ゲーム系 サブカル文化史アーカイブ

発売中止ゲームTier|幻に終わったゲームを“惜しまれ度・歴史的影響・忘れられにくさ”でS~E評価

目次
  1. 発売中止ゲームTier|幻に終わったゲームを惜しまれ度・歴史的影響でS~E評価
  2. 評価方法|完成版の面白さではなく「発売中止そのもの」を見る
  3. 「発売中止」も一種類ではない
  4. 初回50作品のTier一覧
  5. S Tier|発売中止ゲーム史を語るなら外しにくい6作品
  6. A Tier|ゲーム史の分岐点として無視できない20作品
  7. B Tier|知名度より「調べると面白い」が強い23作品
  8. C Tier|実在は確認できる。それでも核心がまだ見えない
  9. 50本を横に並べて分かったこと|発売中止=「完全消滅」ではなかった
  10. 「完成間近だった」は、どこまで信用できるのか
  11. 中止理由を横に並べると、事情の違いが見えてくる
  12. 年代とハードで見る50作品
  13. 2026年、30年前の発売中止ゲームが本当に戻ってきた
  14. 「発売中止ゲームのその後」と、このTierは何が違う?
  15. この記事は50本で終わらない
  16. 「幻のゲーム」ほど、話を盛らない
  17. まとめ|発売されなかったゲームにも、確かに歴史が残っている

発売中止ゲームTier|幻に終わったゲームを惜しまれ度・歴史的影響でS~E評価

発売中止ゲームTierをイメージした、歴代ゲーム機と未発売ゲームの試作ROM・開発資料が並ぶゲームアーカイブのイラスト

発売が発表され、雑誌に画面が載り、イベントで遊べるところまで進みながら、店頭には一度も並ばなかったゲームがある。完成までたどり着いたのにハードの世代交代で消えたものもあれば、途中で別作品へ姿を変えたもの、会社やスタジオの事情に巻き込まれたもの、20年、30年を経てようやく正式に日の目を見たものもある。

本記事では、そうした「発売中止ゲーム」をS~EのTierに分ける。ただし評価しているのはゲームとしての出来ではない。発売されていない以上、完成版の操作感やバランス、シナリオをレビューすることはできないからだ。見るのは、その中止がどれほど惜しまれ、どれほど具体的なゲームとして存在し、ゲーム史にどんな空白を残したのか。そこを50作品、同じ基準で見ていく。

2026年9月17日時点:50作品掲載/S 6・A 20・B 23・C 1。DとEは、枠を埋めるためだけに作品を入れなかった結果、現時点では該当なしとした。

今後も資料の追加、新しい開発者証言、正式復活などがあれば追記し、必要なら評価も見直す。


評価方法|完成版の面白さではなく「発売中止そのもの」を見る

100点は6項目に分けた。知名度の高いシリーズだから有利、開発率が高いから自動的に上位、という付け方はしていない。最近中止された作品についても、10年、20年後まで語られるか分からない段階で「忘れられにくさ」を先回りして高くしていない。

評価軸配点
惜しまれ度25点
ゲーム史への潜在的影響20点
忘れられにくさ20点
期待の具体性15点
企画の独自性・魅力10点
中止そのものの歴史的重要性10点
合計100点

6つの評価軸

惜しまれ度は、中止当時からどれほど惜しまれ、その後も復活を望む声が残ったか。ゲーム史への潜在的影響は、実際に確認できる企画内容や後作品への継承から見て、シリーズやハード、ジャンルにどれほど意味を持ち得たかを見る。忘れられにくさは、中止から長い時間がたっても名前が残っているか。期待の具体性は、ゲーム画面、PV、試遊、発売予定日などから「どんなゲームだったか」がどこまで分かるか。スクリーンショットが多いことと、完成度が高いことは分けて考える。

企画の独自性・魅力は、当時ならではの新しい試みや、今見ても「遊んでみたかった」と思える企画かどうか。中止そのものの歴史的重要性は、ハード撤退、企業再編、スタジオ閉鎖、別タイトルへの大規模転換など、その中止がゲーム史上の出来事とどれだけ結び付いているかを見ている。

点数だけでTierを自動決定しない

目安はSが原則91点以上、Aが主に80~89点、Bが主に69~82点、Cが主に50~68点。ただしAとBは点数帯が重なる。82点の『Bound High!』がA、同じ82点の『スペースファンタジーゾーン』がBなのはそのためだ。前者は完成済みの作品がバーチャルボーイそのものの終息で失われたという大きな歴史的分岐がある。後者は「遊んでみたかった」という魅力では負けていないが、中止がハードやシリーズの歴史を大きく分けた作品とは言いにくい。


「発売中止」も一種類ではない

50作品を追うと、「発売されなかった」の一言では実態を説明できないケースが多かった。そこで本文では、必要に応じて次の違いを意識している。

主な状態意味
開発中止予定されていた形では最終的に発売されなかった
特定機種版のみ中止ゲーム自体は別機種で発売されたが、その機種版は出なかった
別作品へ転換開発中の企画が大きく変わり、別タイトル・別作品へつながった
大規模な再構築一度中止・破棄したあと、内容を大きく作り直して発売された
後年に復活長く未発売だった作品が、数年~数十年後に遊べる形で戻ってきた

後年の復活も同じではない。『スターフォックス2』『ZERO RACERS』『ドラゴンホッパー』のように当時のプラットフォームホルダー自身が正式に世へ出した例もあれば、メガドライブ版『マッドストーカー FULLMETALFORTH』やスーパーファミコン版『クーリースカンク』のように、権利者の許諾を得て後年商品化されたものもある。この違いは本文で分けている。


初回50作品のTier一覧

まず50作品の全体像を一覧にした。これは1位から50位までを決めるランキングではなく、同じTier内にも順位は付けていない。各作品の詳しい経緯と6項目の内訳は、このあと個別に見ていく。

S Tier

タイトル当時の主な対象その後総合
『スターフォックス2』スーパーファミコン未発売→後年任天堂から正式発売95
『Sonic X-treme』セガサターン開発中止96
『Warcraft Adventures: Lord of the Clans』PC開発中止92
『MOTHER 3』NINTENDO64/64DD版NINTENDO64/64DD中止→ゲームボーイアドバンスで再構築96
『ロックマンDASH3 PROJECT』ニンテンドー3DS開発中止91
『Silent Hills』PlayStation 4向け企画開発中止92

A Tier

タイトル当時の主な対象その後総合
『サウンドファンタジー』スーパーファミコン完成済み未発売/発想の一部が後作品へ84
『Bound High!』バーチャルボーイ完成済み未発売82
『バイオハザード2』初期版(Resident Evil 1.5)PlayStation大規模破棄→『バイオハザード2』再構築88
『Virtua Fighter RPG』/セガサターン期『シェンムー』セガサターン企画変化→ドリームキャスト『シェンムー』へ85
M2版『D2』M2中止→ドリームキャストで別内容に再構築88
『Thrill Kill』PlayStation完成後、発売元判断で中止84
『Twelve Tales: Conker 64』NINTENDO64『Conker's Bad Fur Day』へ大幅転換80
『Castlevania: Resurrection』ドリームキャスト開発中止82
NINTENDO64版『バイオハザード0』NINTENDO64ニンテンドー ゲームキューブへ移行・再構築84
『Dinosaur Planet』NINTENDO64『スターフォックスアドベンチャー』へ統合84
ドリームキャスト版『Half-Life』ドリームキャスト機種版中止/『Blue Shift』はPCで発売86
『Propeller Arena』ドリームキャスト無期限延期→未発売89
『StarCraft: Ghost』GC/PS2/Xbox無期限保留→中止89
『True Fantasy Live Online』Xbox開発中止86
『Star Wars Battlefront III』複数機種向けに開発後年、資料や証言から実態が判明85
PS3版『絶体絶命都市4 -Summer Memories-』PlayStation 3中止→別会社がPS4向けに再構築89
『Star Wars 1313』対応機種未発表LucasArts内製開発終了後、製品化せず86
『Prey 2』PS3/Xbox 360/PC開発中止82
『Fable Legends』Xbox One/PC開発中止/Lionhead Studios閉鎖85
『Scalebound』Xbox One/PC開発中止84

B Tier

タイトル当時の主な対象その後総合
NES版『SimCity』NES未発売→後年プロトタイプ発見77
『Bio Force Ape』NES未発売→後年プロトタイプ発見74
『スペースファンタジーゾーン』PCエンジン CD-ROM系未発売82
MD版『マッドストーカー FULLMETALFORTH』メガドライブ中止→2020年に権利者公認で商品化75
『ドラゴンホッパー』バーチャルボーイ未発売→2026年任天堂から正式配信78
『ZERO RACERS』バーチャルボーイ未発売→2026年任天堂から正式配信79
SFC版『クーリースカンク』スーパーファミコン中止→PS版→2025年にSFC互換機版発売78
『Cabbage』64DD開発終了/発想の一部が後作品へ75
『RiQa』NINTENDO64未発売→2024年に元開発者がビルド公開75
『Geist Force』ドリームキャスト開発中止80
GBC版『バイオハザード』ゲームボーイカラー機種版中止/後年後期ビルド保存79
『Echo Delta』NINTENDO64未発売70
『Raven Blade』ニンテンドー ゲームキューブ中止→開発リソースを『Metroid Prime』へ集中74
『Donkey Kong Racing』ニンテンドー ゲームキューブ別IPへ再構築→その企画も中止78
『Agartha』ドリームキャスト開発中止75
『CAPCOM FIGHTING ALL STARS』アーケード中止/イングリッドは後作品へ80
『Cry On』Xbox 360開発中止69
『The Agency』PlayStation 3/PC開発中止73
『メガマン ユニバース』PS3/Xbox 360開発中止75
『The Last of Us Online』PlayStation向け開発中止80
『Life by You』PC発売中止/スタジオ閉鎖76
『Perfect Dark』リブートXbox Series/PC開発中止/The Initiative閉鎖74
『UBUSUNA』PlayStation 4として開発M2版中止/別体制で制作再開を模索76

C Tier

タイトル当時の主な対象その後総合
『モンスターメーカー ホーリーダガー』セガサターン未発売/中止理由・完成度不明56

D・Eは現時点で該当なし。初回公開では、有名IPだけでなく『Bio Force Ape』『Echo Delta』『スペースファンタジーゾーン』『クーリースカンク』『モンスターメーカー ホーリーダガー』のような、調べて初めて面白さが見えてくる作品も意識して残した。


S Tier|発売中止ゲーム史を語るなら外しにくい6作品

Sは6本。共通するのは知名度ではなく、長く語られ、何を作ろうとしていたかが見え、中止そのものがシリーズやゲーム史の節目になっていることだ。完成済みの作品もあれば、本編はまだ初期段階だった作品もある。「完成間近だったからS」という単純な並びではない。

『スターフォックス2』|完成し、デバッグも終わっていたのに発売されなかった

発売中止ゲームを調べると、

「完成間近だった」
「90%できていた」
「ほぼ発売できる状態だった」

という話を何度も見る。ところが、その数字をたどると出所がはっきりしない作品も珍しくない。『スターフォックス2』は違う。

任天堂自身が、1995年には完成し、デバッグまで終わっていたことを明らかにしている。それでもスーパーファミコンでは発売されなかった。理由として語られているのは、ゲームの品質ではない。

Super FX 2を使うことによるコストと、その翌年に控えていたNINTENDO64。3Dゲームの新しい時代が始まろうとする直前に、スーパーファミコン向け3D作品を新たに発売するタイミングが悪くなってしまった。これは今回の50作品でも、最も分かりやすい

「完成したのに出なかったゲーム」

の一つである。そして『スターフォックス2』は、そのまま消えたわけでもなかった。360度を自由に移動する考え方や、変形するアーウィンなど、一部の発想は後のシリーズへつながっている。

さらに2017年。発売中止から20年以上を経て、『ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン』収録作品として、任天堂から正式に日の目を見ることになった。発売中止ゲームとしては異例の結末だった。

「幻のゲームを遊んでみたい」という願いが、本当に公式からかなった作品である。だからこそ現在は、二つの時代を同時に評価しなければならない。1995年には、

完成していながら発売されなかったゲーム。

2017年以降は、

20年以上を経て正式発売されたゲーム。

発売中止という状態が永久固定ではないことを示す、代表的な例だ。

評価

項目点数
惜しまれ度23 / 25
ゲーム史への潜在的影響19 / 20
忘れられにくさ20 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性9 / 10
総合95 / 100

Tier:S

完成・未発売・後作品への継承・20年以上後の正式復活。発売中止ゲームを考えるうえで、これほど材料のそろった作品は少ない。


『Sonic X-treme』|セガサターンに“本編3Dソニック”が存在しなかった理由を象徴する作品

セガサターンには『ソニックR』や『ソニックジャム』がある。しかし、メガドライブ時代の『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』を次世代3Dへ発展させた、本格的な新作アクションは発売されなかった。その最大の空白が『Sonic X-treme』だ。

1990年代半ば、セガサターン向けに開発されていた3Dソニックで、公開された映像や画面は当時としてかなり異様だった。魚眼レンズのように曲がる3Dフィールド。壁や天井まで利用するステージ。

シリーズを3Dへ移行させようとする試みが、既存の3Dアクションとはかなり違う方向へ向かっている。このゲームが今も語られる最大の理由は、

「もし出ていたら面白かったか」だけではない。

セガサターンというハードに、なぜ本編3Dソニックが存在しなかったのか。その問いと『Sonic X-treme』が切り離せなくなっているからだ。開発中には技術や開発体制が何度も変化し、プロジェクトは安定しなかった。

後年になって多くの関係者証言や開発素材も出てきたが、最終的に製品としてまとめ切れないまま1996年に開発終了となる。ここで、「発売されていればNintendo 64と互角に戦えた」

などと書くつもりはない。そこまでは分からない。実際に製品版が存在しない以上、名作だったとも言えない。

ただ一つ確かなのは、

セガの看板キャラクターが32bit世代へ移るタイミングで、本来中心になるはずだった新作が消えた

という事実だ。その結果、サターン時代のソニックには今も独特の空白が残っている。約30年が経過しても『Sonic X-treme』という名前が消えない理由は、そこにある。

評価

項目点数
惜しまれ度23 / 25
ゲーム史への潜在的影響19 / 20
忘れられにくさ20 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力10 / 10
中止そのものの歴史的重要性9 / 10
総合96 / 100

Tier:S

有名シリーズだからSなのではない。

発売されなかったこと自体が、セガサターンとソニック双方の歴史に大きな空白を残した。そこをS Tierとして評価した。


『Warcraft Adventures: Lord of the Clans』|ほとんど形になっていたのに、Blizzard自身が止めた

現在の『Warcraft』からは少し想像しにくいが、Blizzardは1990年代後半、ポイント&クリック式のアドベンチャーゲームを本格的に作っていた。それが『Warcraft Adventures: Lord of the Clans』だ。主人公はThrall。

後のWarcraft世界で極めて重要になる人物だが、この時点ではゲームを通じてその物語を描こうとしていた。グラフィックも大量に制作され、音声も収録され、ゲームとして一通り動くところまで進んでいた。発売中止ゲームの中でも、かなり完成に近かった側に入る。

それでもBlizzardは発売しなかった。開発が完全に破綻していたわけではない。むしろ、ゲームを出せるところまで持っていくこと自体は可能だった。

問題は、その状態で発売することをBlizzard自身が良しとしなかったことだった。開発期間中にアドベンチャーゲームを取り巻く環境や技術は変わり、会社が求める品質水準との差も広がった。大幅修正案も検討されたが、最終的には中止となる。

この作品が面白いのは、ゲームそのものが消えても、そこで描こうとしていたものすべてが消えたわけではないところだ。Thrallの物語は小説など別の形へ受け継がれ、後のWarcraft世界でも重要な位置を占めるようになる。つまり、

ゲームは発売されなかったが、そこで作ろうとしていた世界の一部は生き残った。

『Warcraft Adventures』は、「完成に近い=発売すべきだった」と単純には言えない作品でもある。Blizzard自身が、自社基準へ届かないと判断して止めたからだ。それが正しかったかどうかを、本記事で決めるつもりはない。

ただ、これほど作られた作品が発売されず、その後も長年発掘・研究の対象になり続けた事実は、発売中止ゲーム史では非常に大きい。

評価

項目点数
惜しまれ度22 / 25
ゲーム史への潜在的影響18 / 20
忘れられにくさ19 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性9 / 10
総合92 / 100

Tier:S

大量に作られたからSなのではない。

発売可能なところまで進みながら、自社基準のために止めるというBlizzardの判断そのものがゲーム史の一場面になった。

そこまで含めてSとした。


『MOTHER 3』NINTENDO64/64DD版|完成への道筋を描けないまま終わった、もう一つのMOTHER 3

『MOTHER 3』というゲームそのものは、2006年にゲームボーイアドバンスで発売されている。それでも、NINTENDO64時代に作られていた『MOTHER 3』を単なる「初期版」として片付けることは難しい。開発期間も、目指していた表現も、途中まで作られていた世界も、それだけ大きかった。

企画はNINTENDO64世代で進み、64DDを利用する構想も含めながら長期開発が続いた。シリーズが2Dのドット絵から3Dへ移ろうとしていた時期でもあり、当時公開された画面には、後のゲームボーイアドバンス版とはかなり印象の違う『MOTHER 3』が映っている。問題は、作りたいものが見えていなかったことではない。

むしろ逆だった。やろうとしていることに対して、完成までの道筋が立たなくなっていった。開発は長期化し、最終的に2000年、中止が発表される。

ここで重要なのは、「NINTENDO64が終わりそうだったので単純に切られた」とだけ考えないことだ。

後年の関係者による振り返りでも、完成の見通しそのものが大きな問題になっていたことが語られている。そして数年後。『MOTHER 3』はゲームボーイアドバンスで再始動した。

