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福音館書店はなぜ謝罪?『ぐりとぐら』をめぐる削除投稿と作者名の違いを整理

福音館書店は『ぐりとぐら』でなぜ謝罪?削除された投稿と山脇百合子の名字の違いを整理

福音館書店が『ぐりとぐら』をめぐる削除投稿について謝罪し、作者名の旧姓と現姓の違いを整理する記事のアイキャッチ

福音館書店が2026年9月7日、前日に公式Xへ投稿した内容について謝罪しました。

今回問題になったのは、『ぐりとぐら』の物語や挿絵ではありません。

同作の絵を手がけた山脇百合子さんについて、「大村百合子」と「山脇百合子」という2つの名字が本に使われていることに気づいた親子の投稿へ、福音館書店公式Xが「本当だ…どうしてだろう…(すっとぼけ)」という趣旨で反応したことが発端です。

その表現に対して複数の指摘が寄せられ、福音館書店は投稿を削除。翌朝、投稿の確認体制を強化し、再発防止に努めるとして謝罪しました。

では、そもそも大村百合子さんと山脇百合子さんは別人なのか。なぜ『ぐりとぐら』には現在も「大村百合子」の名前が残っているのか。騒動の経緯とあわせて整理します。

福音館書店は『ぐりとぐら』でなぜ謝罪した?

福音館書店が謝罪したのは、絵本『ぐりとぐら』そのものではなく、公式Xで使った表現についてです。

9月7日の謝罪では、前日の投稿について「表現が不適切であるというご指摘を多数いただきました」と説明。該当投稿を削除し、寄せられた指摘を受け止めたうえで、今後は投稿の確認体制を強化するとしています。

ここで福音館書店が詳しく認定しているのは、「表現が不適切との指摘が多数あった」というところまでです。

「女性の改姓問題を軽視したと認めた」「差別的な投稿だったと会社が認定した」といった説明まではしていません。

批判された理由と、会社自身が謝罪文で説明した内容は分けて見る必要があります。

削除された投稿は何だった?

きっかけは、山脇百合子さんが絵を担当した本を見比べた親子の投稿でした。

そこでは、同じ人が絵を描いているのに、一方では「大村百合子」、もう一方では「山脇百合子」と名字が違っていることに子どもが気づいた、という趣旨の話が紹介されていました。

福音館書店公式Xは9月6日、その投稿を取り上げ、

「本当だ…どうしてだろう…(すっとぼけ)」

という趣旨で反応しました。

「すっとぼけ」は、事情を知っていながら知らないふりをするような場面で使われる表現です。

つまり出版社側としては、名字が違う理由を知っている前提の冗談だったと読めます。

しかし、この反応に対し、結婚などで名字が変わった女性作家・研究者の過去と現在の名義がつながりにくくなる問題を軽く扱っているように見える、児童書を扱う出版社の公式アカウントとして表現が適切なのか、といった趣旨の指摘が寄せられました。

その後、問題の投稿は公式Xから削除されています。

大村百合子と山脇百合子は同じ人?

大村百合子さんと山脇百合子さんは同一人物です。

山脇百合子さんの旧姓が大村でした。

国立国会図書館の典拠データでも、「山脇百合子」の関連名称として「大村百合子」が登録されています。神奈川県立図書館も『ぐりとぐら』を紹介する資料で「山脇(旧姓大村)百合子」と明記しています。

山脇さんは1941年生まれの画家で、2022年に亡くなりました。

『ぐりとぐら』の文を担当した児童文学作家・中川李枝子さんの実妹でもあります。姉の中川さんとともに、『ぐりとぐら』だけでなく『いやいやえん』『そらいろのたね』など、多くの児童書を手がけました。

名字が違うため別の絵本作家に見えますが、2人の百合子さんがいるわけではありません。

なぜ本によって「大村百合子」と「山脇百合子」が違う?

