
「原作の空気感、そのままに――あなたも特車二課の物語へ参戦!」
『機動警察パトレイバー』といえば、80年代後半から90年代にかけて漫画・OVA・劇場版・TVアニメと幅広く展開し、リアルな警察ドラマとロボットアクションを融合させた稀有な作品。その世界観をPlayStationで体感できるのが、2000年11月発売の『機動警察パトレイバー ~ゲームエディション~』です。プレイヤーは特車二課第2小隊の新人隊員となり、イングラム三号機で出動。アニメ版のキャラクターたちと共に、ゲームオリジナルの事件やバトルに挑みます。アドベンチャーパートの緻密な会話劇や、3Dポリゴンで描かれるレイバー戦は、原作ファンに「自分もパトレイバーの世界で息づいている」という没入感を与えてくれました。
📘 作品概要・基本情報

『機動警察パトレイバー ~ゲームエディション~』は、2000年11月16日にバンダイからPlayStation用ソフトとして発売されたアドベンチャー&アクションゲームです。ジャンルは「アドベンチャー+3Dロボットバトル」。プレイヤーは特車二課第2小隊の新人隊員となり、篠原重工製イングラム三号機に搭乗して任務にあたります。
物語は、原作アニメの世界観を踏襲しつつ、ゲームオリジナルのストーリーラインを展開。舞台はTVアニメ版の延長線上ともいえる設定で、南雲しのぶや後藤喜一らおなじみの隊員たちが総登場します。事件解決のために現場へ赴き、調査パートでは隊員や関係者との会話を通じて情報収集、戦闘パートではレイバー同士の迫力あるバトルを3Dポリゴンで再現しています。
この作品は、単なるロボットアクションではなく、原作ファンが愛した「人間ドラマ」を重視した作りが特徴。アニメ版キャストによる新録ボイスも豊富に収録され、当時のファンからは「まるで新作OVAを見ているようだ」と評されました。
🚓 原作『パトレイバー』との関係性
『機動警察パトレイバー ~ゲームエディション~』は、ヘッドギア原作の人気シリーズをベースに、プレイステーション向けに制作されたアドベンチャー+アクション作品です。
本作の舞台設定は、原作のテレビシリーズおよびOVAシリーズの世界観を踏襲しつつも、完全オリジナルの事件を描いています。時系列的にはTV版中盤あたりの雰囲気を持たせており、特車二課第一小隊の面々が揃って登場します。
当時の声優陣による新録ボイスを完全収録。泉野明役の冨永みーな、篠原遊馬役の古川登志夫、太田功役の池水通洋、後藤喜一役の大林隆介、そして南雲しのぶ役の榊原良子と、アニメ版の主要キャストが勢ぞろいしており、原作ファンにとっては声だけでも満足度の高い仕上がりとなっています。
ストーリー内では、原作でおなじみの掛け合いや、レイバー整備班のシーンなど、細かな小ネタも散りばめられ、シリーズへの愛情が感じられる構成になっています。
また、ゲームオリジナルの事件・新キャラクターが物語を動かしますが、その描き方は原作の「日常×非日常」のバランスを意識しており、コミカルな日常会話と緊迫感あるレイバー戦のメリハリが原作ファンにも違和感なく受け入れられる仕上がりです。
🚓 原作『パトレイバー』との関係性(時系列・設定の違い)
『パトレイバー』シリーズには大きく分けて二つの時系列があります。
- 劇場版・OVA路線
初期OVA『The Early Days』(1988–1989) → 劇場版第1作(1989) → 劇場版第2作(1993)と続く流れ。比較的シリアスで社会派な物語が多く、押井守監督の作風が色濃く反映されています。 - TVアニメ・後期OVA路線
TVアニメ(1989–1990) → 新OVAシリーズ『The New Files』(1990–1992)という流れで、日常コメディからシリアスまで幅広く描く作風です。
プレイステーション版『機動警察パトレイバー ~ゲームエディション~』(1999年発売)は、このTVアニメ・後期OVA路線の世界観をベースにしたサイドストーリーとして制作されています。
具体的には…
- 舞台は特車二課の“いつもの日常”から始まりますが、物語はゲームオリジナルの事件を中心に展開。
- 原作キャラクターの性格や掛け合いは忠実に再現され、ファンにとって違和感のないやり取りが描かれます。
- TVシリーズやOVA本編の時系列には直接組み込まれない、いわゆる「番外編」の扱いです。
そのため本作は、公式設定を大切にしつつも、ゲームならではの自由度で新たな物語を描いた“アニメ原作ゲームの中でも完成度の高いスピンオフ”と位置づけられます。
ゲームオリジナル要素
- 完全新作のエピソード構成
本作は、TVシリーズやOVAの世界観をベースにしながら、全10話からなるゲームオリジナルのストーリーを展開します。これにより、ファンはアニメとはまた違う“パトレイバーの日常”を体験することができます。patlabor.tokyo+6sunrise.fandom.com+6ameblo.jp+6 - アドベンチャーパート×3D格闘パートの融合
各話は、会話や調査で進むアドベンチャー要素と、イングラム三号機を操作する3Dアクションバトルを交互に楽しめる構成。射撃によるオーバーヒート操作や格闘時のコマンド入力(△×□○)など、プレイヤー自身が臨場感たっぷりにミッションを遂行できます。w.atwiki.jp+1 - ゲーム専用の演出や設定が随所に
ゲーム内では、イングラム三号機の頭部にECM装置を備えた「メデューサ」タイプへの変更など、TVシリーズ・劇場版からの設定を折衷した演出も用意されており、世界観の拡張として効果的に機能しています。sunrise.fandom.com+2ja.wikipedia.org+2 - マスメディア視点の演出も楽しい
シナリオの一区切りごとに「新聞」形式のミニ演出が入り、その回の事件をマスコミ視点で振り返る仕掛けも。こうしたユーモラスな演出により、事件の重さを中和し、遊び心が感じられます。sunrise.fandom.com
以上のように、本作は原作へのリスペクトを持ちつつ、「アニメとは違う、新たな特車二課の物語」をプレイヤー自身が体験できる構成となっており、原作ファンにもアクションゲーム好きにも訴求する魅力的な仕上がりです。
💬 ファンの声・思い出エピソード