ただし、NINTENDO64版をそのまま携帯機へ移植したわけではない。3Dから2Dへ戻り、開発体制も作品の作り方も変わった。だから現在遊べる『MOTHER 3』が存在するからといって、NINTENDO64版が「結局発売された」とは言いにくい。

失われたのは、同じ題名のゲームではなく、

NINTENDO64という時代に、3Dで作ろうとしていた『MOTHER 3』そのもの

だからだ。シリーズ史の大きな空白であり、ゲームボーイアドバンス版が名作として残った今でも、「あのN64版はどんなゲームになっていたのか」という疑問は消えていない。

評価

項目点数
惜しまれ度24 / 25
ゲーム史への潜在的影響20 / 20
忘れられにくさ20 / 20
期待の具体性14 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性9 / 10
総合96 / 100

Tier:S

現在のゲームボーイアドバンス版へつながったからこそ、NINTENDO64版との差も見える。「発売中止後に別ハードで再始動したゲーム」を代表する一作である。


『ロックマンDASH3 PROJECT』|ファンまで開発に参加していたゲームが、体験版すら出ないまま終わった

『ロックマンDASH3 PROJECT』が他の発売中止作と大きく違うのは、

ゲームが完成する前から、開発過程そのものをファンへ公開していた

ことだ。対応機種はニンテンドー3DS。Capcomは「Developer Room」を開設し、キャラクターデザインやアイデア募集などを通じて、ユーザーを開発へ参加させる試みを進めていた。

さらに通常のゲームでは表に出ない、

Prototype Version

までNintendo eShopで配信する計画だった。これは単なる体験版ではなく、その反応を見て製品版を正式に進めるか判断する役割も持っていた。つまりユーザーからすると、

「完成したゲームを待つ」だけではない。開発途中から一緒にプロジェクトを見ていく作品だった。

だから中止の意味も大きかった。2011年、Capcomはプロジェクト終了を発表。Prototype Versionも発売されなかった。

Developer Roomも終了。さらに、ユーザーから集めたアイデアについても、今後別ゲームへ流用しないことが説明された。製品版だけではなく、

そこまで積み上げた参加型開発の仕組みそのものが止まった

のである。もちろん、ファン参加型だったから完成版が必ず面白くなったとは言えない。Prototypeすら一般配信されていない以上、完成版の評価などできない。

それでも『DASH3』は、中止されたゲームの中でも特殊な記憶を残した。ゲームそのものだけでなく、

「自分たちも作っている途中を見ていた」

という経験まで失われたからだ。シリーズ新作中止という枠だけでは収まらない。それがS Tierへ残した最大の理由である。

評価

項目点数
惜しまれ度24 / 25
ゲーム史への潜在的影響17 / 20
忘れられにくさ19 / 20
期待の具体性14 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性8 / 10
総合91 / 100

Tier:S

ファン参加型という特殊な開発工程を含め、発売中止の体験そのものが通常のゲームとは違っていたからだ。


『Silent Hills』|P.T.は完成した「Silent Hills本編」ではない。それでも消えなかった名前

2014年8月、PlayStation 4で突然配信された『P.T.』。最初から『Silent Hills』の宣伝として前面に出していたわけではなく、クリアすると小島秀夫氏、ギレルモ・デル・トロ氏、そしてノーマン・リーダス氏が関わる『Silent Hills』へつながることが判明する仕掛けだった。その登場方法まで含め、強烈だった。

だからこそ一つ整理しておきたい。

『P.T.』は『Silent Hills』本編の体験版ではない。

本編そのものを切り出したデモでもない。完成予定作品のシステムやステージを、そのまま遊べたわけではない。Konami自身も、後に中止となった『Silent Hills』本編をまだ初期段階のプロジェクトとして扱っている。

そのため、「P.T.があれだけ完成されていたのだから、本編もかなり出来ていた」とは評価していない。

今回、期待の具体性を10/15に抑えたのはそのためだ。それでもS Tierになった。理由は、発売中止後の記憶の強さである。

ホラーゲーム史を語る際、現在でもP.T.と『Silent Hills』は頻繁に名前が出る。小島秀夫氏とKonamiの関係、ギレルモ・デル・トロ氏との共同制作、ノーマン・リーダス氏の出演予定。そしてゲームそのものが完成する前にプロジェクトが消えたことまで含めて、一つの大きな出来事になっている。

「完成していたから惜しい」のではない。

何が完成するのか分からない段階で、それでもこれほど強く期待させた企画だったから惜しい。

発売中止ゲームには、こういうSも存在する。

評価

項目点数
惜しまれ度25 / 25
ゲーム史への潜在的影響18 / 20
忘れられにくさ20 / 20
期待の具体性10 / 15
企画の独自性・魅力10 / 10
中止そのものの歴史的重要性9 / 10
総合92 / 100

Tier:S

「ほぼ完成した幻のゲーム」ではない。それでも、発売中止から10年以上たってなお忘れられていない。そこにこの作品の特殊さがある。


A Tier|ゲーム史の分岐点として無視できない20作品

Aには、完成寸前で止められたゲーム、ハードの終息に巻き込まれたゲーム、大量に作ったものを捨てて別作品へ変わったゲームが並ぶ。80点台前半にはBと重なる作品もあるが、Aへ入れたものは「その中止や転換が、ゲーム史の分岐として説明できるか」を重く見た。

『サウンドファンタジー』|完成していた任天堂の音楽ゲームは、別会社で形を変えて生きた

スーパーファミコンのコントローラーで、画面上を動く生き物と音を組み合わせる。そこへマウスまで使う。1990年代前半としては、かなり変わったゲームだった。

『サウンドファンタジー』を作ったのは、後に『エレクトロプランクトン』などでも知られるメディアアーティスト・岩井俊雄氏。原点には、岩井氏が制作していたインタラクティブ作品『Music Insects』がある。任天堂版の制作は1993年頃に本格化。

一つの音楽ゲームだけではなく、複数の音楽的な遊びをまとめたソフトとして開発された。そして重要なのが、

1994年には完成していた

ということだ。これは後年の推測ではない。1997年のWIREDによる岩井氏本人への取材で確認できる。

それでも任天堂からは発売されなかった。では、なぜ中止されたのか。ここは意外なほど分からない。

岩井氏自身が、任天堂社内の人員変化などもあり、はっきりした説明を受けていないと語っている。PlayStationやセガサターンの登場、『スーパードンキーコング』の成功などが影響したのではないか――という話も同じ記事に出てくるが、これは岩井氏自身の推測だ。公式な中止理由として扱わない。

そして『サウンドファンタジー』の物語はそこで終わらない。岩井氏の『Music Insects』にMaxisが興味を持ち、後にPC向け『SimTunes』が誕生する。任天堂で完成したゲームがそのまま他社へ移植されたわけではない。

しかし、音と生き物を組み合わせて遊ぶという発想は、別の形で市場へ出た。

さらに後年、岩井氏は任天堂で『エレクトロプランクトン』も制作する。ゲーム史へ巨大な商業的分岐を起こした作品ではない。その一方で、

完成済み

未発売

発想の一部が別作品へ

作者は後に再び任天堂で音楽ゲームを制作

という経路は、発売中止ゲームとして非常に面白い。「知らなかった作品を見つける」という今回の記事の目的を象徴する一作でもある。

評価

項目点数
惜しまれ度17 / 25
ゲーム史への潜在的影響17 / 20
忘れられにくさ17 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力10 / 10
中止そのものの歴史的重要性8 / 10
総合84 / 100

Tier:A


『Bound High!』|バーチャルボーイがあと少し長く生きていれば、普通に発売されていたかもしれない

発売中止ゲームには、開発が難航して消えた作品がある。『Bound High!』はその逆に近い。

ゲームは完成していた。

開発したのはJapan System Supply。企画・メインプログラムを担当した中西秀之氏によれば、開発だけでなくマニュアルのデザインまで完成。北米向けにはパッケージまで一部作られていたという。内容は、ボール状のキャラクター「Chalvo」を跳ねさせながらステージを攻略するアクション。

バーチャルボーイ特有の奥行き表現を使い、上下方向への跳ね返りを立体視で見せるゲームだった。しかも無名の試作企画ではない。1995年の初心会で実際に展示され、中西氏によれば特別展示エリアに約10台が置かれていた。

当時の雑誌でも、任天堂の山内溥社長がバーチャルボーイの特徴を生かすタイトルとして『Bound High!』を挙げた記録が残っている。そこまで来て、なぜ発売されなかったのか。答えは非常に単純だった。

バーチャルボーイそのものが終わった。

中西氏は、完成するまで発売予定だったものの、マスターROMを作った後に任天堂がプラットフォームを終了したと振り返っている。ここが82点Aとした最大の理由だ。『Bound High!』単体がゲーム業界を変えたはずだとは考えていない。

しかし、製品として完成していたソフトが、ハードの寿命そのものによって市場へ出られなかった

という事実は、バーチャルボーイの歴史を説明するとき非常に象徴的だ。同じ82点のB Tier作品もある。それでも『Bound High!』をAへ置くのは、発売中止が「ハード撤退」という明確なゲーム史上の出来事と直結しているからだ。

評価

項目点数
惜しまれ度18 / 25
ゲーム史への潜在的影響14 / 20
忘れられにくさ16 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性10 / 10
総合82 / 100

Tier:A


『バイオハザード2』初期版、通称『バイオハザード1.5』|約7割まで作ったものを捨てた

発売中止ゲームとして紹介されることが多いが、最初に位置づけを整理しておきたい。『バイオハザード1.5』という独立商品が発売予定だったわけではない。これは、

現在の『バイオハザード2』になる前の、大規模に破棄された初期版

だ。主人公の一人はLeon S. Kennedy。もう一人はClaire Redfieldではなく、バイクレーサーのElza Walker。

警察署も完成版のような奇妙な洋館風施設ではなく、より現代的な建物だった。敵や衣装、ストーリー、マップ構造も大きく違う。そして何より有名なのが、

かなり作ってから捨てた

ことだ。Hideki Kamiya氏は後年のインタビューで、脚本家・杉村升氏が初期シナリオを見た段階で約70%完成していたと振り返っている。別の資料では三上真司氏が約65%と表現した例もあり、細かな数字には幅がある。だから本記事では、

「完成度70%だった」と一つの数字だけを絶対値にはしない。おおむね3分の2前後まで開発が進んでいた段階で、大幅なやり直しを決めたと捉える。

なぜそこまで作ったものを捨てたのか。スタッフ側の振り返りには、

ゲームとして面白くなかった
シリーズらしさが薄かった
ビジュアルやシナリオの方向性に問題があった

といった話が残っている。Kamiya氏自身も、初監督として明確なビジョンを提示できず、初期版の失敗からディレクターとして学んだと後年語っている。普通なら、

「ここまで作ったのだから、とりあえず完成させよう」となってもおかしくない。しかしCapcomはそうしなかった。

大きく作り直し、1998年に現在知られている『バイオハザード2』を発売した。結果的に完成版は大成功した。ただしその成功を理由に、

「1.5を捨てた判断は絶対に正しかった」とTier評価するつもりはない。ここで見ているのは、

発売間近まで進んだ大作を一度捨て、同じ『2』を根本から作り直すという異例の決断

そのものだ。一方、S Tierへ入れなかった理由も明確。これは独立した新作が丸ごと中止された例ではない。

最終的に『バイオハザード2』という製品は完成している。失われたのは、

最初に作られていた『2』の形

だ。それでもシリーズ史の巨大な分岐であることに変わりはない。かなり作った段階から、同じ「2」を根本から作り直した代表例だ。

評価

項目点数
惜しまれ度21 / 25
ゲーム史への潜在的影響18 / 20
忘れられにくさ20 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力7 / 10
中止そのものの歴史的重要性7 / 10
総合88 / 100

Tier:A


『Virtua Fighter RPG』/セガサターン期『シェンムー』|『バーチャファイター』のRPGからドリームキャストを代表する作品へ

『シェンムー』は最初からドリームキャスト向けに企画されたゲームではない。さらに言えば、最初から『シェンムー』ですらなかった。鈴木裕氏が2014年のGDCで振り返った開発の出発点は、

セガサターン向けの『Virtua Fighter RPG』

だった。『バーチャファイター』の結城晶を主人公とし、格闘ゲームではなく物語主体のRPGを作る。それが最初の構想だった。

企画はやがて『Akira's Story』と呼ばれるようになり、さらに『バーチャファイター』から独立。主人公も世界観も変わり、最終的に『シェンムー』へ向かっていく。ここで注意したい。

これは、「セガサターン版『シェンムー』という完成間近のゲームが中止され、そのままドリームキャストへ移植された」

という話ではない。企画そのものが長い時間をかけて変化した。実際、鈴木氏自身がGDC講演で、Virtua FighterベースのRPGから最終的な『シェンムー』までの長い開発史を説明している。

そのため、本記事では、単純な「開発中止」とは分け、

企画そのものの転換と、セガサターンからドリームキャストへの機種移行

として扱った。惜しまれ度を15/25まで下げているのも同じ理由だ。当時の一般ユーザーが、

「セガサターン版シェンムーが中止された」という一つの製品を広く惜しんだわけではない。しかし、ゲーム史への潜在的影響は20/20。

なぜなら、セガサターンで試行錯誤されていたRPG企画が、最終的にドリームキャストという新ハードを象徴する巨大プロジェクトへ成長したからだ。失敗して消えた企画ではない。

企画を変え続けた結果、別の歴史へ到達した作品。

今回のTierに、こういうゲームも入れておきたかった。

評価

項目点数
惜しまれ度15 / 25
ゲーム史への潜在的影響20 / 20
忘れられにくさ18 / 20
期待の具体性14 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性9 / 10
総合85 / 100

Tier:A


M2版『D2』|ハードそのものが消え、50%まで作ったゲームも消えた

3DOの後継機として開発されながら、市販されることなく消えたゲーム機「M2」。その未発売ハードと一緒に消えた代表的ゲームの一つが、飯野賢治氏率いるワープの『D2』だ。後にドリームキャストで『D2』が発売されているため、

「結局機種を変えて出たゲームでは?」と思うかもしれない。しかし、M2版とドリームキャスト版は同じゲームではない。

飯野氏本人によれば、M2版『D2』は約50%まで開発が進み、バトルエンジンも完成。マップを広げている段階だった。しかも単なるムービー企画ではない。実際のM2ハード上で動いていた。

飯野氏は、当時のM2を非常に高性能なハードとして評価し、その性能を使ってリアルタイム3Dアクションを作ろうとしていたと振り返っている。ところが、ゲームではなくM2そのものが発売中止になる。土台となるハードを失った『D2』も、そこで終了した。

その後、飯野氏はドリームキャストで再び『D2』を制作する。だが、M2版をそのまま移植したわけではない。本人は後年、セガとの契約を受けた後も「同じものをもう一度作りたくなかった」ため、内容を変えたと説明している。M2版ではローラの息子が中心になる予定だったのに対し、ドリームキャスト版では再びローラ本人を主人公とするなど、作品そのものを大きく作り替えた。

つまり、M2版『D2』

ハード消滅とともに開発終了

同じ『D2』というタイトルで別内容を再構築

ドリームキャストで発売

という流れだ。「別機種へ移植された」というより、

一度死んだゲームの名前を使い、新しいゲームを作り直した

に近い。そしてM2という幻のハードまで含めて語れることが、この作品の大きな強みになった。

評価

項目点数
惜しまれ度19 / 25
ゲーム史への潜在的影響18 / 20
忘れられにくさ18 / 20
期待の具体性14 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性10 / 10
総合88 / 100

Tier:A


『Thrill Kill』|完成したゲームを、発売元が「出さない」と決めた

発売中止ゲームには、完成できなかった作品が多い。技術的にまとまらなかった。開発費が膨らんだ。ハードが終わった。会社がなくなった。『Thrill Kill』は少し違う。

ゲームそのものは完成していた。

4人同時対戦を売りにしたPlayStation向け格闘ゲームで、開発はParadox Development。過激な暴力表現と悪趣味なキャラクターを前面に出し、1998年の発売を予定していた。ところが開発末期、Virgin Interactiveの北米ゲーム事業をElectronic Artsが取得する。EAは『Thrill Kill』を引き継いだものの、最終的に発売しなかった。

GameSpotがEAへ確認した際、同社は作品を正式にキャンセルしただけでなく、他社へ売却するつもりもないと回答している。別の記事では、完成済みだったものの、内容が市場に適切ではないと判断された経緯も伝えられている。この作品について注意したいのは、

「発売禁止になったゲーム」ではない

ということだ。政府機関やレーティング団体によって販売を禁じられたわけではない。新たに発売元となったEAが、自社から販売する作品として適切ではないと判断した。

完成していたにもかかわらず、企業側の方針だけで市場へ出ない。発売中止ゲームの中でも珍しいタイプだ。そしてゲームの技術すべてが無駄になったわけでもない。

後に同じ開発元が手掛けた『Wu-Tang: Shaolin Style』には、『Thrill Kill』のゲームエンジンや4人対戦の基盤が引き継がれている。だから『Thrill Kill』は「消えたゲーム」でありながら、

技術部分は別作品として生き延びた

とも言える。過激だったこと自体を高く評価しているのではない。発売可能な状態まで作られた製品を、発売元が意図的に封印した。

その中止経緯をA Tier相当と判断した。

評価

項目点数
惜しまれ度20 / 25
ゲーム史への潜在的影響14 / 20
忘れられにくさ18 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力8 / 10
中止そのものの歴史的重要性9 / 10
総合84 / 100

Tier:A


『Twelve Tales: Conker 64』|かわいい3Dアクションを捨てた結果、あのConkerが生まれた

『Conker's Bad Fur Day』を知っている人が、初期の『Conker』を見ると驚くと思う。もともとは、

かなり普通にかわいい3Dアクションだった。

NINTENDO64向け『Twelve Tales: Conker 64』。明るい世界で、愛らしいリスのConkerが冒険する。後に発売された『Bad Fur Day』の下品さやブラックユーモアは、ほとんど見当たらない。

