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100万円以下の新車は本当に消えた?ミライース最廉価グレード廃止・軽自動車が高くなった理由

100万円以下の新車は本当に消えた?ミライース最廉価グレード廃止・軽自動車が高くなった理由

「軽自動車なら、100万円以下でも新車が買える」。

そんな価格感覚を最後まで残していた一台が、ダイハツ「ミラ イース」でした。

ところが2026年8月27日の一部改良で、99万2,200円だった最廉価のB“SA III”がラインアップから外れ、新たな最低価格はL・2WDの109万6,700円(税込)になりました。

これによって、国内メーカーの現行新車乗用車から、メーカー希望小売価格が税込100万円未満のモデルが姿を消したことになります。

ただし、「99万円だった同じミラ イースが、そのまま109万円へ10万円以上値上げされた」と考えると少し違います。

99万2,200円だったBそのものが廃止され、ひとつ上だったLが新しい入口グレードになったためです。同じL・2WDで比べると、改良前102万5,200円から改良後109万6,700円へ、価格差は7万1,500円です。

それでも、ひとつの節目であることは間違いありません。

ミラ イースが初めて登場した2011年、最も安いD・2WDは79万5,000円でした。

15年前には80万円を切っていた「低価格軽」が、なぜ今では109万6,700円からになったのでしょうか。

ミラ イースの価格を追っていくと、単なる一車種の値上げではなく、日本の軽自動車そのものがこの15年間で大きく変わったことが見えてきます。

100万円以下の新車は本当に消えた?

今回の「100万円以下の新車が消えた」という話には、最初に範囲を決めておく必要があります。

対象になるのは、日本で販売される現行の新車乗用車に設定されたメーカー希望小売価格・消費税込みです。

中古車や届出済未使用車、販売店に残っている旧型在庫、独自の値引き、補助金を使ったあとの実質負担額まで含めて「100万円ではもう車を買えない」という意味ではありません。

また、109万6,700円は乗り出し価格でもありません。自賠責保険や税金、リサイクル料金、登録・届出に伴う費用、オプションなどは別途必要になります。

それでも、カタログを見れば100万円札10枚以内に収まる新車乗用車があった時代から、ひとつの境界を越えたことになります。

しかも、この100万円未満という価格帯に最後まで残っていたのがミラ イースでした。

99万2,200円のBグレードが廃止|最低価格は109万6,700円に

改良前のミラ イースには、B“SA III”という低価格グレードがありました。

2WDのメーカー希望小売価格は99万2,200円。その上にL“SA III”の102万5,200円、X“SA III”の117万9,200円などが設定されていました。

2026年8月27日の一部改良ではグレード体系が整理され、L、X、新設定のX“Limited”という構成になっています。

2WDで比べると、次のように変わりました。

グレード改良前改良後
B992,200円廃止
L1,025,200円1,096,700円
X1,179,200円1,256,200円
X“Limited”1,380,500円

旧最低価格と新最低価格だけを比べれば、

99万2,200円 → 109万6,700円

なので、差額は10万4,500円です。

ただ、そのうち3万3,000円は「最廉価だったBから、もともと一段上だったLへ入口グレードが変わった」ことによって生じています。

同じL・2WDなら、

102万5,200円 → 109万6,700円

で、上昇幅は7万1,500円です。

今回の変化は、単純な10万円値上げではなく、価格改定とグレード整理が同時に行われたと見るのが分かりやすいでしょう。

初代ミラ イースは79万5,000円だった

ミラ イースが登場したのは2011年9月20日です。

当時ダイハツが掲げたのが「第3のエコカー」という考え方でした。

ハイブリッドのような高価な仕組みに頼るのではなく、エンジンやCVTの効率向上、軽量化、アイドリングストップ、省資源化などを積み重ね、低燃費と低価格を両立する。その象徴として設定されたのが79万5,000円という価格です。

2011年の2WDには、

グレードメーカー希望小売価格
D795,000円
L895,000円
X995,000円
G1,120,000円

という4グレードがあり、D、L、Xの3種類が100万円未満でした。

現在では「100万円未満が一台もない」という話をしていますが、初代登場時には100万円未満だけで3グレードを選べたわけです。

2017年の2代目でも84万2,400円から買えた

2017年5月9日に登場した2代目でも、低価格路線は維持されました。

最廉価のB・2WDは84万2,400円

安全装備「スマートアシストIII」を備えないBとLに加えて、安全装備付きのB“SA III”も90万7,200円、L“SA III”も93万9,600円だったため、2WDだけでも4グレードが100万円未満に収まっていました。

グレード・2WD2017年発売時価格
B842,400円
L874,800円
B“SA III”907,200円
L“SA III”939,600円
X“SA III”1,080,000円
G“SA III”1,209,600円

