- 初代ゼルダの裏ゼルダはなぜ生まれた?セカンドクエスト誕生の裏話
- 裏ゼルダは、最初から計画された二周目ではなかった
- なぜダンジョンのデータが半分しか使われなかったのか
- 宮本茂氏は、なぜダンジョンを作り直させなかったのか
- 裏ゼルダは単なる高難度モードではない|表との違い
- 裏ゼルダのダンジョンには「ZELDA」の文字まで隠されていた
- 「ZELDA」と入力すれば、最初から裏ゼルダを遊べる
- 初代『ゼルダの伝説』は、もともとダンジョンから作られたゲームだった
- 1986年のゲームに、なぜこれほどの二周目が用意されたのか
- 裏ゼルダは「強くてニューゲーム」の元祖なのか
- 後年の「裏ゼルダ」とは何が違うのか
- もし手塚卓志氏が間違えていなかったら、裏ゼルダは存在したのか
初代ゼルダの裏ゼルダはなぜ生まれた?セカンドクエスト誕生の裏話

1986年2月21日、ファミリーコンピュータ ディスクシステムと同じ日に発売された初代『ゼルダの伝説』。
大魔王ガノンを倒し、ゼルダ姫を救い出したプレイヤーにはもう一つの冒険が用意されていた。
その名は「裏ゼルダ」。海外では「Second Quest(セカンドクエスト)」と呼ばれる、通常よりも難しい第二の冒険だ。
ダンジョンの構造が変わり、入口の場所も変わる。せっかく覚えた攻略方法が通用しなくなり、見慣れたハイラルを再び探し回ることになる。
今ならクリア後の追加要素として理解できる仕組みだが、発売は1986年。なぜ、シリーズ第1作にこれほど手の込んだ二周目が収録されていたのだろうか。
実は、裏ゼルダは開発中の思いがけないミスから生まれた。
しかも、後世に生まれた都市伝説ではない。開発に携わった手塚卓志氏と中郷俊彦氏が、任天堂の公式インタビューでその経緯を明かしている。
その内容を知ると、初代ゼルダにもう一つの冒険が存在すること自体が、少し違って見えてくる。
裏ゼルダは、最初から計画された二周目ではなかった
誕生の経緯が明らかになったのは、2009年の任天堂公式企画「社長が訊く『ゼルダの伝説 大地の汽笛』」だった。
このインタビューの番外篇に、初代『ゼルダの伝説』の開発で使われた手書きのダンジョン設計図が登場する。
当時の資料が残っていただけでも興味深いが、そこで語られた話はさらに意外だった。
ダンジョンの設計を進めていた手塚卓志氏は、完成したマップを中郷俊彦氏へ渡した。
中郷氏がその設計図に従ってデータを入力すると、ある問題が発覚する。
用意されていたダンジョン用データの、半分しか使われていなかったのである。
残りのデータはどうなったのか。中郷氏に尋ねられた手塚氏は、そこで間違いに気づいたという。
せっかくダンジョンを作ったのに、予定していた領域の半分を使っていない。普通なら設計の見直しを考えるところだ。
ところが、宮本茂氏の反応は違った。
中郷氏が振り返る宮本氏の言葉は、「それでええわ」。
ダンジョンを最初から作り直すのではなく、現在の構成をそのまま採用したのである。
そして、残った半分のメモリを使って、もう一組のダンジョンを制作することになった。
それこそが、裏ゼルダだった。
インタビューでは、岩田聡氏が「手塚氏の間違いがなければ裏ゼルダはできなかったのか」と確認している。中郷氏の答えは、明確な肯定だった。
つまり、裏ゼルダは最初から計画されていた大規模な追加モードではなく、開発途中に発覚したミスをきっかけに作られたものだったのである。
しかも、このインタビューには、通常のダンジョンマップと裏ゼルダの原本が掲載されている。
現在でも任天堂公式「社長が訊く」番外篇2『裏ゼルダ』の裏話で、開発者の証言と当時の設計図を一緒に見ることができる。
なぜダンジョンのデータが半分しか使われなかったのか
では、そもそもなぜ、ダンジョンのデータが半分しか使われていない状態になったのだろうか。
この話を理解するには、初代ゼルダの地下迷宮がどのように作られていたのかを知る必要がある。
初代のダンジョンは、一つひとつの部屋をつないだ構造になっている。
部屋へ入ると画面が切り替わり、敵を倒したり、鍵を使ったり、壁を爆破したりしながら先へ進む。ダンジョンの地図を手に入れれば、部屋の配置から迷宮全体の形が見えてくる。
