による時間外労働の監督指導の運用が変わりました。

ニュースでは「残業『月45時間以内』への一律指導を取りやめ」と報じられたため、

「月45時間の残業上限がなくなったの?」

「会社がもっと残業させられるようになった?」

と感じた人もいるかもしれません。

しかし、法律上の「月45時間・年360時間」という原則がなくなったわけではありません。

変わったのは、法律そのものではなく、労基署による監督指導の運用です。

厚生労働省は、これまで行われてきた時間外・休日労働の時間数だけに着目して、月45時間以内への削減を求める一律の指導を9月1日から見直しました。

一方、時間外労働の上限規制はそのまま残っています。

上野厚生労働大臣も9月1日の会見で、今回の見直しについて**「時間外労働の上限規制そのものを変更するものではない」**と明言しています。

残業45時間ルールはなくなった?結論は「なくなっていない」

まず、今回変わったものと変わっていないものを分けておきましょう。

項目9月1日以降
時間外労働は原則月45時間変更なし
時間外労働は原則年360時間変更なし
特別条項でも年720時間以内変更なし
時間外+休日労働は単月100時間未満変更なし
時間外+休日労働は2~6か月平均80時間以内変更なし
月45時間を超えられるのは年6か月まで変更なし
労基署が時間数だけを見て「45時間以内へ」と求める一律指導見直し
健康・福祉確保措置の確認これまで以上に重点化

一般的な労働者については、時間外労働の上限は今も原則月45時間・年360時間です。

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、年720時間、単月100時間未満など、さらに上の限度があります。

ですから、

「9月1日から月45時間の上限が撤廃された」

という理解は誤りです。

9月1日から何が変わった?「時間だけを見る一律指導」を見直し

今回の変更を理解するには、

法律上の上限

労基署が企業をどう指導するか

を分ける必要があります。

厚生労働省は8月19日、9月1日から、

時間外・休日労働時間数のみに着目して1か月45時間以内への削減を求める一律の指導

を見直すと発表しました。

これまで、特別条項付き36協定などに基づいて法律上は適法な範囲で時間外労働が行われている場合でも、労基署が実際の残業時間に着目して「月45時間以内に減らしてください」と指導する運用がありました。

9月1日以降は、その時間数だけを見た一律対応を改めます。

代わって重視されるのが、

  • 36協定の内容
  • 事業場の実態
  • 労使間で定めた健康・福祉確保措置
  • その措置が実際に行われているか
  • 過重労働による健康障害のおそれがないか

といった部分です。

上野厚労相も、上限規制の範囲内で労使の合意に基づいて適法に行われている時間外労働について、一律に45時間以内へ収める指導を見直すと説明しています。

つまり、

「残業時間を見なくなる」

のではありません。

「45時間を超えている」という数字だけで一律に同じ指導をする運用から、各職場の実態や健康確保策まで含めて見る方向へ変わった

ということです。

そもそも「月45時間」はどんなルール?

ニュースだけを見ると「45時間」という数字が独り歩きしやすいのですが、その前提から確認しておきましょう。

労働基準法上、法定労働時間は原則として、

1日8時間・週40時間

です。

会社がこの時間を超えて労働者に時間外労働をさせる場合、原則として労使で**36協定(サブロク協定)**を結び、労働基準監督署へ届け出る必要があります。

そして36協定で定めることができる時間外労働の限度が、一般的には、

月45時間・年360時間

です。

ここで注意したいのは、

「45時間以内なら、36協定がなくても残業させていい」

という意味ではないことです。

法定労働時間を超えて働かせるなら、まず36協定が必要です。

そのうえで通常の限度として月45時間・年360時間がある、という順番です。

月45時間を超えたら即違法?「特別条項」がある

一方で、

「月45時間を1分でも超えたら必ず違法」

というわけでもありません。

業務量が通常予想できないほど大幅に増えるなど、臨時的な特別の事情がある場合には、労使で特別条項付き36協定を結ぶことで、月45時間を超える時間外労働が認められることがあります。