『機動警察パトレイバー 〜ゲームエディション〜』は、発売当時から原作ファンの間で「とにかくキャラクターとの会話が楽しい」と評判でした。プレイヤーは泉野明や篠原遊馬たちと任務をこなしつつ、日常の掛け合いや小ネタを味わえるため、「アニメやOVAでは見られない、ちょっとした“第二小隊の日常”を覗いている気分になれる」という声も多く聞かれます。
また、原作の声優陣がそのまま出演しているため、ファンの記憶に刻まれた声でセリフが再生されることが大きな魅力に。中には「ゲームをプレイしているのに、まるで新作OVAを観ているみたいだった」という感想も。特に後藤隊長の飄々とした口調や太田の突っ走る台詞回しは、「耳で聴くパトレイバーの世界」として支持されました。
一方でゲーム難易度やシナリオ分岐に挑戦したファンからは、「マルチエンディングを全部見るために何周も遊んだ」という思い出や、「あの選択肢で南雲さんの評価が下がったのが悔しくてやり直した」といった、攻略面での苦労話も。当時のプレイヤー同士では、どのルートで誰の好感度を上げられるかを情報交換するのも楽しみのひとつでした。
こうした感想からも、この作品は単なるキャラゲーの枠を超え、“原作世界で過ごす体験”を重視したファン向け作品として記憶されていることがわかります。
🎯 漫画アニメ原作ゲームとしての完成度