開発段階では、この「1マス=1部屋」という構造を利用していた。
手塚氏らは、限られたメモリへできるだけ多くのダンジョンを収めようと、決められた範囲をパズルのように区分けしていたという。
方眼紙に複数の迷路を描く場面を想像するとわかりやすい。
ある迷宮の部屋を配置し、その隣へ別の迷宮を組み込む。互いの領域が無駄に重ならないようにしながら、限られた範囲へできるだけ多くの部屋を収める。
今のゲームであれば大きなマップを自由に作ることも珍しくないが、初代ゼルダは1980年代半ばの作品だ。使用できるメモリを考えながら、ゲームの世界そのものを設計する必要があった。
そんな作業の結果、手塚氏が完成させたマップは、予定していたデータの半分しか使っていなかった。
ただし、これはディスクカード全体の記憶容量が50%余っていたという話ではない。開発者が説明しているのは、ダンジョン制作で使っていたデータとメモリについてである。
具体的なバイト数こそ明らかになっていないものの、もう一組の迷宮を作れるだけの領域が残っていたことになる。
ここで興味深いのは、未使用のデータが見つかったこと以上に、それをどう活用したかだ。
表のダンジョンを大きくするのか。それとも、別の遊びに使うのか。
この選択が、初代ゼルダの完成形を大きく変えることになった。
宮本茂氏は、なぜダンジョンを作り直させなかったのか
裏ゼルダ誕生の話には、もう一つ見逃せないところがある。
手塚氏の設計が予定と違っていたことよりも、その設計を宮本氏がそのまま採用したことである。
半分しか使われていないのなら、残りも使って表のダンジョンを増やせばよい。そうした修正を求める選択肢もあったはずだ。
しかし、宮本氏は作り直しを求めなかった。
当時のスタッフが振り返る理由は、意外なほど単純だった。
実際に遊んでみると、完成した内容がちょうどよかったのである。
ダンジョンを増やす余地があるからといって、増やした分だけゲームが面白くなるわけではない。
初代ゼルダでは、プレイヤーが地上を探索し、地下迷宮を発見し、謎を解いてトライフォースのかけらを集めていく。
一つのダンジョンを攻略するまでに必要な探索。新しい道具を手に入れてから次の場所へ向かうまでの流れ。そして、最後の迷宮へ到達するまでの長さ。
そうした冒険のまとまりが、現在の構成ですでに成立していたのだろう。
そこで表の冒険を無理に膨らませる代わりに、もう一度遊べる別の冒険を用意することになった。
これは単に、使われなかったメモリを埋めるためだけの作業ではない。
一度ゲームを終えたプレイヤーが、また同じ世界を探索したくなるように作り直す必要があった。
そして完成した裏ゼルダは、敵の数を増やしただけの高難度モードではなかったのである。
裏ゼルダは単なる高難度モードではない|表との違い
裏ゼルダを始めると、まず地上世界が見覚えのあるハイラルであることに気づく。
森や山、湖など、フィールドの基本的な地形は共通している。まったく別の世界へ移動するわけではない。
しかし、以前ダンジョンがあった場所へ行っても、入口が見つからないことがある。
岩を動かす。木を燃やす。特定の場所で笛を吹く。そうした行動によって入口を発見しなければならない場面が増えている。
ようやくダンジョンへ入ると、今度は内部構造まで違う。
敵の配置も変わり、入手できる道具や先へ進むための仕掛けも組み直されている。
初代『ゼルダの伝説』の画面や雰囲気は、任天堂が公開した『ゲーム&ウオッチ ゼルダの伝説』の紹介映像でも確認できる。2021年発売の復刻商品を紹介した公式映像だ。
表と裏の主な違いを整理すると、次のようになる。
| 比較項目 | 表ゼルダ | 裏ゼルダ |
|---|---|---|
| 地上フィールド | 通常のハイラル | 基本地形は共通。入口や隠し要素が変更される |
| 地下迷宮 | LEVEL1~9 | LEVEL1~9を別構成で用意 |
| 入口の場所 | 通常の配置 | LEVEL1を除いて別の場所へ変更 |
| 道具の入手 | 通常の入手順序 | 入手場所や順序が変更される |
| 謎解き | 隠し通路や爆破できる壁など | 通り抜けられる壁など、複雑な仕掛けが増える |
