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メルカトル図法は廃止される?国連が推す「イコールアース図法」と何が変わるか

メルカトル図法は廃止?国連決議と「イコールアース図法」を解説

メルカトル図法とイコールアース図法の違いを比較したイメージ

「世界地図からメルカトル図法が消える」

2026年9月4日の国連総会をめぐるニュースを見て、そんな話だと思った人もいるかもしれません。

実際には、少し違います。

国連総会が採択したのは、メルカトル図法を禁止する決議ではありません。

大陸や国の広さを比較する世界地図では、実際の面積比を保つ「Equal Earth(イコールアース)図法」などを、もっと活用していこうという内容です。

決議はトーゴが主導し、アフリカ諸国が後押ししました。採決は賛成164か国、反対1か国、棄権6か国。反対したのは米国でした。

ただし、国連総会の決議に法的拘束力はありません。

日本の学校やGoogleマップが一斉にEqual Earthへ変わるわけでもなく、航海や航空などでメルカトル図法を使えなくなるわけでもありません。今回の決議も、ナビゲーションなどメルカトル図法が適している用途まで否定していません。

では、なぜ今になって、約450年前に生まれたメルカトル図法が改めて問題になっているのでしょうか。

その理由を知ると、普段何気なく眺めている「世界地図」が、現実の地球をそのまま平らにしたものではないことが見えてきます。

国連はメルカトル図法を「廃止」したの?

まず、今回の国連決議を「メルカトル図法の廃止」と理解するのは正確ではありません。

9月4日の国連総会で採択された決議は、大陸や国の相対的な広さをより適切に表現する地図を広げていくよう各国や教育機関、企業などへ促すものです。

代表的な選択肢として注目されているのが、Equal Earthです。

一方で、決議に強制力はありません。

「今日からメルカトル図法は禁止」
「学校からメルカトル世界地図を撤去」
「GoogleマップもEqual Earthへ変更」

と決めたものではありません。

トーゴ側も、航海や航空など、メルカトル図法が有用な分野での使用まで否定していないと説明しています。

今回起きたのは、

「メルカトル図法そのものをやめよう」

というより、

「大陸の大きさを見るための世界地図まで、メルカトルである必要はないのではないか」

という見直しです。

そもそもメルカトル図法とは?

メルカトル図法は、フランドルの地理学者ゲラルドゥス・メルカトルが1569年に発表した地図投影法です。

地球は球体ですが、紙やディスプレイの地図は平面です。

この「丸いものを平らにする」時点で、何らかの歪みを避けることはできません。

メルカトル図法が優先したのは、角度でした。

経線と緯線が直角に交わり、局所的な角度が保たれます。一定の方角を保って進む「等角航路」も、地図上では直線として描くことができます。

これは航海では大きな利点でした。

方位磁針を見ながら一定の方角で進む航路を、紙の地図上に直線として引けるからです。

そのためメルカトル図法は、登場以来、航海用地図で重要な役割を果たしてきました。

現在でも「古いから何となく残っている」わけではありません。

Google Mapsの地図座標やタイル地図でも、Mercatorを基礎にした仕組みが現在も使われています。

では、メルカトル図法の何が問題なのか

問題になるのは、面積です。

メルカトル図法は緯度が高くなるほど、地図上の拡大率が大きくなります。

そのため、

グリーンランド、
カナダ、
ロシア、
北ヨーロッパ

など、極に近い地域は実際より非常に大きく見えます。

逆に赤道に近いアフリカや南米、東南アジアは、高緯度の地域と比べると相対的に小さく感じられます。

ここで「メルカトル図法はアフリカを縮小している」と説明するのは少し乱暴です。

正確には、アフリカだけを小さく描いているのではなく、高緯度の地域が大きく引き伸ばされるため、結果としてアフリカが相対的に小さく見えるということです。

メルカトル図法は、角度を守る代わりに面積を大きく歪めています。

航海に使うなら長所だった設計が、「世界の国はどこが大きいのか」を比較するときには欠点になるわけです。

アフリカとグリーンランド、本当は約14倍違う

この歪みが最も分かりやすく表れる例が、アフリカとグリーンランドです。

メルカトル図法の世界地図を見ると、グリーンランドはアフリカとそれほど変わらない大きさに見えることがあります。

ところが実際には、アフリカの面積はグリーンランドのおよそ14倍あります。

今回の国連決議を伝える際にも、Reutersなどがこの例を取り上げています。

これはかなり大きな差です。

グリーンランドが小さく描かれているのではありません。

高緯度にあるグリーンランドがメルカトル図法では大幅に拡大されるため、赤道をまたぐアフリカとの本当の面積差が地図上では分かりにくくなっています。

子どものころから同じ世界地図を何度も目にしていれば、

「ヨーロッパや北米は思っていたより大きい」
「アフリカは思っていたより小さい」

という感覚を持つのも不思議ではありません。

今回アフリカ諸国が問題にしているのは、まさにこの「見た目が与える印象」です。

イコールアース図法とは?

