- 日本の音楽市場推移【1929~2025年】レコード・CD・配信97年の歴史
- 最初に|この記事で使う「生産」と「売上」は同じ数字ではない
- 1929~1942年|長期統計はSPレコード1,048万3,000枚から始まる
- 1946~1950年代|戦後復興とともにレコード生産が戻ってくる
- 1960年代|17cmレコードがシングル市場を拡大させる
- 1970年代|アナログレコードが数量面で史上最大へ
- 1929~1979年|「好きな音楽を手元へ置く」市場が巨大化した50年間
- 1980年代|アナログからCDへ、10年で主役が入れ替わった
- 1980年代|音楽市場のデジタル化が一気に進んだ10年間
- 1990年代|CDが日本の音楽市場を巨大化させた
- 1990年代|物理的な音楽商品が最大規模まで広がった時代
- 2000年代|CDの規格交代と、携帯電話という新しい音楽売り場
- 2002年|「着うた」で携帯電話が音楽の売り場になる
- 2005年|音楽配信市場が年間343億円へ
- 2010年代|音楽配信の主役がガラケーからスマートフォンへ
- CDシングルは2010年代初頭に一度増えている
- 2015年以降|次に伸びたのはストリーミング
- 2018年|ストリーミングがダウンロードを初めて上回る
- 2008年と2019年では「音楽配信」の意味まで変わった
- 2000~2019年|「音楽が入った商品」を買わなくても聴ける時代へ
- 2020年代|ストリーミングが伸びても、CDはなくならなかった
- 2020年|音楽ソフトが落ち込む一方、配信は成長
- 2021~2024年|ストリーミングが配信市場の9割を超える
- CDは2020年代も年間1億枚前後が生産されている
- アナログレコードは2020年から5年で3倍以上へ
- 2026年、日本の音楽市場を測る統計も変わった
- 2019~2025年|国内音楽市場は約2,959億円から約3,988億円へ
- 2025年|CD約1,686億円、ストリーミング約1,580億円
- 2025年|ダウンロードより古いCDが大きく残った
- 2020~2025年|「聴く」と「持つ」が別々の商品になった
- 97年の音楽メディア史|大きな転換点だけを一覧で見る
- 97年分を並べて分かった、意外な数字
- 97年間で変わったのは「売る媒体」だけではない
- それでも物理メディアが残った理由
- 新しい媒体が古い順番に消していったわけではない
- 時代をまたいで「どの曲が一番ヒットしたか」は単純比較できない
- 「CDが売れなくなった」だけでは97年間の変化は説明できない
- まとめ|約100年で、日本人と音楽の距離はここまで変わった
日本の音楽市場推移【1929~2025年】レコード・CD・配信97年の歴史

いま音楽を聴くために、1曲ずつ商品を買う必要はありません。
スマートフォンを開けば、その場で膨大な楽曲へアクセスできます。
しかし、日本レコード協会に残る長期統計が始まる1929年、中心にあったのはSPレコードでした。
そこから約1世紀の間に、SPレコード、アナログ盤、カセット、CD、ダウンロード、ストリーミングへと音楽の届け方は何度も変わっています。
特に興味深いのは、新しい媒体が登場するたびに古い媒体が順番に消えていったわけではない事です。
2025年になってもCDは年間1億枚規模で生産され、アナログレコードも再び伸びています。その一方、CDより後に登場した音楽ダウンロードは、ストリーミングの普及によってデジタル市場の主役ではなくなりました。
日本人は、いつレコードからCDへ移り、いつ「音楽を買う」ことから「アクセスして聴く」ことへ移ったのでしょうか。
本記事では、日本レコード協会が公開する1929~2025年の統計を中心に、97年分の数字から日本の音楽市場の変化をたどります。
最初に|この記事で使う「生産」と「売上」は同じ数字ではない
約100年にわたる数字を見る前に、一つだけ押さえておきたいことがあります。
日本レコード協会が公開している統計は、時代によって測っているものが異なります。
レコードやCDなどの長期統計で中心となるのは生産実績です。何枚・何巻作られたのかを示すもので、消費者が店頭で実際に購入した枚数とは一致しません。
2005年以降には音楽配信の売上実績があり、現在は会員社以外も含めた国内市場全体の売上推計も公表されています。
そのため本記事では、
レコード・CDなど=主に生産数量・生産金額
ダウンロード・ストリーミング=主に音楽配信売上
近年の市場規模=国内市場売上推計
として扱います。
生産枚数と売上金額を混ぜて一つのランキングにしたり、異なる統計をそのまま「何倍になった」と比較したりはしません。
数字が何を意味しているのかをそろえながら、日本人が音楽を手に入れる方法がいつ変わったのかを見ていきます。
1929~1942年|長期統計はSPレコード1,048万3,000枚から始まる
日本レコード協会の長期生産統計は1929年から確認できます。
最初の記録はSPレコード1,048万3,000枚です。
その後、
1929年 1,048万3,000枚
1930年 1,440万枚
1933年 2,467万5,000枚
1936年 2,963万8,000枚
と増加しました。
1929年から1936年までの7年間で、生産数量は約2.8倍です。
現在とは音楽との接し方がまったく異なる時代ですが、1930年代半ばにはすでに年間3,000万枚近いレコードが作られていました。
戦前の日本にも大きな「録音された音楽」の市場があった
当時、放送を聴くこととレコードを所有することは別の体験でした。
ラジオから流れてきた曲は放送時間が終われば聴けませんが、レコードを購入すれば、自宅で好きなときに繰り返し再生できます。
現在のように月額サービスで大量の音源へアクセスできる環境とは正反対です。
聴きたい音楽を自由に再生するために、その音楽が記録された物を手元へ置く。
この考え方は、その後レコードがCDへ変わっても長く続くことになります。
なお生産数量は1936年を境に減少し、1942年は1,708万5,000枚。1943~1945年については日本レコード協会の長期統計でも「不明」とされているため、推測値では補いません。
1946~1950年代|戦後復興とともにレコード生産が戻ってくる
戦後最初の1946年に記録されているSPレコード生産数量は642万枚です。
そこから、
1947年 884万7,000枚
1948年 1,196万2,000枚
1949年 1,686万枚
と回復しました。
1952年には1,780万6,000枚、1953年にはSPだけで1,935万7,000枚となっています。
しかし1950年代の重要な変化は、SPレコードの枚数が戻ったことだけではありません。
市場の中に、次の規格が入り始めたことです。
1950年代後半にはSP以外のレコードが急速に増えた
日本レコード協会の統計には1953年から25・30cm盤が現れ、1950年代後半になると17cm・45回転盤も大きく伸びていきます。
1959年の生産数量は、
SP 553万6,000枚
17cm・45回転盤 872万6,000枚
25・30cm・33回転盤 512万7,000枚