名字が違うのは、作品が作られた時期と山脇さんの姓の変化が関係しています。

静岡市美術館の資料では、山脇さんについて1966年以前は旧姓の大村、その後は山脇を名乗ったと説明されています。

そのため、初期の作品では「大村百合子」、後年には「山脇百合子」という名義が見られます。

ここで少し意外なのが、昔の本だけに「大村」の名前が残っているわけではないことです。

福音館書店が現在販売している『ぐりとぐら』の商品ページを確認すると、著者表記は現在も、

「なかがわりえこ と おおむらゆりこ」

となっています。

一方、福音館書店は現在「山脇百合子の世界」という特集ページを設け、その中で『ぐりとぐら』や後年のシリーズ作品を紹介しています。

つまり、

人物としては山脇百合子さんとして知られている一方、作品によっては制作当時の「大村百合子」という名義が現在の本にも残っている

ということです。

親子が本を見比べて「同じ人なのに名字が違う」と気づいたのも、このためです。

『ぐりとぐら』は大村百合子名義?1963年と1967年の違い

『ぐりとぐら』について調べると、「1963年」と「1967年」という2つの年が出てくることがあります。

これは別作品という意味ではありません。

『ぐりとぐら』は1963年12月、月刊絵本「こどものとも」で誕生しました。神奈川県立図書館の資料では、この時点の表記は「中川李枝子 文/大村百合子 絵」です。

その後、現在につながる単行本が1967年1月に刊行されています。国立国会図書館の書誌でも、1967年刊の『ぐりとぐら』は「大村百合子 え」と登録されています。

現在の書誌にも「初版:こどものとも(1963.12)」という記録が残っています。

したがって、

  • 1963年:月刊絵本「こどものとも」で誕生
  • 1967年:単行本として刊行

と分けると分かりやすいでしょう。

どちらの段階でも、初期の『ぐりとぐら』には旧姓の大村百合子名義が使われています。

『ぐりとぐら』そのものに問題があったわけではない

今回のニュースで最も誤解したくないのがここです。

福音館書店が謝罪した対象は公式Xの投稿表現であり、『ぐりとぐら』の内容ではありません。

ストーリーや挿絵について不適切な表現が見つかったわけでも、作品の回収や販売中止が発表されたわけでもありません。

実際、福音館書店の公式オンラインストアでは現在も『ぐりとぐら』が販売され、「山脇百合子の世界」のページでもシリーズ作品が紹介されています。

そのため、

「『ぐりとぐら』が問題になった」
「作者が不祥事を起こした」
「絵本が販売中止になった」

という話ではありません。

山脇百合子さん自身が今回何か発言したわけでもなく、2022年に亡くなっています。

ぐりとぐら [ぐりとぐらの絵本] (こどものとも傑作集)

1963年に「こどものとも」で誕生した『ぐりとぐら』の第1作。中川李枝子さんの文と、山脇百合子さんが旧姓の「大村百合子」名義で手がけた絵によるロングセラー絵本で、現在販売されている本にも当時の名義が残っています。

価格・在庫・仕様や版の違いなどは変動します。購入の際は各ショップの商品ページで最新情報をご確認ください。

なぜ「すっとぼけ」という表現が批判された?

今回寄せられた指摘には、大きく分けて2つの論点がありました。

一つは、結婚などによる改姓で女性作家や研究者の著作名義が分かれ、過去と現在で同じ人物だと分かりにくくなる問題を、出版社が軽く扱っているように見えるというもの。

もう一つは、児童書出版社の公式アカウントが「すっとぼけ」というネット上の表現を使うことへの疑問です。

ただし、これらはあくまで投稿に対して寄せられた指摘です。

今回の出来事を夫婦別姓制度そのものの是非にまで広げると、福音館書店が実際に謝罪した内容から離れてしまいます。

福音館書店自身は、どの社会問題について自社の立場が誤っていたのかを詳細に説明したのではなく、「表現が不適切との指摘を多数受けた」として投稿を取り下げています。

福音館書店はその後どう対応した?

9月7日の公式Xでは、問題の投稿を削除したことを報告しています。

そのうえで、寄せられた指摘を真摯に受け止め、今後は投稿の確認体制を強化し、再発防止に努めるとしました。

9月7日夕方までに確認できた範囲では、担当者の処分やSNS担当の変更など、これ以上の具体的な対応は発表されていません。

また、削除された投稿に代わって、山脇百合子さんの名義について新たな公式解説を掲載したという動きも確認できませんでした。

現時点では、該当投稿の削除と謝罪、確認体制の強化が福音館書店から示された対応となっています。

まとめ|謝罪したのは『ぐりとぐら』ではなく公式Xの投稿

福音館書店が2026年9月7日に謝罪したのは、『ぐりとぐら』の内容ではありません。

発端は、山脇百合子さんの本に「大村百合子」と「山脇百合子」という異なる名字が使われていることに気づいた親子の投稿でした。

福音館書店公式Xがそこへ「本当だ…どうしてだろう…(すっとぼけ)」という趣旨で反応し、表現が不適切ではないかとの指摘を受けて投稿を削除。翌朝、確認体制を強化するとして謝罪しています。

そして、名字の違いに特別な謎があるわけではありません。

大村百合子さんと山脇百合子さんは同じ人物で、大村は山脇さんの旧姓です。

初期の『ぐりとぐら』には大村百合子名義が使われ、その表記は現在販売されている本にも残っています。一方、後年には山脇百合子名義で手がけた作品もあります。

今回の出来事は、長く読み継がれてきた絵本そのものの問題ではなく、その作者名の違いをめぐる読者の疑問に、出版社の公式Xがどう反応したかをめぐるものでした。

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