- クラカタウ火山大規模噴火、日本に津波は?1883年・2018年との違い
- クラカタウ火山で何が起きた?
- 日本への津波は?8時30分時点では有意な潮位変化なし
- 「沖縄に6時」を過ぎても調査しているのはなぜ?
- 火山噴火では「地震がなくても」津波が起こる
- 2022年トンガ噴火では日本で1.3mの潮位変化
- 噴煙1万5000mなら巨大津波になる?
- 2018年の津波は「噴火の高さ」ではなく山体崩壊で起きた
- 1883年のクラカタウ大噴火では何が起きた?
- 1883年には日本でも「潮の異常」の記録がある
- 1883年・2018年・2026年は同じ「クラカタウ」でも別の出来事
- 「遠地地震に関する情報」なのに、大地震も起きた?
- 今、日本で何をすればいい?
- クラカタウ火山の噴火についてよくある疑問
- まとめ|8時30分時点で目立った潮位変化なし、気象庁は監視を継続
クラカタウ火山大規模噴火、日本に津波は?1883年・2018年との違い

2026年9月5日未明、インドネシアのクラカタウ火山で大規模な噴火が発生しました。
「クラカタウ」と聞いて、1883年の歴史的大噴火や、2018年に起きたスンダ海峡津波を思い出した人もいるでしょう。
今回、日本への津波は来るのでしょうか。
まず、9月5日8時30分時点では、気象庁は日本への津波の有無を引き続き調査しています。
津波が発生して日本へ到達する場合、早いところでは沖縄県地方に5日6時ごろ到達すると想定されていました。その時刻はすでに過ぎていますが、8時30分時点で海外・国内の観測点に有意な潮位変化は観測されていません。
一方で、気象庁はまだ「日本への津波の心配はない」とはしていません。
火山噴火による潮位変化は、大地震による一般的な津波とは少し仕組みが違います。2022年のトンガ噴火では、巨大な気圧波が海面を動かし、遠く離れた日本でも1mを超える潮位変化が観測されました。
そのため今回は、「6時を過ぎたからもう大丈夫」とも、「クラカタウだから巨大津波が来る」とも、どちらとも決めつけないことが大切です。
クラカタウ火山で何が起きた?
気象庁によると、クラカタウ火山では9月5日2時50分ごろ(日本時間)に大規模な噴火が発生しました。
ダーウィン航空路火山灰情報センター(VAAC)の情報をもとに、噴煙高度は約5万フィート、海抜約1万5000mとされています。
クラカタウ火山は、インドネシアのジャワ島とスマトラ島の間にあるスンダ海峡に位置します。
現在活動している火山体は、一般にアナク・クラカタウと呼ばれています。
1883年の巨大噴火で以前のクラカタウは大きく姿を変え、そのカルデラ内で1927年末から新たな火山活動が始まりました。成長した新しい火山体が「クラカタウの子」を意味するアナク・クラカタウです。
つまり、1883年当時の火山体がそのまま現在まで残っているわけではありません。アナク・クラカタウは1920年代以降、繰り返し噴火してきた活発な火山です。
日本への津波は?8時30分時点では有意な潮位変化なし
9月5日8時30分に発表された情報では、
「日本への津波の有無については現在調査中」
とされています。
ただし、その時点で海外・国内とも有意な潮位変化は観測されていません。
仮に今回の噴火による津波が日本へ到達する場合、最も早いところでは沖縄県地方に6時ごろと想定されていました。
6時から2時間半が過ぎても目立った潮位変化が出ていないことは、ひとつの安心材料です。
それでも気象庁が調査を終えていないのは、火山噴火による潮位変化が、普通の地震津波ほど単純には予測できないためです。
8時30分の情報では、次の「遠地地震に関する情報」は12時30分ごろに発表する予定とされています。新たな観測結果が入った場合は、それを待たず随時発表されます。
「沖縄に6時」を過ぎても調査しているのはなぜ?
