
- 『いっき』FC版レビュー|カマの自動照準・竹ヤリ・AC版との違いを徹底検証
- FC版『いっき』はどんなゲーム?
- 集めるのは「旗」ではなく8枚の小判
- 代官を捕まえれば、小判が足りなくてもクリアできる
- 権べの通常武器は竹ヤリではなく、草刈り用のカマ
- 一番近い敵を自動で狙うから、逃げながら攻撃できる
- ただし、自動照準だから狙いたい敵を撃てるとは限らない
- 小判を見つけても、すぐ取りに行かない方がいい
- 竹ヤリを取ると、なぜ逆に戦いにくくなる?
- アーケード版の竹槍には、FC版から消えたメリットがあった
- それでも竹ヤリには高得点という意味が残る
- 腰元に捕まると、しばらく動けない
- 妖怪に取りつかれると、カマを投げられなくなる
- 大根・巻き物・葉っぱは攻略をどう変える?
- 「けむり」を取ると、おにぎりのチャレンジステージへ
- 2人同時プレイでは権べと田吾を操作する
- 「一揆なのに1~2人」は1985年当時から笑われていたのか
- FC版には4種類のマップしかない
- 8文字のSECRET LETTERは当時の説明書に載っていた
- アーケード版から削られたのは、見た目だけではない
- 敵が「突然現れる」のは、出現予兆が削られた影響もある
- 小判レーダーがなくなり、探索も難しくなった
- 8種類のマップが4種類へ減った
- なぜそこまで削られたのか――開発者が語る128Kbit
- FC移植は外部会社へ発注されていた
- もともとは農民ゲームですらなかった
- 農民なのに敵が忍者なのは、飛び道具を使わせたかったから
- 権兵衛と田吾作から「権べ」「田吾」へ
- 「元祖クソゲー」という呼び名をどこまで事実として使える?
- 約80万本という数字は開発者の後年回想
- 音楽は小井洋明氏
- 今遊んでも面白いところ
- 2026年では厳しいところ
- 2026年現在、FC版そのものを遊ぶ方法
- 『アーケードアーカイブス いっき』はFC版ではない
- 最大16人の『いっき団結』は、まったく別のゲーム
- まとめ|FC版『いっき』の問題は、カマではなく「カマを支えていたもの」が減ったこと
『いっき』FC版レビュー|カマの自動照準・竹ヤリ・AC版との違いを徹底検証
敵の忍者が四方から近づいてきても、『いっき』では相手の方向へ向き直って狙う必要がありません。
Aボタンを押すと、権べが持つカマは一番近い敵へ向かって自動的に飛んでいきます。プレイヤーが考えるのは、照準よりも自分の立ち位置です。忍者の手裏剣を避けながら移動し、危険な敵を近づけすぎず、8枚の小判を拾っていく。
1985年11月28日にサンソフトから発売されたファミコン版『いっき』は、江戸時代を題材にした見た目以上に、移動と攻撃方向を切り離した全方向アクションとして見ると仕組みが分かりやすくなります。
ただし、ファミコン版には移植元のアーケード版から削られた要素も少なくありません。
小判の位置を把握するためのレーダーはなくなり、敵が現れる前の予兆も省略。マップは8種類から4種類へ縮小され、竹ヤリはアーケード版にあった防御面のメリットを失いました。
後年「使えない竹ヤリ」「敵が突然現れる」と語られた部分には、ゲームそのものの発想だけではなく、1985年のFC移植で何を残し、何を削ったのかが深く関係しています。
それでも、自動照準のカマで回避へ集中する遊びは残ったのか。
そこから見ていきます。
FC版『いっき』はどんなゲーム?