ゲーム自体は発売予定作品として公開され、開発も長期間続いていた。だがRare内部では、当時増えていたカラフルな3Dアクションの中に埋もれてしまうという危機感が強まっていった。元スタッフChris Marlow氏も後年、何年も制作した末に方向転換した背景を振り返っている。

そしてプロジェクトは消える。ただし、Conkerまで消えたわけではない。スタッフを組み替え、Chris Seavor氏を中心に企画を全面的に変更。

かわいい世界を逆手に取り、

暴言
ブラックユーモア
映画パロディ
成人向けの題材

を詰め込んだ『Conker's Bad Fur Day』へと変貌した。Seavor氏自身も、初期版から大きく路線転換した経緯を後年語っている。このため本記事では、『Twelve Tales』を「完全消滅したゲーム」とは分類していない。

元の企画を捨て、別作品へ大きく方向転換したケース

だ。しかも変化の幅が極端だった。もし『Twelve Tales』がそのまま完成していたら、『Bad Fur Day』が同じ形で存在した可能性は低い。

ただし、「Twelve Talesを中止したおかげで名作が生まれた」とまで評価するのも結果論になる。

A Tierでは最低点の80点だが、それでもBへは落とさなかった。企画を捨てるという判断そのものがIPの性格を完全に変えたからだ。

評価

項目点数
惜しまれ度18 / 25
ゲーム史への潜在的影響15 / 20
忘れられにくさ17 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力8 / 10
中止そのものの歴史的重要性7 / 10
総合80 / 100

Tier:A


『Castlevania: Resurrection』|理由を説明されないまま消えたドリームキャスト版『悪魔城ドラキュラ』

『悪魔城ドラキュラ』シリーズがドリームキャストへ。その企画として開発されていたのが『Castlevania: Resurrection』だ。1999年のE3などで公開され、主人公の一人には『悪魔城ドラキュラ 漆黒たる前奏曲』のソニア・ベルモンドが登場する予定だった。

もう一人は本作のために用意されたヴィクター・ベルモンド。時代の異なる二人が物語へ関わる3Dアクションとして制作されていた。しかし発売は延期を重ねる。

2000年2月には、当初予定からさらにずれ込み、同年秋へ延期されたと報じられていた。ところがその約2か月後、KonamiはGameSpotに対して開発中止を正式に認めた。問題は、その次だ。

Konamiは中止理由を説明しなかった。

後年、元スタッフからドリームキャスト市場や社内事情などについて証言は出ている。だが、2000年当時のKonamiが示した公式理由ではない。実際、当時のGameSpotも理由については推測と明確に区別している。そのため本記事でも、

「PlayStation 2が出るから中止になった」
「ドリームキャストが売れなかったから消えた」

と断定しない。分かっているのは、

実際にゲームとして動く段階まで進んでいたこと
と、
Konamiが正式に中止したこと

までだ。2021年には開発版とみられる映像も改めて表に出て、20年以上を経てゲーム内容を確認できる材料が増えた。シリーズ人気だけなら、もっと点数を上げることもできる。

しかし、中止後に別作品へ強く影響したことや、業界全体を変えた分岐までは確認できない。そこで82点。A Tier下限寄りだが、長年にわたり「ドリームキャストで出るはずだった悪魔城」として残った存在感を評価した。

評価

項目点数
惜しまれ度20 / 25
ゲーム史への潜在的影響16 / 20
忘れられにくさ18 / 20
期待の具体性14 / 15
企画の独自性・魅力8 / 10
中止そのものの歴史的重要性6 / 10
総合82 / 100

Tier:A


NINTENDO64版『バイオハザード0』|半分以上作ってからニンテンドー ゲームキューブへ。システムは生き残った

『バイオハザード0』は2002年にニンテンドーゲームキューブで発売された。だが、開発が始まったハードはNINTENDO64だった。しかも、

「少し試してすぐニンテンドー ゲームキューブへ変更した」という程度ではない。ディレクターの小田晃嗣氏は後年、

NINTENDO64版も半分以上完成していた

と明言している。2000年の東京ゲームショウでは実際にプレイ可能な状態で公開されていた。その時点ではまだ開発途中だったが、その後も制作は続いた。

では、なぜ移行したのか。三上真司氏は、NINTENDO64のカートリッジへ必要な内容を収めることが難しくなり、現実的な価格で実現する方法がなくなったことを理由として説明している。そこへニンテンドー ゲームキューブが発表され、開発を移す判断が行われた。

ニンテンドー ゲームキューブ版は単純移植ではない。グラフィックやデータは全面的に作り直された。しかし、企画の大枠まで捨てたわけでもなかった。

その代表が、パートナーザッピング

である。レベッカとビリー、二人の主人公をリアルタイムに切り替えて進むシステム。小田氏によれば、これはNINTENDO64のカートリッジによる短いロード時間を生かすところから生まれたアイデアだった。

ニンテンドー ゲームキューブへ移ると光ディスクになり、今度は切り替え時のロードをいかに短くするかが課題になった。それでも、

せっかくN64版で完成させたシステムだから残したかった

と説明している。これは非常に面白い。ハードが変わり、グラフィックを全部作り直しても、

旧ハードの特性から生まれたゲームシステムは製品版へ残った。

そのためN64版『バイオハザード0』は、

機種移行
大規模な再構築
ゲームシステムの継承

の三つを付けた。発売中止版を調べる意味がよく分かる一作だ。現在の完成品だけを見ていたら、「パートナーザッピングがなぜ生まれたのか」という開発史までは見えてこない。

評価

項目点数
惜しまれ度18 / 25
ゲーム史への潜在的影響18 / 20
忘れられにくさ17 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力8 / 10
中止そのものの歴史的重要性8 / 10
総合84 / 100

Tier:A


『Dinosaur Planet』|Rareのオリジナル作品が『スターフォックスアドベンチャー』になるまで

『スターフォックスアドベンチャー』を遊んだことがあるなら、シリーズの他作品とはかなり違うと感じたかもしれない。理由は明確だ。もともとStar Foxではなかった。

RareがNINTENDO64向けに制作していたオリジナル作品、『Dinosaur Planet』。主人公はSabreとKrystal。

恐竜が暮らす世界を探索するアクションアドベンチャーで、NINTENDO64後期の大型作品として開発されていた。一方、任天堂側でもStar Foxを使った別のアドベンチャー企画が検討されていた。そしてNINTENDO64末期。

両方の計画をそのまま進めるのではなく、大きな決断が行われる。今村孝矢氏は2002年の『Nintendo DREAM』インタビューで、宮本茂氏が両作品をニンテンドー ゲームキューブへ移し、

それぞれの良い部分を一つへまとめる

判断をしたと説明している。結果、『Dinosaur Planet』は『スターフォックスアドベンチャー』へ変化した。ただしタイトルだけ付け替えたわけではない。

主人公SabreはFox McCloudへ。世界観もStar Foxへ統合。武器やゲームシステムも調整された。

その一方で、すべてが消えたわけではない。KrystalはStar Foxのキャラクターとして生き残った。今村氏自身、移行時にKrystalを捨てる案が出たものの、残す方向でデザインを調整したことまで語っている。

だからこの作品を、

「発売中止になったRareの幻のN64作品」

だけで終わらせるのはもったいない。実際には、

『Dinosaur Planet』

ニンテンドー ゲームキューブへ移行

Star Fox企画と統合

『スターフォックスアドベンチャー』

という変化を追える。ゲームが消えたというより、

別シリーズへ吸収されながら形を変えた。

元の企画を別シリーズへ組み替えた代表例といえる。

評価

項目点数
惜しまれ度18 / 25
ゲーム史への潜在的影響18 / 20
忘れられにくさ17 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力8 / 10
中止そのものの歴史的重要性8 / 10
総合84 / 100

Tier:A


ドリームキャスト版『Half-Life』|完成していたのに「市場環境」で消え、独自シナリオだけがPCへ残った

これは「特定機種版の中止」をどこまで高く評価するか考えるうえで、非常に分かりやすい例だ。『Half-Life』そのものはもちろん発売されている。1998年のPC版はFPS史を語るうえで外せない作品だ。

それをドリームキャストへ移植しようとしていたのが、このバージョンである。単純移植ではなかった。ドリームキャスト版にはグラフィック面の調整に加え、Gearbox Softwareが制作する独自シナリオ、

『Blue Shift』

が収録される予定だった。主人公はBlack Mesaの警備員Barney。本編とは別視点から事件を見る追加エピソードだ。

開発そのものはかなり進んでいた。2001年、発売リストから消えた際にも、GameSpotは開発は完成していると報じている。ところがドリームキャスト市場を取り巻く状況が急速に変わった。

セガはハード事業から撤退。そして2001年7月、Sierraはドリームキャスト版『Half-Life』の正式中止を発表する。理由として公式に示された言葉は、

“changing market conditions”――市場環境の変化

だった。この作品が興味深いのは、その後だ。ドリームキャスト版のために作られた『Blue Shift』は消えなかった。

追加作業を施したうえでPC向けの独立商品として発売された。GearboxのRandy Pitchford氏も、『Blue Shift』がもともとドリームキャスト版向けに制作されていたことを説明している。つまり、

ドリームキャスト版『Half-Life』は発売中止
だが、
そこで作られた新規コンテンツの一部は生存

した。ゲーム本体が完全消滅したケースとは違う。それでも、完成していた大作移植がハード市場の急変によって発売されないまま終わったことは、ドリームキャスト末期を象徴する出来事の一つだ。

特定機種版の中止でも、歴史的な背景が大きければA Tierになり得る。その代表として86点を付けた。

評価

項目点数
惜しまれ度19 / 25
ゲーム史への潜在的影響16 / 20
忘れられにくさ18 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力8 / 10
中止そのものの歴史的重要性10 / 10
総合86 / 100

Tier:A


『Propeller Arena』|9.11直後に「発売中止」ではなく、まず無期限延期になった

『Propeller Arena: Aviation Battle Championship』は、セガAM2がドリームキャスト向けに制作していた空中対戦ゲームだ。個性的なパイロットたちがプロペラ機を操り、市街地や峡谷などを舞台に高速ドッグファイトを繰り広げる。発売時期は2001年秋。

完成もかなり近い段階だった。そして2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件が発生する。この作品については、

「9.11のため発売中止になったゲーム」

として紹介されることが多い。大筋では間違っていない。しかし実際の経緯は少し違う。

事件直後、Sega of Americaが発表したのは、

発売中止ではなく無期限延期

だった。ゲーム自体がテロを題材にしていたわけではない。セガもそこは明確にしている。

問題になったのは、プレイヤーが意図的に遊べば、航空機が高層建築物の近くを飛ぶなど、事件直後のニュース映像を思い起こさせる場面を作れてしまうことだった。パッケージにも高層ビル付近を飛ぶ航空機が描かれていた。セガは被害者や関係者にさらなる苦痛を与える可能性を避けるとして、出荷を延期した。

この時点では、「発売しません」ではなかった。

しかしドリームキャスト市場には、もう時間が残されていなかった。セガはすでにハード事業撤退へ向かっており、『Propeller Arena』には新たな発売日が設定されないまま、最終的に市販されることなく終わった。したがって本文では、

9.11発生

無期限延期

ドリームキャスト市場終息

未発売のまま終了

と書く。「事件翌日に即キャンセルされた」とはしない。この微妙な違いが、発売中止ゲームを調べるうえでは大切だ。

ゲームそのものの影響力を過大評価するつもりはない。だが、

現実世界の巨大事件と発売判断が直接結び付いた

ケースとして、中止そのものの歴史的重要性は10/10とした。

評価

項目点数
惜しまれ度21 / 25
ゲーム史への潜在的影響15 / 20
忘れられにくさ19 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性10 / 10
総合89 / 100

Tier:A


『StarCraft: Ghost』|2006年に「中止」ではなかった。長い保留の末、正式に消えた

PC向けリアルタイムストラテジーとして巨大な成功を収めた『StarCraft』を、

家庭用ゲーム機向けの三人称アクションへ変える。

それが『StarCraft: Ghost』だった。2002年に発表。主人公はゴースト部隊のNova。

PlayStation 2、Xbox、ニンテンドーゲームキューブ向けに制作され、ステルス、銃撃、特殊能力を使うアクションゲームとして公開された。『StarCraft』を俯瞰視点ではなく、一兵士の視点から体験する。シリーズとしてかなり大きな方向転換だった。

開発会社の変更などを挟みながら、長期にわたって制作が続く。しかし発売には至らない。ここで日付を整理しておきたい。

『StarCraft: Ghost』は、

2006年に正式発売中止になった

と書かれることが多い。だがBlizzard社長Mike Morhaime氏が2007年に説明した状態は、

indefinite hold――無期限保留

だった。Morhaime氏によると、旧世代機向けとして発売するタイミングを逃しつつあり、競合する上位タイトルへ対抗するには大量の追加作業が必要だった。次世代機へ移して最初から作り直す選択肢もあった。

しかし同時期、Blizzardには『World of Warcraft』をはじめPC側で大きな開発需要があり、そちらへ人員を使うことを選んだ。その結果、『Ghost』は無期限保留になった。そして2014年。

Morhaime氏が改めて『Ghost』をcancelledと表現し、正式に中止された作品であることが確認された。したがって本記事では、

2006年前後:無期限保留

2014年:正式に中止済みと確認

と分ける。この作品が89点まで上がった理由の一つが、

忘れられにくさ20/20

だ。20年以上たった今でも「StarCraftのアクションゲーム」という話題が出るたび、『Ghost』の名前が戻ってくる。家庭用機向けの一作品として終わらず、

Blizzardが何度も挑戦しながら実現できていない“StarCraftを別ジャンルへ広げる試み”の象徴

になっている。それでもSにはしなかった。長期的な記憶は極めて強いが、『Sonic X-treme』や『スターフォックス2』ほど、ハードやシリーズ全体の歴史を象徴する一作とは一段差があると判断した。

評価

項目点数
惜しまれ度21 / 25
ゲーム史への潜在的影響17 / 20
忘れられにくさ20 / 20
期待の具体性14 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性8 / 10
総合89 / 100

Tier:A


『True Fantasy Live Online』|2004年の初代Xboxで、日本発の本格MMORPGを目指していた

今なら家庭用ゲーム機でMMORPGを遊ぶこと自体は珍しくない。しかし2002~2004年という時代に、

Xbox Liveを使った大規模オンラインRPGを、日本のレベルファイブが作る

という計画はかなり大きかった。それが『True Fantasy Live Online』だ。開発は『ダーククロニクル』などを手掛けたレベルファイブ。

発売元はMicrosoft。アニメ調の世界で自分のキャラクターを作り、多数のプレイヤーと生活・冒険するXbox専用MMORPGとして発表された。戦闘だけではない。

職業、生産、コミュニケーションなどを含め、

仮想世界で生活する

ことを強く意識したゲームだった。しかもかなり具体的に公開されている。東京ゲームショウにも出展され、発売予定も存在した。

2004年3月にはMicrosoftが、春予定だった日本発売を冬へ延期すると発表。その時点では夏にβテストを行う計画まであり、テスター募集も進められていた。ところが3か月後。

2004年6月、Microsoft Japanは開発中止を発表した。説明された理由は、

開発の進行状況と、ユーザーへ満足できる品質を届ける見通しの問題

だった。つまり、「Xboxが日本で売れなかったから一方的に切られた」

とだけ説明するのは正確ではない。市場環境は無関係ではないだろうが、公式説明では開発進捗と品質も明確に問題として挙げられている。この作品について、

「発売されていたら日本でXboxが成功していた」とまでは言わない。それはさすがに大きすぎる仮定だ。

ただし、2004年の初代Xboxで、日本のレベルファイブが家庭用本格MMORPGを作っていた

という事実だけでも十分に大きい。期待の具体性は15/15。潜在的影響も18/20まで評価した。

今回の50作品でも、日本のXbox史を考えるうえで特に惜しい一本である。

評価

項目点数
惜しまれ度20 / 25
ゲーム史への潜在的影響18 / 20
忘れられにくさ16 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性8 / 10
総合86 / 100

Tier:A


『Star Wars Battlefront III』|「99%完成」と「75%程度」が真っ向から食い違う幻の続編

初代『Star Wars: Battlefront』と『Battlefront II』の後を受け、Free Radical Designが制作していた三作目。現在では大量の映像や資料、元スタッフ証言が残っているため、開発されていたこと自体に疑いはない。

だが、最初に大事な点を一つ。

LucasArtsは当時、『Star Wars Battlefront III』を正式発表していない。

後年、関係者証言や開発素材によって実像が見えるようになった作品だ。そのため、中止当時に公然と発売を待たれていた作品と同じ「惜しまれ方」はしていない。今回、惜しまれ度を20/25へ抑えた理由でもある。

一方、開発内容はかなり大規模だった。地上戦から宇宙戦へシームレスに移動する構想など、後の『Battlefront』シリーズを考えても野心的な要素が作られていた。そして、この作品を有名にしたのが、

完成度をめぐる証言の食い違い

だ。Free Radical共同創業者Steve Ellis氏は2012年、

99%完成しており、残っていたのはバグ修正程度だった

と主張した。しかし元LucasArts関係者はこれを強く否定。「99%はあり得ない」とし、寛大に見ても75%程度だったという、まったく異なる見方を示している。

さらに双方で、開発遅延
マイルストーン
Free RadicalとLucasArtsの関係
キャンセルに至った責任

についても認識が食い違っている。だから本記事では、

「99%完成していたのに理不尽に中止されたゲーム」

とは書かない。それはFree Radical側から見た一つの証言だからだ。正しくは、

Free Radical側はほぼ完成していたと主張する一方、LucasArts側の元関係者はそれを否定しており、開発終了時点の完成度には大きな証言差が残っている。