そこで注目されているのが、Equal Earth projection(イコールアース図法)です。

Equal Earthは、

  • Bojan Šavrič
  • Tom Patterson
  • Bernhard Jenny

の3人によって開発され、2018年に発表されました。

分類としては正積擬円筒図法です。

名前に「Equal」と付いている通り、最大の特徴は面積比を保つこと

アフリカがグリーンランドの約14倍の面積を持つなら、地図上でもその比率が保たれます。

Equal Earth公式の説明では、正積図法でありながら、世界地図として見たときに大陸の形が極端に不自然に感じられないよう工夫されています。

全体の輪郭は、世界地図でよく使われてきたRobinson図法に近い、丸みを帯びた形です。

「面積はきちんと比較できる。でも見た目もなるべく世界地図らしくしたい」

という狙いから作られた比較的新しい図法です。

イコールアース図法で描かれた日本語版の世界地図
Equal Earth(イコールアース)図法で描かれた世界地図。国や大陸の面積比を保つ正積図法(出典:Tom Patterson / Equal Earth Wall Map/Public Domain)

Equal Earthなら「本当の地球」をそのまま描ける?

ここは誤解しない方がいいところです。

Equal Earthも、歪みのない完璧な地図ではありません。

丸い地球を平面へ写す以上、

面積、
角度、
形、
距離、
方位

のすべてを同時に正確にすることはできません。

Equal Earthが正確に保っているのは、面積です。

その代わり、大陸の形や角度、距離などには歪みがあります。

ですから、

メルカトル図法=間違った地図
Equal Earth=正しい地図

という話ではありません。

何を正確に見せたいのかによって、適した地図が違います。

これは今回のニュースを理解するうえで、一番大切なところかもしれません。

メルカトル図法とEqual Earthは何が違う?

二つを並べると、その違いが分かりやすくなります。

項目メルカトル図法Equal Earth
登場1569年2018年
主に重視するもの角度面積
面積の比較高緯度ほど大きく歪む面積比を保つ
角度局所的に保つ歪む
大陸の形高緯度で大きく拡大形には歪みがある
航海大きな強みがある主目的ではない
世界規模の面積比較不向き向いている
完全に歪みがない?いいえいいえ
今回の国連決議使用禁止ではない利用拡大を促す代表的な図法

つまり、どちらが「正しい地図」なのかを決める話ではありません。

何を見るための地図なのかが違います。

では、なぜメルカトル図法は450年以上も残った?

メルカトル図法について、

「450年前の古い地図を、みんなが間違いに気付かず使い続けた」

と考えるのも正しくありません。

現在まで残ったのは、便利だからです。

角度を保てる。
経線と緯線が直交する。
一定の方角で進む航路を直線で表せる。

航海図としては非常に扱いやすい設計でした。

そしてデジタル時代になると、別の理由でもMercator系が便利になります。

Google MapsなどのWeb地図では、地図を正方形の小さな「タイル」に分割し、ズームに応じて読み込む仕組みが使われています。

Googleの公式技術資料でも、世界座標はMercator projectionを基礎としており、約北緯85度から南緯85度の範囲を正方形の地図として扱っています。

