ティッシュはなぜ2枚重ね?1枚を厚くしない理由とは

箱からティッシュを1組取り出して、端を少しだけめくってみる。
普段は1枚の紙として使っていますが、実際には薄い紙が2枚重なっています。
ここで少し不思議なのが、
「どうせ2枚を重ねるなら、最初から同じくらい厚い紙を1枚作ればいいのでは?」
ということです。
1回使うたびに2枚必要なら、わざわざ薄い紙を2枚作って重ねる必要はなさそうにも見えます。
ところが、ティッシュの場合は「厚さの合計が同じなら同じ」ではありません。
日本製紙クレシア、王子ネピア、大王製紙はいずれも、薄い紙を重ねることには柔らかさや強度、肌触りなどの面で意味があると説明しています。厚い1枚を作るのではなく、薄い紙を2枚に分けて重ねること自体が、いつものティッシュの使い心地につながっているのです。
ティッシュはなぜ2枚重ねなのか
一般的な箱ティッシュの多くが2枚重ねになっている大きな理由は、柔らかさを保ちながら、使うために必要な強度を持たせやすいからです。
ティッシュは、鼻をかんだり、顔や手についたものを拭いたりすることが多い紙です。
柔らかいだけでは困ります。薄すぎてすぐ破れてしまっても使いにくい。
かといって、丈夫にしようとして紙そのものを厚くすると、今度は硬さやごわつきが出やすくなります。
日本製紙クレシアは、1枚を2枚分の厚さにするより、薄い紙を重ねた方が柔らかくなると説明しています。
大王製紙も同様に、1枚では薄く破れやすい一方、1枚そのものを厚くするとごわつきやすいため、薄い紙を2枚重ねることで柔らかさと強度を両立しているとしています。
つまり、2枚重ねは単純に、
「紙を分厚くする方法」
ではありません。
「柔らかい薄紙のまま、実用品として使いやすくする方法」
でもあるわけです。
なぜ「厚い1枚」では同じにならない?
ここがいちばん面白いところです。
たとえば2枚重ねのティッシュをはがしてみると、1枚1枚はかなり薄いことが分かります。
これを見れば、
「この2枚を足した厚さの紙を最初から1枚作ればいいのでは」
と思うのは自然です。
ところが、紙は単純な厚さだけで触り心地が決まるわけではありません。
メーカーが説明しているように、紙そのものを厚くして強さを持たせると、ごわつきやすくなります。
一方、薄く柔らかい紙を2枚に分ければ、1枚1枚のしなやかさを残したまま、重ねた状態では必要な厚みや強さを持たせることができます。
少し乱暴に言えば、
厚い紙を柔らかくしようとするのではなく、柔らかい紙を2枚使って必要な性能を作っている
という方が近いでしょう。
実際の製品では、重ねる枚数だけですべてが決まるわけではありません。
たとえば現在の「ネピア ティシュ」では、表側と内側で使うパルプ繊維を調整した「Wパルプ構造」なども採用し、柔らかさと破れにくさを両立させています。これはネピア独自の商品設計ですが、ティッシュの使い心地が「2枚だから」だけで決まっているわけではないことも分かります。
それでも、2枚重ねという基本構造そのものが大きな役割を持っていることに変わりはありません。
2枚の間にある「空気」にも意味がある
2枚を重ねる利点は、紙そのものだけではありません。
王子ネピアは、2枚の紙の間にできる空気層の部分で水分を吸収することを、2枚重ねにする理由の一つとして挙げています。
大王製紙も、薄い紙を重ねることで間に空気が含まれ、ふんわりとした感触につながると説明しています。
もちろん、「空気そのものが水を吸っている」という意味ではありません。
2枚をぴったり一体化した厚紙にするのではなく、薄い紙を重ねることで生まれる空間も含めて、水分を受け止めたり、ふんわりした感触を作ったりする構造になっています。
これも、厚い1枚ではそのまま再現できない部分です。
見た目ではほとんど分からないほど薄い隙間ですが、ティッシュにとっては無意味な空間ではありません。
実はティッシュにも「表」と「裏」がある
ティッシュを2枚にする理由には、もう一つ面白いものがあります。
紙には表と裏があります。
日本製紙クレシアと王子ネピアの説明では、ティッシュの紙は、比較的ツルツルした面が表、ザラザラした面が裏です。
それなら普通の紙と同じように、「ティッシュも向きを確認して使った方がいいのでは」と思うかもしれません。
ところが、2枚重ねのティッシュではその必要がありません。
2枚の紙を、
滑らかな面|ザラザラした面
ザラザラした面|滑らかな面
という向きで合わせています。

つまり、ザラザラした裏面同士が内側に隠れます。
外に出るのは、どちら側も滑らかな面です。
そのため、箱から1組取った状態なら、表側を使っても裏返して使っても、肌に触れる外側には滑らかな面が来るようになっています。
普段、鼻をかむたびに「こっちが表かな」と確認しなくて済むのも、この重ね方のおかげです。
2枚重ねには強度や柔らかさだけでなく、肌に当たる面を両側とも滑らかにできるという利点まであるわけです。
では、2枚をはがして1枚ずつ使えば節約になる?