でした。
すでに17cm・45回転盤だけでSPを上回っています。
1960年になるとSPは307万8,000枚まで減少し、1963年にはわずか2万5,000枚。1964年からは長期統計上、SPの生産数量が記録されなくなります。
後に起きる「レコードからCDへ」という変化ほど有名ではありませんが、1950~1960年代にも音楽を記録する規格の大きな世代交代が起きていたのです。
1960年代|17cmレコードがシングル市場を拡大させる
1960年代に入ると、17cm・45回転盤の生産数量は急激に増えます。
1960年 1,353万枚
1963年 3,923万4,000枚
1966年 6,306万3,000枚
1968年 7,548万9,000枚
まで拡大しました。
後に「シングルレコード」として広く親しまれる小型盤が、大量に流通する市場が出来上がっていきます。
アルバムを一枚買うだけではなく、気に入った新曲を一枚の商品として買う文化が大きく成長した時代でした。
1967年、音楽ソフト年間生産数量が1億を突破
レコード各規格などを合わせた音楽ソフト全体の生産数量は、1967年に1億10万1,000枚・巻となりました。
1965年は9,093万4,000枚・巻。
1966年は9,449万枚・巻。
そして1967年に初めて1億の大台へ到達します。
翌1968年には1億2,676万2,000枚・巻、1969年には1億4,742万2,000枚・巻まで拡大しました。
戦後1946年の642万枚から約20年。
録音された音楽を物理商品として購入する市場は、年間1億本を超える規模まで成長したことになります。
カセットテープも1960年代末には数字へ現れる
この時代を「レコードだけの時代」と考えるのも正確ではありません。
1968年の統計には、カセットテープが63万1,000巻記録されています。
レコードと比較すればまだ小さな存在ですが、
1969年 125万巻
1970年 379万巻
1971年 583万7,000巻
と増加していきます。
音楽は「円盤で所有するもの」だけではなく、テープへも広がり始めました。
このカセット市場は1970年代に急速に成長します。
1970年代|アナログレコードが数量面で史上最大へ
1970年代は、日本のアナログレコード市場が数量面で頂点に達した時代です。
日本レコード協会の統計では、1976年のアナログディスク生産数量が1億9,975万2,000枚。
2025年までの長期統計で最大です。
内訳を見ると、
17cm・33回転盤 554万8,000枚
17cm・45回転盤 9,954万3,000枚
25・30cm・33回転盤 9,459万9,000枚
25・30cm・45回転盤 6万2,000枚
でした。
17cm・45回転盤だけで約1億枚。
LPなどを中心とする25・30cm・33回転盤も約9,460万枚です。
シングルとアルバムの双方で、アナログ盤が巨大な物理商品市場を形成していました。
1976年がピークでも、1970年代末まで巨大市場は続いた
1976年を境にアナログディスクの総数は減少へ向かいますが、すぐに市場が小さくなったわけではありません。
1978年にも17cm・45回転盤は9,828万3,000枚、25・30cm・33回転盤は9,301万2,000枚。
1979年には17cm・45回転盤が1億630万2,000枚となり、同規格単体では1976年より多く生産されています。
「アナログ市場のピーク=すべての規格が1976年に最大」という意味ではありません。
複数規格を合わせた総数量が1976年に最大だったということです。
市場を正確に見るには、総数と個別規格を分けて考える必要があります。
レコード全盛期の裏でカセットが年間4,600万巻へ
1970年代に急成長したもう一つの媒体がカセットです。
1971年 583万7,000巻
1973年 1,059万1,000巻
1975年 1,409万巻
1977年 2,561万2,000巻
1979年 4,622万巻
まで増加しました。
1968年の63万1,000巻から11年で70倍以上です。
アナログレコードが巨大市場を維持している最中に、その横でカセットも大きく伸びていました。
ここで早くも、約100年の音楽市場を通して繰り返されるパターンが見えてきます。
新しい媒体が成長しても、それまでの主役がその瞬間に消えるわけではない。
複数の媒体が並ぶ期間を経て、徐々に役割が変わっていくのです。
1929~1979年|「好きな音楽を手元へ置く」市場が巨大化した50年間
1929年に1,048万3,000枚だったSPレコードの統計から始まり、1970年代にはアナログディスクだけで年間2億枚近い規模へ達しました。
その50年間に起きたのは、単純な市場拡大だけではありません。
SPから17cm・25/30cm盤へ規格が変わり、シングルレコードが大量に流通し、さらにカセットテープが急成長しました。
媒体はすでに複数存在しています。
それでも、この時代には一つの共通点がありました。
好きな音楽を自分の好きな時間に聴くためには、基本的にその音楽が記録された物を手に入れる必要があったことです。
レコードを買う。
カセットを買う。
家庭へ持ち帰り、自分の機器で再生する。
1970年代までに巨大化したのは、単なる「レコード市場」ではなく、音楽を物理的に所有する市場だったともいえます。
そして1980年代。
この「商品を買って所有する」という基本構造を残したまま、その中心媒体が急速に入れ替わります。
次に登場するCDは、わずか数年でアナログレコードを追い越すことになります。
※統計出典:一般社団法人 日本レコード協会。「音楽ソフト種類別生産実績推移」をもとに、つぶログ記事用に整理・加工。
1980年代|アナログからCDへ、10年で主役が入れ替わった
1980年の日本では、まだアナログレコードが圧倒的な存在でした。
17cm盤や25・30cm盤を合わせたアナログディスクの生産数量は1億9,494万3,000枚。カセットテープも5,710万7,000巻が生産されています。
そこへ1982年、コンパクトディスクが登場します。
最初は高価なプレーヤーを必要とする新しい媒体にすぎませんでしたが、その後の普及速度は非常に速く、1980年代が終わる頃にはレコード店の中心商品が大きく変わっていました。
1982年、CDが日本で発売
1982年10月、ソニーは世界初のコンパクトディスクプレーヤー「CDP-101」を発売しました。
発売時の価格は16万8,000円。
現在から見ても高価ですが、レコード盤へ針を落とすアナログ再生とは異なり、レーザーでデジタル信号を読み取る新しい音楽媒体が家庭向けに登場したことになります。
日本レコード協会の生産統計にCDが現れるのは1984年で、12cm CDは636万5,000枚。
そこから、
1985年 2,063万8,000枚
1986年 4,512万枚
1987年 6,499万2,000枚
と急速に増えていきました。
CDは登場から数年で、珍しい新商品から大規模な音楽媒体へ変わっていきます。
1988年、数字の上でもCDがアナログを逆転
CDとアナログの交代が最もはっきり見えるのが1987~1988年です。
1987年は、
アナログディスク 7,399万5,000枚
