レトロゲーム系

『スーパーハイドライド』レビュー|食事・睡眠・重量まで管理するRPGは何を目指した?

目次
  1. スーパーハイドライドとは?時間・食事・重量を管理するメガドライブRPGをレビュー
  2. 先に結論|「面倒なRPG」ではなく、一日の遠征を組み立てるRPG
  3. 『スーパーハイドライド』とは
  4. 『ハイドライド3』を基礎にした移植版。ただし中身は同一ではない
  5. 4つの職業とランダムな初期能力から冒険が始まる
  6. 時計は飾りではなく、プレイヤーに帰る時間を決めさせる
  7. 食事は約6時間ごと。問題は食べる操作ではなく、何食分持つか
  8. 多く持てば安心、では終わらない
  9. 重量オーバーすると、帰り道そのものが重くなる
  10. 所持金まで重いから、稼ぐことにも後処理が必要になる
  11. 睡眠によって「HPが残っているから続行」が通用しなくなる
  12. 宿屋は回復、睡眠、翌朝への時間経過、セーブをまとめている
  13. 魔法は戦闘だけでなく、荷造りそのものを変える
  14. レベルアップすると、敵だけでなく荷物にも強くなる
  15. 善悪によって「画面にいるもの全部を倒す」が正解ではなくなる
  16. メガドライブ版では「しゃがむ」が戦闘へ追加された
  17. それでも通常戦闘は、生活管理ほど豊かではない
  18. 未知の場所を歩くとき、時間と食料はよく機能する
  19. 一度知った道を歩くと、同じ時間システムが重さへ変わる
  20. 「何をすればいいか分からない」時間にも食事は必要になる
  21. 一度ルールを理解すると、かなり遊びやすくなる
  22. しかし、理解した後にも残るものがある
  23. システムがつながっているからこそ、おもしろい
  24. 同じ連携が、失敗したときには悪循環になる
  25. なぜC Tier・69点なのか
  26. B Tier・70点へ届かなかった最後の1点
  27. メガドライブ版そのものがProject EGGで遊べる
  28. Switchの『ハイドライド3』は同じゲームではない
  29. 『ハイドライド3 S.V.』も別バージョン
  30. 2026年現在、どの版を選ぶ?
  31. 総評|「敵に勝てるか」だけでなく、「今日どこまで行けるか」を考えさせる69点

スーパーハイドライドとは?時間・食事・重量を管理するメガドライブRPGをレビュー

RPGで遠くの洞窟へ向かうとき、普通なら「いまのレベルで敵に勝てるか」「回復薬はいくつ必要か」といったことを考える。

1989年10月6日にアスミックから発売されたメガドライブ用『スーパーハイドライド』では、そこへもう一段違う計算が加わる。

目的地へ着くのは何時になるのか。途中で食事の時間を迎えないか。帰るころには夜にならないか。食料を増やせば長く行動できるが、その食料にも重さがある。強い武器や防具を持ちたいが、積みすぎれば足が遅くなる。さらに、本作では所持金さえ荷物になる。

ゲーム内では時間が流れ続け、起きているあいだは約6時間ごとに食事が必要になる。夜遅くまで活動すれば睡眠不足の影響も受け、荷物が重すぎれば移動速度まで落ちる。Project EGGの現行公式紹介でも、所持品の重量、食事、昼夜サイクルを含めた「冒険者としてのマネジメント」が本作の特徴として挙げられている。

この仕組みがうまく噛み合うと、『スーパーハイドライド』では町を出る前から攻略が始まる。

今日はどこまで行くのか。その距離なら食料はいくつ必要か。探索先で宝を見つけることまで考えて、荷物にどれだけ余裕を残すか。現在の強さだけではなく、「今日一日でどこまで冒険できるか」を考えるRPGになっている。

ところが同じ仕組みは、ゲームが抱える古さにも容赦なく作用する。道に迷っている時間にも時計は進み、既知の道を往復している最中にも腹は減る。荷物が重ければ移動はさらに遅くなり、通常戦闘そのものも生活管理ほど多彩ではない。

管理することに意味があるから69点まで届く。

その管理が、移動・戦闘・進行の摩擦まで大きくしてしまうから70点には届かない。

つぶログのメガドライブ全422ソフトTier表では、『スーパーハイドライド』を69点・C Tier・総合297位としている。現行Tier表でも69点はC Tierの上限であり、同点作品と並ぶ297位だ。