2011年には79万5,000円。

2017年でも84万2,400円。

そして2026年の改良直前まで99万2,200円。

ミラ イースは15年近くにわたり、「100万円を切る新車」を守り続けてきたことになります。

79万5,000円から109万6,700円へ|15年間の価格推移

最廉価グレードだけを並べると、変化がよく分かります。

時期最廉価グレードメーカー希望小売価格
2011年D・2WD795,000円
2017年B・2WD842,400円
2026年改良前B“SA III”・2WD992,200円
2026年8月27日~L・2WD1,096,700円

2011年から2026年までの差は30万1,700円。税込価格だけを比べれば、約38%上昇しています。

ただし、これは同じ製品を15年間そのまま販売して30万円値上げしたという話ではありません。

初代と現在のミラ イースでは、車体設計もエンジンも安全装備も違います。自動車に求められる法規も変わりました。

さらに2011年の消費税率は5%で、現在は10%です。

この表から見えてくるのは「ミラ イースの原価が38%上がった」ということではなく、日本を代表する低価格軽乗用車の入口価格が15年間でどこまで上がったかという変化です。

そして、それはミラ イースだけに起きたことでもありません。

軽自動車の平均価格は10年で約46万円上昇

軽自動車全体でも価格は大きく上がっています。

日本自動車会議所が総務省の小売物価統計調査をもとにまとめたデータでは、軽乗用車と軽商用車を合わせた2025年度の平均価格は177万8,336円

2016年度と比べると34.8%、金額では約46万円上昇しました。

一方、同じ期間の平均賃金の伸びは12%とされており、車の価格上昇は家計の収入増加を上回っています。

そして2026年6月の時点で、メーカー希望小売価格が税込100万円を下回る軽乗用車として残っていたのはミラ イースだけでした。

つまり今回、軽自動車全体が突然100万円を超えたわけではありません。

すでに高価格化が進んでいた軽自動車市場で、最後まで100万円未満に残っていたミラ イースが境界線を越えた。

こちらの方が実態に近いでしょう。

軽自動車はなぜ高くなった?

では、軽自動車はなぜここまで高くなったのでしょうか。

一つの理由だけで説明することはできません。

安全装備の高度化、電子制御の増加、原材料や部品価格の上昇、快適装備の充実。そして「軽自動車に何を求めるか」というユーザー側の変化も重なっています。

安全装備が大幅に増えた

現在の軽自動車で大きく変わったものの一つが安全装備です。

衝突被害軽減ブレーキ、誤発進抑制、車線逸脱警報など、かつては付いていない車も珍しくなかった機能が広く普及しました。

国土交通省は衝突被害軽減ブレーキについて、国産の新型乗用車では2021年11月から、継続生産車では2025年12月から段階的に義務化しています。

こうした機能には、カメラやセンサーだけでなく、それらから得た情報を処理するECUやブレーキ制御なども必要です。

安全性能が高くなるほど、昔の「走るための最低限の軽自動車」より車の中身は複雑になります。

原材料だけでなく自動車部品も高くなった

近年は鉄や樹脂などの原材料だけでなく、自動車を構成する部品そのものにも価格上昇が起きています。

経済産業省は乗用車価格が上昇する背景として、原材料価格や原油価格、円安に加えて、自動変速装置や電子式ブレーキ制御装置などの価格上昇を挙げています。

さらに、安全運転機能の高度化によって半導体や電子制御ユニットの重要性も高まりました。

もちろん、今回のミラ イースLが7万1,500円上がったうち、何円が原材料で、何円が安全装備なのかという内訳は公表されていません。

それでも、低価格車を取り巻く製造環境そのものが15年前と同じではないことは確かです。

食品や日用品、家電、タイヤなども含めた2026年の価格上昇については、つぶログの2026年値上げ一覧でもまとめています。

軽自動車が「最低限の足」ではなくなった

もう一つ大きいのが、軽自動車の商品そのものが変わったことです。

現在では、スライドドア、スマートキー、シートヒーター、大型ディスプレイ、各種運転支援、ハイブリッドなどを備える軽自動車も珍しくありません。

N-BOX、スペーシア、タントなど、家族のメインカーとして使われることを想定したモデルも増えました。

日本自動車会議所も、現在の軽自動車について、単なる「生活の足」にとどまらず、登録車に引けを取らない安全・快適装備によってファーストカー需要を取り込んでいるとしています。

軽自動車だから簡素で安ければいい、という市場ではなくなったのです。

車体サイズや排気量は軽規格のままでも、求められる中身は15年前より大きく変わっています。

今回のミラ イースも「値上げだけ」ではない

2026年8月27日の改良では、価格だけでなく車そのものにも手が入っています。

最新のエンジンとECUを採用し、2WDのWLTCモード燃費は従来の25.0km/Lから27.0km/Lへ向上しました。

ダイハツによると従来比で約8%の改善で、4WDについても約5%向上しています。

最高出力と最大トルクも引き上げられました。

安全面では最新の「スマートアシスト」を採用。

新たに路側逸脱警報とふらつき警報が加わり、衝突警報・衝突回避支援ブレーキでは横断自転車、交差点を右折する際の対向車、右左折時の横断歩行者などへ検知対象を広げています。

夜間歩行者にも対応し、前後の誤発進抑制にはブレーキ制御が追加されました。

つまり、新しいミラ イースは「昨日まで99万円だったものを何も変えず109万円にした車」ではありません。

グレード体系、エンジン、燃費、安全性能をまとめて見直したうえで、入口価格が109万6,700円になっています。

今いちばん安い新車乗用車は何?