となる。むしろ、この食い違いまで残っていること自体が面白い。発売中止ゲームの「完成率○%」という数字を、そのまま信じてはいけない理由を示す代表例でもある。

以前の87点から少し下げたのは、当時正式発表されていなかったことを惜しまれ度へ反映したためだ。

評価

項目点数
惜しまれ度20 / 25
ゲーム史への潜在的影響17 / 20
忘れられにくさ18 / 20
期待の具体性13 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性8 / 10
総合85 / 100

Tier:A


PS3版『絶体絶命都市4 -Summer Memories-』|一度発売中止になった「4」を、別会社が引き継いで作り直した

『絶体絶命都市4』は少し扱いが難しい。なぜなら、

現在『絶体絶命都市4Plus -Summer Memories-』というゲームが実際に発売されている

からだ。しかし、それを理由に2011年のPS3版を「結局発売された作品」とするのも正確ではない。当初の『絶体絶命都市4 -Summer Memories-』は、アイレムがPlayStation 3向けに制作していた。

災害都市からの脱出を描くシリーズ4作目。発売直前期までプロモーションが進んでいたが、2011年3月に発売中止となる。ここで注意したいのが、中止理由だ。

時期だけを見ると、東日本大震災と直接結び付けたくなる。実際、多くの記事ではそう説明されてきた。しかし、

当時の公式中止告知は、具体的な理由を明記していない。

そのため本記事では、「東日本大震災のため発売中止になった」と確定事項のようには書かない。

中止された時期が震災直後だった、という事実と、中止理由の公式説明がないことは分ける。そして数年後、この作品の歴史が再び動く。2014年、グランゼーラがアイレムから『絶体絶命都市』シリーズの権利を取得。

2015年には、2011年に発売中止となった『絶体絶命都市4』を引き継ぎ、PS4タイトルとして再構築している

と正式に発表した。「続編を新しく作った」ではない。旧作の企画を引き継ぎながら、

機種をPlayStation 3からPlayStation 4へ変更し、ゲーム内容も見直し、表現を大幅強化する再構築だった。そして2018年11月22日。『絶体絶命都市4Plus -Summer Memories-』として実際に発売された。グランゼーラ自身も、販売会社とプラットフォームの変更を経て、2010年の発表から8年かかった作品だと振り返っている。

つまり、PS3版発売中止

シリーズ権利移動

別会社が引き継ぐ

PS4向けに再構築

7年以上後に発売

という極めて珍しい道をたどった。スターフォックス2のような「当時の完成品を後年正式発売」とも違う。一度止まったゲームを、権利ごと別会社へ移して作り直した。

その中止後の歴史まで含めてA Tierに置いた。

評価

項目点数
惜しまれ度22 / 25
ゲーム史への潜在的影響17 / 20
忘れられにくさ18 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性8 / 10
総合89 / 100

Tier:A


『Star Wars 1313』|地下1313階層を舞台にした大型企画は、LucasArtsの開発体制とともに止まった

2012年に発表された『Star Wars 1313』。タイトルの「1313」は、惑星コルサント地下の巨大都市、

Level 1313

を指していた。ジェダイのフォースやライトセーバーを前面に出すのではなく、犯罪者や賞金稼ぎが生きる地下社会を描く。ゲーム内容も、カバーアクション、銃撃、登攀などを組み合わせた、より地に足のついた三人称アクションとして紹介されていた。

E3で公開された映像はかなり強烈だった。当時として非常に高品質なリアルタイム映像で、「次世代のStar Warsゲーム」

として大きな期待を集めた。ただし、ここでも一つ整理が必要だ。

市販版の対応機種は正式発表されていない。

デモは高性能PC上で動いていたが、それを理由に「PC版が発売予定だった」とはしない。Lucasfilm側の公式サイトにも、2012年時点で『Star Wars 1313』が開発中タイトルとして記録されている。ところが同年、LucasfilmがDisney傘下へ入る。

翌2013年、LucasArtsの内製開発体制は大きく縮小され、スタッフ削減とともに進行中タイトルの開発も停止した。『1313』については、別会社へライセンスして継続する可能性が一時残っていた。つまり、

LucasArts閉鎖と同時に、法的にも完全消滅したとその場で確定した

わけではない。しかし引き受ける開発会社は現れず、作品は製品化されなかった。報道では『1313』と『First Assault』が事実上キャンセルされたことも伝えられている。その後、Star Warsゲームの中心はEAとのライセンス契約へ移っていく。2013年5月にはLucasfilmとEAの新たな複数年契約が正式発表された。

『Star Wars 1313』が出ていれば、現在のStar Warsゲーム史が必ず変わった――とまでは言えない。しかし、

Disney買収前後のLucasArtsが大型内製ゲームを作っていた最後期を象徴するタイトル

であることは間違いない。そして公開から10年以上たっても、未発売Star Warsゲームの代表格として名前が残っている。

評価

項目点数
惜しまれ度21 / 25
ゲーム史への潜在的影響17 / 20
忘れられにくさ18 / 20
期待の具体性13 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性8 / 10
総合86 / 100

Tier:A


『Prey 2』|「ほぼ形になっていた」と「品質基準に届かなかった」が同時に残る

2011年に公開された『Prey 2』は、2006年の『Prey』とはかなり違うゲームになろうとしていた。主人公は前作のTommyではなく、米連邦保安官Kilian Samuels。異星の都市を舞台に、賞金稼ぎとしてターゲットを追う。

一人称視点ながら、パルクール的な移動、追跡、ガジェットを使った捕獲などを組み合わせたSFアクションとして披露されていた。E3やGamescom、PAXではデモも公開された。それだけに、その後の長い沈黙は目立った。

そして2014年10月。Bethesdaは『Prey 2』がもう開発されていないことを正式に認めた。理由として示したのは、

求める品質基準へ達していなかったこと。

一方、開発元Human Head側の認識は少し違う。プロジェクトディレクターChris Rhinehart氏は、2011年末に作業を止めた時点で主要コンテンツがそろい、alphaに非常に近い状態だったと後年説明している。この二つは完全には一致しない。

しかし、「Human Headが完成間近だと言っているから、Bethesdaの説明は嘘だった」とも言えない。

ゲームの内容が一通り存在することと、発売可能な品質になっていることは別だからだ。ここを混同しない。『Prey 2』は、

相当量のゲームが作られていた
一方で、
パブリッシャーは製品として必要な品質へ届かなかったと判断した

作品として扱う。そして2017年にはArkane Studiosによる新しい『Prey』が発売されたが、Human Head版『Prey 2』の続きを完成させた作品ではない。同じシリーズ名の下で、企画は途切れた。

具体的なゲーム像がかなり見えていたこと。それが製品にならなかったこと。開発側と発売側で、終了時点の見え方に差が残ったこと。

そのすべてを含め82点Aとした。

評価

項目点数
惜しまれ度20 / 25
ゲーム史への潜在的影響15 / 20
忘れられにくさ17 / 20
期待の具体性14 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性7 / 10
総合82 / 100

Tier:A


『Fable Legends』|ゲームだけでなく、Lionhead Studiosの歴史まで終わった

2016年3月7日。Microsoftは『Fable Legends』の開発終了を発表した。同じ発表には、シリーズを生み出したLionhead Studiosの閉鎖協議も含まれていた。

一作品の中止だけでは終わらなかった。それが『Fable Legends』をA Tierへ押し上げた最大の理由だ。従来の『Fable』は、一人でAlbionを冒険し、プレイヤーの選択によって人物や世界との関係が変わっていくRPGだった。

『Legends』はかなり違う。4人の英雄役と、それを迎え撃つ1人のヴィラン役。英雄側は協力型アクションRPGのように戦い、ヴィラン側は敵や罠を配置して攻略を妨害する。

さらに基本プレイ無料、Xbox OneとWindows 10のクロスプラットフォーム展開を掲げていた。Microsoftも2015年時点で、同作をXbox One/Windows 10戦略の具体例として紹介している。企画だけで終わったわけでもない。クローズドβまで実施されていた。

リードデザイナーDavid Eckelberry氏は後年、ソフトウェア開発の意味ではほぼcontent completeの段階だったと振り返っている。ただし15部構成のストーリーにはまだ完成していない部分もあった。そのため本記事では、「完全完成していた」

とはしない。しかし、

何年も開発され、一般ユーザーが参加するβまで進み、主要コンテンツがそろった段階で終了した

ことは重い。しかも同時にLionheadそのものが姿を消した。2026年現在、『Fable』はPlayground Gamesによる新しい作品として再出発しているが、開発側自身が「我々はLionheadではない」と語るほど、2016年の断絶は明確だ。

『Fable Legends』の85点は、ゲーム単体の魅力だけではない。

一つのスタジオ時代の終点になった発売中止

としての評価である。

評価

項目点数
惜しまれ度20 / 25
ゲーム史への潜在的影響15 / 20
忘れられにくさ17 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力8 / 10
中止そのものの歴史的重要性10 / 10
総合85 / 100

Tier:A


『Scalebound』|ドラゴンと戦うのではなく、ドラゴンと一緒に成長するPlatinumGamesの大型企画

巨大なドラゴンを倒すゲームは珍しくない。『Scalebound』が目指していたのは、

ドラゴンを相棒にして一緒に成長するアクションRPG

だった。開発はPlatinumGames。ディレクターは神谷英樹氏。

主人公Drewは異世界Draconisへ飛ばされ、ドラゴンThubanと結び付く。Drewを直接操作しながら、AIで動くThubanへ指示を出し、二人の能力を組み合わせて巨大な敵と戦う。しかもドラゴンは単なる召喚獣ではない。

タイプを変化させ、属性を成長させ、装甲を装備させる。Xbox公式ではRex、Tank、Wyvernを基礎にしたDragon Evolutionや、主人公と意識をつないでドラゴンを直接操作するDragon Linkまで詳しく紹介されていた。さらに最大4人協力プレイ。

2016年のXbox E3では、Xbox OneとWindows 10向けのXbox Play Anywhereタイトルとして2017年発売予定と案内されていた。つまり、

タイトルだけ発表されて消えたゲームではない。

どんなゲームを目指していたのかはかなり具体的に見えていた。しかし2017年1月9日、Microsoft Studiosが開発中止を発表。2日後にはPlatinumGamesも正式声明を出し、プロジェクト終了を認めた。

ここでネット上では、

「ほぼ完成していた」
「Microsoft側だけの問題だった」
「PlatinumGames側だけが悪かった」

などさまざまな説明が流れた。本記事ではどれも断定しない。一般公開された映像やシステム情報から、かなり開発が進んでいたことは分かる。

しかし、製品版完成寸前だったことを確定できる材料はない。

期待の具体性を15ではなく13にした理由でもある。それでも84点A。PlatinumGamesの大型新規IPとして長期間公開され、Xboxのファーストパーティー戦略上も大きく扱われた作品が、そのまま製品にならなかった。

有名スタッフの名前だけで評価したわけではない。

具体的なゲームが見えていたにもかかわらず、その完成形だけが存在しない。

そこが今も惜しまれる最大の理由だ。

評価

項目点数
惜しまれ度22 / 25
ゲーム史への潜在的影響16 / 20
忘れられにくさ17 / 20
期待の具体性13 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性7 / 10
総合84 / 100

Tier:A


B Tier|知名度より「調べると面白い」が強い23作品

Bは23本で、初回50の中では最も多い。Aへ届かなかったから価値が低いわけではない。むしろ、一般的な知名度は高くなくても、試作ROMの発掘、数十年後の復活、企業再編、異色の企画など、調べて初めて面白さが見える作品が集中している。

NES版『SimCity』|26年間消えていた「宮本茂×ウィル・ライト」のラフドラフト

スーパーファミコン版『SimCity』は有名だ。しかしその前に、

ファミコン/NES版が存在した。

しかも単なる後付け移植企画ではない。NintendoとMaxisは1990年、NES版とスーパーファミコン版を同時に発表している。ゲームデザイナーのウィル・ライトが京都を訪れ、宮本茂氏と一緒に家庭用版『SimCity』を再設計。

その共同作業から、Nintendo版『SimCity』が作られていった。1991年1月のWinter CESでは、NES版が実際に展示されている。しかしその後、ひっそりと開発中止。

市販されなかった。そして長い間、数枚の画面写真と短い映像以外、実物を確認できない状態が続く。それが2017年。

2本のプロトタイプカートリッジが突然現れた。

Video Game History Foundationがデータを保存・解析し、翌2018年に詳細を公開している。 (Video Game History Foundation)解析して分かったのは、「ほとんど何もできない試作版」

ではなかったことだ。未完成ではある。バグもある。

しかしゲームのかなりの部分を実際に遊べる。さらに面白いのは、後のスーパーファミコン版へ引き継がれたUIやシステムの“前段階”を確認できることだ。 (Video Game History Foundation)つまりこれは、

Nintendo版『SimCity』のラフドラフト

に近い。完成版がスーパーファミコンで発売されている以上、NES版が消えたことで『SimCity』自体を失ったわけではない。だからAにはしない。

それでも、宮本茂氏とウィル・ライトというゲーム史級の二人が共同で作ったアイデアを、未発売のプロトタイプから追える。しかも26年間行方不明だった。

発売中止ゲームを「遊びたかったゲーム」だけでなく、

開発史を残す資料

として見る意味がよく分かる一本だ。

評価

項目点数
惜しまれ度17 / 25
ゲーム史への潜在的影響14 / 20
忘れられにくさ17 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力8 / 10
中止そのものの歴史的重要性6 / 10
総合77 / 100

Tier:B


『Bio Force Ape』|「そんなゲーム本当にあったのか?」から、本物の試作ROM発見へ

発売中止ゲームを調べていると、

「昔の雑誌に載っていたらしい」
「ROMを持っている人がいるらしい」

という伝説めいた話にぶつかる。『Bio Force Ape』は、それが一度偽物まで登場した作品だ。SETAがNES向けに開発していたアクションゲーム。

薬品を飲んで超人的な力を得たサルが主人公で、高速スクロールとプロレス技を使って敵を倒していく。1991年Summer CESで展示され、『Nintendo Power』などでも紹介された。つまり、当時の市販予定作品だったこと自体は確認できる。

しかし1992年に開発中止。理由は現在もはっきりしない。そして長い間、実物のROMは確認されなかった。

2005年には、「プロトタイプを持っている」

と名乗る人物まで現れた。ところが、その話は偽物だった。ますます「本物は存在するのか」という空気になる。

そして2010年。Yahoo!オークションの日本市場に、

実際の試作ROMが出品された。

保存活動家らが資金を集めて購入し、その後データが保存・公開された。実際に動かしてみると、「タイトル画面だけのデモ」

でもなかった。複数ステージが遊べ、高速移動や格闘アクションなど、雑誌で紹介されていた特徴も確認できる。ゲーム史を変えた大作ではない。

だから潜在的影響は11/20。それでも忘れられにくさ17/20。理由は、

雑誌に載る

発売されない

試作ROMが見つからない

偽物が出る

本物が発見される

という、発売中止後の歴史があまりにも面白いからだ。作品そのものを知らなくても、ここまでの経緯だけで読める。今回の記事で狙っていた「発見枠」の代表である。

評価

項目点数
惜しまれ度16 / 25
ゲーム史への潜在的影響11 / 20
忘れられにくさ17 / 20
期待の具体性14 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性7 / 10
総合74 / 100

Tier:B


『スペースファンタジーゾーン』|オパオパで『スペースハリアー』をやる。PCエンジンに本当に存在した異色作

今回の50作品で、

「そんなゲームが本当に作られていたのか」

という驚きが最も強い一本かもしれない。『スペースファンタジーゾーン』。名前の通り、

『ファンタジーゾーン』

『スペースハリアー』

を混ぜたようなゲームだ。自機はオパオパ。しかし横スクロールではない。

画面奥へ向かって飛び続け、敵や障害物をかわしながら進む。ほぼ、

「オパオパで遊ぶ『スペースハリアー』」

と言ってよい。開発していたのはNECアベニュー。PCエンジン CD-ROM系向けタイトルとして、1990年代前半から長期間発売予定表へ残っていた。

発売されないまま年月が過ぎても、予定表からすぐ消えたわけではない。1996年2月号『電撃PCエンジン』の発売予定表にも、

NECアベニュー/STG/発売日不明

としてまだ名前が残っている。それだけ長期間、「いつか出るかもしれないソフト」

として存在していた。ゲームそのものも、画面だけの企画ではない。後年、実際に動く開発版が知られるようになり、複数ステージやショップシステムなど、かなり具体的な内容を確認できる。

では、なぜ発売されなかったのか。ここは慎重にする。後年資料では品質面などを理由として挙げる話もある。

しかし、当時のNECアベニューによる正式な中止声明を現在確認できていない。したがって本文では、

中止理由は確認できない

とする。それでも82点。B Tier最高点だ。

惜しまれ度19。忘れられにくさ18。期待の具体性15。

企画魅力10。かなり高い。それでもAへ上げなかった。

理由は、発売されなかったことがゲーム史全体を大きく分岐させた作品とまでは言えない

からだ。『Bound High!』と同じ82点でも、こちらはB。この違いこそ今回のTier基準をよく表している。

歴史的重要性より、

「こんなものが本当に作られていた」という魅力が極端に強い作品。

初回50の中でも、ぜひ読んでほしい一本である。

評価

項目点数
惜しまれ度19 / 25
ゲーム史への潜在的影響13 / 20
忘れられにくさ18 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力10 / 10
中止そのものの歴史的重要性7 / 10
総合82 / 100

Tier:B


メガドライブ版『マッドストーカー FULLMETALFORTH』|ROM価格で消えたゲームが26年後に完成した

「なぜ発売中止になったのか」。それを調べると、開発失敗や企業事情など大きな理由を想像しがちだ。メガドライブ版『マッドストーカー FULLMETALFORTH』は、