| 難易度 | 通常の冒険 | 探索・戦闘・謎解きが全体的に難しい |
見た目の世界が似ているからこそ、この違いが効いてくる。
表の攻略で身につけた知識は、役に立つこともあれば、かえって思い込みの原因にもなる。
初めて入る場所なら警戒する。ところが、一度クリアした場所なら、以前の記憶を頼りに進もうとする。
裏ゼルダは、そんなプレイヤーの経験そのものを揺さぶる作りになっている。
LEVEL1は同じ場所にあるのに、中身が違う
その違いがわかりやすいのが、最初のダンジョンである。
表ゼルダのLEVEL1は、地図を見るとワシのような形をしていることから「Eagle」とも呼ばれる。
一方、裏ゼルダのLEVEL1は、アルファベットの「E」の形をしている。
入口は表と同じ場所にある。ボスもアクオメンタスで共通だ。
しかし、中の部屋の配置は別物。表で通った道をそのままたどることはできない。
さらに大きいのが、弓の入手場所だ。
表ゼルダではLEVEL1で弓を入手できるが、裏ゼルダではLEVEL5まで進まなければ手に入らない。
裏のLEVEL1で手に入る主な道具はブーメランだけだ。
同じ場所から冒険を始めても、道具を集める順番が違えば、進め方も変わる。
単に敵を増やして難しくしたのではなく、冒険の組み立てから変更されていることがわかる。
LEVEL2は石像の下、LEVEL3は笛で入口が現れる
裏ゼルダでは、ダンジョンへ入るまでの探索も難しくなっている。
LEVEL2の入口は、石像の下に隠されている。
表ゼルダではブルーリングを購入できた場所に、裏ではLEVEL2の入口がある。
そして、ここで手に入る重要な道具が笛だ。
次のLEVEL3では、笛を使うことで隠された入口を出現させる。表ゼルダのLEVEL2があった場所だが、そのままでは入れない。
LEVEL4も同様に、岩の下に入口が隠されている。発見するにはパワーブレスレットが必要になる。
同じハイラルの地形を使っていても、プレイヤーが探すものは変わっている。
以前は店だった場所が迷宮になり、知っているはずの入口が見当たらない。
表をクリアしたからといって、裏の冒険で迷わずに進めるわけではないのである。
壁を通り抜ける仕掛けまで登場する
裏ゼルダでは、ダンジョン内部の謎解きも厄介になっている。
代表的なのが、見た目には普通の壁なのに、そのまま歩いて通り抜けられる仕掛けだ。
初代ゼルダでは、怪しい壁があれば爆弾を使ってみるのが基本的な攻略方法の一つだった。
ところが裏ゼルダでは、爆弾で壊すのではなく、壁に向かって歩かなければ進めない場所がある。
もちろん、見えている壁をすべて調べていたら大変だ。
地図を見ながら部屋のつながりを考え、行けるはずなのに行けない場所がないか、壁の向こうに何か隠されていないかを探す必要がある。
こうした仕掛けは特に後半のダンジョンで重要になる。
一度クリアした人だからこそ、これまでの常識が通用しないことに戸惑う。
裏ゼルダは、プレイヤーの腕前だけでなく、探索の発想まで試してくる第二の冒険だった。
裏ゼルダのダンジョンには「ZELDA」の文字まで隠されていた
そして、裏ゼルダにはもう一つ面白い仕掛けがある。
最初の5つのダンジョンは、それぞれアルファベットの形をしているのだ。
LEVEL1は「E」。LEVEL2は「A」。LEVEL3は「L」。LEVEL4は「D」。LEVEL5は「Z」。
番号順に並べると「E・A・L・D・Z」だが、文字を並べ替えると「ZELDA」になる。
| 裏ゼルダ | 迷宮の形 |
|---|---|
| LEVEL1 | E |
| LEVEL2 | A |
| LEVEL3 | L |
| LEVEL4 | D |
| LEVEL5 | Z |
ゲーム中にダンジョンマップを手に入れると、部屋の配置が浮かび上がる。その形自体がアルファベットになっている。
ただ文字を壁に書いたり、隠しメッセージとして表示したりするのとは違う。
プレイヤーが実際に歩き、敵と戦い、宝物を探し回った迷宮全体が、そのまま文字になっている。
しかも、それぞれ独立したダンジョンとして成立している。
形を文字に合わせれば、部屋を配置できる位置は限られる。そこへ敵、宝箱、鍵、隠し通路、ボスまで組み込まなければならない。