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | いっき |
| 発売日 | 1985年11月28日 |
| 発売元 | サンソフト |
| 型番 | SS34900 |
| 当時価格 | 4,900円 |
| プレイ人数 | 1~2人 |
| 主人公 | 権べ/田吾 |
| 通常武器 | カマ |
| クリア条件 | 小判8枚を集める、または代官を捕まえる |
| ユニークマップ | 4種類 |
| 原作セーブ | なし |
1人プレイでは権べを操作します。
2人プレイでは1Pが権べ、2Pが田吾を担当し、同じ画面で同時に行動します。
物語は、厳しい年貢の取り立てに耐えかねた農民たちが悪代官へ立ち向かうというもの。ただしゲーム中に大勢の農民軍を指揮するわけではなく、操作するのは権べ、2人プレイなら田吾を加えた二人です。
集めるのは「旗」ではなく8枚の小判
各面の目的は、フィールドに落ちている8枚の小判をすべて集めることです。
敵の全滅ではありません。
忍者を何人倒しても、それだけでは面を終えられません。逆に、危険の少ない敵まで律儀に追いかける必要もありません。
ここが戦い方へ影響します。
小判までの道を塞いでいる忍者なら倒した方が安全ですが、遠くにいる敵へわざわざ近づけば、それだけ手裏剣を受ける危険が増えます。
戦闘そのものではなく、小判を安全に回収するために戦うゲームです。
代官を捕まえれば、小判が足りなくてもクリアできる
通常は小判8枚が必要ですが、例外もあります。
フィールドに現れる代官へ触れることができれば、小判を8枚集めていなくてもその場で面クリアです。
代官は好きなときに呼び出せる攻略手段ではなく、出会えたときに狙える特殊なクリア方法です。
危険な忍者をかわして残りの小判を探し続けるか、画面内の代官へ一気に近づくか。短いチャンスが別の出口になります。
「悪代官を懲らしめに行く」という物語上の目的が、ゲーム上でも例外的なクリア条件になっているわけです。
権べの通常武器は竹ヤリではなく、草刈り用のカマ
権べが最初から持っている武器はカマです。
竹ヤリではありません。
ファミコン原作ではAボタンを押すと、権べが一番近くにいる敵へカマを投げます。Bボタンは通常使用しません。
このカマは、プレイヤーが8方向へ撃ち分ける武器ではありません。
標的選択をゲーム側へ任せています。
一番近い敵を自動で狙うから、逃げながら攻撃できる
自動照準には分かりやすい利点があります。
右へ逃げながら左後方の忍者へ攻撃したい場合でも、わざわざ左へ向き直る必要がありません。忍者が攻撃対象として選ばれる位置にいれば、移動を続けながらカマを投げられます。
開発に携わった竹内昭人氏も、自動照準によって敵を避けながら倒せる流れを狙ったと振り返っています。
実際、これは『いっき』の操作によく合っています。
画面には複数の忍者が入り、手裏剣も飛んでくる。小判を探すために上下左右へ移動し続けなければならない。その状況で照準まで手動にしていたら、要求される操作はかなり増えていたでしょう。
カマをゲーム側へ任せることで、プレイヤーは移動と回避へ集中できます。
ただし、自動照準だから狙いたい敵を撃てるとは限らない
便利な一方、弱点もあります。
標的は「一番近い敵」なので、プレイヤーが危険だと思っている敵を直接指定できません。
前方から手裏剣を投げようとしている忍者より、横にいる別の敵の方が近ければ、そちらへカマが飛ぶ場合があります。
そこで立ち位置が照準の代わりになります。
どの敵へ近づくか。
誰から距離を取るか。
危険な敵をカマの対象にしたいなら、自分と敵の距離関係そのものを調整しなければなりません。
自動照準は「何も考えなくても当たる」仕組みではなく、移動によって攻撃対象まで間接的に操作する仕組みでもあります。
小判を見つけても、すぐ取りに行かない方がいい
目的物が見えたら直行したくなりますが、それが安全とは限りません。
開発者自身が後年FC版を遊んだ際にも、小判を見つけたからと焦って取りに行かず、周囲の敵を先に片付ける攻略を語っています。
これは本作のルールとよく噛み合っています。
小判を取ることがクリア条件だからこそ、その周囲にはプレイヤーが入りたくなる。
敵が近くにいる状態で飛び込めば、拾った直後に手裏剣へ当たるかもしれません。
敵を全滅させる必要はありませんが、欲しい小判の周囲だけ安全にしてから取るという判断には意味があります。
竹ヤリを取ると、なぜ逆に戦いにくくなる?