ただし、「特別条項があれば何時間でも働かせられる」という制度ではありません。

厚労省の指針では、特別条項を使う事情は具体的に定める必要があり、「業務上必要なとき」といった恒常的な長時間労働につながる曖昧な理由では足りないとされています。

人手不足だから毎月長時間残業をさせる、といった使い方を無制限に認める仕組みではありません。

特別条項でも「何時間でもOK」ではない

一般則が適用される労働者では、特別条項があっても次の上限を超えることはできません。

時間外労働

年720時間以内

時間外労働+休日労働

単月100時間未満

時間外労働+休日労働

2~6か月平均80時間以内

月45時間を超えられる月

1年で6か月まで

です。

特に注意したいのが「100時間」という数字です。

これは、

「毎月100時間まで残業していい」

という意味ではありません。

しかも「100時間以内」ではなく、100時間未満です。

さらに、この100時間と複数月平均80時間には、通常の時間外労働だけでなく休日労働も含まれます。

一方、年720時間は「時間外労働」の上限です。

数字だけを並べると似ていますが、何を合計するかが違います。

月45時間を超えられるのは「年6回」ではなく「年6か月まで」

もう一つ誤解されやすいのが、

「年6回まで」

という表現です。

正確には、

月45時間を超えて時間外労働を延長できる月が、1年で6か月以内

というルールです。

「年に6日だけ45時間を超えられる」という意味でも、「6回だけ残業できる」という意味でもありません。

そして7か月以上、月45時間超の状態を続けることは、特別条項を結んでいても認められません。

会社はこれから残業を増やしてもいい?

会社員にとって一番気になるのは、

「結局、今までより残業を増やされやすくなるのか」

というところでしょう。

制度上、会社が自由に残業時間を増やせるようになったわけではありません。

36協定が必要なことも、月45時間・年360時間という原則も、特別条項の条件も、年720時間などの上限も変わっていません。

一方で変わった部分もあります。

特別条項付き36協定などに基づき、法律上の上限内で労使の合意に沿って適法に行われている時間外労働については、

実際の時間数だけを見て、一律に「45時間以内に減らしてください」と求める監督指導は見直されました。

その意味では、労基署の指導は従来よりも職場ごとの事情を踏まえたものになります。

ただし、

「会社が残業を増やし放題になった」

という制度変更ではありません。

労基署は今後何を見る?健康・福祉確保措置を重点確認

9月1日からの変更で厚労省が特に打ち出しているのが、健康・福祉確保措置の確認です。

特別条項で限度時間を超えて働く人については、36協定の中で健康や福祉を守るための措置を定めます。

厚労省の指針では、たとえば、

  • 医師による面接指導
  • 深夜労働の回数制限
  • 終業から次の始業まで休息時間を取る勤務間インターバル
  • 代償休日や特別休暇
  • 健康診断
  • 心と体の相談窓口
  • 産業医などによる保健指導

などが例示されています。

これからは、単に、

「今月の残業は何時間だったか」

を見るだけでなく、

長時間働く人に対して会社がどんな対策を決め、それを実際に行っているか

も、より重点的に確認するということです。

ただし、健康対策をしていれば上限を超えていいわけではありません。

上限規制を守ることと、健康確保措置を行うことは両方必要です。

長時間労働への是正指導はなくならない

「一律指導を見直す」と聞くと、

労基署はもう長時間労働を減らすよう言わなくなるのか

という疑問も出てきます。

厚労省はそのようには説明していません。

上野厚労相は9月1日の会見で、

時間外労働の上限規制の遵守は従前どおり徹底する

としたうえで、過重労働による健康障害が生じるおそれがある場合には、引き続き長時間労働の是正を求めると説明しています。

つまり今回なくなったのは、

長時間労働への指導そのもの

ではなく、

時間数だけを見て45時間以内への削減を求める一律的な運用

です。

法律違反や健康障害のおそれへの対応までなくなったわけではありません。

なぜ今、監督指導を見直した?

