レトロゲーム系

『天外魔境II 卍MARU』レビュー|なぜPCエンジンTier90点・S Tierなのか

天外魔境II 卍MARU レビュー|今遊んでも面白い?90点の理由

1992年3月26日にハドソンから発売された、PCエンジン SUPER CD-ROM²用RPG『天外魔境II 卍MARU』。

音声付きのビジュアルシーン、アニメーション、CDを生かした音楽。PCエンジンを代表する大作として語られるとき、まず目立つのはそうした部分です。KONAMIも現在、本作をシリーズ第2作として紹介し、24名の声優が参加したビジュアルシーン、グラフィックやアニメーション、音楽を特徴として挙げています。

しかし、本作を高く評価する理由は「1992年にこれだけ豪華だった」だけではありません。

実際に何十時間も向き合うことになるのは、町を歩き、人から話を聞き、装備を整え、フィールドを移動し、敵と戦い、術を増やし、ダンジョンを抜けて次の土地へ向かうというRPGそのものです。

その長い旅がゲームとして持続するように作られている。

そして、旅の節目へ音声や映像が入る。

この順番が『天外魔境II』の強さです。

つぶログのPCエンジン全ソフトTier表では、本作を90点・S Tier・総合9位タイと評価しています。完成度19点、映像・音楽・演出14点、PCエンジンらしさ10点という高得点も、「CD作品として豪華」という一面だけではなく、大規模なRPGを最後まで動かす設計まで含めた評価です。

では、なぜ90点なのか。

そして、92点で総合1位タイの作品群とはどこに差があるのか。

『天外魔境II』を、大作という言葉の中身から見ていきます。

『天外魔境II 卍MARU』はどんなゲーム?

舞台は、現実の日本をそのまま描いた国ではない「ジパング」。

かつて火の一族によって封じられたヨミの復活が迫り、その力の源となる暗黒ランが各地へ出現します。火の一族の末裔である戦国卍丸は、暗黒ランを断つために必要な聖剣を求め、ジパング各地を旅することになります。

戦闘はランダムエンカウントのコマンド式。

武器や防具を整え、各地の天狗から巻物を授かり、術を使いながら戦います。敵の残り体力が数値で表示されるため、通常攻撃で押し切るか、回復や術を使うかといった判断も立てやすい作りです。

戦闘だけを取り出せば、奇抜なルールのRPGではありません。

その代わり、

戦う。強くなる。新しい土地へ行く。仲間や術が増える。さらに先へ進む。

というRPGの基本を、大きな世界の中で長く回せるように作られています。

『天外魔境II』が強いのは、豪華なイベントの合間にゲームがあるのではなく、ゲームを進めた先にイベントが待っていることです。

『ZIRIA』から3年、CD-RPGは「大きくする」だけでは足りなくなった

前作『天外魔境 ZIRIA』PCエンジン版レビューは1989年発売。

CD-ROM²を使い、音声、アニメーション、CD音楽と広い世界をRPGへ取り込んだシリーズ第1作でした。つぶログでは83点・A Tierと評価しています。

『II』も、その方向を受け継いでいます。

ただし、世界やイベントを大量に増やすだけでは、ゲームまで面白くなるとは限りません。

長くなれば移動も増える。

戦闘回数も増える。

次のイベントまでが遠ければ、物語の勢いも失われます。

そこで『II』では、作品の規模と同時に長いRPGをどう進ませるかへかなり強く手が入っています。

ディレクションと脚本・構成を担った桝田省治は、卍丸の移動やレベルアップを速くし、レベルアップ時には全快、歩くだけでも回復し、敗北しても所持金を失わないようにしたと制作ノートへ残しています。それでも想定される平均プレイ時間は70~80時間規模でした。

『ZIRIA』で開いた道を、さらに巨大にした。

同時に、その巨大さにプレイヤーが押し潰されない仕組みも増やした。

ここが『II』の大きな進化です。

広いジパングを歩くから、旅をしている感覚が生まれる

『天外魔境II』では、町とダンジョンを一直線に往復するだけではありません。

広いフィールドを進み、村や町を巡り、情報を集め、新しい場所へ向かいます。徒歩だけでなく移動手段も増え、ゲームの進行によって行ける範囲が広がっていきます。たとえば、船を使えない土地で「船の絵」を実体化させて本物の船として利用するような、ジパングらしい奇妙な仕掛けもあります。