ここは少し誤解しやすいところです。
今回の「沖縄県地方に6時ごろ」という時刻は、クラカタウで生まれた普通の津波が海を渡ってくる時間を単純に計算したものではありません。
気象庁は、
大規模噴火で発生した気圧波が秒速310mで伝わり、それによって津波が発生した場合
を想定して、この時刻を算出しています。
さらに気象庁は、6時の発表で、気象衛星ひまわりの画像には噴火に伴う気圧波に対応すると考えられる明瞭な変化は見られていないと説明していました。
5時30分時点の海外検潮所でも、有意な潮位変化は観測されていませんでした。
では、なぜそこで「津波なし」と終わらせないのか。
その理由を理解するには、2022年のトンガ噴火を振り返ると分かりやすくなります。
火山噴火では「地震がなくても」津波が起こる
通常の津波でよく知られているのは、海底で大きな地震が起き、海底面が上下することで大量の海水が動くタイプです。
ところが、海に囲まれた火山では別の方法でも海が動きます。
火山の一部が大規模に崩壊して海へ落ちれば、その分だけ海水が押し出されます。大量の火砕流が海へ高速で流れ込んでも同じです。巨大噴火によってカルデラが形成されたり、海底地形そのものが変わったりすることでも津波は発生します。
そしてもうひとつあるのが、噴火で発生した巨大な気圧波が海面を動かすケースです。
空気中を伝わった圧力変化が海面と作用しながら進むため、地震津波とは到達の仕方も観測のされ方も違います。
2022年のトンガ噴火では、まさにこの現象が大きな問題になりました。
2022年トンガ噴火では日本で1.3mの潮位変化
2022年1月15日、南太平洋のフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山で非常に大規模な噴火が発生しました。
気象庁の検討では、最も速い気圧波である「ラム波」が秒速約300mで伝わり、それに伴う潮位変化が日本で最初に発生したと考えられています。
奄美では1.3mの潮位変化が観測されました。
ところが厄介だったのは、日本へ至る途中の観測点だけを見ても、日本でどれほどの変化が起きるか単純には分からなかったことです。
気象庁が過去約150年間の大規模噴火を調べた資料でも、遠方で明瞭な潮位変化が確認された事例自体は非常に少ないとされています。
珍しい現象だからこそ、地震津波のように「震源とマグニチュードが分かれば到達時刻と高さを計算できる」とはいきません。
トンガ噴火を受け、気象庁は海外の大規模噴火について、噴煙が海抜5万フィート、約1万5000mに達した場合などに、「遠地地震に関する情報」を使って日本で潮位変化が起きる可能性を知らせる運用を整えました。
今回のクラカタウ噴火は、ちょうどその5万フィート級です。
噴煙1万5000mなら巨大津波になる?
ここは直接結びつけない方がいいでしょう。
噴煙が1万5000mに達したから、大きな津波になるという意味ではありません。
5万フィートという数字は、気象庁が海外での大規模噴火を把握し、日本への影響を監視する際のひとつの基準です。津波の高さを示す数字ではありません。
津波が起きるかどうかを見るには、噴煙高度だけでなく、山体が崩れたのか、どれほどの物質が海へ入ったのか、海底地形が変わったのか、どれほど強い気圧波が生じたのかといった情報が必要です。
2018年のクラカタウが、その違いをよく示しています。
2018年の津波は「噴火の高さ」ではなく山体崩壊で起きた
2018年12月22日、アナク・クラカタウでは噴火活動が続くなか、火山体の南西側が大規模に崩壊しました。
崩れた大量の火山体が海へ入り、スンダ海峡に津波が発生。
スマトラ島とジャワ島の沿岸では最大約13mの遡上が確認され、437人が死亡しました。
2018年の出来事を「クラカタウが噴火したから津波になった」とだけ説明すると、大事な部分が抜け落ちます。
津波を直接発生させたのは、噴火活動中に起きた大規模な側面崩壊でした。
そのため、
「今回も噴煙が1万5000mまで上がった」
↓
「2018年と同じ津波が起こる」
とはなりません。
9月5日朝までに確認できる公表情報では、2018年と同じような大規模な側面崩壊が今回起きたという情報は出ていません。
もちろん、公表されていない以上「絶対に何も崩れていない」とまで断定することもできません。
現時点で言えるのは、2018年と同じ津波発生メカニズムが確認されたわけではないというところまでです。
1883年のクラカタウ大噴火では何が起きた?
