- ベロ毒素とは何?O157・O121の違い、感染経路や75℃加熱を整理
- ベロ毒素とは何?O157そのものではない
- O157・O121の数字は何?危険度の順位ではない
- O157だけじゃない|O26・O103・O121などもある
- 岡山でO157・O121を確認|現在何が起きている?
- 岡山県では4月から注意報が継続
- ベロ毒素でなぜ血便やHUSが起こる?
- O157・O121は何から感染する?
- 人から人にもうつる?少ない菌数でも感染することがある
- 75℃で1分加熱すれば防げる?
- 「75℃1分でベロ毒素が消える」という意味ではない
- 電子レンジなら大丈夫?
- 冷蔵・冷凍すれば菌は死ぬ?
- 野菜は全部加熱しないと危険?
- 家庭で特に気をつけたいのは二次汚染
- 「食中毒」と「感染症」は同じ?
- 血便や強い腹痛があるときは自己判断しない
- まとめ|ベロ毒素はO157だけのものではない
ベロ毒素とは何?O157・O121の違い、感染経路や75℃加熱を整理

2026年9月7日、岡山県内で腸管出血性大腸菌O157やO121の感染症患者が相次いで公表されました。
ニュースの中で目にするのが、「ベロ毒素産生」「ベロ毒素産生性腸管出血性大腸菌」といった言葉です。
ここで最初に整理しておきたいのは、ベロ毒素とO157は同じものではないということです。
ベロ毒素は、一部の大腸菌が作る毒素の名前。O157は、そのベロ毒素を作ることがある腸管出血性大腸菌の代表的な種類の一つです。
O157以外にもO26、O111、O121などがあり、数字が違っていても腸管出血性大腸菌感染症を起こすことがあります。O121は「新型O157」でもなく、157と121の数字が危険度を表しているわけでもありません。
岡山県では4月から注意報が続くなか、9月7日時点で2026年の患者等累計が68人に達しています。
ニュースに出てきた「ベロ毒素」とは何なのか。O157とO121は何が違うのか。何から感染し、加熱で防げるのかまで順番に整理します。
ベロ毒素とは何?O157そのものではない
腸管出血性大腸菌は、ベロ毒素を産生する大腸菌です。
ベロ毒素は英語では「Verotoxin」と呼ばれ、VTと略されます。一方、「Shiga toxin(志賀毒素)」や「Stx」という名称が使われることもあります。
ニュースや医療資料によって、
「ベロ毒素」
「Vero toxin」
「VT」
「志賀毒素」
「Shiga toxin」
「Stx」
と表記が変わるため、別々の毒素のように見えますが、同じ毒素群を指す名称として使われています。ベロ毒素にはStx1、Stx2など複数の型があります。
では、なぜ「ベロ」という名前なのでしょうか。
日本語の「舌」とは関係ありません。
国立健康危機管理研究機構によると、この毒素が培養細胞の一種であるVero細胞に対して致死的に作用することから、ベロ毒素と名付けられています。
つまり、
O157=菌の分類
ベロ毒素=その菌が作る毒素
と分けると理解しやすくなります。
O157・O121の数字は何?危険度の順位ではない
「O157」という名前があまりに有名なので、157という数字にも特別な意味があるように感じます。
実際には、大腸菌の表面にあるO抗原による分類番号です。
厚生労働省は、O157について「O抗原として157番目に発見されたものを持つ」という意味だと説明しています。
O121も同じ考え方による別のO血清群です。
したがって、
157の方が121より毒性が強い
O121はO157から変異してできた新型
番号が大きいほど危険
という意味ではありません。
数字を「危険度の点数」のように比較することはできません。
病気の重さは、O抗原の番号だけで決まるものではなく、毒素の型や感染した人の年齢・状態などさまざまな要因が関係します。
O157だけじゃない|O26・O103・O121などもある
日本ではO157が最もよく知られています。
実際、国立健康危機管理研究機構も、国内で患者などから検出される腸管出血性大腸菌ではO157が最も多いとしています。
ただし、腸管出血性大腸菌はO157だけではありません。
O26やO111のほか、O103、O121、O145などさまざまな血清群が確認されています。
今回の岡山県の集計を見ると、この違いがよく分かります。
2026年9月7日時点の県内68人を血清群別に見ると、
- O157:33人
- O103:10人
- O26:5人
- O91:2人
- O121:1人
などが確認されています。ほかにも複数の血清群があります。
県内ではO157が最も多いものの、実際にO157以外でも感染症が発生しているわけです。
O121についても、国立健康危機管理研究機構は国内のHUS症例から確認される主なO群の一つとして挙げています。だからといってO121がO157より危険という意味ではありませんが、「聞き慣れない番号だから軽い」とも言えません。
岡山でO157・O121を確認|現在何が起きている?