CD 6,499万2,000枚
で、まだアナログの方が多く生産されていました。
ところが1988年には、
アナログディスク 3,946万3,000枚
CD 1億1,553万7,000枚
となります。
わずか1年で、CDがアナログの約3倍という関係へ逆転しました。
CDが発売された1982年ではなく、実際の生産数量で主役が入れ替わった1988年を見ると、技術が登場する時期と一般市場が変わる時期には数年の差があることが分かります。
1988年には8cm CDも登場
同じ1988年2月には、日本レコード協会加盟6社から8cm CDが発売されました。
初年度だけで生産数量は2,555万7,000枚。
翌1989年には4,709万4,000枚、1990年には6,182万枚まで増加します。
12cm CDがアルバムを中心に広がる一方、小型の8cm CDはシングル商品として定着しました。
レコード時代に17cm盤が担っていた「新しい曲を一枚の商品として買う」という市場を、CDへ引き継いだ形です。
縦長の紙パッケージに入った、いわゆる「短冊CD」は、その後1990年代の日本音楽市場を象徴する商品になります。
1989年、CDは年間約1億9,052万枚へ
1989年になると、
8cm CD 4,709万4,000枚
12cm CD 1億4,342万4,000枚
となり、CD全体では1億9,051万8,000枚に達しました。
一方、アナログディスクは1,005万6,000枚です。
1980年には約1億9,500万枚あったアナログが、9年間で約95%減少したことになります。
逆にCDは、1984年の636万5,000枚から1989年には約1億9,052万枚へ急拡大しました。
この変化の速さこそ、1980年代の音楽市場を特徴づける数字です。
CDが伸びてもカセットはすぐには消えなかった
一方で、CDの普及と同時にカセットがすぐ衰退したわけではありません。
カセット生産数量は、
1985年 6,069万4,000巻
1986年 6,251万7,000巻
1987年 6,892万5,000巻
1988年 7,607万4,000巻
と推移し、1988年にはむしろ大きな規模となっています。
CDとカセットには、同じ音楽商品でも異なる利点がありました。
CDはデジタル再生と音質、カセットは持ち運びやカーオーディオなどで使いやすいという特徴があります。
1980年代後半は、一つの新媒体だけがすべてを置き換えたのではなく、CD、カセット、縮小していくアナログが同時に存在しながら比率を変えていた時期でした。
1980年代|音楽市場のデジタル化が一気に進んだ10年間
1980年と1989年では、音楽売り場の中心商品がほぼ逆転しました。
1980年にはアナログディスクが約1億9,494万枚。
1989年にはCDが約1億9,052万枚。
わずか10年弱で、ほぼ同じ「約1億9,000万枚」という規模を、まったく別の媒体が担うようになったことになります。
ただし、変わったのは記録媒体です。
一枚の商品を購入し、自分の手元に置くという基本的な音楽消費は続いていました。
そして1990年代、そのCD市場は1980年代にも想像しにくかった規模まで拡大していきます。
1990年代|CDが日本の音楽市場を巨大化させた
1990年のCD生産数量は、
8cm CD 6,182万枚
12cm CD 1億6,912万9,000枚
合計2億3,094万9,000枚でした。
すでに年間2億枚を超えています。
さらに、
1992年 約3億3,323万枚
1993年 約3億8,155万枚
1995年 約4億3,995万枚
1997年 約4億5,714万枚
1998年 約4億5,717万枚
まで拡大しました。
1998年には、一年間に4億5,700万枚を超えるCDが生産されていたことになります。
8cm CDは1992年に年間1億枚を突破
1990年代のシングル市場を象徴したのが8cm CDです。
1990年 6,182万枚
1991年 8,877万6,000枚
1992年 1億1,055万9,000枚
1993年 1億5,379万5,000枚
と増加し、1992年に初めて年間1億枚を突破しました。
ピークは1997年の1億6,782万7,000枚です。
一つの規格だけで年間1億6,000万枚以上という数字は、当時どれほどシングルCDが日常的な商品だったのかをよく表しています。
気になった新曲を店頭で見つけ、1,000円前後のシングルを一枚買う。
現在のストリーミングとはまったく異なる形で、曲単位の消費が大量の物理商品につながっていました。
12cm CDは8cm以上の巨大市場だった
「90年代CD」と聞くと短冊型8cmシングルの印象が強いですが、市場全体では12cm CDの方がさらに大きな規模でした。
12cm CDは、
1990年 1億6,912万9,000枚
1993年 2億2,775万6,000枚
1995年 2億7,536万9,000枚
1998年 3億291万3,000枚
まで増加しました。
1998年は8cm CD約1億5,426万枚に対し、12cm CDが約3億291万枚。
シングルだけでなくアルバムを購入する市場も極めて大きかったことが分かります。
テレビやカラオケが、CDを買うまでの接点を増やした
1990年代には、テレビドラマやCMから広く知られる楽曲が相次ぎました。
さらに通信カラオケが普及し、曲は「テレビで聴く」「CDで所有する」だけでなく、「自分で歌う」ものにもなっていきます。
ドラマを見る。
CMで耳にする。
ラジオで聴く。
カラオケで歌う。
CDショップで購入する。
一つの曲と接する場所が多く、そこで生まれた関心をCD購入へつなげられる環境がありました。
個々の大ヒットだけではなく、CDを買うことそのものが音楽を楽しむ日常的な行動になっていたことが、年間4億枚を超える市場の背景にあります。
1998年、CDだけで生産金額約5,879億円
CD市場の大きさは数量だけではありません。
1998年の生産金額は、
8cm CD 954億7,800万円
12cm CD 4,924億円
で、CD合計では5,878億7,800万円でした。
アナログ、カセットなども含むオーディオレコード全体では6,074億9,400万円です。
現在の市場売上推計とは対象も集計方法も違うため、2025年の数字とそのまま比較することはできません。
それでも、物理的な音楽ソフトを生産する産業が1990年代後半に極めて大きな規模へ達していたことは明らかです。
最大規模の中で、8cm CDはすでにピークを越えていた
興味深いのは、CD全体が最大規模に達した1998年には、8cm CDがすでに減少へ転じていたことです。
8cm CDは、
1997年 1億6,782万7,000枚
1998年 1億5,426万枚
1999年 8,633万3,000枚
へ減少しました。
一方、1999年には12cm CDシングルが6,114万5,000枚生産されています。
つまり、1990年代末に始まったのは単純な「シングル離れ」だけではありません。
同じCDシングルの中で、8cmから12cmへの規格変更が進んでいたのです。
この動きは翌2000年に一気に鮮明になります。