つまりメルカトル図法は、

昔の航海でも便利だったし、現代の2D Web地図でも扱いやすい。

だから残っています。

問題になるのは、その便利さとは無関係な「大陸の広さを比べる世界地図」にまで同じ図法を使う場合です。

国連自身も今までメルカトル図法だけを使っていたわけではない

今回のニュースで誤解されやすいのがここです。

「国連が公式のメルカトル世界地図を捨てて、Equal Earthへ変更した」

という出来事ではありません。

国連では以前から、目的に応じて複数の図法が使われてきました。

世界地図にはRobinsonやWinkel III、Eckert IVなど、面積や形、方向などの歪みをバランスさせる図法も使われています。

つまり、世界中の地図がこれまでメルカトル一色だったわけでもありません。

今回の決議が対象としているのは、一枚の「国連公式世界地図」を交換することではなく、

学校、メディア、行政、企業、テクノロジーサービスなどで世界全体を見せるとき、面積を大きく歪める図法を当然のように使い続ける必要があるのか

という、もっと広い話です。

なぜ今、アフリカ諸国が地図を変えようとしているのか

今回の決議を主導したのは、西アフリカのトーゴです。

その背景には、アフリカが一般的な世界地図で実際より小さく感じられることへの問題意識があります。

メルカトル図法では、高緯度にあるヨーロッパや北米の一部が大きく拡大されます。

一方、赤道周辺に広がるアフリカは、その影響が比較的小さい。

その結果、世界地図を一目見たときの「存在感」に大きな差が生まれます。

アフリカ側は、こうした地図を学校やメディアで長期間見続けることが、地域の大きさや重要性について無意識のイメージを作ってきたのではないかと問題提起しています。

ただし、

メルカトル図法はアフリカを小さく見せるために作られた

という話ではありません。

1569年のメルカトル図法には、航海で使いやすい地図を作るという明確な技術上の目的がありました。

今回問われているのは、その成立目的ではなく、

面積比較には向いていない図法が、その後、一般向けの「世界の見た目」として広く定着したこと

です。

この二つは分けて考えた方がいいでしょう。

GoogleマップもEqual Earthに変わる?

2026年9月5日時点で、GoogleがEqual Earthへ変更すると発表した事実はありません。

Google Maps Platformの公式資料では、2D地図の座標やタイルシステムに現在もMercator projectionが使われています。

だからといって、今回の国連決議でGoogleマップが翌日からEqual Earthになるわけではありません。

そもそも、Google MapsのようなWeb地図では、

道路を拡大する、
建物を見る、
店を探す、
ルートを確認する

といった使い方が中心です。

「アフリカとグリーンランドの面積を比較する世界地図」とは用途が違います。

また現在のGoogle Mapsには、広域までズームアウトすると地球を球体として表示する機能もあります。

Google Earthに至っては、最初から3Dの地球儀として世界を見るサービスです。

ですから、

「Googleもメルカトルを使っているから、世界の大きさが全部間違っている」

とまとめるのも雑です。

今回の議論と最も関係が深いのは、世界全体を一枚の平面図として見せるとき、どの図法を採用するかです。

日本の学校の世界地図も変わる?

これも現時点では決まっていません。

2026年9月5日時点で、文部科学省から

「日本の教科書や学校地図をEqual Earthへ全面変更する」

という発表は確認できません。

そして日本の地理教育は、もともと「世界地図はメルカトル図法だけを覚える」というものではありません。

文部科学省に掲載された教材でも、

  • メルカトル図法
  • モルワイデ図法
  • 正距方位図法

などが用途別に比較されています。

面積を正しく表したい場合にはモルワイデ図法、角度を正しく見たい場合にはメルカトル図法、中心地点からの距離と方位を見たい場合には正距方位図法、といった使い分けです。

つまり今回の決議を受け、

「日本の学校も古い間違った地図から新しい正しい地図へ変わる」

という話ではありません。

日本ではすでに、

「平面の世界地図にはそれぞれ得意・不得意があり、目的によって使い分ける」

こと自体が学習内容になっています。

今後、掛け地図や教材、資料集などでEqual Earthが採用される機会が増える可能性はありますが、全面変更が決まったわけではありません。

トーゴでは学校の地図が本当に変わる?

今回の決議を主導したトーゴは、Equal Earthの普及にかなり積極的です。

Reutersによると、トーゴ側は自国の学校で使う地理教材を2026年末までに変更することを目指しているとしています。

さらに各国政府、教育機関、国際機関だけでなく、地図や位置情報サービスを提供するテクノロジー企業にも採用を働きかけていく考えです。

ここは今回の決議が単なる理念で終わるかどうかを見るうえで、今後注目したいところです。

ただし「2026年末に必ず変更される」と決まったものではなく、現時点では変更を目指している段階です。

Equal Earthの地図はすでに誰でも使える

Equal Earthは、将来構想だけの地図ではありません。

公式サイトではすでに世界地図が公開されており、日本語版も用意されています。

さらにEqual Earth公式のWall Mapはパブリックドメインと明記されていて、複製や改変、メディアへの掲載、商用利用も認められています。

つまり、学校や企業、Webメディアが

「世界の面積比較を見せる地図としてEqual Earthを使ってみよう」

と思えば、技術的にも権利面でもかなり導入しやすい環境はすでに整っています。

今回の国連決議は、こうした既存の地図を世界的に広げる後押しになる可能性があります。

国連決議で、実際に何が変わる?