先に結論|「面倒なRPG」ではなく、一日の遠征を組み立てるRPG

食べなければならない。眠らなければならない。荷物には重さがある。

こうした要素だけを抜き出すと、『スーパーハイドライド』は不便なルールを大量に積んだRPGにも見える。

実際には、それぞれのルールが独立しているわけではない。

遠くへ行きたいなら食料を多めに持つ必要がある。しかし、食料にも重量があるため、装備や薬へ使える積載余裕は減る。重量を超過すれば足が遅くなり、目的地まで余計に時間がかかる。時間がかかれば次の食事が近づき、さらに夜や睡眠も考えなければならない。

逆方向のつながりもある。

腕力を育てれば持てる重量が増える。魔法で回復できるようになれば薬を減らせる。洞窟を照らす魔法を覚えればランプやオイルを減らせる。帰還魔法を覚えれば、戻り道に必要だった時間そのものを短縮できる。

戦闘、成長、魔法、荷造り、移動時間が一つの遠征計画へ収束する。

この連携こそ、本作を珍システムの寄せ集めで終わらせていない部分だ。

『スーパーハイドライド』とは

今回評価するのは、1989年10月6日に日本国内で発売されたメガドライブ版『スーパーハイドライド』である。

項目内容
発売日1989年10月6日
発売元アスミック
セガ公式ジャンルロールプレイング
発売時価格7,900円
型番T-20013
ROM容量4M
セーブバッテリーバックアップ対応
TierC Tier
スコア69 / 100
メガドライブ全422作品中297位

発売日、発売元、価格、型番、ROM容量、バッテリーバックアップ対応は、現在のセガ公式メガドライブ発売一覧でも確認できる。

セガ公式のジャンル表記は「ロールプレイング」だが、フィールド上では自分でキャラクターを動かし、攻撃ボタンで敵と戦うため、ゲーム内容としてはアクションRPGと捉えると分かりやすい。

『ハイドライド3』を基礎にした移植版。ただし中身は同一ではない

『スーパーハイドライド』は、1987年に登場したPC用『ハイドライド3』を基礎としている。

2025年にメガドライブ版をProject EGGへ復刻したD4エンタープライズも、本作を『ハイドライド3』の移植版と明記している。

ただし、PC版をそのまま家庭用機へ載せただけではない。

メガドライブ版にはPC版になかった「しゃがみ」が加わり、重要アイテム「光の剣」の配置も変更された。PC版では機能しなかった銀行が利用できるようになり、一部ボスの仕様も異なる。BGMについても6曲が新曲へ置き換えられている。

したがって、本記事ではPC-8801版やMSX版、『ハイドライド3 S.V.』の攻略情報をそのままメガドライブ版の仕様として扱わない。

今回の69点は、あくまで1989年日本国内メガドライブ版そのものの評価である。

4つの職業とランダムな初期能力から冒険が始まる

ゲーム開始時にはキャラクターメイキングを行い、

戦士、強盗、僧侶、修道士

の4職業から一つを選ぶ。

この4職業はProject EGGの現行公式紹介でも確認できる。

作成時の能力値にはばらつきがあり、作り直すたびに異なる数値になる。メガドライブ版を対象にした詳細攻略でも、初期ステータスがランダムであることが確認されている。

ここで本作らしいのが、腕力の意味だ。

腕力は戦闘だけの能力ではなく、持てる重量へ直結する。 メガドライブ版の検証では「持てる重さ=腕力×140」とされている。

そのためキャラクター作成時の数値は、単に敵を倒しやすいかどうかだけを決めない。

食料を何個積めるか。重い武器や鎧を持てるか。回復用品をどれだけ残せるか。探索先で拾った物を持ち帰れる余裕があるか。

初期能力が、そのまま冒険の行動半径にも影響する。

時計は飾りではなく、プレイヤーに帰る時間を決めさせる

本作ではゲーム内時間が流れており、昼と夜で世界の状態が変化する。

特に夜は敵が強くなり、昼間と同じ感覚でフィールドを歩くことが難しくなる。町の施設も時間の影響を受ける。メガドライブ版攻略資料でも、夜になると敵からの被害が増え、こちらの攻撃が通りにくくなるケースが確認されている。