1999年は「CD全盛期の終わり」ではなく次の形への入口だった
1998年に約4億5,717万枚だったCD生産数量は、1999年も
8cm CD 8,633万3,000枚
12cm CDシングル 6,114万5,000枚
12cm CDアルバム 2億7,627万9,000枚
と、依然として巨大な規模です。
しかし内部では、8cm CDの急減と12cmシングルの台頭が同時に起きていました。
CDという媒体そのものは残ったまま、商品形態が変わり始めていたのです。
そして2000年代には、この変化を上回る出来事が起こります。
CDとは別に、通信回線を通じて音楽そのものを買う市場が成長し始めます。
1990年代|物理的な音楽商品が最大規模まで広がった時代
1990年代の日本では、8cm CDと12cm CDを合わせて年間4億5,000万枚を超える市場が成立しました。
シングルを買う。
アルバムを買う。
好きな作品を棚へ並べる。
音楽商品を物理的に購入する文化が、数量でも金額でも極めて大きな規模へ達した時代です。
その一方、1997年を境に8cm CDは減少へ向かい、1999年には12cmシングルへの移行が始まっていました。
市場が最も大きくなった瞬間に、次の変化もすでに始まっていた。
これは約100年間の音楽史で何度も繰り返される現象です。
2000年代、日本人はついに「音楽が入った物体を買う」という方法以外でも、音楽へお金を払うようになります。
※統計出典:一般社団法人 日本レコード協会。「音楽ソフト種類別生産実績推移」をもとに、つぶログ記事用に整理・加工。
2000年代|CDの規格交代と、携帯電話という新しい音楽売り場
1990年代末に8cm CDが急減した後も、シングルCDそのものが消えたわけではありません。
2000年の生産数量は、
8cm CD 3,312万4,000枚
12cm CDシングル 1億460万1,000枚
となりました。
前年1999年には8cm CDの方が多かったため、わずか1年でシングルCDの主役が8cmから12cmへ逆転したことになります。
1990年代を象徴した細長い「短冊CD」に代わり、アルバムと同じサイズのマキシシングルが標準になっていきました。
CDは減少へ向かうが、2000年代にも巨大市場だった
2000年代に入ると、CDの生産数量は長期的には減少していきます。
12cm CDアルバムは、
2000年 2億7,632万7,000枚
2005年 2億3,711万6,000枚
2009年 1億6,516万2,000枚
まで減少しました。
12cm CDシングルも2000年の1億460万1,000枚から、2009年には4,474万2,000枚となっています。
ただし、2009年になってもCDだけで年間2億枚を超える規模があります。
1990年代後半の記録的な市場と比較すれば縮小していますが、「CDが売れなくなった=すぐに小さな市場になった」わけではありません。
むしろ2000年代に起きた最大の変化は、CDとは別の購入方法が急速に成長したことでした。
2002年|「着うた」で携帯電話が音楽の売り場になる
2002年12月5日、auで「着うた」のサービスが始まりました。
携帯電話へアーティストの歌声を含む音源をダウンロードし、着信音として利用できるサービスです。
それ以前にも着信メロディは広く普及していましたが、「着うた」では楽曲そのものの音源を通信回線から端末へ届けます。
KDDIによると、累計ダウンロード数は2004年7月に1億、2005年4月に2億、2006年1月には3億を突破しました。
音楽を買うために、必ずしもCDショップへ行く必要がなくなった。
2000年代前半、日本人のポケットに入っていた携帯電話が、新しい音楽売り場として急速に存在感を高めていきます。
2004年、「着うたフル」で一曲まるごと携帯へ
さらに2004年11月19日には「着うたフル」がスタートします。
こちらは楽曲を一曲まるごと携帯電話へ直接ダウンロードできるサービスでした。
開始から約1年半後の2006年5月には累計5,000万ダウンロード、2007年2月には1億、2008年5月には2億を突破しています。
「着うた」が着信音として音楽を使うサービスだったのに対し、「着うたフル」は携帯電話そのものを音楽プレーヤーに近づけたサービスでした。
CDを購入しなくても、一曲を選び、その場で端末へ保存して聴ける。
物理メディア中心だった日本の音楽市場に、新しい購入行動が定着していきます。
2005年|音楽配信市場が年間343億円へ
日本レコード協会は2005年から音楽配信売上の公表を開始しています。
初年度の売上は342億8,300万円。
その後、
2006年 534億7,800万円
2007年 754億8,700万円
2008年 905億4,700万円
2009年 909億8,200万円
まで拡大しました。
2005年から2009年までの4年間で約2.7倍です。
特に2008年は、ダウンロード売上の金額構成が**モバイル90%、PC10%**でした。
現在の配信市場からは想像しにくい数字ですが、当時のデジタル音楽を牽引していたのはパソコンより携帯電話でした。
2000年代は「CDから配信へ」ではなく、両方が並んだ
配信が急成長していた2008年にも、オーディオレコードは約2億4,800万枚生産され、生産金額は約2,961億円ありました。
同じ年の有料音楽配信は約905億円です。
CDなどの物理メディアが突然消え、その市場を配信がそのまま引き継いだわけではありません。
店頭ではCDを買える。
携帯電話では曲をダウンロードできる。
DVDなどで音楽映像も楽しめる。
音楽へお金を払う方法そのものが増えていったのが2000年代でした。
2010年代|音楽配信の主役がガラケーからスマートフォンへ
2010年代前半には、同じ「デジタル音楽」の中でも大きな世代交代が起きます。
2010年のRIAJ統計では、音楽配信売上8,599億円ではなく859億9,000万円のうち、従来型のモバイル配信が747億4,500万円を占めていました。
インターネットダウンロードは101億2,300万円です。
この時点では、まだ携帯電話向け配信の存在感が圧倒的でした。
ところがスマートフォンの普及によって、その構成は急速に変化します。
2014年にはフィーチャーフォン向けシングルが少数派に
2014年のシングルトラック売上を見ると、
PC配信・スマートフォン 174億8,700万円
フィーチャーフォン 31億3,700万円
でした。
PC・スマートフォン側はフィーチャーフォンの5倍以上です。
かつてデジタル音楽市場を支えたガラケー向けサービスは、数年の間に中心ではなくなりました。
しかし「携帯電話で曲を入手する」という行動そのものが消えたわけではありません。
端末がフィーチャーフォンからスマートフォンへ変わり、配信サービスの形が変化したのです。
着うたの時代に生まれた「店へ行かず音楽を手に入れる」習慣は、スマートフォン時代へ引き継がれました。
CDシングルは2010年代初頭に一度増えている
ここで興味深いのが、CDの動きです。
12cm CDシングルの生産数量は、
2009年 4,474万2,000枚
2010年 5,050万3,000枚
2011年 5,924万7,000枚