では、9月4日の決議によって何が変わるのでしょうか。

まず、すぐに変わらないものの方が多いでしょう。

日本の学校地図、Googleマップ、スマートフォンの地図、海図、航空用地図が、一斉にEqual Earthへ交換されるわけではありません。

一方で今後、

学校の掲示用世界地図、
教材や資料集、
ニュース番組やWebメディアの世界地図、
国際機関の資料、
企業のプレゼンテーション、
世界規模のデータ可視化

などで、Equal Earthをはじめとする正積図法を選ぶケースが増える可能性があります。

特に、

人口、
GDP、
森林面積、
食料生産、
感染症、
気候変動

などを世界地図へ重ねる場合、各地域の面積が大きく歪んでいると、データそのものの印象まで変わってしまいます。

「どこがどれほど広いか」を見る場面では、面積を正しく保つ図法を使った方が理にかなっています。

今回の決議で本当に変わるかもしれないのは、

一枚の地図ではなく、「世界地図を作るとき何を基準に選ぶか」という常識

なのかもしれません。

メルカトル図法は、これからなくなる?

おそらく、なくなりません。

航海では今も利点があります。

Web地図でも、地図タイルや座標処理との相性からMercator系は非常に広く使われています。

方角や局所的な角度を重視する場面では、メルカトル図法にきちんと存在理由があります。

一方で、

大陸や国の面積を比較するための世界地図

としては、今後Equal Earthなどの正積図法が選ばれる場面が増える可能性があります。

ですから今回のニュースを、

「メルカトル図法が廃止される」

とまとめると少し違います。

むしろ、

「何でもメルカトルで世界を見せる必要はない」という考え方が、国際的に一段強くなった

と捉えた方が実態に近いでしょう。

メルカトル図法とEqual Earthについてよくある疑問

メルカトル図法は廃止される?

国連がメルカトル図法の使用を禁止したわけではありません。

2026年9月4日の決議には法的拘束力がなく、面積を比較する世界地図ではEqual Earthなどを広く活用するよう促すものです。

Equal Earthとは?

2018年に発表された正積擬円筒図法です。

国や大陸の面積比を正しく保つことを重視しており、アフリカとグリーンランドなどの実際の広さの差が地図上でも分かりやすくなります。

Equal Earthなら歪みはない?

歪みはあります。

面積は正確ですが、形、角度、距離、方位などは歪みます。

球体の地球を一枚の平面へ写す以上、すべてを同時に正確にはできません。

なぜメルカトル図法は今まで使われてきた?

角度を保ち、一定方位で進む航路を直線で描けるため、航海で非常に便利だったからです。

現在もWeb地図などで広く使われています。

アフリカとグリーンランドは本当に約14倍違う?

はい。

アフリカの面積は、グリーンランドのおよそ14倍あります。

メルカトル図法では高緯度のグリーンランドが大幅に拡大されるため、両者が近い大きさに見えることがあります。

日本の学校の地図もEqual Earthになる?

現時点で、日本の教科書や学校地図をEqual Earthへ全面変更するという文部科学省の発表は確認できません。

日本の地理教育ではすでに、目的によって複数の図法を使い分けることが学ばれています。

Googleマップも変わる?

現時点でGoogleがEqual Earthへの変更を発表した事実はありません。

Google Maps Platformの2D地図座標やタイル地図では現在もMercator projectionが使われています。

まとめ|メルカトルはなくならない。でも「世界地図の当たり前」は変わるかもしれない

2026年9月4日、国連総会はEqual Earthなど、国や大陸の面積をより正しく表現できる世界地図の普及を促す決議を採択しました。

賛成164、反対1、棄権6。

ただし、これはメルカトル図法を禁止する決議ではありません。

メルカトル図法は、角度を保つという明確な長所を持っています。

航海やWeb地図など、現在も活躍できる用途があります。

一方で、大陸の面積を比較する地図として見ると、高緯度地域を大きく拡大するという大きな弱点があります。

Equal Earthは、その反対です。

面積比を正しく保つ。

しかしその代わり、形や角度、距離などには歪みが残ります。

「古い間違った地図が、新しい正しい地図へ置き換わった」

というニュースではありません。

地球は丸い以上、一枚の平面ですべてを正確に描くことはできないからです。

メルカトルは角度を選んだ。
Equal Earthは面積を選んだ。

今回の国連決議が投げかけているのは、

「世界の広さを見せたいとき、本当に面積が大きく歪む地図を使う必要があるのか」

という問いです。

メルカトル図法そのものは、これからも残るでしょう。

ただ、「世界地図といえばこの形」という私たちの当たり前は、少しずつ変わっていくのかもしれません。

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