フィールドには一時的な武器「竹ヤリ」があります。
取ると一定時間、通常のカマではなく竹ヤリで正面を攻撃するようになります。
竹ヤリで倒した敵はカマより高得点です。
これだけ聞けばパワーアップに思えます。
ところが実際には、カマの自動照準を失い、前方近距離しか攻撃できなくなります。
それまで逃げながら後方の敵も処理できていたのに、竹ヤリ中は自分から敵の方向へ向かなければなりません。
しかも射程は短い。
生存だけを考えるなら、通常のカマより扱いにくく感じる場面が多くなります。
アーケード版の竹槍には、FC版から消えたメリットがあった
ここは「変なアイテムをわざと入れた」で終わらない部分です。
アーケード版の竹槍にも、前方近距離しか攻撃できない弱点はありました。
しかし前方から飛んでくる手裏剣に対して防御上のメリットがありました。
短い射程と引き換えに、正面からの飛び道具へ強くなる。
ところがFC版では、この防御能力が削られています。
竹内氏自身も、その結果としてFC版の竹ヤリが「単に使いにくい弱体化ウェポン」になったかもしれないと振り返っています。
アーケード版ではリスクと見返りがあった。
FC版では見返りの一部が消えた。
竹ヤリの評判が悪い理由を考えるなら、この移植差はかなり大きな意味を持ちます。
それでも竹ヤリには高得点という意味が残る
FC版でも完全に意味のないアイテムではありません。
竹ヤリで倒した敵は高得点になります。
安全に小判を8枚集めて面を抜けることだけを考えるなら、取らない方が扱いやすい場合がある。一方、得点を伸ばすなら短い射程で忍者へ近づくリスクを取る余地があります。
クリア優先とスコア優先で価値が変わるアイテムです。
ただ、アーケード版の防御効果まで持っていた方が選択として自然だったことは否定しにくいでしょう。
腰元に捕まると、しばらく動けない
忍者とは違う形で行動を妨害するのが腰元です。
追いつかれて捕まると、一定時間その場から動けなくなります。
腰元そのものに捕まった瞬間にミスになるわけではありません。
危険なのは、身動きできない間にも忍者や手裏剣が存在することです。
そのため、腰元から逃げ切るだけでなく、捕まりそうなら敵の攻撃を受けにくい場所まで誘導しておく方法もあります。
2人プレイでは、捕まった側へもう一人が触れることで助けられます。
ここでは2人同時プレイが、単なる攻撃力2倍ではない協力へつながっています。
妖怪に取りつかれると、カマを投げられなくなる
妖怪は別の能力を奪います。
取りつかれても移動できますが、通常武器のカマを投げられなくなります。
解除するには、お地蔵さんやお稲荷さんなどへ触れる必要があります。
忍者から逃げながら、攻撃できない状態で解除地点まで移動しなければならない。
一撃で残り数を奪う敵とは違い、プレイヤーの主力行動だけを封じる妨害です。
大根・巻き物・葉っぱは攻略をどう変える?
武器以外にもアイテムがあります。
大根
一定時間、移動速度が上がります。
広いマップで小判を探すゲームなので、単なる移動時間短縮だけではありません。
手裏剣から離れる、腰元から距離を取る、小判へ素早く近づくといった場面にも効きます。
巻き物
取ったプレイヤーの残り数が1増えます。
本作では得点を一定値まで稼いだから残り数が増える、という方式ではありません。
残り数を増やしたいなら巻き物そのものを取る必要があります。
葉っぱ
一定時間分身し、忍者や手裏剣に対して無敵になります。
少なくとも原作説明書が保証しているのはこの範囲であり、あらゆる妨害を完全に無効化する万能アイテムと考える必要はありません。
「けむり」を取ると、おにぎりのチャレンジステージへ
「けむり」を取った状態で面をクリアすると、チャレンジステージへ進みます。
ここでは通常の小判集めを離れ、仙人が上から投げるおにぎりを受け止めます。
取った数に応じてボーナス得点が入ります。
本編の攻略に必須ではなく、クリア後の得点遊びです。
フィールドを走り回って忍者を避ける通常面とは操作目的が変わるため、ループ型のゲームに短い区切りを作っています。
2人同時プレイでは権べと田吾を操作する
2人プレイでは1Pが権べ、2Pが田吾を担当し、同じ画面内で同時に行動します。
敵を片方が引き受け、もう片方が小判を集める。
腰元に捕まった相手を助ける。
妖怪に取りつかれた仲間が解除地点へ向かう間に、もう一人が敵を処理する。
こうした役割分担ができます。
一方で、完全に好きな方向へ分かれて探索できるわけではありません。
画面スクロールを共有しているため、一方だけが先へ進むと、家や塀など地形との位置関係によって相手が一時的に画面外へ押し出されることもあります。