9月7日、岡山市はO157による腸管出血性大腸菌感染症の患者2人を公表しました。
1人は小学生の女子児童です。
8月29日に軟便があり、翌30日には腹痛と水様便、31日には血便がみられ入院。9月2日の検査でO157によるベロ毒素産生が確認されました。
9月7日時点では入院中でしたが、症状は軽症化しています。岡山市は感染源不明で、現在のところ散発事例としています。
もう1人は幼児の女児です。
8月31日に腹痛と泥状便、9月1日に腹痛と血便があり受診。9月4日の検査でO157によるベロ毒素産生が確認されました。
こちらも症状は軽症化しており、感染源は不明。岡山市は散発事例としています。
同じ9月7日には、岡山県も真庭保健所管内の60代男性について発表しました。
男性は8月25日から腹痛、水様性下痢、発熱があり、8月27日に受診。9月3日にベロ毒素産生性腸管出血性大腸菌O121による感染症と確認されています。
9月7日時点では入院中ですが回復傾向で、県の調査では接触者はいないとされています。
O157とO121は同じ感染源なの?
現時点では確認されていません。
岡山市のO157 2例についても感染源は不明で、散発事例とされています。
真庭保健所管内のO121についても、今回のO157事例との関連を示す発表はありません。
同じ時期に公表されたからといって、
「同じ食品から感染した」
「O157がO121へ変異して広がった」
「岡山で一つの集団感染が起きている」
とは判断できません。
岡山県では4月から注意報が継続
岡山県では、今回の9月の患者発表を受けて初めて注意報が出たわけではありません。
県は2026年4月27日から県下全域に「腸管出血性大腸菌感染症注意報」を発令しています。
9月7日の県資料にも、注意報が発令中であることが明記されています。
2026年9月7日時点の患者等累計は68人。
内訳は男性24人、女性44人で、8月だけでも19人が確認されています。
ただし、この状況を「O157の大流行」「県内で集団感染が拡大」と表現するのは正確ではありません。
県内で患者数が増え、注意報が続いている一方、今回のO157 2例については岡山市が散発事例としています。
ベロ毒素でなぜ血便やHUSが起こる?
腸管出血性大腸菌に感染すると、多くは数日程度の潜伏期間を経て症状が現れます。
代表的なのは、
- 腹痛
- 水様性下痢
- 血便
です。
発熱や嘔吐を伴うこともありますが、必ず高熱になるわけではありません。国立健康危機管理研究機構では、潜伏期間を多くの場合3~5日程度としています。
注意が必要なのが、ベロ毒素による重い合併症です。
その一つが溶血性尿毒症症候群(HUS)です。
HUSでは、
- 赤血球が壊れる溶血性貧血
- 血小板の減少
- 急性腎障害
などが起こります。脳症を伴うこともあります。
もちろん、腸管出血性大腸菌に感染した人が必ずHUSになるわけではありません。
国立健康危機管理研究機構の2025年分の集計では、有症状者2,472例のうちHUSが報告されたのは59例、2.4%でした。
ただし年齢差があり、0~4歳では7.4%、5~9歳では6.3%と高くなっています。この数字は2025年に届け出られた症例の集計であり、「感染した人は必ず一定の割合でHUSになる」という意味ではありません。
小さな子どもや高齢者などでは、特に重症化に注意が必要とされています。
O157・O121は何から感染する?