プレイステーション版『機動警察パトレイバー』における「漫画アニメ原作ゲームとしての完成度」は、当時のファンから見ても評価ポイントがはっきりしており、原作リスペクトの姿勢が随所に見られます。
まず大きいのは、登場キャラクターの造形や会話テンポがTVシリーズの雰囲気を忠実に再現している点です。泉野明の朗らかさ、遊馬の皮肉混じりのやり取り、後藤隊長の飄々とした指揮ぶりなど、キャラ同士の掛け合いはまさに“パトレイバーらしさ”の再現度が高く、声優陣もアニメ版と同じキャストを起用しているため、ファンにとっては違和感なく世界観に浸れます。
また、ゲームとしての完成度という意味では、ADVパートとシミュレーションパートの融合が特徴的です。事件発生から捜査、そしてレイバー戦への流れがスムーズに繋がっており、ストーリー進行に沿って自然に操作が切り替わるため、プレイヤーが没入感を保ったまま遊べる構造になっています。シミュレーション部分の操作性やカメラワークは、当時のPSゲームとして標準的ながらも、レイバー戦の演出や効果音はアニメファンを満足させるクオリティでした。
さらに評価すべきは、シナリオのオリジナル性と原作らしさのバランスです。完全新作の事件を描きつつも、作中で描かれる人間ドラマやユーモアは原作の持ち味をしっかり踏襲しており、「もしTVアニメの続編エピソードがゲームで出たら」という感覚を味わえます。この“外していない”さじ加減こそ、漫画アニメ原作ゲームとしての完成度を高める大きな要因と言えるでしょう。
ファン視点で見た不満点

本作は原作アニメ『機動警察パトレイバー』の世界観を活かしつつも、ゲームの仕様上、アニメでの緻密な群像劇や人間ドラマをそのまま再現するのは難しく、一部のファンからは「キャラクター描写が物足りない」という声が聞かれました。特に、後藤隊長や南雲隊長の心理戦や駆け引きといった“間”を活かした会話が簡略化されており、アニメ版で感じられた深みを求めるプレイヤーにとっては物足りなさが残ったといえます。
また、戦闘パートにおいてはレイバー同士の重量感や機械的挙動を求める声が多く、「アクション性がやや軽い」「手応えが不足している」と感じたファンも少なくありません。OVAや劇場版で印象的だった重量級の衝突感を求めていた層には、ゲームならではのスピード感とのバランスに違和感があったようです。
さらに、時間軸や設定が原作とは一部異なるため、「このキャラはこの時点でこういう行動はしないはず」といった細かな齟齬が気になるファンも存在しました。特にTVシリーズやOVA版を熟知している層にとっては、こうした細部の食い違いが没入感を削ぐ要因になったとも言えます。
とはいえ、こうした不満は裏を返せば、それだけ原作への愛着と再現度への期待が高かった証でもあり、作品が持つ影響力の大きさを物語っています。
まとめ

プレイステーション版『パトレイバー』は、原作ファンにとって懐かしさと新鮮さを同時に味わえる意欲作でした。警察メカアクションという独自のジャンル性をゲームとしてうまく落とし込みつつ、TVシリーズやOVAにはなかったオリジナル要素を物語や演出に加えることで、既存ファンでも先の展開が気になる構成になっています。
もちろん、操作感やテンポの面では今の基準から見ると不満点もありますが、当時の技術で「パトレイバーの世界を手の中に再現する」という情熱が強く伝わってくる仕上がりでした。グラフィックや音声演出からは制作陣のこだわりが感じられ、ファンディスク的な側面も備えています。
総じて、この作品は“ただのキャラゲー”を超え、「パトレイバー」という作品世界に愛情を注ぎ込んだゲームです。原作を知っている人なら、キャラクターの掛け合いや世界観に思わず笑顔になれる場面が多く、プレイ後には「あぁ、やっぱりパトレイバーが好きだ」と再確認できる一本と言えるでしょう。
愛と熱意が詰まった、“ただのキャラゲー”を超えたパトレイバー体験