もっと現実的な理由だった。

ROMが高かった。

オリジナル『マッドストーカー』は1994年にX68000向けとして発売された横スクロールアクション。巨大ロボットを操作し、ベルトスクロール型アクションと格闘ゲーム的な1対1バトルを組み合わせた作品だ。

FM TOWNSやPCエンジンにも移植された。そしてメガドライブ版も作られていた。しかし最終的なデータ量が8Mbit ROMへ収まらない。

16Mbit ROMを使えばよい。ところが当時は供給不足によってROM価格が高騰しており、

16Mbitでは採算が取れない。

結果、完成目前で発売中止になったと後年の関係者資料で説明されている。ここまでなら、「1990年代のハード事情で消えたゲーム」

で終わる。だが2020年。話が動く。

当時の試作ROMが残っていたことから、版権を管理するオペラハウスが開発再開を決定。当時の開発担当・今泉正稔氏監修のもと、

未完成部分を新たに補完し、26年越しで完成させた。

そして2020年9月17日に、メガドライブ/MD互換機向けカートリッジとして発売された。ただし、ここで『スターフォックス2』と同じ「公式復活」とはしない。

商品自体に、オペラハウスのライセンス商品
であり、
セガのライセンス製品ではない

ことが明記されている。したがって今回の分類は、権利者の許諾を得た後年の商品化である。

権利者公認で完成したが、当時のハードメーカーによる公式ソフトではない。数億円の開発失敗でも、スタジオ閉鎖でもない。

カートリッジ容量とROM価格という極めて1990年代らしい事情で消えたゲームが、26年後にはその制約を越えて商品になった。

こういう例まで拾えると、発売中止ゲーム史がかなり立体的になる。

評価

項目点数
惜しまれ度16 / 25
ゲーム史への潜在的影響11 / 20
忘れられにくさ17 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力8 / 10
中止そのものの歴史的重要性8 / 10
総合75 / 100

Tier:B


『ドラゴンホッパー』|30年前の未発売バーチャルボーイ作品が、2026年に任天堂から正式発売

2026年8月4日。発売中止ゲームの歴史に、とんでもない事例が一つ増えた。バーチャルボーイ向けに開発されながら発売されなかった、

『ドラゴンホッパー』

が任天堂から正式に遊べるようになった。任天堂自身が、

「当時未発売の2タイトル」

として『ZERO RACERS』とともに「バーチャルボーイ Nintendo Classics」へ追加している。 (任天堂公式)約30年越しだ。『ドラゴンホッパー』はIntelligent Systemsが開発していたアクションゲーム。

主人公Dorinnを操作し、上層と下層を行き来しながら立体的なフィールドを探索する。バーチャルボーイの奥行き表現をゲームシステムへ組み込んだ作品だった。1990年代には発売予定として雑誌等で紹介されたものの、市販されずに終わる。

その後長期間、バーチャルボーイの代表的未発売作として名前だけが残った。そして2026年、ハード発売から約31年を経て任天堂自身が正式配信した。

ここで注意したいのが、

2026年版が完成しているからといって、1990年代の開発時点でも100%完成していたとは断定できない

ことだ。現在の正式版と、当時の開発進捗は分ける。だから、1990年代当時の完成度は「不明」のまま扱う。

一方、現在状態には迷いがない。任天堂自身による、約30年越しの正式な復活である。任天堂自身による正式復活だ。

ゲーム史全体を左右する作品ではない。しかし、

「発売中止ゲームは30年たっても本当に発売される可能性がある」

ことを現実に証明した一本として、この記事には欠かせなくなった。

評価

項目点数
惜しまれ度16 / 25
ゲーム史への潜在的影響11 / 20
忘れられにくさ17 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性10 / 10
総合78 / 100

Tier:B


『ZERO RACERS』|バーチャルボーイ版『F-ZERO』系作品も、2026年に約30年越しで復活した

『ドラゴンホッパー』と同じ2026年8月4日。もう一本、任天堂から正式復活したバーチャルボーイ作品がある。

『ZERO RACERS』。

当時は未発売だったレースゲームで、バーチャルボーイの立体視を利用して、奥行きを含むコースを走る。機体デザインや高速レースという方向性から、『F-ZERO』との関係が強く感じられる作品でもある。任天堂の2026年公式紹介では、

「バーチャルボーイ Nintendo Classics」へ追加される当時未発売タイトルとして明確に扱われている。 (任天堂公式)『ドラゴンホッパー』同様、2026年版が存在するからといって、1990年代当時の完成度を100%と推定しない。

ここも分ける。では、なぜこちらは79点と1点だけ上なのか。忘れられにくさを18/20としたためだ。

バーチャルボーイで『F-ZERO』系の高速レースを作ろうとしていたという分かりやすさもあり、未発売バーチャルボーイ作品の中でも以前から比較的名前が残っていた。そして正式復活によって、

「幻のゲーム」から「現在遊べるゲーム」へ本当に移動した。

長い間発売されなかった作品を、当時のハードメーカー自身が後世に救い上げる。『スターフォックス2』だけの特例ではなくなった。2026年の二作品は、この記事を今作る大きな意味の一つでもある。

評価

項目点数
惜しまれ度15 / 25
ゲーム史への潜在的影響12 / 20
忘れられにくさ18 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性10 / 10
総合79 / 100

Tier:B


スーパーファミコン版『クーリースカンク』|発売中止→PlayStation化→サテラビュー版発掘→29年後に復活

一度発売中止になったゲームが別機種へ移る。ここまでは珍しくない。『クーリースカンク』の歴史は、そこからさらに続く。

開発したのは浮世亭。当初はスーパーファミコン向け2Dアクションとして制作されていた。ディレクター成瀬憲史氏の証言によれば、SFC版はほぼ完成へ近づいていた

しかしその頃、北米でPlayStation市場が急速に拡大。一方、16bit市場は急速に縮小していた。北米バイヤーからもSFC版中止の要請があり、開発は止まったという。

では全部捨てたのか。そうではない。その後PlayStationで2Dゲームを作る研究過程の中で、

SFC版『クーリースカンク』のキャラクターやアニメーション、背景処理などが使われた。最終的に多くの素材を引き継ぎながら、マップなどを作り直し、

PlayStation版『クーリースカンク』として1996年に発売。

北米では『Punky Skunk』となった。これだけでも、

スーパーファミコン版は中止され、PlayStation版として大きく作り直された。

の良い例だ。しかしさらに20年以上後。SFC版の歴史が再び動く。

かつてサテラビューで配信された体験版データが保存された8Mメモリーパックが発見され、2020年にデータが公開された。そして調べてみると、ただの数ステージ体験版ではなく、

アクセスを封じられていただけで多くのステージデータが内部に残っていた

ことまで判明する。さらに2025年2月23日。当初の発売予定日、

1996年2月23日

からちょうど29年後。SFC互換機向け『クーリースカンク』が正式商品として発売された。商品公式ページ自身が、1996年2月23日発売予定だったが市場環境を考慮して発売見送りになったことを説明している。

ただし、この復刻も任天堂公式ソフトではない。商品ページには、

任天堂株式会社のライセンス製品ではない

と明記されている。したがって、権利者の許諾を得た後年の商品化である。

TierとしてはBでも、

発売中止後の物語だけなら今回の50本でもトップクラスに面白い。

SFC版中止。PS版へ変化。サテラビュー版発掘。

そして29年後の復活。発売されなかったゲームがどう生き残るか、そのほぼ全部が詰まっている。

評価

項目点数
惜しまれ度17 / 25
ゲーム史への潜在的影響12 / 20
忘れられにくさ18 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力8 / 10
中止そのものの歴史的重要性8 / 10
総合78 / 100

Tier:B


『Cabbage』|画面すらほとんど残っていないのに、宮本茂・糸井重里・岩田聡が作っていた

今回の50作品の中でも、

実際のゲーム画面がほとんど残っていないのに、なぜか開発思想だけはかなり追える

という珍しい作品がある。『Cabbage』だ。NINTENDO64の周辺機器64DD向けに、宮本茂氏と糸井重里氏が進めていた企画。

さらにHAL研究所の岩田聡氏も開発へ加わっていた。1997年の『64DREAM』インタビューでは、糸井氏が、

岩田氏が参加したことで制作ツールが大きく近代化し、ツール側とゲーム仕様側を結合する段階まで来ている

と話している。つまり、「名前だけ出したアイデア」

ではない。実際に開発作業は進んでいた。では、どんなゲームだったのか。

これが少し難しい。大枠としては、

何かを育て、その存在と関係を築くゲーム

だった。宮本氏は当時、64DDの書き換え可能な特性や携帯機との連携を利用し、育てている存在へ新しい玩具やイベントを追加するアイデアまで語っている。リアルタイムクロック。

書き換え可能なディスク。携帯機とのデータ移動。1990年代後半の任天堂が、新しいゲームとの付き合い方を考えていたことが分かる。

ただし、開発は長期化した。2000年時点でも宮本氏は『Cabbage』が大幅に遅れていると説明している。そして最終的に製品化されなかった。

後年のNintendo DREAMインタビューについて伝えられた内容では、宮本氏は『Cabbage』の開発終了を認め、一部の考え方が『nintendogs』へ生かされたと説明している。ここは少し慎重に扱いたい。『Cabbage』がそのまま『nintendogs』になったわけではない。

キャラクターもゲームシステムも別物だ。正しくは、

育成や関係性に関する一部の発想が、後の作品へ流れた

程度に見る。今回75点まで付いた最大の理由は、ゲームそのものの完成度ではない。潜在的影響18/20、企画魅力10/10。

宮本茂、糸井重里、岩田聡というメンバーが、64DDという特殊なハードを使い、リアルタイムで育つ存在との関係を模索していた。それなのに、

完成版がどんなゲームになるはずだったのかは今もほとんど見えない。

その空白自体が面白い。

評価

項目点数
惜しまれ度14 / 25
ゲーム史への潜在的影響18 / 20
忘れられにくさ16 / 20
期待の具体性10 / 15
企画の独自性・魅力10 / 10
中止そのものの歴史的重要性7 / 10
総合75 / 100

Tier:B


『RiQa』|E3 1999で公開されたN64作品。25年後、開発者本人が最後の4ビルドを公開

『RiQa』は、Bits StudiosがNINTENDO64向けに制作していた三人称アクションだ。女性主人公。3D空間。

銃撃。探索。1999年のE3で公開され、当時は『トゥームレイダー』系の新しいアクション作品として注目された。

だが発売されない。そして長い間、「映像やスクリーンショットはあるが、実際どこまでゲームとして作られていたのか」

が分かりにくい作品だった。その状況が2024年に大きく変わる。当時Bits Studiosで働いていた開発者が、

N64版『RiQa』最後期の4ビルドを公開した。

ここで本人の説明が非常に重要だ。公開されたものについて、ステージ内を歩ける。

敵を倒せる場合もある。ボタンを押せる。カットシーンも存在する。

しかし、完成したゲームと呼べるものはほとんどない。

そう本人が説明している。発売中止ゲームでは、

「最終ビルド発見」
と聞くだけで、

ほぼ完成版が発掘された

と思われがちだ。『RiQa』はその逆。最後期のビルドが残っていても、ゲーム全体はまだ未完成だった。

また、開発終了後にチームが『Die Hard』や、後に『Rogue Ops』へつながる別企画へ再配置されたことも元開発者が説明している。ただし、『RiQa』がそのまま『Rogue Ops』になった

とまでは断定しない。開発チームやノウハウが次へ移った、という程度に見る。2024年になって、ようやく「どこまでゲームだったのか」を本人のビルドで確認できるようになった。

こういう作品は、発売中止後も研究対象として歴史が続く。

評価

項目点数
惜しまれ度15 / 25
ゲーム史への潜在的影響14 / 20
忘れられにくさ16 / 20
期待の具体性14 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性7 / 10
総合75 / 100

Tier:B


『Geist Force』|「完成間近のドリームキャスト大作」という伝説より、実際はもっと未完成だった

『Geist Force』はドリームキャスト初期を語る未発売ゲームとして、かなり有名だ。宇宙を舞台にした3Dシューティング。『スターフォックス』のような奥行き型のゲーム画面と、当時として非常に派手なグラフィック。

ドリームキャストの新世代感を見せるタイトルの一つとして、早い段階から公開されていた。そのため後年、

「ほとんど完成していたのに中止された」

という説明が広がった。しかし詳しく追うと、そこまで単純ではない。Sega of Americaは当時、他のドリームキャストタイトルと比べて品質水準へ届かないと判断し、開発中止を説明している。

一方、元スタッフChristian Senn氏は後年、アート素材はかなり作られていた。設計も進んでいた。

ただしゲームを完成させるには、

品質の高い製品ならさらに1年程度必要だったと思う

と振り返っている。つまり、

素材が大量に存在する
ことと、
ゲームが完成に近い
ことは同じではない。

ここが重要だ。現在残るプロトタイプにも、テクスチャ、アニメーション、音楽、サウンドなど多くの素材が含まれている。しかし、それらをゲームとして結び付ける部分は十分完成していなかったとされる。

それでも80点B。ドリームキャストの初期プロモーションで大きく扱われ、セガ自身の品質判断で消えた。さらに、後世に残った素材量が多いため、今も「どんなゲームだったのか」をかなり具体的に追える。

ただし、完成間近だった幻の名作

とは書かない。そこを訂正できること自体が、この作品を載せる価値でもある。

評価

項目点数
惜しまれ度17 / 25
ゲーム史への潜在的影響14 / 20
忘れられにくさ17 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力8 / 10
中止そのものの歴史的重要性9 / 10
総合80 / 100

Tier:B


ゲームボーイカラー版『バイオハザード』|無理と思われた移植は、かなり完成に近いところまで来ていた

初代『バイオハザード』をゲームボーイカラーへ。今見てもかなり無茶な企画に思える。PlayStationで背景、キャラクター、演出を組み合わせて成立していた3Dサバイバルホラーを、携帯機へ移そうとしていたからだ。

単なる名前だけの別ゲームではない。HotGenが開発していたGBC版は、可能な限りオリジナル版の構造を再現しようとしていた。キャラクターを背景上で動かし、部屋を移動し、敵と戦う。

ハード性能の差を考えれば、それだけでもかなり異様だ。1999年のE3などで公開され、発売予定も存在した。しかし2000年、Capcomは発売を断念する。

当時の説明では、ゲームボーイカラー上で『Resident Evil』を満足できる水準まで再現できないと判断された。そして、この作品をややこしくしているのが完成度だ。長い間、

「かなり完成していたらしい」と語られてきた。2025年、未発売ゲームを保存するGames That Weren'tが、元開発者Pete Frith氏から中止時点に近い後期ビルドを入手。改めて開発者へ聞き取りを行っている。 (Games That Weren't)

そこで出てくる数字が一致しない。Nigel Speight氏は記憶として、

75~85%程度。

Pete Frith氏は、

98%くらいだったと思う。

と振り返っている。 (Games That Weren't)だから本記事では、

「98%完成していたゲーム」

とは書かない。開発者間でも認識に幅があるからだ。ただ、2025年に確認された後期ビルドを見る限り、相当量のゲームが実際に作られていたこと自体は疑いにくい。

中止から25年以上たっても、新しいビルドが発見され、完成度について再検証されている。これが忘れられにくさ18/20の理由だ。一方、あくまで既存作品の移植版。

ゲーム史の大きな分岐としてはA作品より一段落ちる。

「携帯機では無理だったから企画段階で終わった」のではなく、本当にかなり作っていた。

そこに価値がある。

評価

項目点数
惜しまれ度18 / 25
ゲーム史への潜在的影響13 / 20
忘れられにくさ18 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力8 / 10
中止そのものの歴史的重要性7 / 10
総合79 / 100

Tier:B


『Echo Delta』|NINTENDO64で海底リアルタイムストラテジー。Space Worldでは本当に遊べた

NINTENDO64でリアルタイムストラテジー。それだけでも珍しい。さらに舞台は海底。

『Echo Delta』は、Clever Trickが開発し、任天堂から発売予定だったNINTENDO64向けストラテジーゲームだ。2000年のNintendo Space Worldにも正式出展。GameSpotは会場で実際に試遊し、「NintendoがN64へリアルタイムストラテジーを持ち込んだ」と紹介している。

つまり、「企画書だけ存在した作品」ではない。

ゲームとして人前に出ていた。海中を舞台にユニットを操作し、資源を管理しながら目標を達成する。NINTENDO64後期に出すゲームとしてはかなり異色だった。

だから期待の具体性は15/15。一方、なぜ発売されなかったのか。

ここが分からない。NINTENDO64の世代末期だった。ニンテンドー ゲームキューブが発表された。

そうした時代背景はある。しかし、それを理由と断定できる公式説明は現在確認できていない。したがって、

中止理由は現在も確認できない。

のままにする。完成度についても同様だ。ネット上では高い完成率を示す話が出ることがある。

だが、確かな出所を確認できない数字は使わない。数字だけ見ると低めだが、

Space Worldで本当に遊べた任天堂発売予定の海底RTSが、その後理由不明のまま消えた

という一文だけで十分に面白い。

評価

項目点数
惜しまれ度14 / 25
ゲーム史への潜在的影響12 / 20
忘れられにくさ13 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性7 / 10
総合70 / 100

Tier:B


『Raven Blade』|消えたRPGのスタッフと時間は、『メトロイドプライム』へ集中した

Retro StudiosがNintendo ニンテンドー ゲームキューブ向けに制作していたRPG、『Raven Blade』。中世ファンタジー風の世界で、剣を持った主人公がドラゴンやモンスターと戦う。