100万円未満がなくなったあと、今度は「では一番安い新車は何なのか」が気になります。

ここは生産終了車を含めるかどうかで答えが少し変わります。

SUBARUのプレオ プラスF・2WDは、メーカーサイトに103万6,200円で掲載されています。

ただしプレオ プラスはすでに生産を終了しており、現在は販売店に残る在庫のみの対応です。

一方、現在の通常ラインアップを見ると、ミラ イースL・2WDと、そのOEM車であるトヨタ「ピクシス エポック」L・2WDが、ともに109万6,700円

スズキ「アルト」は114万2,900円からとなっています。

車種最低価格状況
SUBARU プレオ プラス F・2WD1,036,200円生産終了・在庫対応のみ
ダイハツ ミラ イース L・2WD1,096,700円現行
トヨタ ピクシス エポック L・2WD1,096,700円現行
スズキ アルト1,142,900円~現行

在庫車まで含めればプレオ プラスがさらに安く残っていますが、それでも税込100万円は超えています。

継続的に供給される通常ラインアップでは、ミラ イースとピクシス エポックが現在も国内最安クラスの新車乗用車です。

「軽トラなら100万円以下」はどう?

「乗用車がなくても、軽トラックならまだ100万円以下があるのでは?」と思う人もいるかもしれません。

しかし代表的な軽トラックも、すでに100万円を超えています。

トヨタ「ピクシス トラック」は109万4,500円から、スズキ「キャリイ」も117万2,600円からです。

もちろん、特殊用途車や販売店ごとの在庫・値引きまで含め、国内に存在するすべての四輪車を一括して語る話ではありません。

今回もっとも分かりやすい節目は、現行の新車乗用車から「メーカー希望小売価格・税込100万円未満」という価格帯がなくなったことにあります。

100万円以下の新車はもう出てこない?

これから先も永久に100万円以下の新車が登場しないとは限りません。

新しい低価格車が企画される可能性もありますし、メーカーの商品戦略や価格設定が変わることもあります。

ただ、安全基準が高まり、電子制御が増え、部品や原材料の価格も上がった現在、15年前と同じ発想で80万円台の新車を作るハードルは高くなっています。

一方で、ミラ イース自身も低価格路線を捨てたわけではありません。

ダイハツは今回の改良後も、生活に寄り添う「良品廉価」な商品を提供していく姿勢を示しています。

109万6,700円になっても、国内の新車乗用車として見れば依然として最安クラスです。

「軽自動車=安い」はもう古い?

車両価格だけを見れば、「軽自動車ならとにかく安い」というイメージは以前ほど当てはまらなくなりました。

ただし、軽自動車の経済性は購入価格だけで決まるものでもありません。

軽自動車税、車体の小ささ、取り回し、燃費など、維持するうえでのメリットは現在もあります。

高級・高機能な軽自動車が増えた一方で、ミラ イースのように価格を抑えることを重視するモデルも残っています。

変わったのは「軽=100万円以下」という分かりやすい基準です。

まとめ|「100万円以下の軽」が一つの節目を迎えた

2011年、初代ミラ イースは79万5,000円から登場しました。

2017年の2代目でも84万2,400円から。

2026年の改良直前まで、B“SA III”は99万2,200円で100万円未満を守っていました。

そして2026年8月27日、そのBがラインアップから外れ、新たな入口価格はL・2WDの109万6,700円になりました。

15年間で増えたのは価格だけではありません。

衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制をはじめとする安全装備が普及し、車にはカメラやセンサー、電子制御が増えました。原材料や部品を取り巻くコストも上がり、軽自動車にも登録車に近い快適性が求められるようになっています。

軽自動車全体の平均価格が10年間で約46万円上昇する中、ミラ イースはむしろ最後まで100万円未満を維持していた存在でした。

だから今回の109万6,700円は、単なる「約10万円の値上げ」以上に象徴的です。

79万5,000円から始まったミラ イースが、15年後についに100万円の境界を越えた。

それは一車種の価格改定であると同時に、日本で長く続いてきた「新車の軽なら100万円以下でも買える」時代が、一つの節目を迎えた出来事でもあります。

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