このため、遠い場所へ行くことには期限が生まれる。

目的地まで到達できるかだけではなく、用事を済ませたあと安全に帰れるかまで考える必要がある。

フィールドの広さが単なるマップ面積ではなく、時間として感じられる距離になる。

未知の場所へ向かうときには、この仕組みがよく働いている。

食事は約6時間ごと。問題は食べる操作ではなく、何食分持つか

食事については、メガドライブ版の詳細資料で仕様をかなり具体的に確認できる。

宿屋から朝7時に起きた場合、起き続けていれば13時、19時、深夜1時……と約6時間ごとに空腹になる。食料を所持していれば、その時刻に自動的に食べるため、毎回メニューを開いて食事操作をする必要はない。

食料を持っていなければ体力へ悪影響が出る。

つまり、食事システムの負担は「6時間ごとにメニューを開かされること」ではない。

町を出る段階で、

今日の探索なら2食分で足りるのか。

帰還が遅れた場合まで考えて3食分持つのか。

という判断を迫られることにある。

そして食料自体にも重量がある。

メガドライブ版では「しょくりょう」の重量は500と記録されている。

食料は、町から離れていられる時間を荷物として持ち歩くような存在になっている。

多く持てば安心、では終わらない

遠征時間だけを考えれば、食料は多い方がいい。

しかし本作では、武器、防具、薬、探索用アイテム、イベントアイテムまで同じ重量制限へ入る。

食料を余分に積んだぶんだけ、別の物を持てる余裕は減る。

強い鎧を着るのか。

食料を一つ増やすのか。

回復薬を余分に持つのか。

未知の場所で拾うアイテムのために空きを残すのか。

「念のため全部持っていく」という選択を許さない。

この制限があることで、町での準備は単なる買い物ではなく、今回の目的に合わせて装備と補給を組む時間になる。

重量オーバーすると、帰り道そのものが重くなる

所持重量が限界へ達しても、その場で「これ以上持てません」と拒否されるだけではない。

積みすぎれば移動が鈍くなり、さらに過積載になればまともに動けなくなる。

この仕様は、重量制限をかなり厳しいものにしている。

ダンジョンで貴重な装備を見つけた。

持ち帰りたい。

しかし重量に余裕がない。

何かを捨てるか、重いまま帰るかを決める。

重いままなら移動速度が落ちる。

すると時計が進む。

次の食事が近づく。

夜になる。

重量オーバーが、別のシステムへ連鎖する。

本作の管理がおもしろい理由でもあり、初心者へ厳しい理由でもある。

所持金まで重いから、稼ぐことにも後処理が必要になる

『スーパーハイドライド』では、お金さえ重量を持つ。

メガドライブ版のアイテム資料では、コインが10、100、1000の金種に分かれ、コイン1枚にも重量が設定されている。

そのため、雑魚敵を倒して小額硬貨ばかり増えていくと、

金持ちになったのに、金が重くて歩きにくい

という状況まで起こり得る。

そこで役に立つのが「りょうがえき」だ。

低額硬貨を高額硬貨へまとめ、同じ金額をより少ないコインで持てるようにする。メガドライブ版には銀行も実装されており、D4エンタープライズもPC版との差として銀行が利用可能になったことを紹介している。

普通のRPGでは、「所持金が増えること」はほぼ無条件の利益になりやすい。

本作では、

いくら現金を持って出るか。

両替するか。

銀行へ預けるか。

まで荷造りの問題になる。

生活管理の徹底という意味では、かなり印象的な仕組みだ。

睡眠によって「HPが残っているから続行」が通用しなくなる

食事だけでなく、長時間活動し続けることにも制約がある。

夜遅くまで休まずに行動すると睡眠不足の影響が現れ、戦闘能力や体力に悪影響を受ける。

日本版について睡眠不足が発生する厳密な時刻を一次資料から完全に固定できないため、本記事では「23時から」といった細かな数字までは断定しない。

ただ、夜になっても無制限に活動を続けられるRPGではないことは明確だ。

まだHPがある。

食料も残っている。

それでも、このまま先へ行くより今日は帰って休んだ方がいい。

そう考える理由が作られている。

ゲーム内時計が見た目だけの演出ではなく、プレイヤーに「今日はここまで」と区切らせる。

宿屋は回復、睡眠、翌朝への時間経過、セーブをまとめている

メガドライブ版はバッテリーバックアップ対応だが、好きな場所で自由に保存する方式ではない。

宿屋に泊まるとセーブできる。序盤の宿泊費は1,000で、詳細攻略でも最初のセーブまでが一つの区切りとして扱われている。

宿で休む。

体力を整える。

データを保存する。

翌朝からもう一度準備を始める。

これによって、

出発 → 探索 → 帰還 → 宿泊 → 次の日

という流れが自然に作られる。

後には野外で宿泊・セーブできるキャンプ用品も存在するが、非常に重く高価であり、軽々しく生活サイクルを無視できる救済装備ではない。メガドライブ版攻略資料では重量5,000、価格200,000と記録されている。

