都営地下鉄の公衆電話が全撤去へ|なぜ?災害時はどうなる

東京都交通局は、都営地下鉄の駅構内に設置されている公衆電話を2028年11月までにすべて撤去すると発表しました。
スマートフォンが普及した現在、公衆電話を普段使う機会はかなり減っています。その一方、公衆電話は大規模災害時に一般の電話とは違う役割を持つ通信手段でもあります。
では、災害時にも意味がある公衆電話を、なぜ地下鉄駅からすべてなくせるのでしょうか。
調べていくと、全国では一般の公衆電話を減らす一方、避難所などには「災害時用公衆電話」を事前設置するという公衆電話そのものの役割の変化が進んでいます。
ただし、ここで一つ重要な点があります。東京都交通局は2026年10月2日時点で、都営地下鉄から全撤去する具体的な理由や、撤去後の駅構内で何を災害時の代替通信手段とするのかを詳しく説明していません。
全国的な公衆電話削減の流れと、今回の都営地下鉄の判断は分けて考える必要があります。
| 項目 | 現在確認できる内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年9月29日 |
| 対象 | 都営地下鉄駅構内に設置されている公衆電話 |
| 撤去完了予定 | 2028年11月まで |
| 一斉撤去? | 個々の電話には撤去予定日の2週間前までに案内を掲示 |
| 全撤去の具体的理由 | 東京都交通局の発表では詳しい説明なし |
| 災害時の公衆電話 | 一般電話への通話制御時にも重要な通信手段 |
| 都営地下鉄の携帯通信 | 平常時は全駅・列車内全区間でメール・インターネット接続が可能 |
| 撤去後に近くの電話を探す方法 | NTT東日本「公衆電話 設置場所検索」 |
都営地下鉄の公衆電話は2028年11月までに全撤去
東京都交通局が2026年9月29日に公表した「公衆電話撤去のお知らせ」によると、対象は都営地下鉄駅構内に設置されている公衆電話です。
撤去は2028年11月までに完了する予定で、それぞれの公衆電話には撤去予定日の2週間前までに「公衆電話撤去のお知らせ」が掲示されます。
つまり、2028年11月の特定日に全駅で一斉撤去するという意味ではありません。個々の撤去日は現地の案内で確認することになります。
また、都営地下鉄は浅草線・三田線・新宿線・大江戸線の4路線、106駅ありますが、「106駅=公衆電話106台」ではありません。東京都交通局は今回、現在の設置総台数や設置駅数を公表していません。
なぜ全撤去する?東京都交通局は詳しい理由を公表していない
「スマホが普及して使う人が減ったからでは?」と考えるのは自然です。
実際、全国で公衆電話が減ってきた大きな背景には、携帯電話やスマートフォンの普及があります。
しかし、東京都交通局の今回の発表には、都営地下鉄が全撤去を決めた直接の理由までは書かれていません。
そのため、現時点では次のような説明を東京都交通局の決定理由として断定することはできません。
- スマートフォンが普及したから
- 利用者がほとんどいなくなったから
- 維持費を削減するため
- 携帯電話があるので災害時にも不要になったから
これらと関係する社会環境の変化は確認できますが、「全国で公衆電話が減っている理由」と「都営地下鉄が全撤去する理由」は同じとは限りません。
公衆電話は全国でどれくらい減っている?
では、公衆電話を取り巻く環境そのものはどう変わったのでしょうか。
NTT東日本が公衆電話の設置基準見直しを説明した資料では、スマートフォンの普及やSNS・チャットなどへのコミュニケーション手段の変化に伴い、公衆電話の利用は約20年間で約98%減少したとされています。
同じ資料では、公衆電話の台数も約71万台から約14万台へ減少。これは2026年現在の台数ではなく、NTTが制度見直しの背景として示した過去約20年間の変化です。
2022年に「残すべき公衆電話」の基準も変わった
大きな転換点になったのが2022年4月です。
社会生活上の安全や戸外での最低限の通信手段として維持される「第一種公衆電話」について、設置基準そのものが緩和されました。
| 地域 | 見直し前 | 見直し後 |
|---|---|---|
| 市街地 | 概ね500m四方に1台 | 概ね1km四方 |
| その他の地域 | 概ね1km四方に1台 | 概ね2km四方 |
現在の詳しい基準や都道府県別の設置状況は、NTT東日本のユニバーサルサービス制度の公開情報で確認できます。
NTT東西は2031年度末に向け、第一種公衆電話の削減を段階的に進めています。2026年度だけでも、東日本5,000台、西日本4,000台の計9,000台を削減する計画です。
「昔と同じ密度で街中に公衆電話を置き続ける」という制度では、すでになくなっています。