ニンテンドー ゲームキューブ初期タイトルとしてE3 2001にも姿を見せた。ただしここで一つ訂正しておきたい。

E3で一般へ公開されたのは映像であり、プレイアブル展示ではない。

内部では動作するゲームシステムやプロトタイプまで進んでいたことが元スタッフ資料などから確認できるが、「E3で遊べる状態だった」とはしない。

そして2001年7月。Nintendo of Americaは正式に中止を認めた。その理由も明確だった。

Retro Studiosの開発リソースを『Metroid Prime』へ集中させるため。 (GameSpot)NOAは、

Raven Bladeを完成させるために必要となるリソースをMetroidへ集約し、良いゲームにするため

という趣旨を説明している。 (GameSpot)翌月には、『Metroid Prime』以外のプロジェクトを終了し、同作へ全面集中していることも報じられた。 (GameSpot)結果だけを見れば、『Metroid Prime』は後に高く評価される作品となった。

だからといって、「Raven Bladeを中止したから名作が生まれた」

と単純化はしない。開発現場には人員整理も伴っている。元スタッフからも、当時のRetro Studiosがかなり厳しい環境だったことが語られている。

それでも、一方のゲームを中止して、もう一方へ会社の戦力を集める

という判断が、後の大作開発と直接つながっているのは確かだ。ゲーム単体の知名度は低い。しかし「中止したプロジェクトのリソースがどこへ行ったのか」まで追えるため、B Tierの一作として初回50へ残した。

評価

項目点数
惜しまれ度16 / 25
ゲーム史への潜在的影響16 / 20
忘れられにくさ14 / 20
期待の具体性11 / 15
企画の独自性・魅力8 / 10
中止そのものの歴史的重要性9 / 10
総合74 / 100

Tier:B


『Donkey Kong Racing』|CGムービーだけではなかった。実際に動くレースゲームから、別企画へ変化した

2001年E3で公開された『Donkey Kong Racing』。『ドンキーコング64』のキャラクターたちが、車ではなく動物に乗ってレースする

ニンテンドー ゲームキューブ向け作品だった。公開された映像はCG中心。そのため長い間、

「実際に遊べるものは作られていなかったのでは?」と思われやすかった。しかし元RareスタッフLee Musgrave氏は、後年かなり具体的に説明している。

動物を乗り換える。より速い動物へ飛び移る。落とされたら走って追い付く。

さらに、マルチプレイまで動いていた。

つまり、CGムービーだけの企画ではなかった。ではなぜ消えたのか。RareがMicrosoftに買収されたためだ。

『Donkey Kong』は任天堂IP。買収後、そのまま同じ作品を作り続けることはできない。そこで企画は別の姿へ変わっていった。

Xbox向けに作り直し、Rare自身の『Sabreman』IPを使う

『Sabreman Stampede』

へ変化。しかもそこでも終わらない。単純なレースゲームから、動物を育てる要素を含むオープンワールド型へ変化し、最終的にはその企画も中止された。

つまり、『Donkey Kong Racing』

Rare買収

『Sabreman Stampede』へ再構築

さらに内容変更

最終的に再び中止

という流れ。一度中止になって終わるより、むしろややこしい。『Donkey Kong』というIPだけで高得点にしたのではない。

一本のレースゲームが企業買収を境に別IPへ変わり、それでも完成しなかった

という歴史を評価した。

評価

項目点数
惜しまれ度18 / 25
ゲーム史への潜在的影響14 / 20
忘れられにくさ15 / 20
期待の具体性14 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性8 / 10
総合78 / 100

Tier:B


『Agartha』|『Alone in the Dark』の生みの親が作っていたが、「完成間近」ではなかった

『Agartha』は、名前と設定だけを見ると非常に魅力的だ。開発したのはNo Cliché。中心人物は、『Alone in the Dark』を手掛けたFrédérick Raynal氏。

ドリームキャスト向けのホラーアドベンチャーで、雪深い山岳地帯を舞台に、プレイヤーの善悪によって展開が変化する構想だった。ホラーゲーム史の重要人物がドリームキャストで新作を作る。それだけで期待したくなる。

そして後年残った映像を見ると、雰囲気もかなり作られている。だから、

「かなり完成していたのでは?」

と思いやすい。実際は違う。Raynal氏本人は後年、

完成にはほど遠かった

と明言している。主人公が背景内を歩くことはできる。しかし、

インタラクションはまだ存在していなかった。

さらに元スタッフ側の資料でも、プリプロダクションが終わり、本制作へ入った段階で、

制作全体としては約10%程度

だったという証言が残っている。では、なぜ中止になったのか。こちらはかなり明確だ。

No Cliché自身が、

セガが欧州でのゲーム開発を停止したため活動を停止し、『Agartha』も中止

と発表している。ゲーム自体が失敗したというより、セガがドリームキャスト撤退へ向かい、欧州開発体制そのものが縮小した。

その波を受けた作品だ。開発段階はまだ初期だったと見るのが妥当だ。それでも75点B。

企画魅力10/10。ゲームとしてどこまで完成していたかは低くても、

ドリームキャスト撤退によって、Raynal氏の新しいホラー企画とスタジオの活動が同時に終わった

という歴史は重い。完成度とTierは別。そのことを最も分かりやすく示す一本である。

評価

項目点数
惜しまれ度17 / 25
ゲーム史への潜在的影響14 / 20
忘れられにくさ15 / 20
期待の具体性10 / 15
企画の独自性・魅力10 / 10
中止そのものの歴史的重要性9 / 10
総合75 / 100

Tier:B


『CAPCOM FIGHTING ALL STARS』|3D化よりも面白いのは、Capcom自身が失敗を詳しく語っていること

『ストリートファイター』
『ファイナルファイト』
『私立ジャスティス学園』

などのキャラクターを集めた3D格闘ゲーム。それが『CAPCOM FIGHTING ALL STARS』だった。2002~2003年頃、アーケード向けとして開発されている。

ただの人気キャラクター集合ゲームではない。D.D.、ルーク、イングリッドというオリジナルキャラクターを中心に、爆弾による都市壊滅を止めるストーリーまで用意されていた。特徴的だったのが「勝利宣言」。

対戦前に自分から条件を厳しくし、それを達成できれば高評価を得る。制限時間をストーリーへ組み込む仕掛けも考えられていた。何よりこの作品は、

中止までの過程をディレクター本人がCapcom公式でかなり詳しく話している。

田辺豊寿氏によれば、開発期間は約1年半。東京ゲームショウやAOUへ出展。社内テストまで行われた。

しかし反応が非常に悪かった。 (CAPCOM公式)一度は作り直そうとした。そのためにスタッフまで増員した。

それでも最終的に中止。田辺氏は、自身の経験不足も含めて振り返っている。 (CAPCOM公式)ここまで開発側から「うまくいかなかった」と説明される発売中止ゲームは意外に少ない。

さらに全部が消えたわけでもない。オリジナルキャラクターのイングリッドは後に『CAPCOM FIGHTING Jam』へ登場。田辺氏自身も、それによって少し救われた気持ちになったと話している。

今回80点でもBにした理由は、

開発史としては非常に面白いが、ゲーム史全体を大きく変えた中止とは言いにくい

ためだ。それでも初回50から外す理由はなかった。「有名キャラが出ていた幻の格ゲー」だけではなく、

失敗して、作り直して、それでも止めたところまで開発者本人が語れる作品だからである。

評価

項目点数
惜しまれ度18 / 25
ゲーム史への潜在的影響14 / 20
忘れられにくさ17 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力8 / 10
中止そのものの歴史的重要性8 / 10
総合80 / 100

Tier:B


『Cry On』|『ブルードラゴン』『ロストオデッセイ』の次に出るはずだった、もう一本のXbox 360向けRPG

MistwalkerがXbox 360向けに手掛けていたRPGといえば、

『ブルードラゴン』
『ロストオデッセイ』

の2本が有名だ。だが、もう一本あった。それが『Cry On』である。

2005年に発表されたアクションRPG。企画・シナリオには坂口博信氏が関わり、開発はMistwalkerとCavia。キャラクターデザインには藤坂公彦氏、音楽には植松伸夫氏が参加していた。

主人公は少女Sally。「Cry On」というタイトル通り、悲しさだけでなく喜びも含め、

プレイヤーを泣かせる

ことを大きなテーマにしていた。巨大な生物「Bogle」と少女の関係を軸にした物語が構想されていた。これだけ聞くと、かなり具体的に作られていたように感じる。

実際には、一般公開されたゲーム情報は意外に少ない。コンセプトアートや設定は発表されたが、完成形を想像できるほどゲーム画面や長時間のプレイ映像が公開されたわけではなかった。そこが、今回の期待の具体性を8/15まで抑えた理由だ。

2008年12月。発売元AQインタラクティブは、『Cry On』の開発中止を発表した。理由について同社は、

現在の市場環境と今後の市場見通しを分析した結果

と説明している。つまり、「ゲームが完成できなかったから中止」

と断定できる作品ではない。少なくとも公表された理由は、事業性の判断だった。これはMistwalkerのXbox 360展開を考えるうえでも興味深い。

『ブルードラゴン』『ロストオデッセイ』に続く、もう一つの大型RPG候補が市場へ出ることなく終わったからだ。ただし、坂口博信氏、植松伸夫氏といった名前だけを理由にAへ上げない。一般公開されたゲーム内容が少なく、長期的な存在感も上位作ほど強くない。

B Tierでは下限寄りだが、日本のXbox 360初期~中期にどんな大型RPGが計画されていたのかを知る資料として、初回50へ残す価値は十分にある。

評価

項目点数
惜しまれ度17 / 25
ゲーム史への潜在的影響14 / 20
忘れられにくさ14 / 20
期待の具体性8 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性7 / 10
総合69 / 100

Tier:B


『The Agency』|スパイMMOは、SOEの大規模再編と一緒に終了した

MMORPGというと、ファンタジー世界で剣や魔法を使う作品を想像しやすい。Sony Online Entertainmentが作っていた『The Agency』は、

スパイ活動そのものをMMOへ持ち込む

企画だった。2007年に発表。銃撃や潜入、諜報活動を組み合わせ、プレイヤーがエージェントとしてミッションをこなす。

ファンタジー系MMOとはかなり違う題材だった。長期間開発が続き、イベントではプレイ可能な形でも公開された。しかし2011年3月31日。

Sony Online Entertainmentは大規模再編を発表。

205人の人員削減。
シアトル、デンバー、ツーソンの3拠点閉鎖。
そして『The Agency』の制作終了。

SOE自身は、開発リソースを『PlanetSide』『EverQuest』系へ集中させるためと説明している。 (Game Informer)つまり、「ゲームの出来が悪かったから中止」

と単純には言えない。企業全体のコスト削減と開発資源再編の中で終了した。それでも73点に抑えた。

理由は、証拠の弱さではない。むしろ中止理由はかなり明確だ。しかし15年以上たった現在、

『Sonic X-treme』
『StarCraft: Ghost』
『True Fantasy Live Online』

などと比較すると、「幻のオンラインゲーム」として残っている一般的な記憶は一段弱い。

資料が強いことと、Tierが高いことは別。

その好例としてBに置いた。

評価

項目点数
惜しまれ度17 / 25
ゲーム史への潜在的影響13 / 20
忘れられにくさ13 / 20
期待の具体性14 / 15
企画の独自性・魅力8 / 10
中止そのものの歴史的重要性8 / 10
総合73 / 100

Tier:B


『メガマン ユニバース』|自分で『ロックマン』を作る。2010年には実際に遊べた

2010年に発表された『メガマン ユニバース』は、単なる2D『ロックマン』新作ではなかった。プレイヤー自身が、

ロックマンを作る。
ステージを作る。
それを他のプレイヤーと共有する。

という、ユーザー生成コンテンツを大きな柱にした作品だった。キャラクターのパーツを組み合わせれば、見た目だけでなくジャンプ力や移動速度、攻撃力まで変わる。ステージも敵やブロックを自由に配置する。

Capcom自身も2010年9月、キャラクターカスタマイズとステージクリエイトを主要機能として紹介している。 (Capcom公式)しかも構想だけではない。東京ゲームショウ2010では実際にプレイアブル出展された。

PlayStation公式ブログにも、会場で試遊した初期ビルドの詳細が残っている。 (PlayStation.Blog)初代北米版『Mega Man』パッケージの妙にリアルな“Bad Box Art Mega Man”までプレイアブルキャラクターにするなど、かなり遊び心も強かった。さらに『ストリートファイター』のリュウ、『魔界村』のアーサーなど、Capcom作品を横断するキャラクターも登場予定。

今で言えば、『ロックマン』版のクリエイト&シェア作品

に近い。しかし2011年3月31日。Capcomは開発中止を発表した。

日本で示された理由は、

「諸般の事情」

だけだった。 (4Gamer.net)前年には稲船敬二氏がCapcomを退社している。時系列だけ見れば関係を想像したくなる。

ただしCapcomは、

「稲船氏の退社が原因だった」

とは発表していない。本記事でも因果関係は断定しない。ゲームとして何を目指していたかはかなり分かる。

一方、中止が業界へ大きな歴史的分岐を作ったとまでは言えない。有名シリーズだから上へ持ち上げるのではなく、

2010年時点で『ロックマン』をユーザー生成型へ広げようとしていた企画そのものを評価した。

評価

項目点数
惜しまれ度18 / 25
ゲーム史への潜在的影響12 / 20
忘れられにくさ16 / 20
期待の具体性14 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性6 / 10
総合75 / 100

Tier:B


『The Last of Us Online』|80点でもB。Naughty Dogが「何を作る会社であり続けるか」を選んだ中止

『The Last of Us』のオンライン作品については、開発初期から長く期待されていた。『The Last of Us Part II』制作中からマルチプレイヤーチームがプリプロダクションを進め、その後、単純な追加モードではなく独立した大型オンライン作品へ発展していく。そして2023年12月。

Naughty Dog自身が開発中止を発表した。 (Naughty Dog公式)説明はかなり率直だった。開発を進めるにつれ、プロジェクトの規模が明確になった。

発売するだけなら終わらない。ライブサービスゲームとして出す以上、その後何年もコンテンツを供給し続けなければならない。そのためには、

Naughty Dog全体のリソースを長期的にオンライン運営へ投入する必要があった。

会社には二つの道があった。ライブサービス作品中心のスタジオになるか。それとも、これまでのNaughty Dogを特徴付けてきたシングルプレイヤー作品を作り続けるか。

同社が選んだのは後者だった。 (Naughty Dog公式)これは非常に大きな判断だ。だから潜在的影響18/20、歴史的重要性9/10。

それでもAではなくBにした。最大の理由は、

まだ時間がたっていないからだ。

2023年末の中止から2026年9月現在まで、3年にも満たない。10年、20年たっても、「Naughty Dog史の決定的な分岐だった」

と語られ続けるのかは、まだ分からない。今回のTierでは、最近の作品に未来の評価を先払いしない。

点数だけならAと重なる。それでも、

長期間忘れられずに残った実績がまだない

という一点でBに置いた。今後もっともTierが動く可能性のある作品の一つだ。

評価

項目点数
惜しまれ度20 / 25
ゲーム史への潜在的影響18 / 20
忘れられにくさ12 / 20
期待の具体性13 / 15
企画の独自性・魅力8 / 10
中止そのものの歴史的重要性9 / 10
総合80 / 100

Tier:B


『Life by You』|Early Access開始2週間前まで来ていたのに、会社が「まだ遠すぎる」と判断した

2024年6月4日。本来なら『Life by You』は、この日にEarly Accessを開始する予定だった。ところが5月20日。

Paradox Interactiveは予定日を撤回する。「もう少し時間が必要」としながら、新しい日付は発表しなかった。 (Paradox Interactive公式)そして6月17日。

延期ではなく、発売そのものの中止

が発表された。 (Paradox Interactive公式)わずか4週間弱で状況が大きく変わった。『Life by You』は、『ザ・シムズ』のようなライフシミュレーションへParadoxが挑戦した作品だった。

開発スタジオParadox Tectonicを率いていたのは、『The Sims』シリーズに長く関わったRod Humble氏。ロード画面を極力挟まないオープンワールド。キャラクターを直接操作。

家や街を細かく編集。会話もカスタマイズ。MODツールまでゲーム内へ組み込む。

どんな作品を目指していたのかはかなり具体的だった。だから期待の具体性は15/15。では、なぜEarly Access直前で止めたのか。

Paradox自身の説明では、延期を重ねるごとに個別部分は改善していた。しかし一度立ち止まってゲーム全体を見ると、会社が満足できる製品までの道のりが、あまりにも長く不確実だった。 (Paradox Interactive公式)

中止によって、資産計上していた開発費2億800万スウェーデンクローナも全額減損された。 (Paradox Interactive公式)さらに翌日には、唯一のゲームだった『Life by You』を失ったParadox Tectonicの閉鎖も決まった。ここまでを見るとAでもよさそうに見える。

それでも76点B。中止からまだ2年少々。長期的にどの程度ゲーム史へ残るかは分からない。

スタジオ閉鎖という事実だけで、忘れられにくさまで先回りして高くしない。

「発売直前に見えても、製品として完成が近いとは限らない」

ことを示す近年の代表例として残した。

評価

項目点数
惜しまれ度18 / 25
ゲーム史への潜在的影響15 / 20
忘れられにくさ11 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力8 / 10
中止そのものの歴史的重要性9 / 10
総合76 / 100

Tier:B


『Perfect Dark』リブート|ゲームプレイまで公開された大型復活作は、スタジオごと消えた

2018年、Microsoftが新スタジオ「The Initiative」を設立した。そして2020年。そのスタジオが手掛ける大型タイトルとして発表されたのが、

『Perfect Dark』のリブート

だった。NINTENDO64で人気を集めたシリーズを、現代のXboxへ復活させる。The Initiativeだけでなく、後にはCrystal Dynamicsも開発へ参加した。

長期間ゲーム内容が見えない時期もあった。しかし2024年のXbox Games Showcaseで、ついにゲームプレイが公開される。主人公Joanna Dark。