腸管出血性大腸菌と聞くと、焼肉や生肉を最初に思い浮かべる人も多いでしょう。
確かに牛などの家畜が菌を保有することがあり、生肉や加熱不十分な肉、ひき肉料理などは代表的な感染経路の一つです。
ただし、肉だけではありません。
厚生労働省が過去の感染事例として挙げているものには、牛肉やハンバーグだけでなく、
サラダ、貝割れ大根、キャベツ、メロン、白菜漬け、井戸水などもあります。
加熱しない食品そのものが最初から危険という意味ではありません。
問題になるのは、菌で汚染された食品や水を口にすること、生肉などから別の食品へ菌が移る二次汚染などです。
今回の岡山の患者については感染源が判明していないため、生肉や特定の食品が原因だったと結び付けることはできません。
人から人にもうつる?少ない菌数でも感染することがある
腸管出血性大腸菌は、食品からだけ感染する病気ではありません。
患者や無症状の保菌者の便に含まれる菌が、手指や物を介して口に入れば人から人への二次感染も起こり得ます。
国立健康危機管理研究機構では、ヒトを発症させる菌数は50個程度と考えられていると説明しています。かなり少ない菌数でも感染が成立し得ることが、二次感染へ注意する理由の一つです。
だからこそ、
トイレの後やおむつ交換後、調理前、食事前の手洗いが重要になります。
一方、インフルエンザのように会話やせきで空気中へ広がる病気として考えるものではありません。
感染者がいるだけで周囲の人へ次々とうつる、という理解も避ける必要があります。
75℃で1分加熱すれば防げる?
食品からの感染予防では、十分な加熱が非常に有効です。
厚生労働省は、腸管出血性大腸菌について、
中心部を75℃で1分間以上
加熱すれば死滅するとしています。
岡山市も今回の患者発表の中で、感染予防として「十分な加熱(75℃で1分間以上)」を呼びかけています。
特に注意したいのはハンバーグなどのひき肉です。
表面だけでなく肉の内部へ菌が入り込んでいる可能性があるため、中心まで十分に火を通す必要があります。
焼肉でも、生肉をつかんだ箸やトングをそのまま焼けた肉に使えば、加熱後に再び菌を付けてしまう可能性があります。
屋外での調理や生肉からの二次汚染については、つぶログのこちらの記事でも公的な衛生ルールを基に詳しく整理しています。
祭りの屋台は本当に衛生的?地面の食材・常温の生肉・手袋…公的ルールで検証
「75℃1分でベロ毒素が消える」という意味ではない
ここは混同しやすいところです。
厚生労働省が示している、
75℃で1分間以上
という基準は、食品中の腸管出血性大腸菌を死滅させるための加熱目安です。
そのため、
「ベロ毒素そのものを75℃で1分加熱すれば無毒になる」
という説明にはできません。
予防の考え方は、食品を十分に加熱して原因菌を体内へ入れないことです。
すでに感染して腸内で菌が増え、毒素が作られている状態を、食べ物の加熱で治療できるわけでもありません。
「ベロ毒素」と「それを作る菌」を分けて考える必要があります。
電子レンジなら大丈夫?
電子レンジでも条件は同じです。
厚生労働省は、食品全体をむらなく75℃で1分間以上加熱できれば菌は死滅するとしています。
問題は加熱ムラです。
外側が熱くなっていても、中心部や厚みのある部分まで十分に温度が上がっていないことがあります。
必要に応じて途中でかき混ぜるなど、食品全体へ熱を通す必要があります。
「600Wなら何秒」と一律には決められません。食品の大きさ、量、形によって条件が変わるためです。
冷蔵・冷凍すれば菌は死ぬ?
