レトロゲーム系

レトロゲーム黎明録|第29回 いっき(FC/1985)

📘 作品概要・基本情報

『いっき』は、1985年11月にサンソフト(サン電子)からファミリーコンピュータ用ソフトとして発売されたアクションゲームです。ジャンルは縦スクロール型アクションシューティングに分類され、価格は4,900円。パッケージには、竹やりを持った百姓が敵兵と対峙する印象的なイラストが描かれています。

本作は、同年にアーケード版として登場した作品の家庭用移植版。プレイヤーは農民キャラクターを操作し、江戸時代を思わせる田園や城下町を舞台に、旗を集めて一揆を成功させることが目的です。操作はシンプルで、移動・攻撃・アイテム取得のみですが、敵の配置や弾幕の多さによって独特の緊張感が生まれます。

最大の特徴は、当時としては珍しい“農民一揆”という題材。敵として侍や忍者、火縄銃兵が登場するなど、時代劇的な世界観が全面に押し出されています。そのユニークさと高難易度から、発売当時から話題を呼び、のちに「元祖クソゲー」論争の常連として名前が挙がるようになりました。


📅 発売当時の時代背景

1985年は、ファミリーコンピュータが発売から約2年半を迎え、ソフトラインナップが急速に拡大していた時期です。前年に登場した『ゼビウス』や『パックマン』などのアーケード移植作が大ヒットし、各メーカーは自社の人気アーケードゲームを続々と家庭用に移植していました。

この年は任天堂の『スーパーマリオブラザーズ』が社会現象を巻き起こし、アクションゲームの基準を一気に引き上げたタイミングでもあります。その中でサンソフトは、アーケード市場で一定の知名度を得ていた『いっき』を家庭用に移植。題材には江戸時代の農民反乱という珍しいテーマを選び、他社の宇宙やファンタジー系タイトルとは一線を画そうとしました。

また、この時期は1人プレイ専用ゲームが多い中、『いっき』は2人同時プレイに対応。アーケードの協力プレイ感覚を家庭で楽しめる点は魅力的でしたが、一方でゲーム性や難易度はかなりアーケード寄り。結果として、当時の家庭用ゲームプレイヤーには「硬派すぎる」「難しすぎる」という声も多く上がりました。

こうした背景の中、『いっき』は王道ヒット作とは異なる、異彩を放つ存在として登場したのです。

🧱 ステージ構造とバランス

『いっき』のステージは、上下左右にスクロール可能なフィールド構造になっており、プレイヤーは田畑や川、城下町といった和風の景観を移動しながら8本の旗を集めるとステージクリアとなります。マップは一本道ではなく広がりがあり、探索ルートを自由に選べるのが特徴です。

ただしスクロールには独特の仕様があり、プレイヤーが画面端ぎりぎりまで近づかないと画面が切り替わらないため、視界が非常に狭くなります。このため、敵が突然画面内に現れることが多く、反応が遅れると一瞬で囲まれてしまう危険性があります。

登場する敵は侍、忍者、火縄銃兵など多彩で、四方八方から出現します。攻撃手段は初期装備の竹やり(投げて攻撃)や、途中で拾える鎌・おにぎりなど。竹やりは直線にしか飛ばず、射程も短めなため、敵の動きを予測しつつ位置取りを工夫する必要があります。

難易度は全体的に高く、1人プレイでは敵の物量に押し負けやすい設計ですが、2人同時プレイでは画面制圧力が増し、旗集めも分担できるため攻略が一気に楽になります。アーケードゲーム由来の高密度な敵配置と視界制限が、独特の緊張感を生み出しています。


“一揆”という珍しいテーマ

『いっき』の最大の個性は、当時の家庭用ゲームとしては極めて珍しい「農民一揆」を題材にしている点です。舞台は江戸時代風の日本。プレイヤーは百姓を操作し、旗を集めて反乱を成功させるという設定になっています。

当時のゲーム業界では、宇宙やファンタジー、戦争など海外市場にも通じやすいテーマが主流でした。その中で、時代劇的な背景と日本史の一幕を直接モチーフにした『いっき』は、強烈な異彩を放っていました。登場する敵も侍や忍者、火縄銃兵、鎧武者と、まさに時代劇の悪役勢揃い。背景には田園風景や城下町、川辺などが描かれ、全体的に和のテイストが貫かれています。

この題材選びは開発元サンソフトの遊び心でもあり、広告でも「一人でも二人でも一揆!」とコミカルにアピール。しかしゲーム内容はかなりハードで、農民が次々と倒れていく様子に、当時の子どもたちは笑いながらも苦戦したといいます。

結果として、『いっき』はゲーム史の中で「テーマ設定が尖った作品」として長く記憶されることになり、後年の“元祖クソゲー”論争やレトロゲーム特集でも常連となりました。