厚労省によると、今回の変更は2026年7月21日に閣議決定された「日本成長戦略」と「経済財政運営と改革の基本方針2026」を踏まえたものです。

政府方針では、重大・悪質な事案には厳正に対応しながら、労働時間や健康確保措置について労使の合意に沿った指導を行うよう見直すことが盛り込まれました。

そのため今回の変更を、

「人手不足だから残業規制を撤廃した」

と単純化するのは正確ではありません。

法律上の上限を変えるのではなく、適法な労働時間については企業ごとの事情や労使合意も踏まえて監督する方向へ運用を改めた、というのが公式の説明です。

労働側からは「残業が増えるのでは」と懸念も

一方で、今回の見直しには懸念も出ています。

「月45時間以内へ」という一律指導をなくすことで、結果として45時間を超える残業が増えるのではないか、というものです。

こうした懸念に対し、厚労省側は、

  • 上限規制は変更しない
  • 上限規制の遵守は引き続き徹底する
  • 健康・福祉確保措置をこれまで以上に重点的に確認する
  • 健康障害のおそれがあれば長時間労働の是正を求める

と説明しています。

制度の運用変更が実際の残業時間にどの程度影響するのかは、始まったばかりの段階で断定できません。

ただ、「規制がなくなったから長時間残業が自由になった」という理解とも、「何も変わっていない」という理解とも違います。

監督の仕方が変わった以上、今後の実際の運用を見る必要があります。

36協定や特別条項の相談支援も9月1日から拡充

今回の変更は、労基署による監督指導だけではありません。

厚労省は9月1日から、全国の働き方改革推進支援センターに労働時間に関する専門相談窓口を設けました。

36協定や特別条項、柔軟な労働時間制度などについて相談できるほか、働き方改革推進支援センターと労基署の「労働時間相談・支援班」がチームとなって企業を訪問する支援も行います。

商工会議所やよろず支援拠点などとの連携も強化されます。

つまり9月1日からは、

一律的な指導を見直す一方で、企業が適切な36協定や労働時間制度を運用するための相談支援を増やす

という二つの変更が同時に始まっています。

一部の業種や制度では上限が異なる

ここまで紹介した、

月45時間・年360時間

年720時間

などは、一般的な労働者に適用される原則です。

すべての仕事にまったく同じ数字が適用されるわけではありません。

たとえば自動車運転業務や医師などには一般則とは異なる特例があり、新技術・新商品等の研究開発業務にも特別な扱いがあります。

また、1年単位の変形労働時間制で対象期間が3か月を超える場合には、通常の月45時間・年360時間ではなく、原則月42時間・年320時間という限度があります。

自分の勤務先でどのルールが適用されるか分からない場合は、就業規則や36協定を確認するほか、労働局や労基署などの相談窓口で確認できます。

まとめ|なくなったのは「45時間ルール」ではなく一律指導

2026年9月1日から変わったのは、労働基準法の「月45時間」という上限そのものではありません。

一般的な労働者については現在も、

時間外労働は原則月45時間・年360時間。

臨時的な特別事情があり、適切な特別条項付き36協定を結んだ場合でも、

年720時間以内
時間外+休日労働は単月100時間未満
2~6か月平均80時間以内
月45時間を超えられるのは年6か月まで

という上限があります。

9月1日から見直されたのは、法律の上限内で適法に行われている時間外労働についても、時間数だけを見て一律に月45時間以内へ減らすよう求めていた労基署の監督指導です。

今後は上限規制の遵守を確認しながら、36協定で定めた健康・福祉確保措置や、それぞれの事業場の実態をより重視する運用へ移ります。

ですから、

「9月1日から45時間を超えて残業しても自由になった」

という制度変更ではありません。

「45時間という法律上の原則」と「45時間以内へ減らすよう求めていた労基署の一律指導」。

似た数字が出てくるため分かりにくいものの、今回変わったのは後者です。

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