冷蔵庫は食品中の細菌が増えにくい環境を作るために重要ですが、冷蔵=殺菌ではありません。
冷蔵したから腸管出血性大腸菌が完全に死滅した、と考えることはできません。
冷凍についても、「冷凍しておけば安全になる」という扱いにはできません。
食品の安全対策は、
十分な加熱、手洗い、生肉と加熱済み食品を扱う器具の使い分け、適切な冷蔵保存などを組み合わせて考えます。
野菜は全部加熱しないと危険?
野菜が感染源となった事例もありますが、「O157対策のために野菜はすべて加熱して食べなければならない」という意味ではありません。
厚生労働省は、新鮮なものを選び、適切に冷蔵し、流水で十分に洗うなどの衛生管理を案内しています。
加熱する料理なら十分に火を通す。
生で食べる食品なら、手や包丁、まな板などから菌を付けない。
肉か野菜かだけではなく、食品をどのように扱ったかも重要です。
家庭で特に気をつけたいのは二次汚染
家庭での予防は、特別な方法ばかりではありません。
まず、生肉に触れた箸やトングで加熱後の肉を取らないこと。
生肉を切ったまな板や包丁を、そのまま加熱せず食べる野菜などへ使わないこと。
調理前、食事前、トイレの後には手を洗う。
冷蔵が必要な食品は適切に保管し、加熱する食品は中心まで火を通す。
こうした一つ一つの対策が、生肉から別の食品へ菌が移ることや、人から人への二次感染を防ぐことにつながります。
牛などの動物が菌を保有していることもあるため、動物に触れた後も手洗いが基本です。
「食中毒」と「感染症」は同じ?
ニュースによって、
「O157食中毒」
「腸管出血性大腸菌感染症」
と表現が変わるため、ここも混乱しやすいところです。
腸管出血性大腸菌は、汚染された食品を食べて感染すれば食中毒の原因になります。
しかし人から人への二次感染も起こり得るため、食品だけを原因とする病気ではありません。
今回の岡山市と真庭保健所管内の患者については、感染源が確認されていません。
したがって現時点では、
「岡山でO157食中毒が発生した」
ではなく、
「腸管出血性大腸菌感染症の患者が確認された」
とするのが正確です。
血便や強い腹痛があるときは自己判断しない
腸管出血性大腸菌感染症では、腹痛や下痢、血便などがみられます。
ただ、腹痛や下痢があればすべてO157やO121というわけでもありません。
厚生労働省も、下痢の原因にはさまざまな病原体があるため、腸管出血性大腸菌かどうかは便の検査などで確認するとしています。
強い腹痛や水様性下痢が続く、血便が出る、体調が悪化するといった場合には、自己判断だけで済ませず医療機関へ相談・受診するのが基本です。
特に乳幼児や子ども、高齢者などでは重症化に注意が必要です。
市販の下痢止めなどについても、自己判断だけで使うのではなく、腸管出血性大腸菌感染症が疑われる場合は医師へ相談する必要があります。厚生労働省は、治療に使わない方がよいとされる薬があることも案内しています。
まとめ|ベロ毒素はO157だけのものではない
岡山県では腸管出血性大腸菌感染症注意報が続くなか、2026年9月7日に岡山市でO157の患者2人、真庭保健所管内でO121の患者1人が公表されました。
ただし、今回の症例が同じ感染源によるものだとは確認されていません。
ニュースに出てくるベロ毒素はO157そのものではなく、腸管出血性大腸菌が産生する毒素です。
O157はその代表的な血清群ですが、O121をはじめ別の番号でも腸管出血性大腸菌感染症は起こります。数字の大小は危険度を示すものではありません。
食品からの感染を防ぐうえでは、中心部75℃で1分間以上の十分な加熱が有効です。ただし、これはベロ毒素を消す基準ではなく、原因菌を死滅させるための目安です。
そして肉だけを気にすればよいわけでもありません。
生肉から別の食品への二次汚染、人から人への糞口感染もあるため、十分な加熱と手洗い、調理器具の使い分けまで含めて予防することが大切です。