こうした移動は、単にマップが広いことを見せるためだけのものではありません。

新しい土地へ到達すれば、町並みが変わる。

売られている装備が変わる。

出会う敵も変わる。

新しい術や仲間、乗り物につながる出来事も待っている。

遠くまで歩いたことが、そのまま「ここまで旅をしてきた」という感覚になります。

大作RPGでは世界の広さが数字だけになりがちですが、『天外魔境II』では、移動した距離と主人公たちの成長が一緒に進むようになっています。

仲間が増えると、攻撃回数だけでなく「持たせるもの」まで変わる

旅の途中では、カブキ団十郎、極楽太郎、絹が仲間になります。

4人はストーリー上の性格が違うだけではありません。

本作では道具や巻物を、誰にでも無制限に持たせられるわけではない。

体格の大きな極楽は卍丸やカブキより多くの道具を持てる一方、術を得意とする絹は他の仲間より多くの巻物を扱えます。

だからパーティが増えれば、

誰に回復道具を持たせるか。

誰へ巻物を渡すか。

ダンジョンへ何を持っていくか。

という管理まで変わります。

現在のRPGから見ると、持ち物制限は面倒に感じるところでもあります。

しかし、キャラクターの体格や得意分野を「設定」だけで終わらせず、プレイヤーが触るシステムに落とし込んでいるのは面白いところです。

絹という人物は、戦闘コマンドにまで物語が入っている

仲間の中でも、絹は特にゲームと物語の結び付きが強いキャラクターです。

桝田省治は、絹の「相手を傷つけたくない」という性格を戦闘へ反映させ、本人が直接攻撃する代わりにシロが攻撃を担う形へしたと制作ノートで説明しています。

キャラクター紹介で「心優しい少女」と書くだけなら、物語を読めば分かります。

『天外魔境II』では、それが実際にプレイヤーのコマンド選択へ出てくる。

物語上の人物像と、ゲーム上の性能をできるだけ離さない。

その積み重ねが、長い冒険の中で仲間を「能力値の違う4人」にしない力になっています。

なお、絹には物語上の大きな転換点があります。

そこは本作を遊ぶうえで印象の強い場面なので、ここでは触れません。

戦闘は「プレイヤーを足止めしない」ために作られている

『天外魔境II』の戦闘を考えるうえで、桝田省治が後年記した設計思想はかなり分かりやすいものです。

桝田は、本作のバトルを「どうすればプレイヤーを足止めせず、その時点のレベルや装備を受け入れたうえで勝たせるか」という方向で設計したと説明しています。ボス戦にも、プレイヤーの進め方に応じた多数の調整を仕込んだとしています。

この考え方は、70~80時間規模のRPGと相性がいい。

強い敵が出るたびに長時間レベル上げを要求していたら、本編の長さとぶつかります。

だから、通常戦は比較的テンポを保つ。

ボスでは術、回復、装備、仲間の能力を使わせる。

それでもプレイヤーを何時間も同じ場所へ留めない。

戦闘そのものを難しくするより、冒険を前へ進ませる。

『天外魔境II』のゲーム完成度19点を支えるのは、こうした思想です。

レベル、装備、術が「遠くまで来た」実感を補強する

本作では経験を積んで段が上がり、町を進むにつれて武器や防具も更新されます。

さらに各地の天狗から得る巻物によって、回復や攻撃などに使える術が増えていきます。

RPGとして見れば、どれも珍しい仕組みではありません。

だからこそ長編との相性がいい。

次の土地へ着いた。

店を覗いたら強い武器がある。

新しい術を得た。

少し前に苦戦した敵より強い相手とも戦えるようになった。

こうした小さな変化が、巨大な物語の途中に何度も入ります。

音声イベントを見たから進歩したのではなく、自分のパーティそのものが少しずつ変わる

長いゲームほど、こうした手応えが重要になります。

10分、30分という間隔で物語に波を作った

『天外魔境II』ほど長いRPGで難しいのは、プレイヤーに目的を忘れさせないことです。

桝田省治の制作ノートには、およそ10分ごとに何らかのイベントを置き、30分に一度は大きな見せ場を用意したとあります。PCエンジン mini発売時のクリエイターズインタビューでも、30分に1回の大きなイベントを実現するため、実際にストップウォッチで時間を測っていたことが語られています。