便利な道具さえ荷物になるところが、徹底している。

魔法は戦闘だけでなく、荷造りそのものを変える

本作の魔法は、単に攻撃力を上げるためのものではない。

「魔道士の館」で経験値を支払って習得し、一定の順番で覚えていく。メガドライブ版では、全職業が使えるものに加え、僧侶・修道士向けの魔法も用意されている。

例えば、

「ちゆ」はHPを回復する。

「せんこう」は洞窟を照らす。

「いどう」は最後に泊まった宿屋へ戻る。

「じゅうりょう」は一定時間、持てる重量を増やす。

これらはインベントリ管理と直結する。

回復魔法が使えるなら薬を減らせる。

洞窟を魔法で照らせるなら、ランプとオイルへ使う重量を減らせる。

帰還魔法があれば、帰り道を歩くための時間と食料を計算し直せる。

重量増加魔法なら、探索先で想定外に重い物を拾った場合の立て直しにもなる。

魔法を覚えることで、「何を持っていくか」まで変わる。

戦闘と生活管理がここでも分断されていない。

レベルアップすると、敵だけでなく荷物にも強くなる

敵を倒せば経験値を得られるが、必要量へ達した瞬間に自動でレベルが上がるわけではない。

町の寺院へ戻り、そこでレベルアップする。能力上昇にはランダム性があり、腕力が伸びれば持てる重量も増える。

序盤では、

武器を強くすると重い。

鎧を着ると食料が積みにくい。

宝を拾ったら重量限界に近づく。

といった窮屈さが強い。

腕力が成長すると、装備、食料、薬、探索用品を同時に持ちやすくなる。

つまりレベルアップは、「敵へ与えるダメージが増える」だけではない。

ゲーム序盤に厳しかった生活上の制約を、RPGの成長によって少しずつ緩めていく。

ここは『スーパーハイドライド』の管理システムがよくできている部分だ。

善悪によって「画面にいるもの全部を倒す」が正解ではなくなる

フィールドには、倒してよい悪のモンスターだけでなく、善の存在もいる。

日本版では善悪に関係する能力として「こころ」があり、善のモンスターを1体倒すと20低下する一方、悪のモンスターを10体倒してようやく1回復するとされている。

「こころ」は店の価格や一部イベントにも関係する。

そのため、画面へ現れた相手を片っ端から攻撃して経験値へ変える遊び方は通用しない。

善の存在は先に攻撃しなければ敵対しないという手掛かりがあり、森では色の違いで比較的見分けやすい例もある。一方、ハーベルの塔には見た目だけでは区別しにくい相手もいる。