一度目の冒険を遊んだ人へ、もう一度別の謎を解かせる。そのうえ、完成した地図にも秘密を忍ばせる。
なお、開発者インタビューで語られているのは、裏ゼルダが生まれた経緯までだ。このアルファベットの並びを採用した詳しい理由については、同じ証言の中では語られていない。
それでも、実際の迷宮を比較すれば、最初の5つに文字の形が使われていることはわかる。
各迷宮の地図と構造は、Zelda Dungeonのセカンドクエスト迷宮資料でも確認できる。
開発中に残ったメモリを使うことから始まったとはいえ、完成した裏ゼルダは、単なる空き容量の埋め合わせにはなっていない。
もう一度ハイラルを冒険するための工夫が、迷宮の形にまで及んでいるのである。
「ZELDA」と入力すれば、最初から裏ゼルダを遊べる
裏ゼルダは、通常なら表ゼルダをクリアした後に遊べる。
しかし、実は表をクリアしなくても始められる方法がある。
新しくプレイヤー名を登録するとき、名前を「ZELDA」にするだけだ。
すると、最初から裏ゼルダの冒険を始められる。
この仕掛けは、2021年に任天堂が公開した『ゼルダの伝説 ゲーム&ウオッチ』の公式紹介記事でも案内されている。
つまり、裏ゼルダはクリア後に初めてデータが追加されるような仕組みではない。
初代のソフトに最初から収録されている、もう一つの冒険なのである。
また、裏ゼルダを遊べる状態では、ファイル選択画面に表示されるリンクが剣を掲げた姿になる。
通常の冒険と見分けるための小さな違いだ。
作品名を名前にするだけで高難度の冒険へ切り替わるというのも、いかにも昔のゲームらしい秘密である。
初代『ゼルダの伝説』は、もともとダンジョンから作られたゲームだった
ここで、初代ゼルダそのものの開発史にも目を向けてみよう。
実は本作には、裏ゼルダ以外にも興味深い開発の経緯がある。
初期の構想では、現在のような広大な地上フィールドが存在しなかったのだ。
任天堂の「社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ Wii』」で、手塚氏と中郷氏は、初代ゼルダを最初に作り始めたころの様子を振り返っている。
最初はダンジョンの仕組みから制作が始まり、画面にはいくつかの山があり、その中に入るとダンジョンがあるという、非常にシンプルなゲームだったという。
開発が進む中で、地上世界もあった方がよいという話になり、後から地上フィールドが作られ始めた。
現在では、広い世界を歩き回り、自分でダンジョンを見つけることが『ゼルダの伝説』の大きな魅力になっている。
しかし、その地上世界さえ、最初の段階から完成形として決まっていたわけではなかった。
ダンジョンから開発を始め、後から地上の冒険が加わり、さらに思いがけない設計上のミスから裏ゼルダまで生まれた。
今では当たり前のように感じられる初代ゼルダの構成も、開発の過程で少しずつ形になっていったのである。
当時の開発については、任天堂公式「社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ Wii』」にも詳しい証言が残されている。
1986年のゲームに、なぜこれほどの二周目が用意されたのか
初代『ゼルダの伝説』が発売された1986年は、任天堂がディスクシステムを市場へ投入した年でもある。
当時のファミコンで、ゲームの進行状況を保存しながら長い冒険を楽しめることは、大きな魅力だった。
プレイヤーは地上を自由に探索し、8つの地下迷宮で知恵のトライフォースのかけらを集め、最後にガノンの待つ迷宮へ挑む。
表の冒険だけでも、十分に一つのゲームとして成立している。
そこへ、まったく異なる構造のダンジョンをもう一組用意するというのは、かなり思い切った作りだ。
現在であれば、クリア後の高難度モードや追加コンテンツ、周回プレイといった仕組みは珍しくない。
しかし、初代ゼルダでは、シリーズの第1作からそうした遊びが用意されていた。
しかも、裏ゼルダは新しい物語を大量に追加する方法ではない。
同じ地上フィールド、同じ基本的な操作、同じ道具や敵を使いながら、ダンジョンの配置と謎解きを組み替えている。