クラカタウの名前が歴史に残っている最大の理由は、1883年8月の大噴火です。
火山爆発指数はVEI6。
旧クラカタウ島の大部分が失われるほどの巨大噴火となり、スンダ海峡周辺には大津波が押し寄せました。
死者は3万6000人を超え、その多くが津波によるものだったとされています。
気象庁が過去の事例を整理した資料には、インドネシアのメラックで41m、バタビアで2.58mの潮位変化が記録されています。
ただし、この41mを「噴火の衝撃波だけで起きた津波」と考えるのは正確ではありません。
1883年の巨大津波について、東京大学地震研究所の前野深氏と東北大学の今村文彦氏が行った数値シミュレーションでは、カルデラ崩壊、水蒸気マグマ爆発、火砕流という複数の発生メカニズムを検討しています。
その結果、スンダ海峡沿岸で記録された津波を最もよく説明するものとして、大量の火砕流が急速に海へ流入した可能性が示されています。
1883年は、巨大噴火、火砕流、カルデラ形成、極めて強い気圧波まで伴った特別な出来事でした。
今回「大規模噴火」と発表されたからといって、それだけで1883年と同じ規模だという意味にはなりません。
1883年には日本でも「潮の異常」の記録がある
クラカタウと日本を考えるうえで、もうひとつ興味深い記録があります。
1883年の噴火では、巨大な気圧変化が世界各地へ伝わりました。
気象庁がまとめた資料では、東京でもクラカタウから約6000km離れているにもかかわらず、45hPaの気圧変化が記録されています。
海面にも遠方で変化があり、サンフランシスコで0.18m、ホノルルで0.14m。
日本についても、
相模湾、四国、九州南部沿岸で「潮の異常」が目視された記録
が整理されています。
だからといって、「1883年に日本でも41mの津波が来た」という話ではありません。
41mはクラカタウに近いメラックの記録です。
日本に残っているのは遠方での「潮の異常」の記録であり、そこは分けて考える必要があります。
1883年・2018年・2026年は同じ「クラカタウ」でも別の出来事
3つを並べると、違いがかなりはっきりします。
| 年 | 起きたこと | 津波との関係 |
|---|---|---|
| 1883年 | VEI6の歴史的巨大噴火。旧クラカタウの大部分が失われた | 周辺の巨大津波は大量の火砕流の海への流入が有力。遠地では大きな気圧変化や潮位変化も記録 |
| 2018年 | アナク・クラカタウの噴火活動中に大規模な側面崩壊 | 崩壊した火山体が海へ入り津波を発生 |
| 2026年9月5日 | 噴煙約1万5000mに達する大規模噴火 | 8時30分時点で日本への影響を調査中。海外・国内とも有意な潮位変化なし |
同じ火山の名前が付いていても、津波を起こす仕組みまで同じとは限りません。
今回の状況を知るうえで大切なのは、「クラカタウは昔大津波を起こした」という事実だけではなく、そのとき何が海水を動かしたのかを見ることです。
「遠地地震に関する情報」なのに、大地震も起きた?
今回、気象庁の情報を見て、
「インドネシアで大地震と噴火が同時に起きたの?」
と思った人もいるかもしれません。
気象庁の情報には冒頭、
「海外で規模の大きな地震がありました」
と表示されています。
しかし今回は、実際に規模の大きな地震が発生したわけではありません。
気象庁は8時30分の情報で、この文言や「震源地」という表現は、「遠地地震に関する情報」を作成する際に自動的に付与されるものだと明記しています。
今回の情報ではマグニチュードも深さも示されていません。
つまり、
「巨大地震+大規模噴火が同時発生した」
というニュースではありません。
大規模な海外火山噴火が起きたため、日本への津波や潮位変化がないかを「遠地地震に関する情報」の仕組みを使って知らせているものです。
今、日本で何をすればいい?