したがって本作では、

何かが現れたら即座に攻撃するのではなく、相手が敵対しているのかを見る

という一呼吸が必要になる。

重量や食事ほどゲーム全体を支える要素ではないが、世界を「経験値を持った敵だけが歩いている場所」にしなかったことには意味がある。

メガドライブ版では「しゃがむ」が戦闘へ追加された

『ハイドライド3』ではシリーズ初期の体当たり中心の戦闘から、ボタンで攻撃する方式へ変わっている。

メガドライブ版『スーパーハイドライド』では、そこへさらにしゃがみ動作が追加された。

D4エンタープライズも、PC版には存在しないメガドライブ版独自の要素として明記しており、敵の攻撃を避けるために活用できる。

具体的にはハーベルの塔の吸血鬼など、飛び道具をしゃがんでやり過ごし、攻撃が止んだところを狙う戦い方が可能だ。

戦闘が完全に数値だけで決まるわけではない。

装備のリーチ、遠距離武器、敵の攻撃方法、しゃがみなどによって多少の対応差は存在する。

それでも通常戦闘は、生活管理ほど豊かではない

69点の理由を考えると、ここは避けて通れない。

通常戦では敵との距離を調整し、武器を振り、危険なら離れるという流れへ戻りやすい。

飛び道具を使う。

しゃがむ。

リーチの長い武器を利用する。

敵によって多少の攻略差はある。

それでも、町で装備や食料、金銭、魔法まで考えている時間ほど、通常戦一回ごとの判断は豊富ではない。

冒険の準備はかなりおもしろいのに、準備したあと何度も繰り返す戦闘はそこまで深くない。

世界が広く、移動時間も長いゲームだからこそ、この差が目立つ。

未知の場所を歩くとき、時間と食料はよく機能する

初めて向かう場所では、本作の広さと管理システムが噛み合う。

この道はどこまで続くのか。

次の町はあるのか。

洞窟へ入るなら、あと何時間行動できるのか。

いま引き返さなくても夜までに戻れるのか。

未知の距離だからこそ、時計を見る意味がある。

食料を一つ余分に持ってきた意味も出る。

探索が成功すれば、次回は同じ場所へより少ない荷物で効率よく向かえる。

プレイヤー自身が世界の距離を覚えることまで、攻略へ含まれている。

一度知った道を歩くと、同じ時間システムが重さへ変わる

ところが、目的地を知った後は事情が変わる。

次に行く場所も分かる。

必要なアイテムも分かる。

同じ道順も覚えている。

それでもフィールドをもう一度歩く必要がある。

そこでは、未知の場所へ向かう緊張感よりも移動時間そのものが目立つ。

しかも本作では、既知の道を歩いているあいだも腹は減り、夜は来る。

荷物が重ければさらに時間が延びる。

初回探索を豊かにした仕組みが、二回目以降の往復まで同じように課金してくる。

ここが生活管理の難しいところだ。

「何をすればいいか分からない」時間にも食事は必要になる

本作は完全なノーヒントRPGではない。

町の住民から次の場所につながる情報を聞けるし、ゲーム内で進行の手掛かりも用意されている。

ただ、そのヒントから正解の操作へたどり着くまで距離がある場面は少なくない。

例えば能力値が一定以上なければ墓石の文字を読めず、そこから地下の街を発見できない場所がある。壁の通り抜けや特定地点の調査を要求する場面も存在する。

つまり問題は、

「ヒントが一切ない」

ことではない。

得た情報を、具体的な場所・能力値・調べる行動へ変換しにくい場面があることだ。

そして、そこで迷っている間にも時間が流れる。

通常のRPGなら「道に迷って10分使った」で済むところが、本作では食事、夜、睡眠、宿代まで巻き込む。

進行の分かりにくさと生活管理の相性が悪い。

一度ルールを理解すると、かなり遊びやすくなる

『スーパーハイドライド』では、知識そのものが強い。

約6時間ごとに食事が必要だと知る。

余計な食料を積みすぎない。

所持金を両替する。

重量へ余裕を残す。

善の存在へ不用意に攻撃しない。

夜になる前に帰る。

腕力を意識して育てる。

魔法によって荷物を減らす。

こうしたことを理解すると、序盤に起きやすい事故はかなり減る。

最初は意味の分からなかった制約が、次第に遠征計画を組むための情報へ変わっていく。

この学習性があるから、69点というC Tier上限まで評価できる。

しかし、理解した後にも残るものがある

食事時刻を覚えても、フィールドそのものは短くならない。

重量の仕組みを理解しても、既知の道を歩く時間は残る。

善悪を覚えても、通常戦闘が急に多彩になるわけではない。

攻略ルートを知るほど、探索ではなく移動として感じる区間も増える。

つまり本作には、

ルールを知らないことで発生する難しさ

と、

ルールを知っていても残るテンポの重さ

がある。

前者は学習によって解消できる。

後者は作品そのものに残る。

ここを分けて考えないと、「理解すれば名作」という過大評価にも、「面倒なだけ」という過小評価にもなってしまう。