一度遊んだ人が持っている知識を、次の冒険でどう揺さぶるか。
そう考えると、限られたメモリを利用して別の冒険を作るという判断は、初代ゼルダのゲームデザインともよくかみ合っている。
使える容量を増やしたから面白くなったのではない。
残った容量を、別の遊びへ変える発想があったからこそ、裏ゼルダは成立したのだ。
裏ゼルダは「強くてニューゲーム」の元祖なのか
クリア後にもう一度ゲームを始める仕組みという点では、後年の「強くてニューゲーム」と重なる部分もある。
しかし、両者は同じではない。
強くてニューゲームとは、一般にクリア時の能力や所持品などを引き継ぎ、ゲームの最初から再び遊ぶ仕組みを指す。
一方、初代ゼルダの裏ゼルダでは、表の冒険で集めたハートや装備を、そのまま持ち越すわけではない。
新しい冒険では、再びアイテムを集め、ダンジョンを攻略していく必要がある。
つまり、強くなった状態で同じ冒険をやり直すのではなく、最初から異なる構成の冒険に挑戦する仕組みだ。
この違いは、ゲームにおける周回プレイの歴史を考えるうえでも重要になる。
初代ゼルダが発売された翌1987年には、続編『リンクの冒険』が登場する。
こちらには、クリア後にレベルや習得した魔法、剣技などを残して、同じ冒険を最初から始められる仕組みがある。
初代の裏ゼルダと『リンクの冒険』では、二周目の方向性が違っていたわけだ。
こうした周回プレイの歴史については、ゲーム史上最初の「強くてニューゲーム」は何だったのかを調べた記事で、1980年代の作品から『クロノ・トリガー』までを詳しく追っている。
後年の「裏ゼルダ」とは何が違うのか
「裏ゼルダ」という名前を聞いて、別の作品を思い浮かべる人もいるだろう。
例えば、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』には、後年「裏」として作られた別構成のダンジョンが存在する。
もともとは64DD向けの企画として進められ、後にゲームキューブ向けの『時のオカリナGC裏』などで遊べるようになった内容だ。
さらに『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』にも、左右反転した世界や通常の2倍の被ダメージなどを特徴とする裏ゼルダが収録されている。
しかし、今回取り上げている初代のセカンドクエストとは別のものだ。
また、初代の裏ゼルダは後から発売された追加ソフトでも、発売後のアップデートによって実装されたものでもない。
1986年2月21日のディスクシステム版に、最初から収録されていた。
のちにカセット版や復刻版でも遊べるようになったが、仕組みそのものはシリーズ第1作の発売時点ですでに完成していたのである。
もし手塚卓志氏が間違えていなかったら、裏ゼルダは存在したのか
最後に、最初の疑問へ戻ろう。
初代『ゼルダの伝説』に裏ゼルダが収録されたのは、ダンジョンのデータが予定どおりに使われていなかったからだった。
手塚卓志氏が設計し、中郷俊彦氏がデータを入力する中で、半分しか使われていないことが発覚した。
宮本茂氏は表のダンジョンを作り直させず、その構成を採用。そして、残ったメモリで別のダンジョンを作ることになった。
この流れのどこか一つが違っていれば、少なくとも私たちの知る形の裏ゼルダは生まれていなかった可能性がある。
当時の開発者自身が、設計上のミスがなければ裏ゼルダはできなかったと振り返っている。
そして何より面白いのは、単なる失敗談で終わらなかったことだ。
そのままでも十分に遊べる表の冒険を残し、空いた領域を利用して、クリアした人のためにもう一度楽しめる世界を用意した。
見慣れた地上に隠された新しい入口。通ったことのない地下迷宮。変わった道具の入手順。そして、地図に浮かび上がる「ZELDA」の文字。
最初は偶然だったかもしれない。
しかし、その偶然をもう一つの遊びとして完成させたことで、初代『ゼルダの伝説』には、表だけで終わらない冒険が残された。
開発中に起きた一つのミスが、40年後にも語られる秘密になったのである。
初代そのものの操作、探索、難易度、ディスクシステム版とカセット版の違いについては、初代『ゼルダの伝説』の忖度なしレビューで詳しく紹介している。