二人なら無条件に簡単になるというより、同じ一画面をどう共有するかという別の調整が増えるプレイです。
「一揆なのに1~2人」は1985年当時から笑われていたのか
現在のSUNSOFTは、この点を自らネタにしています。
『いっき団結』では「一揆は1人や2人でするものではない」といじられた作品として紹介し、最大16人対応へ拡大しました。
ただし、それは現在から振り返ったセルフパロディです。
1985年の発売直後から全国的に同じツッコミが定着していた、とまで言える資料ではありません。
当時の開発者も、ユーザーの反応を知る手段はアンケートハガキ程度だったと振り返っています。
後世の有名なイメージを、そのまま1985年の空気へ戻す必要はないでしょう。
FC版には4種類のマップしかない
ファミコン版のマップは、
- 田園地帯
- お墓・池
- 代官屋敷の塀
- 代官屋敷の内部
の4種類です。
4面を順番にクリアすると、再び田園地帯へ戻ります。
ただし完全に同じ難度で繰り返すわけではありません。
4面ごとに敵の数が増え、移動速度も上がっていきます。
そのため「全8種類のステージ」と説明するのは不正確です。
最初の8面クリアには当時のプレゼント企画で使われたSECRET LETTERという別の意味がありますが、独立した地形が8種類用意されているわけではありません。
8文字のSECRET LETTERは当時の説明書に載っていた
面をクリアするとSECRET LETTERが1文字表示され、8文字を集めて逆順にすると一つの言葉になります。
これは後世の解析で発見された隠し要素ではありません。
原作説明書には、答えをアンケートハガキで送るプレゼント企画まで掲載されていました。
レビュー本体では攻略答えまで載せる必要はありませんが、4マップを繰り返すゲームに「まず8面まで進む」という当時の小さな目標が用意されていたことは分かります。
アーケード版から削られたのは、見た目だけではない
ファミコン版『いっき』の難しさを考えるうえで、アーケード版との違いはかなり重要です。
開発者が挙げている主な削減は、
- 敵が現れる前の予兆
- 小判の位置を把握しやすくするレーダー
- 竹槍の正面防御
- 8種類あったマップのうち4種類
などです。
これは単にグラフィックが粗くなった、キャラクター数が減ったという話ではありません。
次に何が起きるかを知る情報そのものが減っています。
敵が「突然現れる」のは、出現予兆が削られた影響もある
アーケード版では敵が出現する前にモーションがありました。
プレイヤーには、「ここから敵が来る」と認識して動く余裕がありました。
FC版では、その予兆が容量の都合で削られています。
そのため、画面へ現れた忍者へ反応する時間が短くなりました。
「敵の出現位置が理不尽」という印象には、単純な敵数だけでなく、危険を予告していた情報が移植時に失われたことも関係しています。
小判レーダーがなくなり、探索も難しくなった
アーケード版には、小判の位置を把握する助けになるレーダーがありました。
FC版ではこれも削除されています。
クリア条件は8枚の小判なのに、その目的物を探すための情報が減ったことになります。
しかも制限時間はありません。
急いで走り回る必要はないため、落ち着いて敵を処理しながら探すことはできます。
一方、探している時間が長くなれば、それだけ新たな敵へ接触する機会も増えます。
「どこに小判があるのか分からない」と移動している最中に攻撃される場面が増えるため、レーダー削除は探索難度へ直接響きます。
8種類のマップが4種類へ減った
アーケード版には8種類のマップがありました。
FC版は4種類です。
ゲームを長く続けるほど、同じ地形を敵数や速度違いで繰り返す比重が高くなります。
難度は上がっていきますが、「次はどんな場所だろう」という地形そのものの変化は早い段階で尽きます。
短時間で遊ぶなら大きな問題ではありません。
ただ、ループを重ねて遊ぶゲームとして見ると、現在では反復感が出やすい部分です。
なぜそこまで削られたのか――開発者が語る128Kbit
竹内氏は、FC版について128Kbit、16KBのROMだったと振り返っています。
さらに当時は256Kbit ROMの価格が高く、利益を考えて128Kbitを採用したとも説明しています。
「ファミコンだから性能的に無理だった」で終わる話ではありません。
より大きなROMを使う選択肢はあったものの、商品コストとの兼ね合いから小さい容量へ収める必要があった。