システムがつながっているからこそ、おもしろい

本作の強さを一つの遠征で考えてみると分かりやすい。

洞窟へ向かいたい。

長旅になるので食料を用意する。

暗い場所ならランプとオイルも欲しい。

薬も持っていく。

強い武器と防具を装備する。

すると重量が増える。

拾った宝を持つ余裕が減る。

腕力が高ければ余裕が増える。

「せんこう」を使えるなら照明道具を減らせる。

「ちゆ」があるなら薬も減らせる。

「いどう」が使えるなら、帰路の時間をかなり圧縮できる。

所持金を銀行へ預ければ、さらに軽くできる。

一つの問題へ複数の解決方法があり、その解決が別システムの余裕を生む。

この連携が成立している場面では、かなり考えさせられるRPGだ。

同じ連携が、失敗したときには悪循環になる

反対に、荷物を積みすぎたとする。

足が遅くなる。

帰りが遅れる。

食事時刻を迎える。

食料がなくなる。

夜になる。

敵が強くなる。

宿へ戻るまでさらに危険になる。

複数のシステムが相互作用するからこそ、一つの準備不足まで複数の問題へ広がる。

この厳しさが、ゲームを理解する前のプレイヤーへ強く出る。

画面には数値が表示されていても、その数値が何を意味し、どの程度までなら安全なのかは、自分で理解しなければならない部分が多い。

日本版取扱説明書は現在も17ページのスキャンが保存されており、本作が説明書を前提として設計された時代のゲームであることもよく分かる。

なぜC Tier・69点なのか

69点という数字は、『スーパーハイドライド』に魅力がないという意味ではない。

つぶログのTier基準ではC Tierは60~69点で、「長所はあるが、操作、テンポ、構成などに無視できない弱点がある」作品を置いている。69点はその最上段だ。

評価軸69点を支える理由
時間行動距離を「何時までに帰るか」という計画へ変える
食事遠征可能時間を所持品として管理させる
睡眠HP以外にも撤退判断を作る
重量装備・食料・薬・探索用品を同時には持てない
所持金金まで重量として扱い、両替・銀行に攻略上の意味がある
職業・腕力初期能力と成長が積載可能量へつながる
魔法回復・照明・帰還・重量増加によって荷物構成まで変える
善悪相手を見ずに全て倒す戦い方を否定する
MD版のしゃがみ一部攻撃への明確な回避手段を追加している
弱点長い移動、往復、通常戦闘の反復、進行理解の難しさ
B Tierへの壁管理システムがゲームの摩擦まで増幅する

生活管理を全部取り除けば、確実に遊びやすくなる。

しかし、それでは本作のおもしろさまで失われる。

食事があるから、遠征距離を考える。

重量があるから、荷物を選ぶ。

睡眠があるから、その日の撤退時刻を考える。

金まで重いから、銀行や両替に役割が生まれる。

問題は制約そのものではない。

制約によって判断が生まれる部分と、制約によって同じ道を歩く時間だけが増える部分が共存していることだ。

B Tier・70点へ届かなかった最後の1点

もし本作の移動がもう少し軽快だったら。

もし通常戦闘が、生活管理と同じくらい多様な判断を要求したら。

あるいは進行情報から目的地へたどり着くまでの摩擦がもう少し小さかったら。

食事・睡眠・重量という制約は、もっと一貫して「遠征を考える楽しさ」へ変換されていたはずだ。

実際には、道に迷った時間も同じ管理を要求される。

既知の道を往復している時間も同じだ。

接近と離脱を繰り返す通常戦の最中にも時計は進む。

優れた管理システムが、優れた部分だけでなく古い部分まで強調してしまう。

これが69点と70点の境界になる。

「管理項目が多すぎるからC Tier」ではない。

管理項目同士のつながりはB Tierへ届くほどおもしろいが、そのつながりがゲーム全体のテンポを支えるところまでは完成していない。

だから69点なのである。

メガドライブ版そのものがProject EGGで遊べる

現在のプレイ環境については、以前より状況がかなり良くなった。

2025年2月12日、Project EGGで『スーパーハイドライド(メガドライブ)』そのものの公式配信が始まった。

現在の商品ページでも販売中で、価格は550円。利用には無料のアミューズメントセンター会員登録と、月額550円のProject EGGサービス加入が必要になる。Windows 10/11対応で、ゲームパッドやクイックセーブ・ロード機能も案内されている。

したがって2026年現在、

「日本版カートリッジと実機を用意しないと遊べない」

作品ではない。

今回レビューした1989年メガドライブ版そのものを、現在も正規ルートで購入できる。

なおProject EGG側のクイックセーブ・ロードは現代の復刻機能なので、今回の69点には含めていない。オリジナル版の評価は、1989年当時のバッテリーバックアップと宿屋セーブを前提としている。