近未来のカイロ。一人称視点。銃撃だけでなく、パルクール、近接戦闘、ガジェット、ステルスなどを組み合わせる。

つまり中止された時点で、

「何を作ろうとしていたのか全く分からない作品」ではなかった。

ところが2025年7月。Microsoftは開発中止を決定。さらに、

The Initiativeそのものを閉鎖した。 (Game Developer)Xbox Game StudiosのMatt Booty氏は、変化する業界環境の中で優先順位とリソース配置を見直す一環だと説明している。 (Game Developer)歴史的重要性は10/10。

Microsoftがわざわざ新設した大型スタジオが、一本も製品を出さないまま閉じることになったからだ。それでも74点B。2025年の出来事であり、

まだ「忘れられにくい発売中止ゲーム」になったとは判断できない。

忘れられにくさは9/20に抑えた。数年後もこのゲームがXbox史の大きな転換点として語られているなら、Tierや点数を再評価する余地がある。今はまだ、その途中だ。

評価

項目点数
惜しまれ度17 / 25
ゲーム史への潜在的影響15 / 20
忘れられにくさ9 / 20
期待の具体性15 / 15
企画の独自性・魅力8 / 10
中止そのものの歴史的重要性10 / 10
総合74 / 100

Tier:B


『UBUSUNA』|2026年に「発売中止ゲーム」になったが、物語はまだ終わっていない

今回の50作品で、最も扱いが変化する可能性が高い作品かもしれない。井内ひろし氏が手掛けるシューティングゲーム『UBUSUNA』。『レイディアントシルバーガン』『斑鳩』などに関わってきた井内氏の新作として、2014年から長期間開発されてきた。

エムツーで制作が進み、PlayStation 4向けとして紹介されていた。しかし2026年5月24日。エムツーは正式に、

『UBUSUNA』の開発中止

を発表した。同社の公式サイトにも現在、中止告知が残っている。 (エムツー公式)理由は井内氏の退職。

井内氏なしで作品を完成へ持っていくことは困難と判断された。普通なら、ここで「幻に終わったシューティング」として話は終わる。ところが『UBUSUNA』は終わらなかった。

2026年7月。井内氏側から、新しい動きが明らかになった。タイトル名やゲーム企画・システム仕様に関する権利は井内氏側にあり、他社から出資を受け、新体制で制作を再開する方向で協議しているという。 (電撃オンライン)

ただし、ここも言葉を正確に分けたい。2026年9月現在、

新しい『UBUSUNA』の発売が正式決定したわけではない。

新発売元も正式発表されていない。発売日も機種も確定していない。また、エムツー在籍中に制作したリソースについてはエムツー側に帰属するため、そのまま新体制へ持ち出せるわけでもないとされる。

そのため現在状態は、

エムツー版:開発中止
井内氏:別体制で再始動に向け協議中

である。「復活した」ではない。だが完全消滅でもない。

発売中止ゲームTierを継続更新型にした理由が、この一本だけでも分かる。2026年の今はB。もし正式に再始動し、数年後に完成したなら、

「中止になったゲーム」から「一度中止された後に復活したゲーム」へ分類そのものが変わる。

この評価は、まだ途中のものでもある。

評価

項目点数
惜しまれ度20 / 25
ゲーム史への潜在的影響14 / 20
忘れられにくさ14 / 20
期待の具体性12 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性7 / 10
総合76 / 100

Tier:B


C Tier|実在は確認できる。それでも核心がまだ見えない

初回50でCは1本だけ。作品の存在や当時の紹介は確認できる一方、完成度、中止時期、中止理由、その後への影響まで十分に裏付けられない。分からない部分を推測で埋めず、その不確かさも評価へ反映した。

『モンスターメーカー ホーリーダガー』|雑誌で何ページも紹介されたのに、なぜ消えたのか分からない

『モンスターメーカー ホーリーダガー』。セガサターン向けにNECインターチャネルが制作していたSRPGである。『モンスターメーカー』は、九月姫氏のキャラクターデザインで知られるカードゲームを原点とし、家庭用ゲーム機でも複数作品が展開されていた。

『ホーリーダガー』も単なる仮題ではない。当時のゲーム誌には、

大量のゲーム画面を含む複数ページの記事

が掲載されていたことを確認できる。後年保存された『Saturn Fan』誌面紹介では、新規ストーリー。

新キャラクター。3Dで構成されたフィールド。その上を動く2Dキャラクター。

シミュレーションRPGとしてのゲーム画面。かなり具体的な姿が残っている。Unseen64にも、当時の日本誌面から多数のスクリーンショットが確認できる未発売作として記録されている。

つまり、本当に作っていたのか分からないゲーム

ではない。明確に一般向けへ紹介されていた。それでもC Tierになった。

理由は、分からないことが多すぎるからだ。

ネット上では、「ほぼ完成していた」
「完成間近だった」

という説明が見つかる。しかし、その数字や証言の一次的な出所を現在確認できていない。だから使わない。

どこまで完成していたのかは確認できない。

中止理由も分からない。セガサターン市場末期だった。ドリームキャストへの移行期だった。

そうした時代背景から理由を想像することはできる。しかし、NECインターチャネル側が、「この理由で中止しました」

と説明した一次資料は現在確認できていない。だから、

中止理由は確認できない。

それでも56点。Dにはしなかった。一般向け誌面でゲーム内容がかなり見える。

企画の魅力もある。そして何より、

これだけ画面が残っているゲームなのに、中止の核心だけが分からない。

それもまた、発売中止ゲーム史の一つの姿だからだ。発売中止作を100本、150本と増やしていけば、こういう作品はもっと増えるだろう。

有名作品のように関係者インタビューが何本も残るとは限らない。会社がなくなり、資料が消え、理由が語られないまま数十年たつ。調べても最後まで分からない。

その不確かさを無理に埋めず、そのまま残す。『モンスターメーカー ホーリーダガー』は、初回50でそれを示す一作になった。

評価

項目点数
惜しまれ度11 / 25
ゲーム史への潜在的影響8 / 20
忘れられにくさ10 / 20
期待の具体性12 / 15
企画の独自性・魅力9 / 10
中止そのものの歴史的重要性6 / 10
総合56 / 100

Tier:C


50本を横に並べて分かったこと|発売中止=「完全消滅」ではなかった

50作品を一作ずつ調べていくと、最初に想像していた以上に、

「発売中止になったゲーム=そこで全部終わったゲーム」

ではないことが分かった。もちろん、そのまま製品化されず終わったゲームは多い。しかし、

別ハードへ移ったもの。
別作品へ変わったもの。
キャラクターやシステムだけ残ったもの。
20年以上たってから発売されたもの。

さらに2026年現在も、再始動へ向けて動いているゲームまである。そこで初回50作品を、発売中止後の「最も大きな到達点」で整理してみた。同じ作品に複数の性質がある場合もあるため、ここでは二重計上を避け、一作品につき最も大きな変化を一つだけ採用している。

発売中止後の主な運命本数代表例
元の未発売版が後年、遊べる形で復活5本『スターフォックス2』『ドラゴンホッパー』『ZERO RACERS』など
別機種・別作品として大規模再構築され発売8本『MOTHER 3』N64版、『Dinosaur Planet』、M2版『D2』など
ゲーム本体は消えたが、要素の一部が発売作品へ生存5本ドリームキャスト版『Half-Life』『サウンドファンタジー』など
別企画へ変化したが、その企画も最終的に未発売1本『Donkey Kong Racing』
2026年現在、別体制で再始動を模索中1本『UBUSUNA』
上記のような商業的な継承を確認できない30本『Sonic X-treme』『Silent Hills』など
合計50本

ここでいう「商業的な継承を確認できない」は、

ゲームのデータや映像まで失われた

という意味ではない。たとえば『Bio Force Ape』やNES版『SimCity』は、後年プロトタイプが発見されている。『RiQa』では元開発者自身がビルドを公開した。

それでも、元企画が別の製品へ変化したり、正式商品として復活したりしたわけではないため、この集計では30本側に入れた。


約30年後に発売されたゲームが、本当に5本もある

特に面白かったのが、

一度発売されなかったゲームそのものが、後世に遊べる形へ戻ってきた例

だ。初回50本だけでも5作品ある。

『スターフォックス2』

1995年には完成し、デバッグまで終わっていた。しかしSuper FX 2による価格上昇と、翌年にNINTENDO64が控えていたことからスーパーファミコンでは発売されなかった。宮本茂氏自身が任天堂公式インタビューで、その経緯を説明している。

そして2017年。『ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン』への収録によって、任天堂から正式に発売された。

『ドラゴンホッパー』『ZERO RACERS』

この2本はさらに新しい。任天堂は2026年8月4日、「バーチャルボーイ Nintendo Classics」へ、

「当時未発売の2タイトル」

として正式追加した。1990年代にバーチャルボーイ向けとして発売されなかった作品が、約30年後の2026年になって任天堂自身から遊べるようになった。2026年1月のサービス発表時点から、任天堂は両作品を「当時未発売だったタイトル」として扱っていた。

メガドライブ版『マッドストーカー FULLMETALFORTH』

こちらは任天堂の3作品とは少し違う。2020年、当時の開発担当・今泉正稔氏監修のもとで未完成部分を補完し、26年越しで完成した。ただし商品自体にも、

オペラハウスのライセンス商品
であり、
セガのライセンス製品ではない

と明記されている。

スーパーファミコン版『クーリースカンク』

こちらも権利者側による後年商品化。しかも、この作品は発売中止後に一度PlayStation版として生まれ変わった後、さらに元のSFC版まで復活した。つまり5本を同じ「復活」でまとめても、中身は違う。

本記事では、当時のプラットフォームホルダー自身による復活

と、権利者公認による後年商品化

を分けた。この違いは今後100本へ増やす際も維持する。


発売中止後に別のゲームとして生きた8作品

そのまま復活しなくても、

企画そのものが別の完成作品へ到達した

例も8本あった。代表的なのは、

『MOTHER 3』N64版
PS3版『絶体絶命都市4』
『Twelve Tales: Conker 64』
『Dinosaur Planet』
『バイオハザード1.5』
『Virtua Fighter RPG』
M2版『D2』
NINTENDO64版『バイオハザード0』

だ。ただし、この8本も同じではない。


「同じゲームを別機種へ移した」とは限らない

N64版『MOTHER 3』は、最終的にゲームボーイアドバンスで発売された。だが3Dから2Dへ戻り、開発方法も大幅に変わっている。M2版『D2』も、後のドリームキャスト版へ単純移植されたわけではない。

『バイオハザード0』はNINTENDO64からニンテンドー ゲームキューブへ移ったが、グラフィック等を大規模に作り直しながら、パートナーザッピングなどN64時代に生まれたシステムを残した。つまり、

タイトルが同じだから同じゲーム

とは限らない。発売中止作を調べる際には、「後に発売されたか」

だけではなく、何が残って、何が捨てられたのか

まで見なければならない。


『Twelve Tales』は「中止」より「変身」に近い

『Twelve Tales: Conker 64』の場合はさらに極端だ。かわいらしい3Dアクションから、『Conker's Bad Fur Day』

へ。同じ主人公を使いながら、作品の性格そのものが反転した。『Dinosaur Planet』も、

オリジナルIP

『スターフォックスアドベンチャー』

へ変化。『Virtua Fighter RPG』も、

『バーチャファイター』派生RPG

独立IP

『シェンムー』

へ長い変化をたどった。この3本を単純な、

「発売中止ゲーム」

だけでまとめると、むしろ実態から遠くなる。そこで今回、

別作品への大きな方向転換

という分類を用意した。


ゲーム本体が消えても、一部だけ別作品へ残ったケースもある

元のゲームは発売されなかった。しかし、一部だけ後の市販作品へ残った。初回50では、特に次のような例があった。

元の未発売企画後に残ったもの
『Thrill Kill』エンジンや4人対戦の基盤が『Wu-Tang: Shaolin Style』へ
ドリームキャスト版『Half-Life』独自シナリオ『Blue Shift』がPCで発売
『サウンドファンタジー』音と生き物を組み合わせる発想の一部が別作品へ
『CAPCOM FIGHTING ALL STARS』イングリッドが後のCapcom作品へ登場
『Cabbage』育成・関係性に関する考え方の一部が後作品へ

ここで注意したいのは、

「後作品へ一部が残った」

「未発売ゲームがそのまま別作品になった」

を混同しないことだ。たとえば『サウンドファンタジー』を、「後に『SimTunes』として発売されたゲーム」

と書くのは強すぎる。同様に『Cabbage』を、「『nintendogs』の初期版」

と呼ぶのも違う。残ったのは、あくまで発想や設計思想の一部。この距離を保つことが必要だった。


『Donkey Kong Racing』だけは、変化先も発売されなかった

少し特殊なのが『Donkey Kong Racing』だ。RareがMicrosoftに買収されたことで『Donkey Kong』IPを使えなくなり、『Sabreman Stampede』

へ変化。ところが、そのゲームも最終的には発売されなかった。つまり、

発売中止

別企画として再構築

その企画も発売中止

という二段階。後世へ何かが残れば「救済」と考えたくなるが、必ずしも完成品へたどり着くわけではない。


『UBUSUNA』だけは、2026年現在も結末が確定していない

50本のうち、現在進行形で分類が変わる可能性が最も高いのが『UBUSUNA』だ。エムツーでの開発は2026年5月に終了。ここまでは確定している。

しかし同年7月には、井内ひろし氏側が出資を受け、別体制で制作を再開する方向で協議していることが明らかになった。そのため現在は、エムツーでの開発は中止された一方、別体制での再始動に向けた動きは続いている。

ただし正式な再開発表、発売元、対応機種、発売日はまだ確定していない。そのため、現時点で「復活済み」とまでは扱わない。この作品については公開後も優先的に状況を確認する。

発売中止ゲームのTierは、過去を固定して並べるだけでは完成しない。


「完成間近だった」は、どこまで信用できるのか

発売中止ゲームの記事で非常によく見る表現がある。

「90%完成していた」
「ほぼ完成していた」
「発売直前だった」

というものだ。今回50作品を調べて分かったのは、

この数字はかなり危ない

ということだった。ゲームの開発率には共通の測定方法がない。しかも後年になって、

元開発者の記憶
元発売元の証言
雑誌記事
ファンサイト
試作ROMの内容

が混ざり、一つの「完成率」に見えてしまうことがある。そこで今回、完成度については数字の大きさではなく、

そこで今回は、誰が、いつ、何を根拠に言ったのかを重視した。


「完成」とかなり強く言える作品

初回50の中で、完成またはそれに極めて近い状態を強い資料で確認できる代表例は次の5本だ。

『スターフォックス2』

最も強い。任天堂公式で宮本茂氏自身が、

1995年に完成
デバッグまで終了

と説明している。「90%くらい」ではない。完成済みと扱ってよい。

『Bound High!』

開発者本人が、ゲームとマニュアルまで完成したと証言している。バーチャルボーイ終了によって発売できなかった。

『サウンドファンタジー』

岩井俊雄氏本人が1994年には完成していたと説明している。一方で、中止理由そのものは本人にもはっきり分からない。

ドリームキャスト版『Half-Life』

開発完成後、市場環境の変化を理由にSierraが発売を中止した。

『Thrill Kill』

発売へ向けて完成していたが、発売元となったEAが内容方針から市販しない判断をした。同じ「完成済み」でも、

なぜ出なかったのかは全部違う。


「99%完成」とは断定できない『Battlefront III』

対照的なのが『Star Wars Battlefront III』。Free Radical共同創業者Steve Ellis氏は、

99%完成

と証言している。ところが元LucasArts関係者はこれを否定し、

75%程度

という全く違う見方を示している。この作品について、

99%完成していたのに発売中止された

と書いてしまえば、一方の証言だけを確定事実にしてしまう。本記事では、

「完成度について関係者間で大きな証言差がある」

までを事実とした。これは完成率記事を作る際にも非常に重要な例になる。


GBC版『バイオハザード』も75~85%と98%が共存する

ゲームボーイカラー版『バイオハザード』でも似た問題があった。2025年の開発者聞き取りでは、

75~85%程度

という記憶と、

98%程度

という記憶の両方が出ている。後期ビルドそのものは相当進んでいる。しかし、

「開発者が98%と言った」
から
「客観的に98%完成していた」

へ変換してはいけない。そのため本文でも、数字を一つに決めなかった。


『バイオハザード1.5』は約65~70%。それでも作り直した

『バイオハザード1.5』では、

約65%
約70%

という数字が関係者から語られている。こちらも数%の差に意味を持たせる必要はない。重要なのは、

おおむね3分の2程度まで作った段階で、大規模なやり直しを選んだ

ことだ。70%という数字より、そこまで作った内容を捨てられた判断の方がゲーム史的には重要だった。


逆に「まだ10%程度」でも載せる価値はある

『Agartha』は真逆だ。後年のスタッフ資料では、本制作へ入った段階で10%程度。Frédérick Raynal氏本人も、

主人公が背景を歩けるところまでは作ったが、インタラクションはまだなかったと説明している。完成度だけでTierを作れば、かなり低くなるだろう。

それでも75点Bにした。理由は、

『Alone in the Dark』の生みの親がドリームキャストで何を作ろうとしていたか
と、
セガの欧州開発縮小によって企画ごと消えた歴史

に価値があるからだ。発売中止ゲームの重要性は、完成率と比例しない。


Fable Legendsの「content complete」も「100%完成」ではない

『Fable Legends』については、元リードデザイナーが、

content complete

に近い状態だったと振り返っている。これも、

100%完成済み

と翻訳しない。未完成のストーリー部分なども残っていた。ゲーム開発では、

コンテンツが一通り存在すること
バグ修正が終わっていること
最終品質へ達していること
製品として発売可能なこと

は全部違う。この違いを曖昧にすると、「ほぼ完成した幻のゲーム」

が必要以上に増えてしまう。


『Geist Force』は「素材が大量にある」≠「完成間近」

『Geist Force』も典型的だった。残存データには、

グラフィック
アニメーション
音楽
ステージ素材

などが大量にある。映像だけを見ると、かなり完成しているようにも見える。しかし元スタッフ証言では、良い製品へ仕上げるにはさらに長期間必要だったとされる。

つまり、アセット完成率

ゲーム完成率

は同じではない。これも発売中止ゲームを調べるうえで非常に重要な注意点だった。


初回50本で「完成度」を7段階にした理由

そのため本記事では、

完成率○%

だけで管理しない。大きく、

企画段階
初期開発
プレイ可能
デモ公開段階
開発進行
完成間近
完成済み

という段階で整理した。資料不足なら、

不明

も使う。「90%」という数字が出ていても、出所が弱ければ「完成間近」とは扱わない。反対に数字がなくても、開発者が完成を明言していれば「完成済み」と判断できる。

この方法の方が、作品同士を比較しやすかった。


中止理由を横に並べると、事情の違いが見えてくる

50本を見ていると、発売中止の理由も非常に幅広い。大きく分ければ、

ハード・市場環境
開発・品質
会社やスタジオの再編
人員・開発リソース
権利や企業買収
発売元の方針
外部事件
理由不明

などがある。しかも、一作品に複数の要因が重なる。


ハードが終われば、完成していても出ない

分かりやすいのが『Bound High!』。ゲームを完成させてもバーチャルボーイが終われば、発売する場所がない。M2版『D2』はさらに極端で、

ゲームではなく、発売するはずだったハード自体が発売されなかった。

ドリームキャスト版『Half-Life』も、市場環境の変化によって完成済みの移植版が消えた。『Agartha』はドリームキャスト撤退期にセガが欧州開発を縮小したことで、スタジオ活動そのものが止まった。技術的にゲームを作れるかどうかだけでは決まらない。