2012年 6,480万7,000枚
となり、2010年代初頭には増加しました。
デジタル配信が普及すればCDは毎年減る、という単純な動きではありません。
一方、12cm CDアルバムは2010年の1億5,592万9,000枚から、2019年には8,896万4,000枚まで減少しています。
同じCDでもシングルとアルバムで推移が違う。
2010年代には、「CD市場」という一つの数字だけでは音楽商品の動きを説明しにくくなっていました。
CDは「音源だけを買う商品」ではなくなっていく
デジタルで音源を入手できる環境が整うほど、CDには音源以外の価値が求められるようになります。
映像を収録した付属ディスク、異なるジャケットや仕様、封入物など、作品を物理的に所有すること自体が商品価値になります。
そのため、配信が成長している時期にもCDシングルが増える局面が生まれました。
2019年にもCDは、
シングル 4,336万1,000枚
アルバム 8,896万4,000枚
が生産されています。
CDは「音を聴く唯一の方法」ではなくなっても、商品としての役割を変えながら残りました。
2015年以降|次に伸びたのはストリーミング
ダウンロードの次に大きく伸びたのが、定額制を中心とするストリーミングです。
RIAJの音楽配信統計では、サブスクリプション売上が
2015年 123億9,300万円
2016年 200億300万円
まで拡大しました。
2017年からは集計区分が変更され、「ストリーミング」としてサブスクリプションと広告収入を合わせて公表されています。
ストリーミング売上は、
2017年 263億300万円
2018年 348億6,600万円
2019年 465億3,000万円
へ急成長しました。
携帯電話へ一曲ずつ保存する時代の次に、楽曲を買わずにサービス上で再生する市場が本格的に立ち上がります。
2018年|ストリーミングがダウンロードを初めて上回る
2018年は、この約100年史でも重要な転換点です。
RIAJの音楽配信売上は、
ダウンロード 256億3,900万円
ストリーミング 348億6,600万円
でした。
ストリーミングがダウンロードを上回っています。
そして2019年には、
ダウンロード 224億5,400万円
ストリーミング 465億3,000万円
となり、差はさらに拡大しました。
2019年の音楽配信全体706億2,800万円のうち、ストリーミングが65.9%を占めています。
2000年代には「一曲を端末へダウンロードする」ことがデジタル音楽の象徴でした。
それから十数年で、デジタル音楽の中心は「買って保存する」方法から「その都度アクセスして再生する」方法へ移ったのです。
2008年と2019年では「音楽配信」の意味まで変わった
2008年の有料音楽配信売上は約905億円。
2019年は約706億円です。
総額だけを見ると2008年の方が大きいため、「デジタル音楽市場が縮小した」と考えたくなります。
しかし中身は大きく違います。
2008年は携帯電話向けダウンロードが市場の中心。
2019年はストリーミングが全体の約3分の2を占めています。
同じ「音楽配信」という言葉でも、その20年足らずの間に、
着信音を買う
一曲を買って保存する
定額サービスで自由に再生する
という異なる消費方法が主役になりました。
市場を見るときには、金額だけでなく「何にお金を払っているのか」まで確認する必要があります。
2000~2019年|「音楽が入った商品」を買わなくても聴ける時代へ
2000年、日本では12cm CDシングルが年間1億枚以上生産されていました。
その2年後に「着うた」が登場し、2004年には一曲を直接携帯電話へ保存できる「着うたフル」が始まります。
2010年代にはガラケー中心の市場からPC・スマートフォン中心へ移行し、その先でストリーミングが急成長しました。
2018年には、ストリーミング売上がダウンロードを逆転。
ここで初めて、デジタル音楽の中心が「一曲を購入すること」からも離れ始めます。
レコードからCDへの変化では、音楽を入れる器が変わりました。
CDからダウンロードへの変化では、物理的な器が不要になりました。
そしてストリーミングでは、一曲ずつ自分のものとして購入する必要までなくなったのです。
約20年間で起きたのは、単なるCDの衰退ではありません。
音楽へお金を払う仕組みそのものの変化でした。
そして2020年代、日本の音楽市場はさらに意外な姿を見せます。
ストリーミングが1,000億円を超える規模へ成長してもCDは残り、長く縮小していたアナログレコードまで再び伸び始めます。
※統計出典:一般社団法人 日本レコード協会。「音楽ソフト種類別生産実績推移」「音楽配信売上実績」をもとに、つぶログ記事用に整理・加工。
2020年代|ストリーミングが伸びても、CDはなくならなかった
2018年にストリーミング売上がダウンロードを上回り、日本のデジタル音楽市場は新しい段階へ入りました。
2020年代に入ると、その流れはさらに鮮明になります。
一方で、物理メディアが一方向に消えていったわけではありません。
CDは年間1億枚前後の生産規模を維持し、アナログレコードはむしろ増加。
2020年代の日本では「ストリーミングへの一本化」ではなく、聴く方法と所有する方法が並存する市場が形成されています。
2020年|音楽ソフトが落ち込む一方、配信は成長
2020年は、音楽市場にも大きな変化が表れた年でした。
2026年に日本レコード協会が公表した国内市場全体の売上推計では、
2019年 約2,959億円
2020年 約2,878億円
と、市場全体では前年を下回っています。
内訳を見ると、音楽ソフトは2019年の約2,131億円から2020年には約1,917億円へ減少しました。
一方、音楽配信は約828億円から約960億円へ増加しています。
同じ年に、物理商品とデジタル配信が逆方向へ動いていたことになります。
「1億回再生」がヒットを表す数字になった
2020年4月には、日本レコード協会がストリーミング認定の公表を開始しました。
現在の認定基準では、
プラチナ 1億回
ダブル・プラチナ 2億回
トリプル・プラチナ 3億回
ダイヤモンド 5億回
ダブル・ダイヤモンド 10億回
となっています。
レコードやCDの時代には、何十万枚、100万枚といった販売枚数がヒットの規模を表していました。
ストリーミングでは、何億回再生されたかが大きな指標になります。
もちろん「CD1枚」と「1再生」はまったく違う単位なので、そのまま比較することはできません。
それでも、ヒットを語る数字まで変わったことは、音楽消費の仕組みそのものが変化した象徴といえます。
2021~2024年|ストリーミングが配信市場の9割を超える
RIAJ会員社による従来の音楽配信売上実績を見ると、2020年代にはストリーミングの成長が続きました。
2022年の音楽配信売上は1,050億円となり、同統計で初めて年間1,000億円を突破。
そのうちストリーミングは928億円で、配信市場の約88%を占めました。
2023年には、
音楽配信 1,165億円
ストリーミング 1,056億円
となり、ストリーミング比率が初めて9割を超えます。
2024年にはさらに、