その結果、何を残すかという取捨選択が発生しました。
FC移植は外部会社へ発注されていた
アーケード版をそのまま開発したスタッフだけでFC版を作ったわけでもありません。
開発関係者によれば、FCへの移植は外部会社へ発注されました。
外注先については「有名で腕のいい会社」と語られていますが、企業名までは明かされていません。
そのため、後年のデータベースから特定企業名を拾って断定することはしません。
開発者側も、16KBへ収めるために外注先が限界まで削っていたことは理解していたと振り返っています。
もともとは農民ゲームですらなかった
『いっき』の初期企画は、兵士を主人公にした戦場ゲームでした。
しかもプレイヤー一人が二体のキャラクターを切り替え、一方が援護しながらもう一方を前進させるという、最終作よりかなり複雑な構想です。
外部へ見せた際に操作が複雑すぎると指摘され、開発側自身も問題を認識。
そこから1キャラクター操作へ整理されました。
さらに兵士では普通すぎるとして主人公を農民へ変更した結果、『いっき』の形へ近づいていきます。
開発コードネームは「オリーブ」でした。
農民なのに敵が忍者なのは、飛び道具を使わせたかったから
忍者を敵へ置いた理由も、歴史考証から生まれたものではありません。
開発者によれば、ゲーム上で敵にも飛び道具を使わせたかったため、手裏剣を投げられる忍者が採用されました。
農民一揆を史実どおり再現しようとして忍者を配置したわけではない。
先にアクションゲームとして必要な攻撃があり、それに合うキャラクターを選んでいます。
この作品の歴史設定が妙に自由なのは、ゲーム側の都合を優先して組み立てた結果でもあります。
権兵衛と田吾作から「権べ」「田吾」へ
主人公名も途中で変わりました。
当初は「権兵衛」「田吾作」だったものの、一般的によく使われる名前で商標上の問題が起こるのではないかと開発側が心配し、「権べ」「田吾」へ変更したと説明されています。
実際に商標上の問題が存在したと断定する話ではありません。
開発側がそう懸念して変更した、という経緯です。
「元祖クソゲー」という呼び名をどこまで事実として使える?
2020年代のSUNSOFT自身は、もう隠していません。
『いっき団結』の公式サイトでは『いっき』を「伝説のクソゲー」と呼び、2026年の公式セール告知でも「元祖『クソゲー』」という表現を使っています。
現在の公式セルフブランディングとしては事実です。
ただし、
「1985年の発売直後から一般にクソゲーと呼ばれていた」
「『いっき』によってクソゲーという日本語が誕生した」
という話は別です。
みうらじゅん氏と『いっき』が「クソゲー」という言葉の歴史で頻繁に結び付けられてきたのは確かですが、その言葉の歴史的初出まで確実に固定できる資料とは分けるべきでしょう。
ここでは「元祖クソゲー」を1985年当時の正式な評価語として扱いません。
同じように、後世の有名な一言がゲーム本体を覆いやすい作品としては、FC版『スペランカー』にも似たところがあります。ただし『スペランカー』が精密操作と落下判定の問題なら、『いっき』は自動照準と移植時の削減が中心で、難しさの性質はかなり違います。
約80万本という数字は開発者の後年回想
竹内氏は、FC版について「80万本くらい」売れたと振り返っています。
したがって約80万本という規模感は開発者証言として扱えます。
ただし、後年の記憶による数字を精密な実売統計のように扱う必要はありません。
そして、売れた本数と現在ゲームとしておもしろいかどうかも別問題です。
音楽は小井洋明氏
『いっき』の音楽を担当したのは小井洋明氏です。
2026年のインタビューでも小井氏本人が『いっき』『ルート16ターボ』の作曲を担当したと振り返り、『いっき』ではコミカルな曲を求められた難しさについて語っています。
FC版では、短いループの明るい曲が、忍者をかわしながら小判を探すプレイを軽快に進めます。
ゲーム内容を「クソゲーらしく脱力した曲」といった後付けの評価へ寄せる必要はありません。
むしろ敵出現の情報が少なく、常に周囲を見なければならないゲームで、BGMは重さを付けず一定のテンポを保っています。
今遊んでも面白いところ
一番残っているのは、自動照準と移動の組み合わせです。
プレイヤーが狙う方向を考えなくてよいため、忍者と手裏剣を避けながら攻撃できます。
しかし自動だから万能ではなく、狙いたい相手を直接選べません。
そのため誰へ近づき、誰から離れるかがそのまま照準操作になります。
また、敵全滅が目的ではないのも効いています。
必要なのは小判8枚。