Switchの『ハイドライド3』は同じゲームではない

Nintendo Switchでは、2024年2月22日から『EGGコンソール ハイドライド3 PC-8801mkIISR』が配信されている。

時間、食事、重量、職業選択など、本作へ受け継がれた特徴を持っており、現在の公式紹介でもそれらが明記されている。価格は880円。

ただしこれは1987年PC-8801mkIISR版『ハイドライド3』であり、『スーパーハイドライド』ではない。

同じ仕組みの原型を現在のSwitchで確認するには有用だが、今回評価したメガドライブ版と混同しないようにしたい。

『ハイドライド3 S.V.』も別バージョン

2025年7月24日には、Nintendo Switch向け『EGGコンソール ハイドライド3 S.V. PC-9801』も配信された。

D4エンタープライズはこれを、1987年『ハイドライド3』へ新マップや新キャラクターなどを加えた1989年のパワーアップ版として説明している。価格は980円。

同じ1989年作品なのでやや紛らわしいが、

『スーパーハイドライド』はメガドライブ版。

『ハイドライド3 S.V.』はPC向けの別バージョン。

と分ける必要がある。

現在のSwitchで『ハイドライド3 S.V.』を遊べるからといって、「Switchで『スーパーハイドライド』が遊べる」という意味ではない。

2026年現在、どの版を選ぶ?

今回の記事で評価したゲームそのものを遊びたいなら、Project EGGのメガドライブ版『スーパーハイドライド』が最も分かりやすい現行正規ルートになる。

時間・食事・重量というシステムが最初のPC版『ハイドライド3』でどのように成立していたのかまで比べたい場合には、SwitchのPC-8801mkIISR版。

後に拡張された『ハイドライド3 S.V.』を確認したい場合には、SwitchのPC-9801版。

という形で選び分けられる。

現在は同じ系譜の複数バージョンが公式復刻されているため、以前より比較しやすい環境になった。

総評|「敵に勝てるか」だけでなく、「今日どこまで行けるか」を考えさせる69点

『スーパーハイドライド』で町を出る前には、その日の冒険を想像する必要がある。

遠くへ行くなら食料がいる。

食料を増やせば重くなる。

強い武器や鎧も重い。

薬やランプも持ちたい。

現金さえ積載量を使う。

何かを拾って帰るなら、最初から荷物を空けておいた方がいい。

時間が進めば腹が減り、夜になれば危険が増し、いつまでも寝ずに活動することもできない。

ここまでのルールが別々に並んでいるだけなら、管理項目の多いRPGで終わっていただろう。

実際には、かなりの部分が互いにつながっている。

腕力を育てれば持てる物が増える。

魔法を覚えれば薬や照明器具を減らせる。

帰還魔法があれば、その日の行動距離を伸ばせる。

銀行と両替を使えば、稼いだ金の重さまで解決できる。

キャラクターを強くすることが、冒険そのものを軽くしていく。

この設計は明確におもしろい。

「今日は塔まで行って帰ろう」

「今回は洞窟の途中まで調べよう」

「帰りは魔法を使えるから、食料を一つ減らせる」

と、プレイヤー自身が一日の計画を作れるからだ。

その一方、計画とは無関係な摩擦まで同じルールの影響を受ける。

進行先が分からず迷っている時間にも腹は減る。

既知の道を歩き直している最中にも夜は来る。

荷物が重いと、その退屈になりやすい移動がさらに長くなる。

通常戦闘にもしゃがみや武器差はあるが、町で遠征計画を立てている時間ほど多彩な判断は要求されない。

生活管理は冒険のおもしろさを増幅する。しかし同時に、移動・戦闘・進行の古さまで増幅する。

これが『スーパーハイドライド』の評価を最もよく表している。

だからC Tier・69点。

あと1点でB Tierという位置には、十分な理由がある。

本作は「空腹や重量まで管理させる面倒な昔のRPG」ではない。

かといって、独創的だから現在でも誰にでも薦められる隠れた名作、と持ち上げる必要もない。

持てる荷物と残された時間から、一日の冒険を自分で組み立てるところには確かな魅力がある。しかし、その計画を実行するための移動と戦闘には、現在無視しにくい重さが残っている。

その長所と弱点がほぼ拮抗し、長所がほんの少し上回った地点。

それが、メガドライブ全422作品中297位、C Tier・69点という評価である。

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