この話が面白いのは、開発秘話として珍しいからではありません。

ゲームを遊ぶと、

移動する。

戦う。

町へ着く。

情報を集める。

ダンジョンへ行く。

というRPGの日常が続きます。

その途中で人物が大きく動き、新しい敵が現れ、声や映像を使ったイベントが始まり、次の目的がはっきりする。

そして再び、自分で歩き始める。

この切り替えがあるため、数十時間の冒険でも物語が完全に背景へ引っ込みにくい。

長編シナリオを読むゲームではなく、長編シナリオの中を歩かせるゲーム。

そのためのイベント配置です。

音声とアニメーションは「豪華なご褒美」ではなく、旅の速度を変える

KONAMI公式は、本作のビジュアルシーンに24名の声優が参加したことを紹介しています。ゲーム内でも、重要な場面では音声付きの会話やアニメーション的な演出が入り、通常のフィールド上でも声を使ったイベントがあります。

ただし、町の人と話すたびに長い音声を聞くゲームではありません。

普段は、自分の速度で文章を読み、町を歩き、戦う。

物語が大きく動く場面で、声や映像が前へ出る。

この差があるからイベントが目立ちます。

もし全編が同じ密度の映像と音声だったなら、70時間以上のRPGでは逆に進行が重くなったでしょう。

静かなRPGの時間があるから、演出が入った瞬間にゲームの空気が変わる。

SUPER CD-ROM²の容量を、常時派手にするためではなく、旅へ強弱を付けるために使っています。

久石譲と福田裕彦の音楽が、巨大な世界を一色にしない

音楽も本作を語るうえで外せません。

ゲームのクレジットでは久石譲と福田裕彦が音楽を担当し、中神紀之が音楽監修として記録されています。久石譲自身も当時のサウンドトラックで音楽監督としてコメントし、メインテーマについて触れています。

数十時間を旅するRPGでは、音楽の役割も大きくなります。

フィールド。

村。

城下町。

戦闘。

敵の脅威。

大きなイベント。

乗り物。

場所と状況が変わるたびに音の表情も変わることで、巨大なジパングが同じ景色の連続になりません。

久石譲という著名な名前があるから高評価なのではなく、長編の中で場面を切り替える装置として音楽が働いていることが大切です。

SUPER CD-ROM²を使った意味は、演出とゲームを別々にしなかったこと

桝田省治は制作ノートで、SUPER CD-ROM²という規格の価値を見せることを強く意識し、大量のAVデータだけでなく、それを生かすシナリオとシステムまで用意したと説明しています。