音楽配信 1,233億100万円
ストリーミング 1,132億2,900万円
まで拡大しました。
配信市場の**91.8%**がストリーミングです。
2000年代に巨大市場を築いた着うた、そして一曲ずつ購入するダウンロードから、デジタル音楽の中心は完全に変わりました。
ダウンロードはなくなってはいない
2024年のダウンロード売上は95億2,100万円でした。
ストリーミングの1,132億円と比べれば規模は大きく異なります。
それでも、一曲やアルバムをデータとして購入する市場自体は残っています。
現在は、
CDを買う
楽曲データを買う
ストリーミングで聴く
という複数の方法が同時に存在します。
新しい方法が登場するたびに、それ以前の選択肢が完全に消えるわけではないという約100年の傾向は、デジタル市場でも続いています。
CDは2020年代も年間1億枚前後が生産されている
ストリーミングの成長だけを見ると、CDはほとんど使われなくなったようにも感じられます。
しかしRIAJ会員社の生産実績では、現在もかなりの数量が確認できます。
| 年 | CDシングル | CDアルバム | CD合計 |
|---|---|---|---|
| 2020 | 3,261万3,000枚 | 7,129万3,000枚 | 1億390万6,000枚 |
| 2021 | 3,243万枚 | 7,111万3,000枚 | 1億354万3,000枚 |
| 2022 | 3,391万2,000枚 | 6,696万9,000枚 | 1億88万1,000枚 |
| 2023 | 3,729万5,000枚 | 7,130万5,000枚 | 1億860万枚 |
| 2024 | 4,165万6,000枚 | 6,252万3,000枚 | 1億417万9,000枚 |
| 2025 | 3,394万2,000枚 | 6,870万9,000枚 | 1億265万1,000枚 |
1998年の約4億5,717万枚と比べれば大幅に小さくなっています。
それでも、2020~2025年は6年連続でCD生産数量が年間1億枚を超えました。
ストリーミングが一般化した後も、日本では大量のCDが物理商品として作られ続けています。
CDシングルは2024年に4,000万枚を超えた
さらにCDシングルだけを見ると、
2020年 約3,261万枚
2024年 約4,166万枚
へ増えています。
翌2025年には約3,394万枚へ減少したため、一方向の成長ではありません。
しかし「配信が伸びた分だけCDが毎年減っている」という単純な関係でないことは分かります。
音源を聴くことだけが目的なら、CDを買わなくても音楽を楽しめる時代です。
だからこそ現在のCDには、ジャケット、付属映像、封入物、コレクション性など、音源以外も含めたパッケージ商品としての意味が大きくなっています。
アナログレコードは2020年から5年で3倍以上へ
さらに興味深い動きを見せているのがアナログレコードです。
RIAJ会員社の生産数量は、
2020年 109万5,000枚
2021年 190万7,000枚
2022年 213万3,000枚
2023年 269万1,000枚
2024年 314万9,000枚
2025年 337万8,000枚
となっています。
2020年から2025年までで約3.1倍です。
生産金額も、
2020年 約21億円
2021年 約39億円
2022年 約43億円
2023年 約63億円
2024年 約79億円
2025年 約84億円
まで拡大しました。
CDよりさらに古い媒体が、ストリーミング時代に成長しているのです。
1970年代の「レコード全盛」とはまったく違う
ただし、これを「レコード時代が戻ってきた」と表現するのは正確ではありません。
アナログディスク全体の生産数量が最大だった1976年は約1億9,975万枚。
2025年は約338万枚です。
規模には大きな差があります。
現在のアナログ盤は、音楽を聴くための標準媒体として復活したのではありません。
大きなジャケットを楽しむ。
盤そのものを所有する。
レコードプレーヤーで再生する時間を楽しむ。
利便性とは別の体験を持つ商品として、新しい市場を築いていると見る方が実態に近いでしょう。
2026年、日本の音楽市場を測る統計も変わった
ここまでの長期統計で使ってきた「生産実績」と、近年の市場全体を示す数字には重要な違いがあります。
従来のRIAJ統計は、基本的に日本レコード協会の会員社から報告された実績を集計したものでした。
そこでRIAJは2026年、国内市場をより包括的に把握するため、新たに**「音楽ソフト・音楽配信売上推計」**の公表を開始しました。
これは会員社の実績だけでなく、市場占有率をもとに算出した非会員社分も加えた推計です。
さらに2019~2024年についても同じ考え方で遡及した数字が公開されています。
これによって、現在の国内音楽市場全体がどのように変化しているのかを、同じ基準で2019年まで遡って確認できるようになりました。
2019~2025年|国内音楽市場は約2,959億円から約3,988億円へ
新しい市場売上推計で7年間を並べると、次のようになります。
| 年 | 音楽ソフト | 音楽配信 | 市場全体 |
|---|---|---|---|
| 2019 | 約2,131億円 | 約828億円 | 約2,959億円 |
| 2020 | 約1,917億円 | 約960億円 | 約2,878億円 |
| 2021 | 約1,893億円 | 約1,144億円 | 約3,037億円 |
| 2022 | 約1,923億円 | 約1,391億円 | 約3,315億円 |
| 2023 | 約2,121億円 | 約1,555億円 | 約3,676億円 |
| 2024 | 約2,044億円 | 約1,588億円 | 約3,632億円 |
| 2025 | 約2,288億円 | 約1,700億円 | 約3,988億円 |
2020年には一度縮小しましたが、その後は拡大。
2025年の約3,988億円は、2019年の約2,959億円より約35%大きな規模です。
特に配信は2019年の約828億円から2025年には約1,700億円となり、約2倍へ成長しました。
一方で音楽ソフトも2025年には約2,288億円あります。
配信だけが伸び、物理商品が消え続けている市場ではありません。
※2019~2025年の増減率は、日本レコード協会公表の市場売上推計をもとにつぶログで算出。
2025年|CD約1,686億円、ストリーミング約1,580億円
2025年の国内市場全体をさらに分解すると、現在の日本市場の特徴がよく分かります。
| 2025年の市場 | 売上推計 |
|---|---|
| CD | 約1,686億円 |
| アナログディスク | 約88億円 |
| その他オーディオ | 約6億円 |
| 音楽ビデオ | 約507億円 |
| ダウンロード | 約114億円 |
| ストリーミング・サブスクリプション | 約1,377億円 |
| ストリーミング・広告収入 | 約202億円 |
| その他配信 | 約6億円 |
サブスクリプションと広告収入を合わせたストリーミングは約1,580億円。
CDは約1,686億円です。