無視できる敵まで追う必要はなく、小判周辺だけ安全を作って回収する選択もできます。
この二つが合わさることで、
どこへ移動するか
その位置から誰が最も近い敵になるか
今は戦うべきか、小判へ向かうべきか
という判断が生まれます。
ボタン自体は少なくても、移動にはちゃんと意味があります。
2026年では厳しいところ
一方、FC移植で失われた情報は現在遊ぶとかなり気になります。
敵の出現予兆がないため、忍者が唐突に近くへ現れる。
小判レーダーがないので、目的物を探して広いマップを移動する時間が増える。
竹ヤリはアーケード版の防御メリットを失い、通常のカマより扱いにくくなった。
ユニークマップも4種類しかない。
これらは「昔のゲームだから」で片付ける必要のない弱点です。
アーケード版には存在した遊びやすさが、FC版では削られています。
それでもカマの自動照準自体は機能しており、2人協力や妨害キャラクターも残っています。
だからFC版は「全部失敗した移植」でもなければ、「実は欠点のない良作」でもありません。
芯の操作は残っているのに、それを支えていた情報やバランスの一部が抜け落ちた移植と見るのが一番近いでしょう。
2026年現在、FC版そのものを遊ぶ方法
1985年FC版は、2026年8月現在Nintendo Classicsには収録されていません。
一方、SUNSOFTの現行レトロゲーム一覧では、FC版『いっき』の現行配信先としてプロジェクトEGGが案内されています。
プロジェクトEGGではWindows向けに1985年のコンソール版『いっき』が配信され、現在の掲載価格は550円。利用にはプロジェクトEGGのサービス登録も必要です。
中古カートリッジ以外にも、FC版そのものへ正規に触れられる現行手段が残っています。
『アーケードアーカイブス いっき』はFC版ではない
Nintendo SwitchとPlayStation 4では『アーケードアーカイブス いっき』が販売されています。
こちらは1985年アーケード版です。
今回レビューしたFC版ではありません。
ただ、現在FC版を遊んだあとに比較するには非常におもしろい存在です。
小判レーダーや敵出現時の表現、竹槍、マップ構成など、FC移植で何が変わったのかを実際に確認できます。
「Switchで『いっき』が遊べるからFC版も遊べる」という意味ではありません。
最大16人の『いっき団結』は、まったく別のゲーム
現行作品『いっき団結』はNintendo SwitchとSteamで発売されています。
最大16人対応の「団結ローグライクアクション」で、初代をそのまま現代化した移植やリメイクではありません。
攻撃や能力は自動発動し、基本操作は移動中心。
この点だけを見ると、1985年版で「敵への照準をゲーム側へ任せ、プレイヤーは移動へ集中する」仕組みとの遠い共通点も感じられます。
ただしゲーム構造、人数、成長、オンライン協力などは大きく違います。
「1人や2人でするものではない」と後年いじられたシリーズが最大16人へ広がったという、シリーズ自身によるセルフパロディとして見るくらいがちょうどいいでしょう。
まとめ|FC版『いっき』の問題は、カマではなく「カマを支えていたもの」が減ったこと
FC版『いっき』で集めるのは旗ではありません。
8枚の小判です。
権べの通常武器も竹ヤリではなくカマです。
そのカマは最も近い敵へ自動的に向かうため、プレイヤーは忍者を狙う操作より、手裏剣を避けてどこへ移動するかへ集中できます。
ここは現在でも十分に成立しています。
誰を最も近い敵にするのか。
小判へ飛び込む前に周囲を片付けるのか。
戦わずに逃げるのか。
シンプルな操作の中に、位置取りの判断があります。
一方、FC版にはアーケード版から明確に削られた部分があります。
敵出現の予兆が消えた。
小判レーダーもなくなった。
竹槍の防御メリットも消えた。
8種類のマップは4種類へ減った。
この削減は、見た目だけでなく遊びやすさへ直接響いています。
だから「竹ヤリが使いにくいのも笑えるから正解」と持ち上げる必要はありません。
実際に移植でバランスが崩れたところがあります。
それでも、自動照準で敵への攻撃を半分ゲーム側へ預け、プレイヤー自身は回避と小判探索へ集中する発想までは失われませんでした。
後世の「元祖クソゲー」という呼び名から離れて遊んでみると、FC版『いっき』の評価はもう少し複雑です。
操作の芯はおもしろい。けれど、その芯を助けていた情報や選択肢が移植で削られたため、必要以上に厳しくなった場面もある。
1985年FC版を現在評価するなら、その両方を書いておくべきゲームです。