本作を見ると、その発想は分かりやすい。

新しい乗り物を得る。

仲間の物語が動く。

強敵が姿を現す。

旅の目的が大きく変わる。

そうした場面で音声や映像が使われる。

プレイヤーが何時間もゲームとして積み上げたものに、演出が乗る形です。

つぶログTierで本作の「PCエンジンらしさ」を10点とした理由もここにあります。

CDを使ったRPGだから10点なのではなく、CDでできることをRPGの進行へ組み込んだから10点。

PCエンジンらしい作品という言葉を使うなら、その中身はここまで含めたいところです。

大きな世界は、長所と弱点を同時に生む

ここまでの話だけなら、92点どころかそれ以上でもよさそうに見えます。

しかし、本作の大きさには明確な代償があります。

広い世界を歩くから、旅をしている感覚がある。

その一方で、移動時間は増えます。

ランダムエンカウントを使うから、世界を歩く途中にも戦闘がある。

その一方で、長い旅の中では同じ基本操作を何度も繰り返すことになります。

町へ行く。

フィールドへ出る。

敵と戦う。

ダンジョンを歩く。

また敵と戦う。

次の町へ向かう。

桝田氏が移動や成長、回復を速めても平均70~80時間規模だったという事実は、本作がどれほど大きなゲームだったかをよく表しています。

一戦一戦のテンポが悪いわけではない。

問題は回数です。

短いゲームなら気にならない数秒、数十秒の反復も、何十時間となれば積み重なります。

『天外魔境II』の弱点は、「長いから悪い」という単純なものではありません。

長いからこそ、RPGの日常部分の摩擦まで何倍にも大きくなる。

ここが90点と92点の間に残ります。

なぜ92点の総合1位タイには届かなかったのか

PCエンジンTierの総合1位タイは、『イースI・II』『ゲート オブ サンダー』『ウィンズ オブ サンダー』の92点です。

『天外魔境II』が劣っているのは、物語の規模でも映像でもありません。

比較したときに差が出るのは、プレイ時間の密度です。

『ゲート オブ サンダー』では、かなりの時間が武器選択、前後攻撃、敵配置への対応に直結する。

『ウィンズ オブ サンダー』では、鎧、ショップ、ステージ選択が次の戦闘へ返ってくる。

『イースI・II』もRPGですが、成長、戦闘、物語、CD演出がより短いサイクルで進みます。

『天外魔境II』は、その三作品よりはるかに大きな時間を使って旅を成立させています。

その時間があるから、遠くへ来た感覚が生まれる。

仲間との長い関係も作れる。

巨大な物語も描ける。

同時に、移動とランダム戦闘の反復も増える。

大作であることが、90点を作った理由であり、92点へ届かなかった理由でもある。

この表裏一体が、本作の評価をいちばん分かりやすくしています。

2026年に遊んでも面白い?

長編のコマンドRPGを腰を据えて遊びたいなら、現在でも十分に魅力があります。

旅先で新しい町を見つける。

仲間が増える。

術や装備が変わる。

何時間も歩いた先で大きなイベントが起こる。

さらに次の土地が開ける。

そうやって「ゲームの中で遠くまで来た」と感じられるRPGは、現在ではむしろ珍しくなっています。

一方、短時間でストーリーだけを追いたい人には重い作品です。

1992年版には、現代のリマスターでよくある戦闘高速化やエンカウント率変更のような機能はありません。

広いフィールドとランダム戦闘も含めて『天外魔境II』です。

だから現在遊ぶと、長所も弱点も昔以上にはっきり見えます。

寄り道も移動も戦闘も含めて、一つの長い旅をしたいか。

そこが、本作を今から遊ぶ人にとって一番大きな分かれ目でしょう。

2026年現在、『天外魔境II 卍MARU』を遊ぶには

1992年のPCエンジン版そのものへ触れる方法として、PCエンジン実機+SUPER CD-ROM²環境があります。

公式復刻では、日本版PCエンジン miniに『天外魔境II 卍MARU』が収録されています。海外向けのminiには収録されておらず、日本版独自のタイトルです。

また、2011年3月17日にはPCエンジンアーカイブス版が配信され、KONAMIにはPS3/PS Vita/PSP向けの商品ページが現在も残っています。

後年にはPS2・ゲームキューブ・ニンテンドーDSでも展開されていますが、これらは1992年版と同一仕様として扱うべきものではありません。

現在、Nintendo Switch/Nintendo Switch 2、PS5、Xbox Series X|S、SteamでPCエンジン版を直接購入できる現行公式版は見当たりません。

すでにPCエンジン miniを持っているなら、現在もっとも扱いやすい公式環境のひとつです。

まとめ|大作を作ったことより、大作を最後まで動かしたことがすごい

『天外魔境II 卍MARU』には、分かりやすい華があります。

広いジパング。

個性的な仲間。

音声。

アニメーション。

CD音楽。

何十時間も続く物語。

けれど、90点の理由は、それらを足し算した結果ではありません。

世界が広いから、移動を速くする。

ゲームが長いから、戦闘で足止めしすぎない。

物語が巨大だから、一定の間隔でイベントを置く。

仲間を立たせたいから、性格を戦闘や持ち物のルールへ反映する。

映像を見せたいから使うのではなく、旅の大きな節目だから音声とアニメーションを使う。

大作であることによって生まれる問題を、大作を作る側が最初から理解している。

そこが『天外魔境II』の強さです。

同時に、どれだけ工夫しても70~80時間規模の世界から、移動やランダム戦闘の反復を完全に消すことはできません。

広いから面白い。

広いから疲れる。

長いから仲間との旅が積み上がる。

長いから同じ操作の反復も積み上がる。

この両方を持っている。

だから、つぶログのPCエンジンTierでは90点・S Tier・総合9位タイです。

92点ではない。

それでもS Tier。

『天外魔境II 卍MARU』は、SUPER CD-ROM²の容量で巨大なRPGを作った作品というより、巨大になったRPGを、ゲームとして最後まで走らせる方法まで考え抜いた作品として評価したい一本です。

-レトロゲーム系
-, , , ,