両者は、現在もそれぞれ1,500億円を超える規模を持っています。
ただし、この数字から「CDとストリーミングのどちらが勝った」と考えるのは適切ではありません。
CDは商品を購入する市場。
ストリーミングはサービスを利用して楽曲へアクセスする市場です。
売っているものも、消費者がお金を払う理由も違います。
重要なのは、まったく異なる二つの音楽消費が、同じ日本で巨大市場として共存していることです。
2025年の「CD枚数」には二種類の数字がある
ここは統計を読むうえで特に注意が必要です。
RIAJ会員社の生産実績では、2025年のCDは約1億265万枚です。
一方、会員社以外も含めた国内市場全体の売上推計では、CD数量は約9,120万枚となっています。
同じ2025年でも数字が違うのは誤りではありません。
前者は「会員社が何枚生産したか」。
後者は会員社の正味出荷実績などと市場占有率をもとに「国内市場でどれだけ売れたか」を推計した数字です。
生産数量と市場売上数量は別の統計なので、本記事でも混ぜて扱いません。
これは約100年間のデータを正確に読むために欠かせない区別です。
2025年|ダウンロードより古いCDが大きく残った
2025年の市場推計では、
CD 約1,686億円
ダウンロード 約114億円
です。
CDより後に登場したダウンロードの方が、現在でははるかに小さな市場となりました。
単純に考えれば、
レコード
CD
ダウンロード
ストリーミング
という順番で新しいものへ置き換わっていきそうです。
実際にはそうなっていません。
アナログは残り、CDも残りました。
その一方、途中で登場したダウンロードはストリーミングによって主役を譲っています。
新しい媒体ほど長く生き残るとは限らない。
この事実は、約100年の音楽市場を振り返るうえで非常に興味深いところです。
2020~2025年|「聴く」と「持つ」が別々の商品になった
ストリーミングが普及する以前、CDには二つの役割がありました。
音楽を聴くこと。
そして、その作品を物理的に所有することです。
現在は、この二つを分けられます。
普段の音楽はストリーミングで聴く。
特に好きな作品はCDやレコードとして買う。
必要ならダウンロードしてデータを所有する。
映像作品を別の商品として購入する。
音楽を楽しむ方法を、一つに統一する必要がなくなりました。
約100年前には、音楽を自由に繰り返し聴くためにレコードを手に入れる必要がありました。
2025年には、音楽を聴くだけなら物理商品は必要ありません。
それでもCDは売れ、アナログレコードも増えています。
これは物理メディアが「再生するために必要な物」から、好きな音楽を形として残すための商品へ役割を変えたことを示しています。
SPレコードから始まった日本の音楽市場は、ストリーミングによって物理メディアが消えるところへ到達したのではありません。
聴く方法と、所有する方法を自由に選べるところまで到達したのです。
※統計出典:一般社団法人 日本レコード協会。「音楽ソフト種類別生産実績推移」「音楽配信売上実績」「音楽ソフト・音楽配信売上推計」をもとに、つぶログ記事用に整理・加工。
97年の音楽メディア史|大きな転換点だけを一覧で見る
ここまで見てきた1929~2025年の変化から、特に大きな転換点だけを抜き出すと次のようになります。
| 年 | 転換点 |
|---|---|
| 1929 | 日本レコード協会の長期統計がSPレコード1,048万3,000枚から始まる |
| 1959 | 17cm・45回転盤がSPの生産数量を上回る |
| 1967 | 音楽ソフト生産数量が年間1億枚・巻を突破 |
| 1976 | アナログディスク生産数量が1億9,975万2,000枚で過去最高 |
| 1982 | 日本でCDプレーヤーと商用CDが発売 |
| 1988 | CD生産数量がアナログディスクを上回る |
| 1989 | オーディオレコード新譜数が2万4,789タイトルで統計上最多 |
| 1992 | 8cm CD生産数量が年間1億枚を突破 |
| 1997 | 8cm CDが1億6,782万7,000枚でピーク |
| 1998 | CD生産数量が約4億5,717万枚へ |
| 2000 | 12cm CDシングルが8cm CDを大きく上回る |
| 2002 | 「着うた」開始 |
| 2004 | 「着うたフル」開始 |
| 2005 | 日本レコード協会が音楽配信売上の公表を開始 |
| 2018 | ストリーミング売上がダウンロードを上回る |
| 2020 | ストリーミング認定開始 |
| 2022 | RIAJ会員社の音楽配信売上が年間1,000億円を突破 |
| 2025 | 国内レコード市場全体の売上推計が約3,988億円に |
この表だけでも、日本の音楽史が一度の大転換で現在へ来たわけではないことが分かります。
SPからアナログ盤、CD、ダウンロード、ストリーミングへと大きな変化がある一方、その途中にはカセットや8cm CD、12cmマキシシングル、着うたのように、特定の時代を強く象徴する商品やサービスもありました。
97年分を並べて分かった、意外な数字
年代ごとに見るだけでは気付きにくいのが、「市場の大きさ」と「作品数」「デビューするアーティスト数」が必ずしも同じ動きをしていないことです。
長期統計を横断すると、いくつか興味深い違いが見えてきます。
新譜が最も多かったのはCD市場のピークより9年前
日本レコード協会が公開する種類別新譜数で、最も多いのは1989年の2万4,789タイトルです。
一方、CD生産数量が最大規模となるのは1998年。
両者には9年の差があります。
1995年にも2万797タイトル、1996年は2万1,300タイトル、1997年は2万560タイトル、1998年は2万579タイトルと高い水準でしたが、1989年には届きません。
つまり、最も多くのCDが作られた時代と、最も多くの新譜が発売された時代は同じではありません。
一作品あたりの生産規模、シングルとアルバムの構成、市場に出る作品の種類など、複数の要因によって市場の姿は変わります。
2025年の物理新譜数は1989年の4割弱
2025年のオーディオレコード新譜数は9,524タイトルです。
1989年の2万4,789タイトルと比較すると約61.6%少なく、約38.4%の水準になります。
ただし、この数字から「現在作られている音楽が昔の4割になった」と考えることはできません。
この統計が数えているのはオーディオレコードとして発売された新譜であり、現在存在する配信限定作品などを同じ条件で網羅した数字ではないためです。
むしろ見えてくるのは、音楽を世に出すために物理商品を発売することが必須ではなくなったという変化です。
※比率は日本レコード協会公開値をもとにつぶログで算出。
デビューアーティストが最も多かったのは1970年
デビューアーティスト数にも意外な結果があります。
日本レコード協会の統計で最多となるのは、1970年の531組です。
1971年も518組。
その後では1991年の510組、2008年の512組、2009年の505組、2012年の501組など、異なる時代に500組を超えています。