東京都には今も最低基準を上回る公衆電話がある
NTT東日本による2026年3月31日時点のデータでは、東京都に設置されている第一種公衆電話は9,076台。一方、告示で定める最低限必要な台数は1,165台です。
ただし、この差をそのまま「余っている7,911台は自由に撤去できる」と読むことはできません。
設置する場所は地域ごとのメッシュや利用状況などを考慮して決められます。また、この9,076台は東京都全体の数字であり、都営地下鉄駅の台数ではありません。
「東京都では最低基準を上回る第一種公衆電話が残っている」という全国的な削減環境の背景として見る数字です。
それでも公衆電話は災害時につながりやすい
ここで一見すると矛盾が出てきます。
普段の利用は大きく減ったとしても、公衆電話は災害時に意味のある通信手段です。
NTT東日本は現在も、公衆電話を「災害時の通話制御を受けない電話」と説明しています。
大地震などの後には、被災地への安否確認などで一斉に電話が集中します。そのままでは交換機や通信ネットワークへ大きな負荷がかかるため、一般の電話からの通話を制御し、110・118・119や防災機関などの重要通信を確保することがあります。
公衆電話はこうした一般電話への通話制御とは異なる扱いになるため、災害時の通信手段として意味があります。
ただし、「公衆電話なら大地震でも必ずつながる」という意味ではありません。電話回線や通信設備そのものが被災していたり、電話機が故障していたり、通話先側に障害があったりすれば利用できない場合があります。
公衆電話が災害時につながりやすい仕組み、停電時の違い、171との関係については、つぶログの「公衆電話はなぜ災害時につながりやすい?停電でも使えるのか、スマホとの違いを整理」で詳しく解説しています。
110・118・119は硬貨がなくても発信できる
公衆電話から110・118・119へ緊急通報する場合、硬貨やテレホンカードは必要ありません。
赤い緊急通報ボタンがある電話ではボタンを押してから番号をダイヤルし、ボタンがない電話では受話器を上げてそのまま緊急通報番号をダイヤルします。
また、大規模災害時にはNTTの判断により一般通話が無料化される場合がありますが、災害が起きれば必ず自動的に無料になるわけではありません。
では、なぜ災害時に重要な公衆電話を減らしている?
ここを理解する鍵になるのが、「一般公衆電話」と「災害時用公衆電話」は同じものではないという点です。
| 項目 | 一般の公衆電話 | 災害時用公衆電話 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 平常時を含め誰でも利用する電話 | 災害時の通信手段を確保 |
| 主な設置場所 | 駅・道路沿い・公共施設・商業施設など | 避難所・一時滞在施設など |
| 通常時の利用 | 利用可能 | 原則として災害時の開設時などに使用 |
| 整備の方向 | 利用減少と基準変更に伴い削減 | 自治体などと協議して事前設置 |
NTT東日本は自治体などと協議しながら、避難所等へ「災害時用公衆電話(特設公衆電話)」の事前設置を進めています。
2025年9月末時点のNTT東日本エリアでは、839自治体のうち776自治体、25,011カ所・51,056台への設置が完了しています。
NTT東日本の災害時用公衆電話設置場所では、施設管理者から公開許可を得た設置場所を確認できます。
つまり全国的には、平常時に大量配置する一般公衆電話を減らしながら、災害時に使う電話を避難所などへ重点的に事前配置するという変化が進んでいます。
ただし、ここでも注意が必要です。
「災害時用公衆電話が整備されたから、都営地下鉄の公衆電話を全撤去できるようになった」と東京都交通局が説明しているわけではありません。
全国的な通信インフラの変化としては重要ですが、今回の全撤去との直接的な因果関係は確認されていません。
都営地下鉄の災害時はスマホだけで大丈夫?
現在の都営地下鉄では、携帯電話を利用できる環境も大きく変わっています。
東京都交通局によると、都営地下鉄の全駅と列車内の全区間で、携帯電話によるメールやインターネット接続を利用できます。
以前のように「地下鉄へ入ると携帯電話がほぼ使えない」という環境ではありません。
しかし、これは平常時の通信環境です。
大規模災害では基地局や通信設備の被害、停電、通信集中、伝送路の障害、スマートフォン自体の電池切れなどが起こる可能性があります。
したがって、
「都営地下鉄全区間でスマホが使える」=「災害時もスマホだけで問題ない」
とはいえません。
そして東京都交通局も、今回の公衆電話撤去について「携帯電話を災害時の代替手段とするため撤去する」とは説明していません。
都営地下鉄駅に災害時用公衆電話は残る?