ROM価格だけでゲームが消えることもあった

メガドライブ版『マッドストーカー』は、さらに具体的だ。8Mbit ROMには収まらない。16Mbit ROMなら入る。

しかし16Mbit ROMは供給不足で価格が高騰し、採算が取れなかった。そのため発売中止となった経緯が後年明らかになっている。現在の大容量ダウンロード販売中心の感覚では見えにくい、

カートリッジという物理媒体そのものの経済問題

である。こうした作品は、ゲームだけを見ていても中止理由を理解できない。


「品質不足」でも事情は同じではない

『Warcraft Adventures』ではBlizzard自身の品質基準。『Prey 2』ではBethesda側の品質判断とHuman Head側の認識差。『CAPCOM FIGHTING ALL STARS』ではイベントや社内テストでの反応。

『Life by You』では、改善しても会社が求める完成形までの距離が遠すぎるという判断。『Geist Force』では、他のドリームキャストタイトルと比較した品質水準。一言で、

「クオリティ不足で中止」

とまとめても、意味は全然違う。


一つのゲームを止めて、別のゲームへ人を集中する

発売中止は、企業が何を優先するかという判断でも起きる。『Raven Blade』は、『Metroid Prime』へRetro Studiosのリソースを集中させるために中止された。『StarCraft: Ghost』も、次世代機向けに作り直すより『World of Warcraft』などPC側へ人員を投入する判断があった。

『The Last of Us Online』では、ライブサービス運営を続ければNaughty Dog全体が長期間そちらへ拘束される。そこでスタジオは、シングルプレイヤー作品を作り続ける側を選んだ。

一本のゲームの価値
だけでなく、
会社全体で何を作るか

が中止を決めることもある。


企業買収で、使えるIPそのものが変わる

『Donkey Kong Racing』ではRareがMicrosoftに買収された。その瞬間、任天堂IPである『Donkey Kong』を使い続けることはできなくなった。そこで『Sabreman Stampede』へ変化した。

『Star Wars 1313』ではDisneyによるLucasfilm買収後、LucasArtsの内製開発体制自体が縮小された。会社の所有関係が変われば、ゲーム内容が良いか悪いかとは関係なくプロジェクトの前提が消えることがある。


現実の事件によって発売判断が変わった『Propeller Arena』

『Propeller Arena』は、さらに特殊だ。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件を受け、セガはまず発売を無期限延期した。ゲームそのものがテロを題材にしていたわけではない。

しかし航空機と高層建築物を含む映像が、事件直後の状況では不適切になり得ると判断された。その後、ドリームキャスト市場の終了によって発売されないまま終わった。これはゲーム開発内部では説明できない発売中止だ。


そして、調べても理由が分からないゲームは残る

ここが一番大事かもしれない。50作品をかなり掘っても、

なぜ中止されたのか確定できないゲームは残った。

『Castlevania: Resurrection』。『サウンドファンタジー』。『Echo Delta』。

『スペースファンタジーゾーン』。『モンスターメーカー ホーリーダガー』。ほかにも、公式説明が非常に曖昧な作品がある。

当時のハード市場。
会社の状況。
発売予定時期。
後年の証言。

そこから、「おそらくこれが原因だろう」と推測はできる。

しかし推測は、公式の中止理由ではない。だから埋めなかった。

「分からない」と残すことも、今回の調査では重要だった。

調べても、結論がそこで止まる作品はある。

現在確認できる資料では、ここから先を断定できない

と分かった作品に付けている。発売中止ゲームを大量に並べるほど、この区別は重要になる。


年代とハードで見る50作品

発売中止の事情は、時代によっても少しずつ変わる。ここでは一作品を「主に開発され、中止・転換へ向かった時代」に一度だけ割り振った。無作為抽出ではないため、ゲーム業界全体の発売中止率を示す統計ではないが、初回50本の傾向を見る材料にはなる。

50本のうち22本が1990年代に集中した

初回50作品を主な開発・中止時期で分けると、1990年代が最も多かった。

主な時代本数割合
1990年代22本44%
2000年代15本30%
2010年代9本18%
2020年代4本8%
合計50本100%

もちろん、「1990年代は今より発売中止が多かった」という統計ではない。

今回の50本は無作為に選んだものではなく、資料が残り、現在読んでも面白く、発売中止史として意味がある作品を優先している。それでも1990年代の作品を並べると、共通する空気が見えてくる。

ゲーム機そのものの変化が速すぎる。

スーパーファミコンからPlayStation、セガサターンへ。NINTENDO64、バーチャルボーイ、64DD。さらに市販されなかったM2まである。

2Dから3Dへ移り、ROM容量やCD-ROM、開発環境まで一気に変わった。長期開発しているうちに、ゲームだけでなく発売予定ハードの立場まで変わってしまう。『スターフォックス2』は完成した頃にはNINTENDO64が目前だった。

『Bound High!』は完成した頃にはバーチャルボーイそのものが終わっていた。M2版『D2』に至っては、発売先のハード自体が市場へ出なかった。メガドライブ版『マッドストーカー』では、16Mbit ROMの価格が発売判断を左右した。

今の感覚では見えにくい、ハードそのものの制約がゲームの生死を決める時代だったことが分かる。


NINTENDO64周辺では「消滅」より「次へ移る」が目立つ

今回の50作品だけでも、NINTENDO64/64DDに関わるゲームはかなり多い。

『MOTHER 3』。
『Twelve Tales: Conker 64』。
『Dinosaur Planet』。
NINTENDO64版『バイオハザード0』。
『Cabbage』。
『RiQa』。
『Echo Delta』。

興味深いのは、そのまま完全消滅した作品ばかりではないことだ。『Dinosaur Planet』はニンテンドー ゲームキューブへ移り、『スターフォックスアドベンチャー』になった。『バイオハザード0』もニンテンドー ゲームキューブで完成した。

『Twelve Tales』は方向性をひっくり返して『Conker's Bad Fur Day』へ。『MOTHER 3』も一度中止された後、ゲームボーイアドバンスで再出発している。NINTENDO64末期は、開発を続けているうちに次世代機が見えてきた時期でもあった。

そのため、「中止して終わり」ではなく、「次のハードへ持っていくか、作り直すか」を迫られたゲーム

が多い。発売されたゲームだけを眺めるより、消えた企画を追った方が当時の慌ただしさが見えてくる。


ドリームキャストでは「残された時間の短さ」が見えてくる

ドリームキャスト関連では、

『Propeller Arena』
『Castlevania: Resurrection』
ドリームキャスト版『Half-Life』
『Geist Force』
『Agartha』

の5作品が入った。ただし、全部を

「ドリームキャスト撤退で中止になった」

とまとめるのは雑だ。『Castlevania: Resurrection』の正式な中止理由は確認できない。『Geist Force』はセガ側が品質面を問題としている。

『Propeller Arena』は9.11後の無期限延期が大きな転機になった。一方、『Half-Life』や『Agartha』ではドリームキャスト市場の縮小やセガの事業転換が直接響いている。同じハードでも理由は違う。

それでも一つ言えるのは、延期や開発の長期化に耐えられる時間がほとんど残っていなかったことだ。ゲーム機が終わりへ向かっている時、半年、一年の遅れは通常期とは重みが違う。


2000年代になると「オンラインゲームを作り切る難しさ」が見えてくる

2000年代に入ると、中止理由も少し変わる。『True Fantasy Live Online』は、家庭用機向け本格MMORPGという大きな挑戦だった。『The Agency』もスパイを題材にしたオンラインゲームだ。

この時代になると、

ゲーム本体。
オンライン環境。
サーバー。
コミュニティ。
運営。

まで含めて考えなければならない作品が増えてくる。「技術的にゲームを作れるか」だけではなく、

事業として長期間支えられるのか

が中止判断へ入り始める。そしてこの問題は、後の『The Last of Us Online』まで続いていく。


2020年代は「発売後まで背負えるか」が問題になる

今回、2020年代の作品は4本しかない。これだけで業界全体の傾向を決め付けることはできない。ただ、昔とは違う判断が見える作品はある。

代表的なのが『The Last of Us Online』だ。Naughty Dogが考えたのは、「完成できるか」

だけではなかった。ライブサービスとして発売するなら、その後何年も更新し続ける必要がある。それを続ければ、スタジオ全体がオンラインゲーム運営を中心とする会社へ変わってしまう。

そこでNaughty Dogは、シングルプレイヤー作品を作り続ける側を選んだ。ゲームを出すところまでではなく、出した後まで背負えるかを見て止めた例だ。『Life by You』もEarly Access開始予定が目前まで迫っていた。

それでもParadoxは、満足できる完成形までの距離が遠すぎると判断し、開発資産の減損とスタジオ閉鎖まで受け入れて中止した。公開日が近いから、完成も近いとは限らない。発売中止ゲームを見ていると、この当たり前ではない事実が何度も出てくる。


2026年、30年前の発売中止ゲームが本当に戻ってきた

この記事を2026年に作る意味として大きかったのがバーチャルボーイだ。2026年8月4日。任天堂は、

『ドラゴンホッパー』
『ZERO RACERS』

を「当時未発売の2タイトル」として正式配信した。約30年、発売中止ゲームとして扱われてきた作品が、ある日、本当に遊べるゲームへ変わった。『スターフォックス2』という前例はあった。

それでも2026年にさらに2本増えた意味は大きい。

発売中止ゲームという肩書きは永久ではない。

一方で同じ2026年には、『UBUSUNA』のエムツーでの開発が終了した。古い発売中止ゲームが復活する一方、新しい発売中止ゲームも生まれている。だから、このテーマは過去のゲームを並べて終わるものではない。

今も動いているゲーム史として追う価値がある。


「発売中止ゲームのその後」と、このTierは何が違う?

つぶログでは、発売中止後の行方そのものを追った「発売中止になったゲームはその後どうなった?復活・流用・別作品化まで追跡」も公開している。そちらで中心に見ているのは、

発売されなかったあと、何が起きたのか。

別ハードで復活した。
別作品へ変わった。
キャラクターだけ残った。
システムだけ受け継がれた。
その後の明確な継承先を確認できない。

そうした「その後」が中心になる。このTierで見ているものは違う。こちらで評価しているのは、

発売中止そのものの重さ。

『スターフォックス2』なら、20年以上後に正式発売された経緯だけではなく、

なぜ完成済みのゲームを出さなかったのか。
どれほど具体的な作品だったのか。
どれだけ長く語られたのか。
中止そのものがどんな歴史的意味を持ったのか。

そこを見る。同じゲームが両方の記事に出ても、役割は重ならない。「その後」をさらに詳しく追いたい作品では、自然な位置から関連記事へつなげればいい。


この記事は50本で終わらない

今回の50作品は、

最初に記事として公開できるところまで調べ切った50本

だ。発売中止ゲームが50本しかないわけではない。候補はまだかなり残っている。

ただ、数を増やすこと自体は目的にしない。100本の記事にしたいから、根拠の弱い作品を100本目へ押し込む。そういう増やし方はしない。

新しく追加するなら、

本当に開発されていたのか。
本当に予定された形では発売されなかったのか。
中止と判断できる根拠はあるのか。
当時どんなゲームを目指していたのか。
いま読んでも面白い経緯があるのか。

そこまで確認する。有名シリーズを優先する必要もない。今回の『Bio Force Ape』や『スペースファンタジーゾーン』のように、知らない作品でも、調べることで急に面白くなるゲームを今後も拾っていきたい。


Tierは今後も変わる

この評価は2026年9月時点のものだ。未来まで固定するつもりはない。『UBUSUNA』が正式に再始動し、完成すれば現在状態は変わる。

2025年に中止された『Perfect Dark』リブートも、10年後までXbox史の大きな未発売作として語られていれば、「忘れられにくさ」の評価は上がるかもしれない。逆に、新しい証言によって、これまで信じられていた完成率や中止理由が否定される可能性もある。発売されていないゲームは、完成品そのものから事実を確認できない。

だから、新しい資料一つで歴史の見え方が変わる。必要なら点数もTierも直す。これは評価がぶれたという話ではない。

分かったことが増えれば、その分だけ書き直す。このテーマでは、その方が自然だ。


「幻のゲーム」ほど、話を盛らない

発売中止ゲームは、どうしても話を大きくしたくなる。「99%完成していた幻の超大作」。「これが出ていればハード戦争は変わっていた」。

「後の名作の原型だった」。「会社の都合だけで消された」。そう書いた方が分かりやすいし、見出しにもなる。

だが、50作品を一つずつ確認していくと、実際の経緯の方がもっと面白かった。『Battlefront III』の99%完成説には、75%程度だったという反対証言がある。GBC版『バイオハザード』も、開発者によって75~85%と98%で記憶が違う。

『Geist Force』には大量の素材が残っているが、元スタッフ証言では完成にはさらに長い時間が必要だった。PS3版『絶体絶命都市4』は東日本大震災直後に発売中止となったが、当時の公式発表では具体的な理由まで説明していない。『サウンドファンタジー』は完成していたのに、作者自身も中止理由をはっきり知らない。

『モンスターメーカー ホーリーダガー』は雑誌に大量の画面が載ったのに、なぜ消えたのか現在もよく分からない。

分からない部分まで分かったように書かない。

発売されなかったゲームを扱うからこそ、そこは崩したくない。

日本デジタルゲーム産業史 増補改訂版: ファミコン以前からスマホゲームまで

発売中止ゲームの背景を、個別作品だけでなく日本のゲーム産業全体の流れから見たいなら、小山友介『日本デジタルゲーム産業史 増補改訂版』も相性のいい一冊です。ファミコン以前から家庭用ゲーム機の世代交代、アーケードやPCゲーム、オンライン・スマートフォン市場までを広く扱っており、「なぜその時代にこの企画が生まれ、なぜ続かなかったのか」を考える土台になります。本記事で何度も登場したハード交代や市場環境、メーカーの戦略まで含めてゲーム史を掘り下げたい人に向いています。

価格・在庫・仕様や版の違いなどは変動します。購入の際は各ショップの商品ページで最新情報をご確認ください。


まとめ|発売されなかったゲームにも、確かに歴史が残っている

今回の50作品を見ても、「発売中止」の意味は一つではなかった。完成できなかったゲーム。完成したのに発売されなかったゲーム。

ハードが終わって出せなくなったゲーム。品質に納得できず、大量に作ったものを捨てたゲーム。別ハードへ移ったゲーム。

別タイトルへ変わったゲーム。会社やスタジオそのものと一緒に消えたゲーム。現実の事件によって発売判断が変わったゲーム。

そして、20年、30年たってから本当に発売されたゲーム。

だから今回は、「どれが一番面白そうだったか」だけでは評価できなかった。

完成版がない以上、普通のゲームレビューのように面白さを採点することもできない。代わりに、

惜しまれ度。
ゲーム史への潜在的影響。
忘れられにくさ。
期待の具体性。
企画の独自性・魅力。
中止そのものの歴史的重要性。

この6項目から100点で見ていった。初回50作品は、

S:6作品
A:20作品
B:23作品
C:1作品
D:0作品
E:0作品

となった。ただ、実際に調べて印象に残ったのはS Tierだけではない。『Bio Force Ape』。

『スペースファンタジーゾーン』。『クーリースカンク』。『Cabbage』。

『Echo Delta』。そして『モンスターメーカー ホーリーダガー』。名前を知らなかったゲームほど、

「そんなものまで作っていたのか」

という驚きがあった。発売中止ゲームの面白さは、有名な「幻の大作」を確認するだけでは終わらない。知らなかった企画を掘り起こし、

当時何を作ろうとしていたのか。
なぜ止まったのか。
どこまで完成していたのか。
その後何が残ったのか。

そこまで追って初めて見えてくる。そして、この50作品も完成形ではない。新しい資料が見つかったとき。

開発者が過去を語ったとき。新しい発売中止ゲームが生まれたとき。何十年も眠っていた作品が突然復活したとき。

その都度、追加し、必要なら評価も見直していく。

「幻に終わったゲーム」の歴史は、今も続いている。

-ゲーム系, サブカル文化史アーカイブ
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