CD市場が最大化した1990年代後半だけにデビューが集中しているわけではありません。
2025年は328組でした。
ここからも、物理メディア市場の大きさと、新しく登場するアーティスト数は別の動きをすることが分かります。
なお、この統計は日本レコード協会加盟会社関係分で、グループは1組を1アーティストとして数えています。
物理新譜が減っても、音楽市場全体が縮小するとは限らない
さらに興味深いのが2019年以降です。
オーディオレコード新譜数は、
2019年 1万1,149タイトル
2025年 9,524タイトル
となり、約14.6%減少しました。
一方、会員社以外も含めた国内レコード市場全体の売上推計は、
2019年 約2,959億円
2025年 約3,988億円
となり、約34.8%増えています。
二つは対象の異なる統計なので直接の因果関係を示す数字ではありません。
しかし、少なくとも**「物理商品の新譜数が減ったから、日本の音楽市場全体も同じように縮小した」という関係ではない**ことは分かります。
ストリーミングをはじめ、物理商品とは別の形で音楽へお金を払う方法が大きくなったからです。
※増減率は日本レコード協会公開値をもとにつぶログで算出。
97年間で変わったのは「売る媒体」だけではない
SPレコードからCDへの変化を見ると、音楽史はメディアの進化として捉えたくなります。
しかし97年間を通して見ると、より大きく変わったのは音楽を商品にする方法そのものでした。
大きく分ければ、三つの段階があります。
物理商品を買う
SPレコード、アナログ盤、カセット、CD。
媒体は変わっても、音楽が記録された商品を購入する点は共通していました。
音楽データを買う
着うたフルやダウンロード販売では、ディスクやテープがなくても一曲を購入できるようになります。
物体はなくなりましたが、「欲しい作品を一つずつ買う」という考え方は続いていました。
音楽へのアクセスに料金を払う
ストリーミングでは、一曲ずつ購入しなくてもサービスを通じて膨大な楽曲を再生できます。
ここで初めて、音楽を楽しむことと、一曲を自分のものとして購入することが切り離されました。
レコードからCDへの交代以上に、長い目で見れば「一曲ずつ買わなくてもよくなった」ことの方が大きな変化だったのかもしれません。
それでも物理メディアが残った理由
では、ストリーミングがここまで便利になったのに、なぜCDやアナログ盤は残っているのでしょうか。
一つの答えは、物理メディアの役割が変わったことにあります。
かつては、好きな音楽を自由な時間に聴くためにレコードやCDを手に入れる必要がありました。
現在は、その必要がありません。
その代わり、
ジャケットを見る
歌詞カードやブックレットを読む
棚へ並べる
限定仕様を集める
好きなアーティストの作品を形として持つ
といった、音を再生すること以外の価値がより目立つようになりました。
アナログ盤の再成長は、その変化を象徴しています。
物理メディアは「音楽を聴くために必要な物」から、「好きな音楽を所有する体験を楽しむ物」へ変わりつつあります。
新しい媒体が古い順番に消していったわけではない
97年間で特に面白いのは、媒体が登場した順番と現在まで残った順番が一致しないことです。
アナログレコードはCDより古い媒体ですが、2025年にも生産されています。
CDもストリーミング時代に年間1億枚規模の生産実績があります。
その一方、CDより後に登場したダウンロード販売は、ストリーミングの成長によってデジタル市場の主役ではなくなりました。
つまり、
古い=消える
新しい=残る
ではありません。
新しい方法で完全に代替できるものは縮小しやすく、別の楽しみ方を持つものは残る。
約100年を通して見ると、媒体の寿命を決めてきたのは新しさだけではなく、その媒体でしか得られない価値があるかどうかだったことが見えてきます。
時代をまたいで「どの曲が一番ヒットしたか」は単純比較できない
音楽の売られ方が変われば、ヒットを測る数字も変わります。
レコードやCDでは販売枚数。
ダウンロード時代にはダウンロード数。
ストリーミングでは再生回数が大きな指標になりました。
2020年から始まったRIAJのストリーミング認定では、現在1億回でプラチナ、5億回でダイヤモンド、10億回でダブル・ダイヤモンドです。
しかし、
100万枚売れたCD
100万ダウンロードされた楽曲
1億回再生された楽曲
を同じ尺度で並べることはできません。
一人が購入する商品と、一人が何度も再生できるストリーミングでは、数字の意味そのものが違うからです。
時代を超えてヒットを比べるなら、数字の大きさだけでなく、その時代にどのように音楽が消費されていたのかまで見る必要があります。
「CDが売れなくなった」だけでは97年間の変化は説明できない
1990年代後半と比べれば、CD生産数量が大幅に減ったのは事実です。
しかし、それだけで現在の音楽市場を語ることはできません。
CDからダウンロードへ。
ダウンロードからストリーミングへ。
さらにCDやアナログ盤は別の価値を持つ物理商品として残りました。
現在は、昔なら一枚のCD購入へ集まっていた音楽への支出が、
CD
アナログ盤
音楽映像商品
ダウンロード
サブスクリプション
広告型ストリーミング
などへ分かれています。
「何枚売れたか」だけで日本の音楽市場全体を測れる時代ではなくなったということです。
まとめ|約100年で、日本人と音楽の距離はここまで変わった
日本レコード協会の長期統計は、1929年のSPレコード1,048万3,000枚から始まります。
それから2025年まで97年。
SPは別のレコード規格へ変わり、アナログ盤の横にカセットが加わり、1980年代にはCDが急成長しました。
1990年代にはCDが年間4億枚を超える巨大市場となり、2000年代には携帯電話へ直接音楽を届ける「着うた」「着うたフル」が登場。
そして2018年には、ストリーミング売上がダウンロードを上回りました。
現在は、音楽を聴くために一曲ずつ所有する必要さえありません。
それでもCDはなくならず、アナログレコードも再び増えています。
ここまでの歴史から見えてくるのは、単なるメディアの新旧ではありません。
日本人は「音楽を買うこと」をやめたのではなく、音楽へお金を払う理由と方法を増やしてきた。
聴くために買う。
データとして持つために買う。
作品そのものを所有するために買う。
あるいは、所有せず自由に聴くためにサービスを利用する。
約100年前にはレコード一枚を手元へ置くことで得ていた「好きな音楽を好きなときに聴く」という自由は、現在ではスマートフォン一台で得られるようになりました。
一方で、音楽を形として残す楽しみまで消えたわけではありません。
SPレコードからストリーミングまで97年間。変わってきたのは音楽そのものではなく、私たちが音楽とどう付き合うかだった。
長期統計を通して見ると、日本の音楽市場の歴史はその変化を鮮明に映しています。
※統計出典:一般社団法人 日本レコード協会。本文中の表・比較・比率は、同協会公開の「音楽ソフト種類別生産実績推移」「オーディオレコード種類別新譜数の推移」「デビューアーティスト数推移」「音楽配信売上実績」「音楽ソフト・音楽配信売上推計」をもとに、つぶログ記事用に整理・加工。