ここは今回のニュースを見て、特に気になるところです。
一般の公衆電話を撤去した後も、災害時用公衆電話が全駅に残るのであれば話は大きく変わります。
しかし、2026年10月2日時点で確認できる東京都交通局の発表には、「都営地下鉄全駅に災害時用公衆電話を設置する」「現在の一般公衆電話を災害時用公衆電話へ置き換える」という説明はありません。
最新の都営地下鉄 防災・安全ハンドブックでは、地震や火災などが起きた際の駅・車内での対応や安全確保について説明されていますが、今回撤去される一般公衆電話の代替設備を示す発表ではありません。
全国では災害時用公衆電話の整備が進んでいる一方、都営地下鉄駅構内で今後どのように利用客の通信手段を確保するのかは、今回の撤去発表だけでは分からないというのが現状です。
大地震時は「駅を出てすぐ帰宅」すること自体が基本ではない
東京都の帰宅困難者対策も合わせて考える必要があります。
大規模地震の直後に多くの人が一斉に徒歩帰宅を始めると、救急・救助活動の妨げや群集事故につながるおそれがあります。そのため東京都は「むやみに移動を開始しない」ことを基本としています。
2026年1月1日時点で、東京都が確保している一時滞在施設は1,310カ所、受入可能人数533,644人分です。
実際の災害時には施設の被害状況によって開設できない場合もあるため、東京都の帰宅困難者対策ポータルなどで開設情報を確認する必要があります。
災害時の連絡手段についても、スマートフォン、公衆電話、災害用伝言ダイヤル171、web171など、一つの方法だけに依存しないことが重要です。
撤去後、近くの公衆電話はどう探す?
これは東京都交通局自身が案内しています。
駅の公衆電話が撤去された後などに周辺の電話を探したい場合は、NTT東日本の「公衆電話 設置場所検索」を利用できます。
2026年10月2日に確認した検索ページでは、2026年9月15日現在の設置情報を住所、施設名、駅名などから検索できます。
公衆電話の撤去は全国で今後も続くため、記事内に周辺電話の一覧を固定して載せるより、利用する時点でNTT東日本の最新検索サービスを見る方が確実です。
なお、NTT東日本はこの検索情報を「概ねの設置場所」としており、屋内に複数台ある場合に集約表示されることや、施設の営業時間によって利用できない場合があることも案内しています。
東京メトロやJRの公衆電話も全部なくなる?
今回の発表対象は、あくまで東京都交通局が運営する都営地下鉄駅構内の公衆電話です。
東京メトロは別の鉄道事業者であり、JR東日本も今回の東京都交通局の発表対象ではありません。
したがって、今回のニュースから「東京の地下鉄すべてから公衆電話がなくなる」「東京メトロやJRの駅も2028年までに全撤去される」と考えることはできません。
結局、なぜ公衆電話をなくせるのか
ここまで確認すると、答えは単純な「スマホがあるから」ではないことが分かります。
全国的には、公衆電話の平時利用が大幅に減り、2022年には第一種公衆電話の設置基準も緩和されました。一般公衆電話を段階的に減らす一方、災害時には避難所などへ事前設置する災害時用公衆電話を活用する仕組みも広がっています。
つまり、公衆電話という通信インフラそのものが消えるというより、平時に大量配置する電話から、必要な場所・災害時に重点を置く仕組みへ役割が変わっていると見ることができます。
しかし、それはあくまで全国的な制度・通信政策の背景です。
東京都交通局がなぜ都営地下鉄駅構内から最終的に「すべて」撤去すると判断したのか、そして駅の利用者に対する災害時の通信手段を今後どのように考えているのかは、9月29日の発表だけでは明らかになっていません。
ここは、分からない部分を推測で埋めない方が正確です。
まとめ|公衆電話は「不要になって消える」だけではない
都営地下鉄駅構内の公衆電話は、2028年11月までにすべて撤去されます。個々の電話には撤去予定日の2週間前までに案内が掲示されます。
公衆電話はスマートフォンの普及などで平時の利用が大幅に減り、設置基準も緩和され、全国的に削減が続いています。
一方、公衆電話には災害時の一般電話への通話制御を受けないという役割が残っています。そのため、一般公衆電話を減らすのと並行して、避難所などでは災害時用公衆電話の事前設置が進められています。
ただし、この全国的な「役割の再配置」が、そのまま都営地下鉄の全撤去理由だと確認されたわけではありません。
現時点で分かっているのは、都営地下鉄から一般公衆電話がなくなること。まだ分からないのは、なぜ最終的に全撤去を選んだのか、駅構内で災害時の通信を何が補うのかです。
近くの公衆電話が必要になった場合は、最新の設置状況をNTT東日本の検索サービスで確認しておくとよいでしょう。
※本記事は2026年10月2日12時台までに確認できた東京都交通局、NTT東日本、東京都などの公式情報をもとに整理しています。東京都交通局から撤去理由、駅別撤去日程、代替通信設備などの追加発表があった場合は内容を更新します。