ここまで読むと、別の疑問も出てきます。
「2枚をはがして、1枚ずつ使えば2倍長持ちするのでは?」
物理的にはできます。
2枚重ねのティッシュは、端からはがせば1枚ずつに分けられます。
ただし、通常の2枚1組とはかなり条件が変わります。
大王製紙も、2枚重ねを1枚にはがすと紙が薄く、破れやすくなることを説明しています。
さらに、1枚ずつに分けると、もともと内側に隠れていたザラザラした面が外へ出てきます。
つまり、
薄くなる。
破れやすくなる。
片面は、本来内側に隠されていた面になる。
ということです。
1枚だけでは絶対に使えないわけでも、分けることが危険なわけでもありません。
ちょっとした水滴を拭く程度なら、それで足りることもあるでしょう。
ただ、メーカーが想定した柔らかさや丈夫さ、両側の肌触りは、2枚を1組として使う状態で成立していると考えた方が分かりやすいです。
「2枚もあるから1枚は余分」というわけではありません。
箱の「300枚(150組)」はどういう意味?
ティッシュの箱を見ていると、
300枚(150組)
のように書かれていることがあります。
でも実際に箱から300回取り出せるわけではありません。
これは、
紙そのものが300枚入っていて、その2枚を1組として150組ある
という意味です。
計算すると、
2枚 × 150組 = 300枚
です。
「300枚」と書くと多く見えるからメーカーが独自にそう表示している、というわけでもありません。
消費者庁が定める家庭用品品質表示法に基づく品質表示では、四角い紙が2枚以上重ねられている商品について、紙1枚ごとの合計枚数を表示したうえで、その後ろに括弧で組数を表示するルールになっています。
消費者庁自身も「100枚(50組)」を表示例として示しています。
ですから、箱から通常どおり取り出せる回数を知りたいなら、2枚重ねの商品では「枚」より「組」を見る方が分かりやすいでしょう。
ティッシュは全部2枚重ねなの?
ここまで2枚重ねについて見てきましたが、ティッシュは必ず2枚でなければならないわけではありません。
大王製紙も「ほとんどのティシュー」が2枚重ねと説明しており、実際に3枚重ねや4枚重ねの商品も存在します。
日本製紙クレシアの現行ラインアップでは、「クリネックス ティシュー 至高」が3枚重ね、「クリネックス ティシュー 至高 極」が4枚重ねです。
「至高」は480枚(160組)なので、
480枚 ÷ 160組 = 3枚。
「至高 極」は560枚(140組)なので、
560枚 ÷ 140組 = 4枚。
箱の「枚」と「組」の意味も、この商品を見るとよく分かります。
ここから分かるのは、
「ティッシュは2枚でなければならない」のではない
ということです。
何枚の紙をどう重ねるかも、求める厚みや柔らかさなどに応じた商品設計の一部です。
一般的な箱ティッシュでは2枚重ねが多い。
しかし、商品によっては3枚、4枚という設計もある。
「2」という数字そのものに絶対的な決まりがあるわけではありません。
トイレットペーパーの「シングル」とは同じではない
「薄いティッシュ1枚でも使えるなら、トイレットペーパーのシングルと同じようなものでは?」
と思うかもしれませんが、これも違います。
大王製紙によると、トイレットペーパーのシングルとダブルは、単純に同じ紙を1枚にするか2枚にするかだけの違いではありません。
シングルは1枚でも破れにくいよう、少し厚手の紙として作られています。一方、ダブルは2枚を重ねることで強度やふっくらしたボリューム感を持たせています。
つまり、
2枚重ねティッシュをはがした1枚=最初から1枚で使うために設計された紙
ではありません。
同じ「1枚」に見えても、最初からシングル用として作られた紙と、2枚重ねの片方では役割が違います。
2枚は「余分」ではなく、2枚で一つのティッシュになっている
ティッシュを何気なく1組取ると、薄い紙が2枚重なっていることなど普段はほとんど意識しません。
けれど、わざわざ2枚にしているのには理由があります。
厚い1枚を作るより、薄い紙を重ねた方が柔らかくしやすい。
1枚だけより必要な強度を持たせやすい。
2枚の間にできる空間も、ふんわりした感触や水分を受け止める働きに関係する。
そして、ザラザラした裏面同士を内側へ隠せるので、外側はどちらも滑らかな面にできます。
だから、
「2枚分の厚さが欲しいから2枚使っている」
だけではありません。
もし厚さだけが目的なら、最初から厚い紙を作れば済みます。
そうしないのは、薄い紙を2枚に分けて重ねること自体に意味があるからです。
次にティッシュを1組取ったとき、端を少しだけ見てみると、いつも一枚に見えていた紙がきれいに二層になっているのが分かります。
あの2枚は、片方が予備なのではありません。
2枚そろって、いつもの柔らかいティッシュになっているのです。