メディア評価と当時の反響

当時の評価と“クソゲー”の称号

『いっき』は、発表直後から「なんだこれは…?」という驚きとともに、プレイヤーたちの間で語られるようになりました。そんな中、レトロゲーム界隈では「クソゲー(kusoge)」という言葉の起源として扱われることもあります。そのきっかけとなったのは、1980年代に雑誌記事でこのゲームを評したイラストレーターの文。「バカゲーの元祖」として広まった説もあるようです Bad Game Hall of Fame+12PC Gamer+12マグミクス+12

ネット世代からのリアクション

ファミコン世代以降のライターも、初めて『いっき』を体験すると、その「脱力するほどのバカさ」「声が出そうになるほどのユルさ」に驚いています。例えばある記事では、

“満喫した『脱力感』『声出そう’”
そんな感想がリアルに飛び出したそうです マグミクス

現代の再評価とカルト的人気

最近のレビューでは、『いっき』には根強い“中毒性”があるとして肯定的な声も。
「小判集めには戦略と記憶力が必要だし、BGMも頭に離れない」「2人で遊ぶと邪魔し合いながら笑える」「クリアしてもぐるぐる戻るループが妙にクセになる」など、レトロゲームの魅力が詰まっているという意見も yamamochi.vivian.jp+10ココのおすすめ最強攻略法+10ASCII+10

「愛嬌あるバカゲー」としての魅力

レトロ系レビューでも、『いっき』は単なる“理不尽ゲーム”ではなく、「愛嬌と味わい」があるバカゲーの代表として評価されています。

“‘ユーモアのセンスがいい塩梅で、バカゲーの代表として伝説に登り詰めた’”
という指摘もあるほどです ASCII


『いっき』は、当時は「わけがわからない」「難しすぎて笑える」といった声で話題になり、今も「愛されるクソゲー」として語り継がれています。
その不条理さ、ユルさ、そして「笑い転げながら遊び続ける奇妙な魅力」は、他に類を見ないカルト的存在です。
今この記事を読んでいるあなたにも、ぜひその“変な面白さ”を味わってほしい。2人でプレイすれば、怒りすら笑いに変わる…かもしれません!

🎯 その後のゲームに与えた影響

『いっき』は、販売本数やメジャーな知名度では大作に及ばないものの、その独特すぎる存在感が後年のゲーム文化や開発者に少なからず影響を与えました。

まず、題材選びの自由さという面で大きな功績があります。80年代中盤の家庭用ゲームは、宇宙戦争・ファンタジー冒険・スポーツといった分かりやすいテーマが主流でした。そんな中で江戸時代の農民一揆を真正面から描いた本作は、「ゲーム題材はもっと自由でいい」という風潮を後押ししました。その影響は、のちの『戦国TURB』や『御神楽少女探偵団』など、和風かつニッチなテーマを扱う作品にも通じます。

また、「シリアスな題材をコミカルに表現する」スタイルは、90年代以降のバカゲー文化にも影響を与えました。『GO!GO!ACKMAN』や『ボボボーボ・ボーボボ』のゲーム化など、真面目な戦いや設定にギャグ要素を絡める構成は、『いっき』の先例を思わせます。

さらに、2人同時プレイ時の“協力しながら邪魔し合う”体験は、後年の『くにおくん』シリーズや『戦国無双 Chronicle』のマルチプレイにも似た笑いの要素を生み、パーティーゲーム的な方向性にも影響を与えています。

結果として、『いっき』は“愛される異端児”として、ゲームの題材や表現方法の幅を広げ、カルト的な人気と共に後世の作品に小さくも確かな足跡を残したのです。

🎯 総まとめ・現代に残る異色の輝き

『いっき』は、ファミコン全盛期に現れた異端のアクションゲームでした。江戸時代の農民一揆という、ゲームらしからぬ題材。視界の狭さと容赦ない敵配置が生み出す理不尽さ。そして、なぜか笑いがこみ上げてくる脱力感。

当時の子どもたちは、テレビの前で竹やりを構え、迫り来る侍や忍者に必死で立ち向かいました。旗を集めるたびに歓声が上がり、やられるたびに笑いがこぼれる――そんな、悔しさと楽しさが入り混じった時間を共有した人も多いはずです。

大作のように豪華な演出も、壮大な物語もない。けれど『いっき』には、確かにプレイヤーの記憶に残る“何か”がありました。それは、友達と肩を並べて笑い合う瞬間だったり、何度やられても再挑戦してしまう不思議な魅力だったりします。

発売から何十年経った今も、『いっき』は「愛されるクソゲー」として語り継がれています。時代や評価は変わっても、そのユニークさと笑いの力は、ずっと色あせることはありません。

実は『いっき』って、海外では“Farmer’s Rebellion”なんて直訳されて紹介されたこともあったんだよ!

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