9月5日8時30分時点では、今回の噴火に伴う有意な潮位変化は海外・国内とも観測されていません。
ですから、1883年や2018年の災害をそのまま今回へ重ねて、「日本に巨大津波が来る」と考える根拠はありません。
一方で、気象庁自身がまだ日本への津波の有無を調査しています。
沿岸部にいる場合は、SNS上の「もう絶対大丈夫」「巨大津波が来る」といった両極端な情報ではなく、気象庁の最新発表を確認してください。
今後もし津波警報・注意報などが発表された場合は、その時点の気象庁や自治体の情報に従うことが最優先です。
今回の状況は、
「過去に大津波を起こした火山だから観測が必要。ただし、現時点で過去と同じ現象が起きているわけではない」
と捉えるのが最も実態に近いでしょう。
クラカタウ火山の噴火についてよくある疑問
クラカタウ火山の噴火で日本に津波は来ますか?
2026年9月5日8時30分時点では、気象庁が日本への津波の有無を調査しています。
海外・国内とも有意な潮位変化は観測されていません。
沖縄には津波が来た?
津波が発生して日本へ到達する場合、早いところでは沖縄県地方に5日6時ごろと想定されていました。
8時30分時点で国内に有意な潮位変化は観測されていません。
6時を過ぎたなら、もう大丈夫?
6時を過ぎても目立った潮位変化がないことは安心材料ですが、8時30分時点では気象庁の調査は続いています。
火山噴火による潮位変化は通常の地震津波とは異なる仕組みで起きることがあるため、正式な更新を確認する必要があります。
1883年と同じ規模の噴火ですか?
現時点で、今回が1883年と同規模だと判断できる情報はありません。
1883年はVEI6で、旧クラカタウ島の大部分が失われるほどの歴史的な巨大噴火でした。
2018年にもクラカタウで津波が起きた?
起きています。
2018年はアナク・クラカタウの大規模な側面崩壊によって津波が発生し、437人が死亡しました。
今回も山体崩壊が起きた?
9月5日朝までに確認できる公表情報では、2018年と同じような大規模な側面崩壊が起きたとの情報は確認されていません。
そのため、現時点で2018年と同じ状況だと考える根拠はありません。
噴煙が1万5000mなら巨大津波になる?
噴煙高度と津波の高さは直接比例しません。
約1万5000mという高さは、気象庁が海外の大規模噴火について日本への影響を監視・情報提供する際の基準のひとつです。
インドネシアで大地震も起きた?
今回の情報について、気象庁は実際には規模の大きな地震は発生していないと説明しています。
「海外で規模の大きな地震がありました」という文言は、「遠地地震に関する情報」の作成時に自動的に付くものです。
まとめ|8時30分時点で目立った潮位変化なし、気象庁は監視を継続
2026年9月5日2時50分ごろ、インドネシアのクラカタウ火山で、噴煙が約1万5000mに達する大規模な噴火が発生しました。
日本への津波が発生した場合、早いところでは沖縄県地方に6時ごろ到達すると想定されていましたが、8時30分時点で海外・国内の観測点に有意な潮位変化はありません。
ただし、気象庁は日本への津波の有無について調査を続けています。
クラカタウでは、1883年と2018年にも大きな津波災害が起きています。
ただ、1883年は歴史的な巨大噴火と大量の火砕流、2018年は火山体の側面崩壊が大きく関係した出来事でした。
今回、同じ現象が確認されているわけではありません。
そして2022年のトンガ噴火が示したように、巨大噴火では気圧波を通じて遠く離れた海面が変動することもあります。
だからこそ、最初に想定された到達時刻を過ぎても気象庁は観測を続けています。
今のところ日本で目立った潮位変化はない。しかし、気象庁の調査が終わるまでは最新情報を確認する。
9月5日朝の段階では、そこがいちばん正確な結論です。